切り札はゴキボール   作:白銀蟷螂

35 / 100
裏サイバー流

 インセクト遊羽 LP3600

 

    VS

 

 ヘルカイザー亮 LP3800

 

 禍々しい炎が周囲を包み込んで燃え盛る。

 現在、ヘルカイザー亮の場にあるのは、フィールド魔法《サイバーダーク・インフェルノ》と永続魔法《サイバーダーク・ワールド》。

 それらが裏サイバー流のカードであることを遊羽は理解していた。

 

「サイバー・ダーク・カノンを手札から捨てることで、サイバー・ダーク・ホーンを手札に加える」

 

 次々と繰り出される『サイバーダーク』のカード。

 

「《サイバーダーク・ワールド》の効果発動。手札からサイバーダークモンスターを1体召喚する。来い! サイバー・ダーク・ホーン」

 

 《サイバー・ダーク・ホーン》

 星4 闇属性 機械族

 攻撃力800 守備力800

 

 一見すれば、それは攻撃力の低いモンスター。

 

「サイバー・ダーク・ホーンの効果。墓地からレベル3以下のドラゴン族モンスターを一体装備する。対象はサイバー・ダーク・クロー」

 

 装備したモンスターの攻撃力分《サイバー・ダーク・ホーン》の攻撃力はアップする。

 今回の場合だと《サイバー・ダーク・クロー》の攻撃力1600が《サイバー・ダーク・ホーン》の攻撃力に加算された。

 

 《サイバー・ダーク・ホーン》

 攻撃力800→2400

 

 加えてフィールド魔法《サイバーダーク・インフェルノ》が存在する限り、装備カードを装備した『サイバーダーク』モンスターは相手の効果の対象にならず、相手の効果では破壊されない。

 

「クク、更にボマー・ドラゴンを召喚!」

 

 《サイバーダーク・ワールド》の効果で《サイバー・ダーク・ホーン》が召喚されているので、ヘルカイザー亮には召喚権が残っている。

 

 《ボマー・ドラゴン》

 星3 地属性 ドラゴン族

 攻撃力1000 守備力0

 

 現れたのは攻撃力が低いドラゴン族モンスター。

 だがあのドラゴンには厄介な特殊能力がある。

 

「バトルだ! ボマー・ドラゴンで地獄大百足(ヘル・センチピード)を攻撃! ダイナマイト・クラッシュ!!」

 

 一見、無謀に見える行為であるが、相手より攻撃力が劣るモンスターでの攻撃には何かしらの意図があるものだ。

 

「ボマー・ドラゴンの効果発動。このカードの攻撃で発生するお互いへのダメージは0になる。そしてボマー・ドラゴンを戦闘破壊したモンスターは破壊される」

 

 《ボマー・ドラゴン》の爆弾攻撃によって《地獄大百足(ヘル・センチピード)》が木端微塵に砕け散った。

 

「《大樹海》の効果発動。レベル7昆虫族モンスター、ブレイン・クラッシャーを手札に加える」

 

 だが《大樹海》がある限り、昆虫族モンスターの犠牲は決して無駄にはならない。

 

「クク、サイバー・ダーク・ホーンでダイレクトアタック! ダーク・スピア!!」

 

 攻撃力の増強された裏サイバー流のモンスターによる直接攻撃。

 リアルソリッドビジョンの衝撃によって遊羽の体が仰け反り大きく後退した。

 

「この瞬間、装備したサイバー・ダーク・クローの効果発動。エクストラデッキからF・G・Dを墓地に送る」

 

 インセクト遊羽 LP1200

 

「《闇の増産工場》の効果発動。ブレイン・クラッシャーを墓地に送って一枚ドロー」

「俺はカードを一枚伏せてターン終了」

「なら今度はこっちが反撃する番。ドロー」

 

 引いたカードを見て遊羽の口元が僅かに緩んだ。

 そして、それをそのまま召喚する。

 

「私はジャイアント・メサイアを召喚!」

 

 《ジャイアント・メサイア》

 星3 地属性 昆虫族

 攻撃力1200 守備力1500

 

 それはライバルから託されたカードであり、奇しくも《サイバー・ダーク・ホーン》と似た能力を持っている。

 

「ジャイアント・メサイアの効果発動。墓地から髑髏顔 天道虫(ドクロがん レディバグ)を攻撃力と守備力を500アップする装備カードとして装備する」

 

 《ジャイアント・メサイア》

 攻撃力1200→1700 守備力1500→2000

 

