一般の女性であれば委縮するであろう強姦悪魔の雄叫び。
だが
「じゃあさ、私たち個人でアンティしよう。レアカードを二枚賭け。勝った方が負けた方の所持してるカードから二枚選んで貰う」
この世界はデュエルで全てが決まる。
例えデュエルの途中であっても、デュエリスト同士の間でアンティが合意されれば、決着後、敗者は勝者にカードを渡さなければならない。
「あれだけ言っといて女に負けるのが怖くて断ったりしないよね」
安い挑発であるが、この会話は会場全体に聞こえている。
こう言ってしまえば、もはや豚島は拒否することはできない。
「上等だ。アンティを受けてやる。だが覚えとけ、俺は昆虫族なんて気持ち悪いカードはいらねえからな。手に入れた二枚はその場で破り捨ててやる」
一瞬だけフラッシュバックする過去の記憶。
「……条件成立だね」
もう、あの頃の無力だった自分ではない。
「レベル5モンスター、プリミティブ・バタフライを特殊召喚」
《プリミティブ・バタフライ》
星5 風属性 昆虫族
攻撃力1200 守備力900
「自分のフィールドにモンスターがいない時、このカードは特殊召喚できる。そして効果によってレベルを1つアップ」
《プリミティブ・バタフライ》
星5→星6
「だから何だ! レベルが上がろうと攻撃力1200の虫けらじゃ、俺のデーモンの召喚は倒せねえ!」
「昆虫は進化する。魔法カード《孵化》発動」
《孵化》によってプリミティブ・バタフライがリリースされて、それよりも一つレベルが高い昆虫族モンスターが特殊召喚される。
「ポセイドン・オオカブトを特殊召喚!」
《ポセイドン・オオカブト》
星7 地属性 昆虫族
攻撃力2500 守備力2300
「更にアーマード・ビーを召喚」
《アーマード・ビー》
星4 風属性 昆虫族
攻撃力1600 守備力1200
「効果でデーモンの召喚の攻撃力を半分にする」
《デーモンの召喚(デーモンの超越)》
攻撃力2500→1250
「こ、この女、俺の強姦モンスターをどこまでも短小に貶めるつもりかよ」
「バトル! ポセイドン・オオカブトでデーモンの召喚を攻撃!」
「女がどこまでも調子に乗ってんじゃねえ! デーモンの超越の特殊能力発動。戦闘破壊される際、代わりにオーバーレイ・ユニットを一つ取り除くことができる」
エクシーズモンスターは重ねた素材を取り除くことによって特殊能力を発動できる。
「だけどダメージは受けてもらう」
セックスデーモン豚島 LP2250
「ぐへへ、このターンが終わればデーモンの召喚の攻撃力は元に戻る。女ごときのモンスターじゃ、これが限界ってことだ」
「ポセイドン・オオカブトの特殊能力。このカードと戦闘を行った攻撃表示モンスターが破壊されなかった時、二回まで続けて攻撃することができる」
「何だと!?」
このターン中であれば《デーモンの召喚(デーモンの超越)》の攻撃力は下がったままだ。
「ポセイドン・オオカブトでデーモンの召喚に再攻撃!」
「ぐ、ぐあ!」
リアルソリッドビジョンの衝撃に耐え切れず豚島が後退する。
「ク、クソ! デーモンの超越の効果、オーバーレイ・ユニットを取り除く」
セックスデーモン豚島 LP1000
「これで終わりだ。ポセイドン・オオカブトでデーモンの召喚を攻撃! トライデント・スパイラル!!」
「男が女に負けるわけがねえ! リバースカード発動《ご隠居の猛毒薬》!」
《ご隠居の猛毒薬》は自分のライフを1200回復するか、相手に800ダメージ与えるか、どちらか一つを選択して効果を使用する速攻魔法。
「俺はこの精力剤でライフポイントを1200回復だ!」
セックスデーモン豚島 LP2200
そして《ポセイドン・オオカブト》と《デーモンの召喚(デーモンの超越)》のバトルが行われる。
セックスデーモン豚島 LP950
エクシーズモンスターの欠点はオーバーレイ・ユニットを使い切れば効果が使用できなくなること。
既に《デーモンの召喚(デーモンの超越)》の下にエクシーズ素材はない。
よって《デーモンの召喚(デーモンの超越)》は戦闘破壊され墓地に送られた。
「デーモンの超越の効果発動。エクシーズ召喚されたこのモンスターが相手によって墓地に送られた時、デッキからデーモンの召喚を特殊召喚」
《デーモンの召喚》
星6 闇属性 悪魔族
