二回戦、第三試合。
ドメスティックバイオレンス郷田は、その異名の通りデュエルでDVを行うデュエリストだった。
これまで10人以上の妻にデュエルで暴行して、その内一人は不具者にしたこともある。
また郷田は奴隷杯常連出場者でもあり、セックスデーモン豚島にこそ勝てないものの、毎回準決勝には進出はしていた。
今回の二回戦、郷田にとって楽勝のはずだった。
ファックプラント植木は道具に頼らないと強姦もできないヘタレであり、挙句の果てには愛妻家であるという。
つまり、あの植木という男は妻にDVを行っていないのだ。
ならば10人以上の元妻をDVで痛めつけてきた自分の方がデュエリストとして上のはずだ。
5ターン目。
ドメスティックバイオレンス郷田 / LP3600
VS
ファックプラント植木 / LP3400
《バーバリアン・キング》
星8 地属性 戦士族
攻撃力3000 守備力1100
郷田がこのターン召喚したのは自慢のDVモンスター《バーバリアン・キング》。
あの《青眼の白龍》と同じ攻撃力を持つウルトラレアカードだ。
《ギガプラント》
星6 地属性 植物族
攻撃力2400 守備力1200
《ギガプラント》
星6 地属性 植物族
攻撃力2400 守備力1200
《マンドラゴン》
星5 地属性 植物族
攻撃力2500 守備力1200
一方でファックプラント植木の場には三体の植物族モンスターがいた。
前のターン《ギガプラント》は一体倒したのだが、特殊能力によって片方が残っている限り、もう片方が蘇生してしまう。
だが《バーバリアン・キング》がいれば、そんな小賢しい戦略は無意味だ。
「《蛮族の狂宴LVレベル5》発動。墓地から、バーバリアン1号とバーバリアン2号を復活」
《バーバリアン1号》
星5 地属性 戦士族
攻撃力1550 守備力1800
《バーバリアン2号》
星5 地属性 戦士族
攻撃力1800 守備力1500
「そしてバーバリアン・キングの効果で二体をリリースする。これでこのターン、バーバリアン・キングは3回攻撃可能だ。妻がどれだけやめてと叫んでも殴り続ける、最強のDV攻撃をおみまいしてやるぜ」
それがドメスティックバイオレンス郷田のデュエルタクティクスだった。
「バーバリアン・キングでギガプラントに攻撃!」
「今、攻撃といいましたね」
ファックプラント植木が眼鏡のブリッジを指で押し上げる。
「何? まさか、トラップカードか!?」
「《
《棘の壁》によって《バーバリアン・キング》が破壊される。
郷田は普段から抵抗しない妻を一方的に殴るのが専門のデュエリストであるため、こうやって反撃されるのには不慣れだった。
「ク、クソ! ターンエンド!」
「それでは私のターンですね」
ファックプラント植木が引いたカードを手札に加えた。
「ギガプラントの効果発動。墓地から植物族モンスターを再生」
《ギガント・セファロタス》
星4 地属性 植物族
攻撃力1850 守備力700
「もう一体のギガプラントの効果も発動」
《エンジェル・トランペッター》
星4 地属性 植物族
攻撃力1900 守備力1600
瞬く間に5体の植物族モンスターで、ファックプラント植木のフィールドが埋め尽くされた。
「今回の試合ではこれ以上の展開は不要でしょう。トーナメント戦では可能なら手の内を隠して次戦に進むのが望ましい」
「こ、この野郎!」
「バトルフェイズに入ります。ギガプラントでダイレクトアタック」
ドメスティックバイオレンス郷田 LP1200
「な、何で、妻をDVする度胸もないクソ野郎に、10人以上の妻をDVしてきた真のデュエリストである俺が追い詰められる!」
「妻を大切にすることができない人間にデュエリストを名乗る資格はありませんよ」
ファックプラント植木が再度眼鏡のブリッジを指で押し上げながら宣言する。
「二体目のギガプラントでダイレクトアタック!」
触手系植物モンスターによる直接攻撃。
ドメスティックバイオレンス郷田 LP0
リアルソリッドビジョンの衝撃によって郷田は地面に倒れた。
『勝者! ファックプラント植木! 愛妻家によってDV男が成敗されたぁ!』
歓声に応えるように、ファックプラント植木は観客席へと手を振っていた。
二回戦、第四試合。
ネグレクト前田は妻と共に子供に対してネグレクトを繰り返してきたデュエリストであった。
子供にまともな食事やデッキを与えず放置して自分は会社やデュエル大会に行く。
結果として、子供がこれまでデュエル病院送りになった回数は20回以上。
また前田は同じようにネグレクトを行うデュエリストによって結成された『チーム・ネグレクト』のリーダーを務めている。
