切り札はゴキボール   作:白銀蟷螂

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正義の守護者

 癲狂院(てんきょういん)遊羽 LP1500

 

   VS

 

 夜桜射亜(いりあ) LP3800

 

 

 《完全態・グレート・インセクト》を奪われて一瞬呆然とする遊羽だったが、即座に思考を切り替えた。

 現在の遊羽のライフポイントは1500であり、場にいる《アルティメット・インセクトLV5》の攻撃力は1150。

 夜桜射亜の場の《完全態・グレート・インセクト》の攻撃力は3000なので、このまま攻撃を受ければライフが0になるようにも思える。

 だが《ゴヨウ・プレデター》の効果は正確に把握しているので焦りはない。

 

「ゴヨウ・プレデターの効果で特殊召喚したモンスターが与える戦闘ダメージは半分になる。そうでしょ」

「流石はアカデミアを次席で卒業しているだけはあるね」

 

 青眼の銀ゾンビ(ブルーアイド・シルバーゾンビ)販売の件だけでなく、遊羽の経歴も調べたようだ。

 

「それだけに惜しい。下層区出身であろうとアカデミアを次席で卒業したなら、まっとうな就職先はあっただろうに」

 

 確かに決闘女王に挑むことを諦めれば、その道を選ぶこともできた。

 

「主席で卒業できず、あと一歩で決闘女王の座をとり零したが故の未練。決闘女王になることへの執着を捨てられなかったのかい」

 

 部外者にはそう思われても仕方ないだろう。

 

「さて、バトルフェイズを続けよう。完全態・グレート・インセクトでアルティメット・インセクトLV5に攻撃」

 

 《完全態・グレート・インセクト》の竜巻攻撃によって、攻撃力の半減した《アルティメット・インセクトLV5》が戦闘破壊される。

 リアルソリッドビジョンの衝撃によって、遊羽の体が後退した。

 

 インセクト遊羽 LP575

 

「《大樹海》の効果発動。プリミティブ・バタフライを手札へ」

 

 《完全態・グレート・インセクト》はレベル9なので破壊された際、《大樹海》に対応するモンスターがいなかったが、《アルティメット・インセクトLV5》なら同じくレベル5の《プリミティブ・バタフライ》をサーチできる。

 

「カードを二枚伏せて、ターンを終了するよ」

「私のターン、ドロー」

 

 引いたカードを遊羽は即座に発動した。

 

「魔法カード《トレード・イン》。手札からレベル8モンスター、究極完全態・グレート・モスを捨てて二枚ドロー」

 

 新たに引いたカードを一旦手札に加える。

 

「自分のフィールドにモンスターがいない時、このカードは特殊召喚できる。プリミティブ・バタフライを特殊召喚」

 

 《プリミティブ・バタフライ》

 星5 風属性 昆虫族

 攻撃力1200 守備力900

 

「効果によってレベルを1つアップ」

 

 《プリミティブ・バタフライ》

 星5→星6

 

「更に魔法カード《孵化》発動」

 

 《孵化》によってプリミティブ・バタフライがリリースされて、それよりも一つレベルが高い昆虫族モンスターが特殊召喚される。

 

「究極変異態・インセクト女王を特殊召喚!」

 

 《究極変異態・インセクト女王》

 星7 地属性 昆虫族

 攻撃力2800 守備力2400

 

 それは今の遊羽を師匠と慕う少女から託されたカード。

 究極の変異を遂げた昆虫族を統べる女王が姿を現した

 

「《火器付機甲鎧》をグレート・インセクトに装備」

 

《完全態・グレート・インセクト》

 攻撃力3000→3700

 

 攻撃力を700上げる装備魔法をあえて《究極変異態・インセクト女王》ではなく《完全態・グレート・インセクト》に使用する。

 これで《完全態・グレート・インセクト》は装備カードを装備した昆虫族になった。

 

「速攻魔法《超進化の繭》発動。完全態・グレート・インセクトをリリースして、デッキから鉄鋼装甲虫を特殊召喚」

 

 《鉄鋼装甲虫(メタルアーマードバグ)

 星8 地属性 昆虫族

 攻撃力2800 守備力1500

 

 《究極完全態・グレート・モス》は先ほど《トレード・イン》のコストとなって墓地に置かれているので、今デッキの中にある最大攻撃力のモンスターを出す。

 

「墓地の《超進化の繭》を除外、共鳴虫をデッキに戻して一枚ドロー」

 

 できれば後一体モンスターを召喚するか、装備魔法で《究極変異態・インセクト女王》を強化したいが、現在の手札にはそのどちらもない。

 

「バトル! 鉄鋼装甲虫(メタルアーマードバグ)でゴヨウ・プレデターを攻撃」

 