 《サイバー・ダーク・ホーン》のように装備したモンスターの攻撃力を丸ごと得る能力は《ジャイアント・メサイア》にはない。

 だがそれで十分だった。

 場に守備力2000の装備カードを装備した昆虫族モンスターが存在することに意味がある。

 

「融合のカードを使わずに融合モンスターを出すのは、あんたの専売特許じゃない」

「ならば見せてみろ。お前の融合モンスターを」

「言われなくても! 私は装備カードを装備した守備力2000の昆虫族モンスターをリリースすることによって、エクストラデッキから完全態・グレート・インセクトを特殊召喚!」

 

 《完全態・グレート・インセクト》

 星9 地属性 昆虫族

 攻撃力3000 守備力2600

 

 色鮮やかな羽をした巨大な蛾が、周囲の禍々しい炎を物ともせずに空へと羽ばたく。

 獄城幸より託された最上級融合モンスター《完全態・グレート・インセクト》が飛翔した。

 

「更に髑髏顔 天道虫(ドクロがん レディバグ)の効果でライフを1000回復」

 

 インセクト遊羽 LP2200

 

「バトル! 完全態・グレート・インセクトでサイバー・ダーク・ホーンを攻撃! モス・ハリケーン!!」

「サイバー・ダーク・ホーンの効果、このカードが戦闘破壊される場合、代わりに効果で装備したカードを破壊する」

「だけどダメージは受けてもらう」

 

 ヘルカイザー亮 LP3200

 

「そうだ……この肌を肉を貫く衝撃が文字通り決闘なのだと教えてくれる! さあ、俺をもっと滾らせてみろ!」

 

 リアルソリッドビジョンの衝撃を物ともしないどころか、ヘルカイザー亮はそれに快感を覚えているようにすら見える。

 強姦に興味を示さないヘルカイザー亮が何故、この奴隷杯に出ているのか多少疑問だったが、リアルソリッドビジョンの衝撃で互いに痛みを伴う裏の大会は彼に合うようだ。

 

「装備されたサイバー・ダーク・クローが墓地に送られた時、サイバーダークモンスター1体を手札に加える。俺が選ぶのはサイバー・ダーク・カノン」

 

 しかもこの男、デュエルのプレイングにおいては全く冷静さを欠いていない。

 

「なら私は完全態・グレート・インセクトの効果発動! フィールド魔法が表側表示で存在する時、バトルフェイズに相手フィールド場全てのモンスターを破壊する」

 

 遊羽の場にフィールド魔法はないが、ヘルカイザー亮の場には《サイバーダーク・インフェルノ》が存在している。

 《サイバーダーク・インフェルノ》がある限り、装備カードを装備された『サイバーダーク』モンスターは相手の効果の対象にならず、効果では破壊されない。

 しかし今《サイバー・ダーク・ホーン》に装備されていた《サイバー・ダーク・カノン》はなくなった。

 この状態なら《完全態・グレート・インセクト》の破壊効果で処理することができる。

 

「モス・バーニング・デス・トルネード!」

 

 《完全態・グレート・インセクト》が空中から繰り出す竜巻によって、相手の場のモンスターは一掃される。

 

「永続トラップ発動!《ディメンション・ガーディアン》! このカードによってサイバー・ダーク・ホーンは効果では破壊されない」

 

 だが竜巻を受けてなお《サイバー・ダーク・ホーン》は健在だった。

 《ディメンション・ガーディアン》は自分の攻撃表示のモンスター1体を指定して発動する永続罠。

 そのモンスターを戦闘、効果による破壊から守ることができるカードだ。

 

「私は《闇の増産工場》で代打バッターを墓地に送り一枚ドロー。カードを一枚セットしてターンエンド」

 

 伏せたカードは《DNA改造手術》。

 場のモンスターの種族を変更できる永続罠。

 

「俺のターン。ドロー」

 

 ヘルカイザー亮が引いたカードを手札に加える。

 

「《マジック・プランター》を発動。《ディメンション・ガーディアン》を墓地に送って二枚ドロー」

 

 《マジック・プランター》は自分の場の永続罠を墓地に置くことで、カードを二枚引くことができる魔法カード。

 

「サイバー・ダーク・カノンを捨てることで、サイバー・ダーク・エッジを手札に加える。出でよ、サイバー・ダーク・エッジ」

 

 《サイバー・ダーク・エッジ》

 星4 闇属性 機械族

 攻撃力800 守備力800

 

「効果でサイバー・ダーク・カノンを装備する」

 

 《サイバー・ダーク・エッジ》

 攻撃力800→2400

 

 これで再びヘルカイザー亮の場には攻撃力2400のモンスターが1体。

 しかも《サイバー・ダーク・エッジ》には直接攻撃能力があるため《完全態・グレート・インセクト》を無視して攻撃できる。

 もっともその場合、ダメージ計算時に攻撃力が半分の1200になるため、何もせずとも遊羽のライフは残るが。

 

 ――この男がその程度で済ませるか?

