切り札はゴキボール   作:白銀蟷螂

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三対一

 ブルジョア流のデュエリスト三人を相手にした多人数デュエル。

 先攻をとったのは遊羽だった。

 

「私のターン。モンスターをセット」

 

 まずは裏側守備表示でモンスターを場に出す。

 

「これでターンエンド」

「相変わらず臆病者の表示形式である守備表示かよ、下層区のゴミ女!」

 

 金盛がヤジを飛ばすがこれでいい。

 多人数デュエルでは各自1ターン目はバトルフェイズを行えないので、壁モンスターが破壊されても攻撃を受けることはない。

 

「俺のターン。ドロー」

 

 二番目にターンが回ったのは富岡。

 

「《サンダー・ボルト》を発動!」

 

 ブルジョア流の十八番《サンダー・ボルト》によって遊羽の場のモンスターが破壊される。

 

「ゴキポールの効果発動、デッキからレベル4の昆虫族モンスター1体を手札に加える。私が選ぶのは《ジャイアントワーム》」

「姑息な真似しやがって。なら魔法カード《古のルール》。手札からトライホーン・ドラゴンを特殊召喚」

 

 《トライホーン・ドラゴン》

 星8 闇属性 ドラゴン族

 攻撃力2850 守備力2350

 

 富岡のエースモンスターであり、五億円のウルトラレアカード《トライホーン・ドラゴン》が攻撃表示で特殊召喚された。

 

「更に二枚目の《古のルール》発動。三億円のウルトラレアカード、サイバティック・ワイバーンを特殊召喚!」

 

 《サイバティック・ワイバーン》

 星5 風属性 機械族

 攻撃力2500 守備力1600

 

「俺はターンエンド。高額ウルトラレアカードが二体。これがブルジョア流の完璧な盤面だぜ」

 

 攻撃力だけなくカードの値段を重視するブルジョア流のデュエルタクティクスか。

 

「俺のターン! ドロー」

 

 三番目にターンが回ったのは金盛。

 

「来たぜ、パパにおねだりして買ってもらった新しい切り札が!《古のルール》発動! ホーリー・ナイト・ドラゴンを特殊召喚!」

 

 《ホーリー・ナイト・ドラゴン》

 星7 光属性 ドラゴン族

 攻撃力2500 守備力2300

 

「見たか! エビルナイト・ドラゴンより攻撃力が高い、四億円のウルトラレアカードだ! ブルジョア流の俺に相応しい新たなエースモンスターだぜ!」

 

 前回のデュエルでエビルナイト・ドラゴンをディスってたこともあり、それよりもステータスと値段が上のモンスターを用意したようだ。

 

「そして二枚目の《古のルール》だ。今度は足を引っ張るんじゃねえぞ、エビルナイト・ドラゴン!」

 

 《エビルナイト・ドラゴン》

 星7 闇属性 ドラゴン族

 攻撃力2350 守備力2400

 

 富岡と同様に金盛も《古のルール》を二連発する。

 おそらくブルジョア流のデッキには《古のルール》が三積みされているのだろう。

 

「四億円と三億円のモンスターが並んだぜ! これで俺の勝ちは決まったな! ターンエンド」

 

 最後に銭山にターンが回る。

 

「へへっ! 俺のターン、ドローカード」

 

 銭山が引いたカードをそのまま使用する。

 

「魔法カード《古のルール》を発動。《暗黒騎士ガイア》を特殊召喚!」

 

 《暗黒騎士ガイア》

 星7 地属性 戦士族

 攻撃力2300 守備力2100

 

「富岡さんのウルトラレアカードには及ばねえが、こいつは二億円する俺のエースモンスターだ。更にブラッド・ヴォルスを攻撃表示」

 

 《ブラッド・ヴォルス》

 星4 闇属性 獣戦士族

 攻撃力1900 守備力1200

 

「《二重召喚》発動。これで俺はこのターンもう一度、通常召喚できる。ブラッド・ヴォルスをリリースして一億円のウルトラレアカード、ファイヤー・ウイング・ペガサスをアドバンス召喚」

 

 《ファイヤー・ウイング・ペガサス》

 星6 炎属性 獣族

 攻撃力2250 守備力1800

 

「これがブルジョアナイトのデュエルだ。ターンエンド」

 

 銭山も他の二名と同じブルジョア流のプレイング。

 言動で予想できていたとはいえ、これで不確定要素は完全に消えた。

 

「終わりだ! 下層区のゴミ女ァ! 俺たちの場には高額ウルトラレアカードが合計で六体! もうお前に勝ち目はねえ!」

 

 中指を立てながら吠える金盛。

 多人数デュエルのルール上、各デュエリストのフィールドは独立しているので、三対一の場合、こうして五体を超えてメインモンスターゾーンに敵モンスターが並ぶこともある。

 

「私のターン、ドロー」

 

 引いたカードを遊羽は手札に加えた。

 

「まずは墓地のゴキポールを除外して、ジャイアントワームを特殊召喚」

 

 《ジャイアントワーム》

 星4 地属性 昆虫族

 攻撃力1900 守備力400

 

