デュエルアカデミア入学から一年後。
二度目となる定期試験を遊羽は受けていた。
試験内容は筆記試験と実技試験に分かれており、それらの総合成績で学年内の順位を決める。
現在は筆記試験が終わり、実技試験が行われている最中だ。
「私はゴキポールをリリースして、ミレニアム・スコーピオンをアドバンス召喚」
《ミレニアム・スコーピオン》
星5 地属性 昆虫族
攻撃力2000 守備力1800
実技試験では順位が近い生徒同士が異なる相手と複数回デュエルを行う。
「ゴキポールの効果発動。デッキからゴキボールを手札に加えて、そのまま特殊召喚」
《ゴキボール》
星4 地属性 昆虫族
攻撃力1200 守備力1400
「そしてゴキボールの攻撃力以上のモンスターを破壊する。対象はクレセント・ドラゴン」
オベリスクブルーの女学生、松金の場にいる最上級モンスター《クレセント・ドラゴン》が木端微塵に砕け散った。
「私の二億円するウルトラレアカードがそんな醜いゴキブリに! オベリスクブルーの私がラーイエロー相手にどうして追い詰めれらるの!」
今、身に着けているのは黄色い制服。
半年前の試験で成績上位に入ることで遊羽は『ラーイエロー』に昇級していた。
「そもそもあんたは下層区の市民なんでしょ! そんな貧乏人にトップス市民でセレブ流のデュエリストである私が負けるわけない!」
この一年で遊羽がF区の出身だということはかなり有名になった。
実際、この学年だけでなく現在アカデミアに在学している生徒の中で下層区の出身者は二人だけだ。
「バトルフェイズ。この瞬間、速攻魔法《封魔の矢》を発動」
大量の矢によって松金の伏せカードが串刺しにされる。
「わ、私の《聖なるバリア -ミラーフォース-》が」
セットされていたのは《聖なるバリア -ミラーフォース-》のようだ。
《封魔の矢》はこのターン中、魔法、罠を発動できなくするカード。
「ゴキボールでプレイヤーにダイレクトアタック!」
《ゴキボール》がゴロゴロ転がって体当たりする。
それによって松金のライフポイントは0になった。
「勝者、癲狂院遊羽。松金はC-4号室に移動。癲狂院はA-2号室に移動しなさい」
一度デュエルが終わるたびに生徒は試験官が指定するデュエルルームに移動する仕組みだ。
負けたのは偶然だのと泣き言を言っている松金を無視して部屋を出る。
廊下を歩きながら呼吸を整えた。
今回の定期試験で成績上位50名以内に入れば、いよいよオベリスクブルーに昇級できる。
A-2号室に到着したのでノックしてから引き戸を開ける。
中には試験官とラーイエローの生徒がいた。
アカデミアに在学しているもう一人の下層区出身の生徒。
「癲狂院、立ち位置につきなさい」
試験官に促されてデュエルリングの右側へ移動する。
互いに無言で向かい合った。
この状況は別に悲観することではない。
オベリスクブルーに昇級する条件は成績上位50名に入ること。
ラーイエローの時点で遊羽も色音も上位30名以内にはなっている。
だが規則によってオシリスレッドからオベリスクブルーへの昇級ができないので、進級が保留扱いとなっていた状況。
筆記試験とこれまでの実技試験の戦績を鑑みれば、現時点でも遊羽の総合成績は10位以内であり、オベリスクブルー昇級は確定している。
それは色音も同様だった。
故にこのデュエルはどちらが上の順位でオベリスクブルーに昇級するか、両者のプライドを賭けた勝負だ。
「それでは両名、デュエルを開始しなさい」
ブラックドミノシティのデュエルアカデミアでは、試験や大会等の公式戦の場において、デュエルの前に決闘者同士がアカデミアによって決められた口上を述べる。
「勝敗はカードの強さのみで決まらず」
デュエルリングの右側にいる遊羽が先に口上を述べた。
「デュエリストの技量のみで決まらず」
後半部分を色音が続ける。
「「ただ、結果のみが真実」」
最後は二人の声が重なり合った。
癲狂院遊羽 / LP4000
VS
杠葉色音 / LP4000
「「決闘!!」」
先攻をとったのは色音だった。
「私のターン。
《
星1 地属性 植物族
攻撃力800 守備力800
召喚されたのは美しい女性型モンスター。
使用するカードとプレイング、本人の美貌も相まって、色音の男子からの人気は高い。