 

 遊羽のデュエリストとしての直感が警鐘を鳴らす。

 

「《アイアンドロー》を発動。デッキからカードを二枚ドロー」

 

 《アイアンドロー》は自分の場に機械族の効果モンスターが二体のみ存在する場合、発動できる魔法カード。

 ヘルカイザー亮の場には《サイバー・ダーク・ホーン》と《サイバー・ダーク・エッジ》が二体だけなので条件は満たしている。

 

「更に《手札断殺》を発動。お互いに手札を二枚墓地に送り、二枚ドローする」

 

 《手札断殺》によって引き込んだカードを見て、ヘルカイザー亮の攻撃的な笑みが深くなった。

 

「魔法カード発動!《パワー・ボンド》!!」

 

 遊羽は僅かに唇を噛んだ。

 ヘルカイザー亮はこのターンで決めるつもりだ。

 

「俺は場のサイバー・ダーク・ホーンとサイバー・ダーク・エッジ、手札のサイバー・ダーク・キールを融合する」

 

 三体のサイバーダークモンスターによる融合召喚。

 

「出でよ! 鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン!!」

 

 《鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン》

 星8 闇属性 機械族

 攻撃力1000→2000 守備力1000

 

 災厄めいた炎が燃え盛る中で、漆黒の鎧を纏った竜が姿を現した。

 

「サイバー・ダーク・ドラゴンの効果発動! 墓地からドラゴン族モンスターをその攻撃力と共に装備」

 

 それだけであれば他の下級『サイバーダーク』モンスターも持っていた能力。

 

「このモンスターが装備カードにできるモンスターのレベルに制限はない。俺が装備するのは墓地にあるF・G・D」

 

 《サイバー・ダーク・クロー》の効果によって、ヘルカイザー亮がエクストラデッキから墓地に送っていたカード。

 《F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)》は攻撃力5000のドラゴン族融合モンスターだ。

 

 《鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン》

 攻撃力2000→7000

 

「サイバー・ダーク・ドラゴンの効果はまだある。俺の墓地にあるモンスター1枚につき100ポイント攻撃力がアップする」

 

 《鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン》

 攻撃力7000→7900

 

「これが裏サイバー流デッキの完成形」

 

 龍堂院麗華が究極と称した《真青眼の究極竜》を遥かに上回る攻撃力。

 その上《サイバーダーク・インフェルノ》が存在する限り《鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン》は相手の効果の対象にならず、相手の効果では破壊されない。

 まさに究極すらをも超越したモンスターであった。

 

「バトル!」

 

 ヘルカイザー亮がバトルフェイズに移行する。

 《サイバーダーク・インフェルノ》によって装備カードが装備された《鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン》は効果破壊に対する耐性を得ているため《完全態・グレート・インセクト》の効果では破壊できない。

 

「サイバー・ダーク・ドラゴンの攻撃! フル・ダークネス・バースト!!」

 

 よってここで発動するのは《完全態・グレート・インセクト》の破壊効果ではなく、伏せていた罠カードの方だ。

 

「トラップカード発動!《攻撃の無敵化》」

 

 龍堂院麗華とのデュエルでも用いた《攻撃の無敵化》。

 自分のモンスター1体を戦闘及びカードの効果による破壊から守るか、自分へのダメージを0にするか、どちらか一つを選んで効果を使う。

 この状況で選択するのは後者だ。

 

「私がバトルフェイズ中に受けるダメージは0になる」

 

 こうしなければライフポイントが2200の遊羽は敗北するのだから必然的判断。

 加えて《完全態・グレート・インセクト》に破壊耐性を与える必要などない。

 

 《鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン》の圧倒的な衝撃波攻撃を受けてなお《完全態・グレート・インセクト》は健在であった。

 

「グレート・インセクトの効果。このカードは戦闘では破壊されない!」

 

 どれだけ攻撃力が高くでも《完全態・グレート・インセクト》を戦闘破壊することは不可能だ。

 