「更に魔法カード《孵化》。ジャイアントワームをリリースしてヴァリュアブル・アーマーを攻撃表示で特殊召喚」

 

 《ヴァリュアブル・アーマー》

 星5 地属性 昆虫族

 攻撃力2350 守備力1000

 

「《おろかな埋葬》を発動。デッキからゴキポールを墓地へ送る」

 

 《ゴキポール》はデッキから墓地に送られた場合でも効果を発動できる。

 富岡のターンにフィールドから破壊された時の同じように、レベル4の昆虫族モンスター1体を手札に加える。

 

「私が手札に加えるのはゴキボール。加えたカードが通常モンスターだった場合、フィールドに特殊召喚できる」

 

 《ゴキボール》

 星4 地属性 昆虫族

 攻撃力1200 守備力1400

 

 この際、ゴキボールの攻撃力以上のモンスター1体を破壊することができるが、今回はあえてその効果を使わない。

 

「魔法カード《アリの増殖》。ゴキボールをリリースすることで《兵隊アリトークン》二体を特殊召喚」

 

 《兵隊アリトークン》

 星4 地属性 昆虫族

 攻撃力500 守備力1200

 

 《兵隊アリトークン》

 星4 地属性 昆虫族

 攻撃力500 守備力1200

 

「《火器付機甲鎧》をヴァリュアブル・アーマーに装備」

 

 《ヴァリュアブル・アーマー》

 攻撃力2350→3050

 

「攻撃力3050だと」

 

 《ヴァリュアブル・アーマー》の攻撃力が《トライホーン・ドラゴン》を上回ったことによって富岡の表情が僅かに曇る。

 

「おい、てめえら《サンダー・ボルト》は持ってるか!」

「ありますよ、富岡さん」

 

 銭山が最後の手札を表向きにする。

 それは《サンダー・ボルト》だった。

 

「俺も持ってるぜ。それから《ハーピィの羽箒》もある」

 

 金盛が持っている手札を二枚とも表向きにした。

 言葉通り《サンダー・ボルト》と《ハーピィの羽箒》の二枚だ。

 

「そういう事だ、下層区の劣等生。装備魔法でモンスターを強化しようが、次の俺たちのターンになれば一発で破壊できる」

「だから何? 私はヴァリュアブル・アーマーを再度召喚」

 

 残りの手札は一枚。

 先ほど開封したパックで入手した装備魔法であり、このカードによって必殺のコンボが完成する。

 

「《災いの装備品》をトライホーン・ドラゴンに装備」

 

 《火器付機甲鎧》に次ぐ二枚目の装備魔法だが、装備対象は《ヴァリュアブル・アーマー》ではなく《トライホーン・ドラゴン》。

 

「このカードを装備されたモンスターは私のフィールド場のモンスター1体につき攻撃力が600ポイントダウンする」

 

 現在の遊羽の場にいるモンスターは《ヴァリュアブル・アーマー》と二体の《兵隊アリトークン》。

 合計三体なので《トライホーン・ドラゴン》の攻撃力が1800ポイント低下する。

 

 《トライホーン・ドラゴン》

 攻撃力2850→1050

 

「くく、ははは、下らねえな」

 

 自分のモンスターの攻撃力を下げられたにもかかわらず富岡は失笑する。

 

「条件付きで攻撃力を下げるなんてショボいカードを使うなら《サンダー・ボルト》で全部破壊しちまえばいい。《サンダー・ボルト》すら持ってねえから、てめえらはオシリスレッドなんだよ」

 

 確かに遊羽のデッキに《サンダー・ボルト》は入っていないが、この状況で必要なカードは《サンダー・ボルト》ではなく《災いの装備品》だ。

 

「トライホーン・ドラゴンを破壊されたところで俺にはこれがある」

 

 富岡が最後の手札を表向きにする。

 そのカードは《死者蘇生》だった。

 

「色々とやってたが無駄な努力だったな。モンスター効果だのコンボだの、ごちゃごちゃした戦略をやっているデュエリストは三流。ブルジョア流は高額で強力なカードで王道を行けばいい」

 

 それは最初にデュエルしたブルジョア流デュエリストとほぼ同じ言葉。

 あの時は無力故に、何もすることができなかった。

 

「バトル! ヴァリュアブル・アーマーでトライホーン・ドラゴンを攻撃!」

 

 《ヴァリュアブル・アーマー》の鎌が振るわれ《トライホーン・ドラゴン》の首が刎ね飛ばされる。

 リアルソリッドビジョンの衝撃によって、富岡が大きく後退した。

 

 富岡善一郎 LP2000

 

「痛てえな、おい。一発くらわせて満足かもしれねえが高くつくぜ。俺のターンになったら《死者蘇生》でトライホーン・ドラゴンを復活させる。それから金盛の《サンダー・ボルト》で場を一掃させるが、安心しな。そのままターンエンドさせてやるよ」

「あ? どういうことだよ、富岡!」

「金盛、てめえは先輩に対する口の利き方を学べ。どうせ、この女にはもう手札がねえ。なら俺のトライホーン・ドラゴンで痛めつけて倒す」

 