攻撃力2500 守備力1200
またしても豚島の場に《デーモンの召喚》が攻撃表示で特殊召喚された。
これでは《アーマード・ビー》による追撃を行うこともできない。
「勝ったと思ったか? 女の分際で男に勝てるわけがねえだろうが!」
流石にしぶとい。
歪んだ男尊思想の持ち主であるが、奴隷杯常連優勝者というだけあってデュエルの腕は確かだった。
「ターンエンド。さあ、あんたのラストターンだ」
「調子に乗るなよ下等な女が! 俺のターン。ドロー」
引いたカードを見た豚島の口元がつり上がる。
「ぐへへ、そうだな。確かにラストターンだ。このターン俺の勝利でデュエルは終わる」
「何?」
遊羽のライフポイントは4000で無傷の状態。
「ワンターンキル。中出し一発で孕ませてやるぜ」
セックスデーモン豚島のワンキル宣言。
ハッタリではなく、おそらく本当に実行する手段が手札に揃っている。
「俺が今引いたカードはこれだ」
豚島がドローしたカードを遊羽に見えるように表向きにする。
《
星7 闇属性 ドラゴン族
攻撃力2400 守備力2000
そのカードは《真紅眼の黒竜》。
あの《青眼の白龍》には及ばないとはいえ、マニア価格では2億円ぐらいの値がつくというウルトラレアカードだ。
「こいつはパトロンから貰ったレアカードの一枚だが、レベル7でリリースが二体必要な癖に攻撃力が2400しかねえ情けねえ雌モンスターだ。リリース一体で攻撃力2500の逞しい強姦モンスターであるデーモンの召喚の足元にも及ばねえ」
通常召喚して攻撃させるだけならそうだが、《真紅眼の黒竜》も専用構築にすればそれらのデメリットは殆どなくなるはず。
この男にそれが分からないとは思えないが、まるで《真紅眼の黒竜》に恨みでもあるかのような言いぐさだった。
「だが俺のような優れた決闘強姦魔なら、こんなカスみたいな雌モンスターでも利用することができる。いくぜ、強姦魔法カード《融合》を発動!」
この状況で最後の手札に《融合》を握っているあたり、やはりデュエリストとしては一流なのだろう。
「逞しき強姦悪魔、貧弱なる雌竜を犯して、そのイチモツをそそり勃たたせる! 融合召喚!」
それはブラックドミノシティ決闘強姦数No1のレジェンド級
「現れろ! 悪魔竜ブラック・デーモンズ・ドラゴン!!」
《悪魔竜ブラック・デーモンズ・ドラゴン》
星9 闇属性 ドラゴン族
攻撃力3200 守備力2500
「超えたぜ、青眼の白龍を。所詮女ごときが男である俺に勝つなんて不可能だったってことだ」
確かに攻撃力で《青眼の白龍》を上回っているが、あのモンスターの真価は凶悪な特殊能力にある。
「リバースカード発動!」
即座に伏せていた罠カードを発動した。
バトルフェイズに入ってからでは手遅れになる。
「何をしたって無駄だ! このモンスターが攻撃する間、お前は魔法、罠、モンスター効果を発動できない。悪魔竜は強姦中の一切の抵抗を許さない! 攻撃対象はアーマード・ビー」
《悪魔竜ブラック・デーモンズ・ドラゴン》の前では攻撃反応型の罠はもちろん、遊羽の十八番である戦闘破壊トリガーを持つリクルーターも無力。
「悪魔竜ブラック・デーモンズ・ドラゴンの強姦火炎攻撃、メテオ・フレア!!」
《アーマード・ビー》が悪魔竜の火炎放射によって一瞬で焼き払われて蒸発する。
「ここで強姦特殊能力発動、墓地の真紅眼の黒竜をデッキに戻すことでその元々の攻撃力分のダメージを与える。凌辱済みの女を再度強姦してぶっ壊れるまで犯し尽くす、最強のレイプ能力だぜ」
《アーマード・ビー》の攻撃力は1600であり、攻撃力3200の《悪魔竜ブラック・デーモンズ・ドラゴン》との差は1600。
それに効果ダメージの2400を加算すると合計は4000。
強姦悪魔の宣言通り、ワンターンキルの成立であった。
インセクト遊羽 LP2000
「な、何!?」
だがそれはあくまで伏せていた罠カードをメインフェイズに発動していなければの話。
「私が発動したのは《ダメージ・ダイエット》。その効果でこのターン受けるダメージは全て半分になる」
「孕み袋の分際で中出しを避妊してるんじゃねぇ!!」
ワンキル失敗で激怒する豚島。
だが伏せカードも手札もない彼がこのターンにできることはもう何もない。
「……ターンエンドだ」
「私のターン、ドロー」