オシリスレッドやラーイエローだけでなく、オベリスクブルーにもファンがいると聞く。
「永続魔法《超栄養太陽》を発動。リリースしたモンスターのレベルに3を足したレベルを持つ植物族モンスター1体をデッキから場に出すわ」
現在、色音の場にいるのはレベル1の薔薇恋人のみ。
よって《超栄養太陽》で特殊召喚されるのは、レベル4の植物族モンスター。
「薔薇恋人をリリースして、カズーラの蟲惑魔を守備表示で特殊召喚」
《カズーラの蟲惑魔》
星4 地属性 植物族
攻撃力800 守備力2000
『蟲惑魔』といえば種族や属性ではなく、所謂カテゴリで統一するデッキのカードである。
これらカテゴリのカードは通常のレアカードよりも高額であり、デッキ構築の金銭的な難易度は高い。
以前から色音がこのカテゴリのカードを集めているのは知っている。
「更に《天啓の薔薇の鐘》を発動。デッキから攻撃力2400以上の植物族モンスター1体を手札に加えるわ。椿姫ティタニアルを手札へ」
サーチされたのは現在の色音の切り札である四枚の植物姫の内の一枚。
「墓地の
《
星8 地属性 植物族
攻撃力1800 守備力2800
「カードを一枚伏せて、ターンエンドよ」
「私のターン。ドロー」
引いたカードを遊羽は手札に加える。
「プレイング・マンティスを攻撃表示」
《プレイング・マンティス》
星4 風属性 昆虫族
攻撃力1500 守備力1200
「トラップカード発動。《奈落の落とし穴》。相手が召喚した攻撃力1500以上のモンスターを破壊して除外するわ」
召喚した《プレイング・マンティス》が青緑色のモンスターによって落とし穴に引きずり込まれた。
「更にカズーラの蟲惑魔の効果発動。『落とし穴』の通常トラップカードが発動した時、デッキから蟲惑魔を特殊召喚する。リセの蟲惑魔を守備表示」
《リセの蟲惑魔》
星4 地属性 植物族
攻撃力1200 守備力1600
「だったら私は《おろかな埋葬》を発動。デッキからゴキポールを墓地へ送る」
《ゴキポール》が墓地に送られた時、レベル4の昆虫族モンスター1体を手札に加えることができ、通常モンスターなら場に出すことができる。
「ゴキポールの効果でゴキボールを手札に加えて、そのまま特殊召喚」
《ゴキボール》
星4 地属性 昆虫族
攻撃力1200 守備力1400
「そしてゴキボールの攻撃力以上のモンスター1体を破壊する。紅姫チルビメを破壊」
《ゴキポール》の特殊能力によって《紅姫チルビメ》が木端微塵に砕け散る。
「紅姫チルビメが相手によって墓地に送られた時、私はデッキから植物族モンスター1体を場に出せるわ。桜姫タレイアを特殊召喚」
《
星8 水属性 植物族
攻撃力2800 守備力1200
「桜姫タレイアはフィールド場の植物族モンスター1体につき、攻撃力を100ポイントアップする」
現在の色音の場の植物族は《桜姫タレイア》《カズーラの蟲惑魔》《リセの蟲惑魔》の三体。
《桜姫タレイア》
攻撃力2800→3100
「そして《桜姫タレイア》が場に存在する限り、このカード以外の植物族モンスターは効果では破壊されない」
《桜姫タレイア》は自己強化と場の植物族モンスターに耐性を与える能力を持つ、現在の色音のエースモンスターだ。
「魔法カード《孵化》。ゴキボールをリリースしてアルティメット・インセクトLV5を攻撃表示で特殊召喚」
《アルティメット・インセクトLV5》
星5 風属性 昆虫族
攻撃力2300 守備力900
「装備魔法《狂暴化の仮面》をアルティメット・インセクトLV5に装備。攻撃力を1000アップする」
《アルティメット・インセクトLV5》
攻撃力2300→3300
「バトル! アルティメット・インセクトLV5で桜姫タレイアを攻撃」
狂暴化した《アルティメット・インセクトLV5》によって《桜姫タレイア》が戦闘破壊された。
杠葉色音 LP3800
「手札から速攻魔法《超進化の繭》を発動。《狂暴化の仮面》が装備されたアルティメット・インセクトLV5をリリースして、セイバー・ビートルを特殊召喚」
《セイバー・ビートル》
星6 地属性 昆虫族
攻撃力2400 守備力600
「セイバー・ビートルでリセの蟲惑魔を攻撃」
《セイバー・ビートル》が守備表示モンスターを攻撃した時、攻撃力が守備力を超えた分だけ戦闘ダメージを与える。