『チーム・ネグレクト』は積極的に自分の子供を車内に放置して、デュエル大会に出場することを目的としたチームだった。
できるだけ長く子供を車内放置しておくため、デュエル大会で勝ち進むことを理念としている。
奴隷杯の常連出場者でもある前田は、本日も子供を車の中に放置したまま、こうして大会に出場していていた。
『チーム・ネグレクト』の理念に沿って、最低でも準決勝までは勝ち進むつもりだ。
ヘルカイザー亮は裏でも有名だが、所詮は結婚しておらず子供もいないデュエリスト。
子供がいないということはネグレクトをすることができないということだ。
ならば幾度となく子供を栄養不良で病院送りにしてきた自分の方がデュエリストとして上だと自負していた。
2ターン目
ネグレクト前田 / LP4000
VS
ヘルカイザー亮 / LP4000
「出でよ! サイバー・ドラゴン」
《サイバー・ドラゴン》
星5 光属性 機械族
攻撃力2100 守備力1600
このヘルカイザー亮という男。
前回の試合で強姦を行わなかったことによって、今も多くの観客からヤジを飛ばされているというのに平然とデュエルを行っている。
これではプレイングミスは期待できなさそうだが、前田にとっては大した問題ではなかった。
既にサイバー流デュエリストを封殺する罠がフィールドにセットしてある。
「来い! サイバー・ドラゴン・ツヴァイ」
《サイバー・ドラゴン・ツヴァイ》
星4 光属性 機械族
攻撃力1500 守備力1000
「手札から魔法カードを見せることで、このカードはサイバー・ドラゴンとして扱う」
ヘルカイザー亮が手札にある《融合》を公開した。
それを見て前田の笑みが深まる。
「魔法カード《融合》を発動」
「カウンタートラップ《封魔の呪印》。手札から《カードトレーダー》を捨てる」
ヘルカイザー亮が《融合》を使った瞬間、前田は最初のターンで伏せていたカウンター罠を発動した。
「これによってお前の《融合》は無効化され、このデュエル中、同名カードを使用することはできない」
セックスデーモン豚島の対策に入れていたカードが上手く刺さった。
いや、おそらく豚島相手以上に効果的だ。
シンクロやエクシーズを使用する豚島と異なり、サイバー流は融合のみを使用する流派だと聞く。
ヘルカイザー亮のエクストラデッキは封じたと言っても過言ではない。
「ならばバトル! サイバー・ドラゴンの攻撃! エヴォリューション・バースト!」
《サイバー・ドラゴン》によって前田の裏守備モンスターが攻撃を受ける。
《魂を削る死霊》
星3 闇属性 アンデット族
攻撃力300 守備力200
「残念だが、魂を削る死霊は戦闘では破壊されない」
ステータスの低いモンスターだが、戦闘破壊されないという強力な効果を備えている。
「カードを一枚セットして、ターンエンド」
サイバー流デュエリストの《融合》を封じて、攻撃を止めた。
これでデュエルの流れはこちらに来ると前田は確信する。
「それでは僕のターンだ。ドローカード」
引いたカードを見て、前田の口元がつりあがった。
このカードこそ戦略の要となる切り札。
「ライフを2000ポイント払って、最強のネグレクトカード《終焉のカウントダウン》を発動」
ネグレクト前田 LP2000
「発動ターンより20ターン後、僕はデュエルに勝利する。さあ、じっくりとデュエルを楽しもう」
過去20回以上、自分の子供を病院送りにしてきた前田だったが、その内数回は子供の命が危ぶまれることもあった。
このデュエルを長引かせることによって、いよいよ自分の子供の命を終焉させられるかもしれないと内心ウキウキだ。
前田はネグレクトによって自分の子供を死なせることで、真のデュエリストになることができると考えていた。
「更に《悪夢の鉄檻》を発動。お前のターンで数えて二ターン後のエンドフェイズまでお互いに攻撃できない」
使用者本人も攻撃制限を受けるが、前田のデッキであればそのデメリットは皆無に等しい。
「ターン終了だ」
無論、子供がいなくなれば、また新しいのを作ってネグレクトする。
妊娠、出産まで時間がかかるようなら、デュエル孤児でも引き取ってネグレクトすればいい。
とはいえ、それはあくまで繋ぎである。
やはり自分と血の繋がった子供をネグレクトしてこそ一流のデュエリストだ。
「俺のターン。ドロー」
ヘルカイザー亮が引いたカードを手札に加える。
「速攻魔法《サイクロン》! 悪夢の鉄檻を破壊」
「だが魂を削る死霊がいる限り攻撃は無意味。しかもお前は《融合》を使うことができない」