引いたカードは装備魔法《
これで勝利に必要なカードが手札に揃った。
「ゴキボールを召喚」
《ゴキボール》
星4 地属性 昆虫族
攻撃力1200 守備力1400
「何を出すかと思えば貧弱な雌モンスター。悪魔竜に差し出す性奴隷のつもりか? お前もようやく女としての身の程を弁えたってことだな」
豚島レベルのデュエリストであれば分かっているはずだ。
遊羽が何の意図もなく低い攻撃力の通常モンスターを出したわけではないと。
《大樹海》によって場に展開するモンスターを継続的に補充できたので、現在の遊羽の手札には余裕がある。
その手札を使って何かするであろうことは、奴隷杯の常連優勝者なら気づいているはず。
「ゴキボールに《黒いペンダント》を装備。攻撃力500アップ」
《ゴキボール》
攻撃力1200→1700
「ははは、ペンダント。女に相応しいショボい装備カードだな。その程度じゃ俺の悪魔竜の攻撃力には遠く及ばねえぞ」
《悪魔竜ブラック・デーモンズ・ドラゴン》は強力なモンスターだが、その能力はあくまで攻撃型であって制圧系の効果は一切ない。
例え攻撃力3000を超えていようが、そのモンスター1体しかいない状況で、伏せたカードも手札もなく、相手にターンを渡すリスクを強姦悪魔の異名を持つデュエリストが理解していないはずがないのだ。
「次は何だ? そのゴキブリにドレスでも着せるのか。所詮、女が何をしようが男に勝てるはずがねえんだ」
だが女相手に男が劣勢になっているという事実を、このセックスデーモン豚島という男は認めることができない。
「速攻魔法《超進化の繭》発動。装備魔法を装備した昆虫族モンスターをリリースして、召喚条件を無視してデッキから新たな昆虫族モンスターを特殊召喚する!」
《超進化の繭》によって《ゴキボール》が黄金の繭に包まれる。
呼び出されるのは遊羽のデッキにおける最大の攻撃力を誇るインセクトカード。
召喚口上を遊羽は高らかに言い放つ。
「地べた這いずる虫けらも
――羽虫となって
黄金の繭から巨大な蛾のモンスターが姿を現す。
「究極完全態・グレート・モスを特殊召喚!!」
《究極完全態・グレート・モス》
星8 地属性 昆虫族
攻撃力3500 守備力3000
「お、女が男より攻撃力の高いモンスターを出してるんじゃねええええええええええええええ!!!」
絶叫するセックスデーモン豚島。
「《黒いペンダント》の効果、墓地に置かれた時、相手に500ダメージを与える」
セックスデーモン豚島 LP450
「究極完全態・グレート・モスの攻撃、モスパーフェクトハリケーン!」
「女のモンスターに男である俺の最強強姦モンスターが負けるわけがねえ! 押し返せ、悪魔竜ブラック・デーモンズ・ドラゴン! メテオ・フレア!」
巨大な蛾の竜巻攻撃と悪魔竜の火炎放射がぶつかり合う。
「男とか女とか関係ない。攻撃力なら私の究極完全態・グレート・モスが上だ」
《究極完全態・グレート・モス》の竜巻攻撃によって、《悪魔竜ブラック・デーモンズ・ドラゴン》は木端微塵に砕け散った。
「お、俺の最強強姦モンスターが、女ごときに」
セックスデーモン豚島 LP150
《黒いペンダント》による効果ダメージと《究極完全態・グレート・モス》による戦闘ダメージ。
その両方を受けてなおセックスデーモン豚島のライフポイントはかろうじて残っていた。
どこまでもしぶとい男であるが、今回に限ってはそのしぶとさが裏目になる。
豚島のフィールドにモンスター、魔法、罠はなく手札も0の状態。
このタイミングで墓地効果を発動できるようなレアカードを落とす機会もなかった。
現在のセックスデーモン豚島は何もできない状態だ。
そして遊羽の場には攻撃可能な最上級モンスター《ポセイドン・オオカブト》がいる。
奴隷杯のルールによって、リアルソリッドビジョンのセイフティモードがオフにされた状態でだ。
「や、やめろ。奴隷杯で女が男に勝つなんてことあっちゃならねえ!」
「ポセイドン・オオカブト、攻撃」
「やめてくれええええええええええええええええええええええええええ!!」
皮肉にもそれは彼がこれまで強姦してきた女たちと大差のないであろう叫びだった。
「トライデント・スパイラル!!!」
《ポセイドン・オオカブト》の三叉槍攻撃によるダイレクトアタック。