「《闇の増産工場》の効果発動。手札の甲虫装甲騎士(インセクトナイト)を墓地に送って一枚ドロー」

 

 現在の手札では《鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン》を攻略することはできない。

 故に可能な限り手札交換を行ってキーカードを引きこむ確率を上げる。

 

「俺はカードを一枚伏せて、ターンを終了する」

 

 エンドフェイズ時、ヘルカイザー亮は《パワー・ボンド》で融合モンスターの攻撃力がアップした数値分のダメージを受ける。

 

ヘルカイザー亮 LP2200

 

 とはいえ攻撃力の上昇値は1000なので受けるダメージも少ない。

 

「私のターン。ドロー」

 

 引いたカード《超進化の繭》を見て遊羽は薄く笑った。

 これが《鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン》攻略のための切り札。

 当初より目を付けていた『サイバーダーク』モンスターの性質を利用して切り崩す。

 そのための布石は既に場に用意してある。

 

「伏せていた永続トラップ《DNA改造手術》を発動。このカードはフィールド場全てのモンスターを宣言した種族に変更する。私が宣言するのは昆虫族」

 

 これによって《鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン》は昆虫族モンスターへと変化した。

 

「速攻魔法《超進化の繭》発動! フィールド場の装備カードを装備した昆虫族モンスター1体をリリースして、デッキから召喚条件を無視して新たな昆虫族を特殊召喚する」

 

 一見、現在のフィールド場には装備カードを装備した昆虫族などいないようにも見える。

 遊羽の場にいる昆虫族モンスター《完全態・グレート・インセクト》に装備カードはない。

 そしてDNA改造手術で種族変更したとはいえ、ヘルカイザー亮のモンスターに遊羽は装備カードを装備していない。

 

 だがデュエルディスクはエラーのメッセージを出さず《超進化の繭》は正常に発動された。

 《鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン》への装備カードの装備はヘルカイザー亮自身が行っているからだ。

 『サイバーダーク』の墓地からモンスターを装備する特徴を遊羽は逆手に取った。

 

 最後の壁は《サイバーダーク・インフェルノ》だが《超進化の繭》は破壊ではなくリリースであり、対象を取らないタイプのカード。

 災厄じみた禍々しい炎でさえ、黄金の繭からのモンスター羽化を阻むことはできない。

 

 《超進化の繭》によって《鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン》が黄金の繭に包まれる。

 召喚口上を遊羽は高らかに言い放つ。

 

「地べた這いずる虫けらも

 ――羽虫となって(ソラ)を舞う」

 

 黄金の繭から巨大な蛾のモンスターが姿を現す。

 

「究極完全態・グレート・モスを特殊召喚!」

 

 《究極完全態・グレート・モス》

 星8 地属性 昆虫族

 攻撃力3500 守備力3000

 

 残りの懸念材料はヘルカイザー亮の場にある一枚の伏せカード。

 だがこのターンに限り、遊羽にはそれを封殺する手段があった。

 

「墓地の《超進化の繭》を除外して効果発動。ドラゴンフライをデッキに戻して一枚ドロー。更に《闇の増産工場》で手札からプリミティブ・バタフライを捨てて一枚ドロー」

 

 新たにカードを引き、手札交換も行うが、そのカードをこのデュエルで使用することはないだろう。

 

「バトルフェイズ! この瞬間、速攻魔法発動《封魔の矢》!」

 

 大量の矢によってヘルカイザー亮の伏せカードが串刺しにされる。

 《封魔の矢》はこのターンの終了時までお互いに魔法、罠の効果を発動できなくする速攻魔法だ。

 

 ヘルカイザー亮に手札はなく、場のモンスターもいなくなった。

 そして伏せカードは《封魔の矢》によってこのターン使用不能。

 彼の残りのライフポイントは2200であり、遊羽の場には攻撃力3000の《完全態・グレート・インセクト》と攻撃力3500の《究極完全態・グレート・モス》がいる。

 

「究極完全態・グレート・モスでプレイヤーに」

 

 ――勝った!