保身のために複数の対策を用意しておくことが重要なのだ。
自分の子供の命をネグレクトで終焉させるのが前田の夢であるが、そのためにセキュリティに逮捕されてデュエル刑務所に送られるのは御免である。
だからこの大会中に子供が死んでも、不慮の事故だったという扱いになるよう対策をしてあった。
仮に戻った際に子供が生きていれば、119番通報してデュエル病院に搬送するつもりだ。
何故なら自分はデュエル殺人鬼ではなく、良識のある父親なのだから。
「手札から魔法カードを見せることで、サイバー・ドラゴン・ツヴァイの効果発動」
《融合》が使えない限り、カード名を《サイバー・ドラゴン》に変えても仕方ないのに無意味なことをする。
ヘルカイザー亮が手札にある《パワー・ボンド》という魔法カードを公開した。
前田は効果を把握していなかったが、見たところモンスターを除去するカードではなさそうだし問題ないと判断する。
「俺の信じる究極の融合カード。魔法カード!《パワー・ボンド》を発動! 手札のサイバー・ドラゴンとフィールドのサイバー・ドラゴン二体を融合させる」
「《融合》を使わずに融合召喚だと!?」
《パワー・ボンド》によって、三体の《サイバー・ドラゴン》が融合する。
「ククク……出でよ! サイバー・エンド・ドラゴン!!」
《サイバー・エンド・ドラゴン》
星10 光属性 機械族
攻撃力4000 守備力2800
「《パワー・ボンド》で融合召喚したモンスターの攻撃力はその元々の攻撃力分アップする」
《サイバー・エンド・ドラゴン》
攻撃力4000→8000
二回戦第二試合でドラゴンプリンセス麗華が融合召喚した《真青眼の究極竜》の攻撃力を上回る超級モンスター。
あちらは三回攻撃ができたので単純な比較はできないが、凄まじいプレッシャーである。
《サイバー・エンド・ドラゴン》の迫力は観客席にも伝わっているようで、ヘルカイザー亮への罵倒は止まり、観客たちは試合に見入っていた。
「だが、どれだけ攻撃力が高くても、魂を削る死霊がいる限り僕に攻撃は届かない」
「バトル! サイバー・エンド・ドラゴンの攻撃! エターナル・エヴォリューション・バースト!!」
《魂を削る死霊》を対象とした、ヘルカイザー亮の攻撃宣言。
「サイバー・エンド・ドラゴンが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えた分だけ戦闘ダメージを与える!」
「何だと!?」
《魂を削る死霊》の守備力は200であり、現在の《サイバー・エンド・ドラゴン》の攻撃力との差は7800。
通常、リアルソリッドビジョンの衝撃はモンスター越しに受ければ軽減されるが、これでは直接攻撃と変わらない。
いや並の最上級モンスターのダイレクトアタックより、余程重度の衝撃を受けることになる。
「っ! サレ」
デッキに手を乗せてサレンダーする前に、《サイバー・エンド・ドラゴン》の攻撃が成立した。
ネグレクト前田 LP0
超級のリアルソリッドビジョンの衝撃によって前田の体が吹っ飛んだ。
『勝者! ヘルカイザー亮! これがサイバー流デュエリストの底力だぁ!』
前田が潰れた蛙のように地面に転がる中、観客たちの歓声が会場に響き渡った。
◇
観客席
二回戦第四試合を観戦しながら遊羽はヘルカイザー亮の脅威を再認識した。
相も変わらず、あの男は勝利だけを求めており、一切の不純物がないデュエルを行っている。
そして《サイバー・エンド・ドラゴン》。
確かに凄まじいモンスターだ。
だが、あれはあくまでサイバー流のエースモンスターである。
ヘルカイザー亮は裏サイバー流の使い手であると聞く。
彼はこれまでの試合で一度も、その裏サイバー流のモンスターを使用していない。
手を抜いているわけではないのだろう。
ネグレクト前田レベルのデュエリストでは、裏サイバー流のカードを使う機会すらなく勝ってしまうのだ。
このヘルカイザー亮という男、全く底が見えない。
『これにて二回戦の全試合が終了しました。休憩を挟んで始まる準決勝の組み合わせをご覧ください』
アナウンスが流れて巨大モニターに準決勝のトーナメント表が公開される。
インセクト遊羽 -
|
ドラゴンプリンセス麗華 -
ファックプラント植木 -
|
ヘルカイザー亮 -
一枚300億円の《青眼の白龍》を三枚揃え、その融合体である《真青眼の究極竜》を新たなエースモンスターとして従える少女。
ブラックドミノシティ四大企業、龍堂院カンパニーの令嬢。
トップス二大流派、セレブ流の使い手であり、龍姫の異名を持つデュエリスト。
龍堂院麗華。
それが準決勝における遊羽の対戦相手だった。