リアルソリッドビジョンの衝撃によってセックスデーモン豚島は吹っ飛ばされて宙を舞った。
セックスデーモン豚島 LP0
決着。
会場がシンと静まり返る。
そして次の瞬間、ドっと歓声が沸き起こった。
「凄げえ! あの豚島が負けた!」
「何者なんだ、あの昆虫女!」
「こんなこと、これまでなかったぞ!」
一見すれば、それは意外な反応。
だが考えてみれば、そう不思議な事ではない。
奴隷杯においてセックスデーモン豚島が女に勝つのは当たり前だった。
もちろん観客たちはそれを楽しんでいたのだろうが、同じ展開というのは飽きるものでもある。
常連優勝者の男が女に負けるというのは、これまでにないエンタメになったのだろう。
「ははは、何が強姦悪魔だよ、女に無様に負けやがった」
「やめてくれえええ、だってさ。マジ笑えるぜ」
「元々、品がなくて気に食わなかったんですよ、あの男は」
それに頂点に立つ存在の没落を望む人間というのは一定数いるものだ。
手のひらを返して一部の観客たちが豚島を罵倒し始めた。
『あ、あり得ないことが起こってしまったぁぁぁ! あのセックスデーモン豚島が二回戦で敗退。勝者は奴隷杯初参加、インセクト遊羽!!』
アナウンサーの宣言によって正式に遊羽の二回戦突破が確定する。
あとは豚島との個人的なアンティを履行するだけだ。
地面に転がっている豚島の方へ歩いていく。
「ひ、ひぃ! な、何だ!?」
近寄った遊羽を見た豚島が怯えたような声をあげた。
そういえば奴隷杯のルールで勝者は敗者を凌辱することができるのだったか。
性的なことだけでなく、不具者にしない範囲なら半殺しにすることもできる。
そして現在の豚島はそれらの暴力に対して一切抵抗ができない状態だ。
だが遊羽の目的は地面に蹲ってガタガタ震える豚島ではなく、彼の持っているレアカードだった。
豚島のデュエルディスクからデッキを取り出し、二枚のカードを抜き出してから残りを返却する。
《悪魔竜ブラック・デーモンズ・ドラゴン》と《
それがアンティに従って選んだ二枚のカードだった。
どちらも昆虫族ではないため、ブラックマーケットで売却かトレードする。
《悪魔竜ブラック・デーモンズ・ドラゴン》を選んだのは単純にエクストラデッキのカードであり価値が最も高いから。
二枚目もエクストラデッキのカードにすることもできたが、《真紅眼の黒竜》はマニア価格で高値が付くので、こちらでもいいと判断した。
あとは豚島に嫌悪感とかいうのがあるわけでもないので、金額が変わらないなら彼のエースモンスター関連であり、歪んだ形とはいえ愛着を持っている《デーモンの召喚》系列のカードには手を付けなかったというのもある。
この《真紅眼の黒竜》にしてもカス扱いする所有者に使われるよりは、ブラックマーケット経由で別のデュエリストの手に渡った方がいいだろう。
ここにいる理由はなくなったので、遊羽はコロシアムの出口に向かう。
「お、おい、待て。報復しないのか」
振り返ると豚島は困惑した様子でこちらを見ていた。
成程。これまで散々女相手に決闘強姦をしてきたので、いざ負けた時、自分が報復されると思って怯えていたようだ。
とはいえ遊羽にとってこのセックスデーモン豚島という男は正直もうどうでもいい存在だった。
デュエリストである以上、デュエル中は目の前の相手に集中する。
デュエルが終わった後も、認めた相手とは交友関係を持つこともある。
だが豚島には特に嫌悪もないが興味もない。
遊羽の瞳を見た豚島の顔が歪む。
1000人以上の女性を凌辱してきた、決闘強姦のエキスパートであるが故の理解。
決闘強姦魔に襲われる、あらゆる女性の反応を見てきたからこそ分かってしまったのだろう。
凌辱対象であるはずの女から嫌悪感すら持たれず、相手にもされない。
それは強姦悪魔にとって最大限の屈辱だったようだ。
「畜生ォ! 畜生おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
両膝をついて豚島が叫び声を上げた。
それを見た観客たちの大爆笑が会場に響き渡る。
女から相手にもされない決闘強姦魔というのは最高のエンタメになったようだ。
観客席には笑顔が溢れていた。
そんな豚島に背を向けて黒いロングコートをはためかせながら、遊羽は今度こそコロシアムを後にした。