杠葉色音 LP3000
「墓地の《超進化の繭》を除外して効果発動。ゴキポールをデッキに戻して一枚ドロー。カードをセットしてターンエンド」
伏せたカードは《リビングデッドの呼び声》。
これで色音のエンドフェイズに墓地の《アルティメット・インセクトLV5》を蘇生すれば、次の遊羽のターンで《アルティメット・インセクトLV7》を特殊召喚できる。
「私のターン、ドロー。ローンファイア・ブロッサムを召喚」
《ローンファイア・ブロッサム》
星3 炎属性 植物族
攻撃力500 守備力1400
「ローンファイア・ブロッサムをリリースして効果発動。デッキから姫葵マリーナを特殊召喚」
《
星8 炎属性 植物族
攻撃力2800 守備力1600
「更に墓地の《天啓の薔薇の鐘》を除外して、手札から攻撃力2400以上の植物族モンスターを特殊召喚するわ。私は椿姫ティタニアルを特殊召喚」
《
星8 風属性 植物族
攻撃力2800 守備力2600
エースを破壊されようとも、今度は二体の植物姫を並べることによって、即座に盤面を立て直してきた。
これが
遊羽の一番のライバルであり親友。
そして現在のアカデミア生の中でも最強格に位置づけられるデュエリストの一人だ。
「カズーラの蟲惑魔を攻撃表示に変更」
《カズーラの蟲惑魔》
攻撃力800
「バトルフェイズよ。カズーラの蟲惑魔でセイバー・ビートルを攻撃」
一見すれば、それは無謀な攻撃。
「迎え撃ってセイバー・ビートル」
《セイバー・ビートル》の角で《カズーラの蟲惑魔》が串刺しにされた。
杠葉色音 LP1400
「この瞬間、姫葵マリーナの効果発動。このモンスター以外の植物族が破壊された時、相手の場のカード一枚を破壊することができる。私が破壊するのはそのセットカードよ」
《姫葵マリーナ》の効果によって、伏せていた《リビングデッドの呼び声》が破壊される。
「姫葵マリーナでセイバー・ビートルを攻撃」
《姫葵マリーナ》によって《セイバー・ビートル》が戦闘破壊された。
癲狂院遊羽 LP3600
「椿姫ティタニアルでダイレクトアタック!」
癲狂院遊羽 LP800
「私はこれでターンを終了するわ」
現在の遊羽の場にカードはなく、手札は一枚のみ。
この手札だけで逆転は不可能。
次のドローに全てがかかっている。
「私のターン、ドロー!」
引いたカードを見て遊羽は薄く笑った。
即座にそれを使用する。
「魔法カード《アースクエイク》を発動。フィールド場に表側表示で存在する全てのモンスターを守備表示にする」
《椿姫ティタニアル》は対象を取る魔法、罠、モンスター効果が発動した時、植物族一体をリリースすることで無効にできるが《アースクエイク》は対象を取らない効果。
この魔法カードによって二体の植物姫が守備表示になる。
《姫葵マリーナ》
守備力1600
《椿姫ティタニアル》
守備力2600
これで最後の手札のモンスターを出す準備が整った。
「このカードは私の墓地に存在するモンスターが昆虫族の場合のみ、相手フィールド場に表側守備表示で存在するモンスター二体を墓地に送り特殊召喚することができる」
《姫葵マリーナ》と《椿姫ティタニアル》の腹が突如として膨れ上がる。
そして二体の植物姫の膨張した腹を食い破って大量の子蜘蛛が産み落とされた。
それらの子蜘蛛が一つに集まり巨大な大蜘蛛に姿を変える。
「マザー・スパイダーを攻撃表示で特殊召喚!」
《マザー・スパイダー》
星6 闇属性 昆虫族
攻撃力2300 守備力1200
色音の現在のライフポイントは1400。
《マザー・スパイダー》の攻撃力は2300。
「……そう。今回は私の負けということにしておくわ」
色音の場と手札にカードはなく、墓地で発動する効果を持つカードを落とすタイミングもなかった。
「バトル! マザー・スパイダーでプレイヤーにダイレクトアタック!」
直接攻撃の指示を受けて大蜘蛛が色音に飛び掛かる。
「だけど覚えておきなさい、遊羽。最後には必ず私が主席で卒業する」
その声には執念とも呼ぶべき意志が宿っていた。
杠葉色音 LP0
「勝者、癲狂院遊羽」
試験官によってデュエルの勝利者の名前が告げられる。
今回の定期試験、最終的な学年総合成績は色音が三位。
そして遊羽は一位でオベリスクブルーに昇級した。