 事実として、ターンを返せばブルジョア流のレアカード連発戦術で遊羽の場のモンスターは全滅するだろう。

 

「《災いの装備品》の効果発動。このカードがフィールドから墓地に送られた時、相手フィールド場のモンスター1体にこのカードを装備する。対象はサイバティック・ワイバーン」

 

 《サイバティック・ワイバーン》

 星5 風属性 機械族

 攻撃力2500→700

 

「ちっ、また俺のモンスターの攻撃力を下げたのか。セコイカードだな。どの道《死者蘇生》でトライホーン・ドラゴンを復活させれば」

「再度召喚したヴァリュアブル・アーマーは相手フィールド場全てのモンスターに1回ずつ攻撃できる」

「……は?」

 

 呆然とする富岡。

 

「何か勘違いしてるみたいだけど、私のバトルフェイズはまだ終わってない」

 

 《ヴァリュアブル・アーマー》が新たな獲物に狙いを定める。

 

「ヴァリュアブル・アーマーでサイバティック・ワイバーンを攻撃!」

 

 《ヴァリュアブル・アーマー》が《サイバティック・ワイバーン》の首を刎ねる。

 リアルソリッドビジョンの衝撃によって、富岡の体が宙を舞った。

 

 富岡善一郎 LP0

 

「と、富岡さん!?」

「《災いの装備品》を効果でファイヤー・ウイング・ペガサスに装備」

 

 《ファイヤー・ウイング・ペガサス》

 攻撃力2250→450

 

「俺のモンスターまで! 何だよ、そのカード! 訳が分からねえよ。何で富岡さんがやられてる!? 一体、何が起こってんだよ」

 

 どうやら銭山は状況の把握ができていないらしい。

 

「ヴァリュアブル・アーマーでファイヤー・ウイング・ペガサスを攻撃!」

 

 《ヴァリュアブル・アーマー》の鎌が振るわれ《ファイヤー・ウイング・ペガサス》の首が胴体から離れた。

 リアルソリッドビジョンの衝撃によって、銭山が吹っ飛ばされて転倒する。

 

 銭山優介 LP1400

 

「何だよ、何でこんなことになってるんだよ!」

「《災いの装備品》を暗黒騎士ガイアに装備」

 

 《暗黒騎士ガイア》

 攻撃力2300→500

 

「ヴァリュアブル・アーマーで暗黒騎士ガイアを攻撃!」

「や、やめ」

 

 《ヴァリュアブル・アーマー》が両手の鎌によって、馬と騎士両方の首を刎ねた。

 倒れたままの銭山が再度リアルソリッドビジョンの衝撃を受け地面を転がる。

 

 銭山優介 LP0

 

「認めねえぞ! トップスの市民である俺が二度も下層区のゴミ女に負けるわけがねえんだ」

「《災いの装備品》効果発動。装備対象はホーリー・ナイト・ドラゴン」

 

 《ホーリー・ナイト・ドラゴン》

 攻撃力2500→700

 

「ふざけんな! こいつも役立たずモンスターかよ!」

 

 どんなモンスターも使うデュエリスト次第で名刀にも鈍にもなる。

 

「ヴァリュアブル・アーマーでホーリー・ナイト・ドラゴンを攻撃!」

 

 《ヴァリュアブル・アーマー》が《ホーリー・ナイト・ドラゴン》の首を刎ねる。

 リアルソリッドビジョンの衝撃によって、金盛が吹っ飛んで地面を転がった。

 

 金盛良平 LP1650

 

「い、痛てええ! 痛てえよ!! パパ! 助けて、パパ! 痛てえよ!」

 

 先ほどまでの強気が嘘のように金盛が泣き始めた。

 そう言えば前回は試験だったので、リアルソリッドビジョンのセイフティモードが機能していたのだったか。

 まあ遊羽は常にセイフティモードをオンにしているわけだが、多人数デュエルの場合は誰か一人でもオフにすると、セイフティモードはデュエルに適応されない。

 

「痛てえよ! パパ! 助けて、パパ!」

 

 金盛は箱入り息子として親に甘やかされていたようなので、デュエルアカデミアに通っていた他のトップス市民の子供以上に痛みに耐性がないのかもしれない。

 

「墓地に送られた《災いの装備品》をエビルナイト・ドラゴンに装備」

 

 《エビルナイト・ドラゴン》

 攻撃力2350→550

 

「ヴァリュアブル・アーマーでエビルナイト・ドラゴンを攻撃!」

 

 《ヴァリュアブル・アーマー》が《エビルナイト・ドラゴン》の首を刎ねた後、胴体を八つ裂きにする。

 強烈なリアルソリッドビジョンの衝撃が金盛を襲った。

 

「がっ! がああああああ!!」

 

 金盛良平 LP0

 

 吹っ飛ばされた金盛が勢いよく地面を転がる。

 

「ワンターンスリーキルゥ……」

 

 デュエルを見ていたオベリスクブルー生の一人がそう呟いた。

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