 

 あのヘルカイザー亮を倒して優勝することができた。

 しかも今回優勝者に贈呈されるのはA区出身の高級決闘奴隷だ。

 オークションの結果次第では、今回だけで目標金額に到達することもあり得た。

 いや、目標金額を大きく超える可能性さえあるだろう。

 賞金と奴隷売却金、それからセックスデーモン豚島とのアンティカードを売り払って得る金で、昆虫デッキを強化する。

 そうなればいよいよ、参加費五億円のデュエル大会に出場する準備が整う。

 その大会の優勝者には、決闘女王である『彼女』とデュエルをする権利が――。

 

「超電磁タートルの効果発動! 墓地のこのカードを除外してバトルフェイズを終了する」

「……超、電磁タートル?」

 

 一瞬で現実に引き戻される。

 思考を巡らせれば、すぐに目の前で起きた現象への回答は見つかった。

 ヘルカイザー亮は《手札断殺》を使った際に《超電磁タートル》を捨てていたのだ。

 《超電磁タートル》はデュエル中、一度のみ使用できるカードであり、墓地から除外することによって強制的にバトルフェイズを終了させることができる。

 

 ――私は何を考えていた。

 

 ヘルカイザー亮を通過点として『彼女』とデュエルすることを思い描いていたのか。

 目の前の対戦相手から視線を外して勝てるほど決闘は甘くはない。

 デュエルをしている相手を見ずに、別の相手とのデュエルに心を縛られるなど、サレンダーに次いでデュエリストとして恥ずべき行為だ。

 

「……グレート・インセクトを守備表示に変更。カードを一枚伏せる」

 

 現在の状況、攻撃こそ通らなかったとはいえ、遊羽が優位であるはずだった。

 ヘルカイザー亮の場にあるのは、フィールド魔法《サイバーダーク・インフェルノ》と永続魔法《サイバーダーク・ワールド》、そして伏せカードが一枚のみ。

 《サイバーダーク・インフェルノ》と《サイバーダーク・ワールド》は強力なカードだが、肝心の『サイバーダーク』モンスターがいなければ効果は発揮できない。

 ヘルカイザー亮の手札は一枚もなく、場には一体のモンスターもいない状況だ。

 

「私はこれでターンエンド」

 

 それなのに胸騒ぎが収まらない。

 

「お前の懐にある勝利を奪い取る! ドロー!」

 

 ヘルカイザー亮がドローしたカードを一目見てから発動する。

 

「魔法カード発動! サイバーダーク・インパクト! 墓地からサイバー・ダーク・ホーン、サイバー・ダーク・エッジ、サイバー・ダーク・キールをデッキに戻すことで、鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴンを融合召喚する!」

 

 《鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン》

 星8 闇属性 機械族

 攻撃力1000 守備力1000

 

 禍々しく燃え上がる災厄じみた炎は、まるで漆黒の鎧を纏った竜の再来を祝しているかのようだった。

 

「サイバー・ダーク・ドラゴンの効果発動!」

 

 《鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン》の効果によって、墓地にある《F・G・D》が装備されて攻撃力が5000上昇。

 更にヘルカイザー亮の墓地のモンスターの数だけ攻撃力がアップする。

 

 《鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン》

 攻撃力1000→6600

 

「バトルだ!」

 

 遊羽の現在のライフポイントは2200。

 《究極完全態・グレート・モス》が戦闘破壊されれば発生するダメージは3100。

 

「完全態・グレート・インセクトの効果発動! 相手フィールド場のモンスターを全て破壊する」

 

 デュエルアカデミア在学中、空いている時間があればライブラリに通って一万種類以上のカードテキストを記憶してきた。

 筆記試験は常に満点であり、実技と合わせて成績上位三名を維持することができた。

 

 それでも、もしかしたらと思ったのだ。

 もしかしたら自分の記憶が間違っており《サイバーダーク・インフェルノ》の発動中でも装備カードが装備された『サイバーダーク』モンスターを効果破壊できるかもしれないと。

 

「モス・バーニング・デス・トルネード!」

 

 繰り出される相手の場のモンスターを一層する《完全態・グレート・インセクト》の竜巻。

 

 《鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン》

 星8 闇属性 機械族

 攻撃力6600 守備力1000

 

 その竜巻を受けてなお漆黒の鎧を纏った竜は傷一つ付いていない。

 残念ながら遊羽の知識はこの上なく正しかった。

 

「サイバー・ダーク・ドラゴンの攻撃! フル・ダークネス・バースト!!」

「トラップカード発動!」

 

 装備カードが装備された《鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン》は《サイバーダーク・インフェルノ》の効果によって、相手の効果で破壊されず、相手のカードの対象にならない。

 

 《鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン》の衝撃波攻撃によって《究極完全態・グレート・モス》が木端微塵に砕け散る。

 そしてリアルソリッドビジョンの衝撃によって、遊羽の体は後方に吹っ飛ばされた。

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