 現在の夜桜射亜(いりあ)の場には伏せカードが二枚あるが《究極変異態・インセクト女王》の効果によって、場に他の昆虫族がいる時、自分フィールド場の全ての昆虫族モンスターは相手の効果の対象にならず、相手の効果では破壊されない。

 

 罠カードが発動されることはなく《鉄鋼装甲虫》が《ゴヨウ・プレデター》を戦闘破壊した。

 

 夜桜射亜(いりあ) LP3400

 

「究極変異態・インセクト女王でダイレクトアタック!」

 

 究極の変異を遂げた昆虫女王の直接攻撃が夜桜射亜に直撃した。

 リアルソリッドビジョンの衝撃を受けて大きく後退するも、彼女は転倒せずに耐え切る。

 

 夜桜射亜(いりあ) LP600

 

「私は正義の守護者であるセキュリティだ。それが負けるなんてことは、あってはならないんだよ」

 

 体を鍛えているというのもあるのだろうが、最上級モンスターの攻撃を全身で受けてなお倒れない姿勢には気概を感じた。

 ライフポイントを削り切れなかったことが悔やまれるが、万全の備えで受けきるしかない。

 

「カードを二枚セットしてターンエンド。エンドフェイズ時、究極変異態・インセクト女王の効果によって、インセクトモンスタートークン一体を守備表示で特殊召喚」

 

 《インセクトモンスタートークン》

 星1 地属性 昆虫族

 攻撃力100 守備力100

 

「この瞬間、トラップカード発動。《ダブル・フッキング》」

 

 夜桜射亜が伏せていた二枚の内、一枚のカードを発動させた。

 

「手札を一枚捨てることで、自分の墓地のモンスター二体を場に出す。ゴヨウ・ガーディアンとゴヨウ・プレデターを特殊召喚」

 

 《ゴヨウ・ガーディアン》

 星6 地属性 戦士族

 攻撃力2800 守備力2000

 

 《ゴヨウ・プレデター》

 星6 地属性 戦士族

 攻撃力2400 守備力1200

 

 二体のポリス系シンクロモンスターがフィールドに復活する。

 バトルフェイズ中に発動していればダメージを減らすことはできたが、《ダブル・フッキング》で出したモンスターはどちらか片方がフィールドから離れると自壊するため、このタイミングで使用したのだろう。

 

「私のターン、ドロー」

 

 引いたカードを見て、夜桜射亜が笑みを浮かべた。

 

「墓地の《錬装融合》の効果発動」

 

 それを即座には使わず、墓地にある魔法カードの効果を使用する。

 捨てたタイミングは《ダブル・フッキング》を発動した時だろう。

 専用融合だが、おそらく手札コスト兼墓地のドローソースとしてデッキに投入している。

 

「このカードをデッキに加えてシャッフルすることで一枚ドローするよ」

 

 新たに引いたカードを見て僅かに顔を顰める。

 

「一ターン前に引けていれば勝負はついたんだけどね。まあいいさ。私は《置換融合》を発動!」

 

 それを手札に加えてから最初にドローしたカードを使用した。

 《置換融合》はフィールドのモンスターを融合させる魔法カードだ。

 

「正義の守護者の魂と誇り高き捕食者の魂が、今1つとなりて昇華する! 融合召喚! 出でよ、荘厳なる守護者の血統を受け継ぎし者! ゴヨウ・エンペラー!」

 

 《ゴヨウ・エンペラー》

 星10 地属性 戦士族

 攻撃力3300 守備力2500

 

 二体の戦士族、地属性シンクロモンスターによる融合召喚。

 これがキラーセキュリティ、夜桜射亜のエースモンスターか。

 シンクロ召喚だけでなく融合召喚まで用いるセキュリティはブラックドミノシティにおいて、おそらく彼女ただ一人。

 

「トラップカード発動!《因果切断》」

 

 瞬時に伏せていたカードを発動した。

 《因果切断》は手札を一枚捨てることで、相手フィールド場の表側表示モンスターを一体除外する罠カードだ。

 

「成程、決闘女王を目指しているだけはある」

 

 最後の手札である《ポセイドン・オオカブト》をコストにして《ゴヨウ・エンペラー》を除外する。

 

「だけど、ここまでだよ。カウンタートラップ《ギャクタン》。罠カードの発動を無効にしてデッキに戻す」

 

 夜桜射亜が場に伏せていた最後のカードを発動した。

 《ギャクタン》によって《因果切断》が打ち消される。

 

「バトル! ゴヨウ・エンペラーで究極変異態・インセクト女王を攻撃!」

 

 《ゴヨウ・エンペラー》の火炎放射攻撃が《究極変異態・インセクト女王》に向けて放たれた。

 これまでの『ゴヨウ』モンスター同様、《ゴヨウ・エンペラー》にも戦闘破壊したモンスターを蘇生する能力がある。

 《完全態・グレート・インセクト》に続いて《究極変異態・インセクト女王》まで奪われるわけにはいかない。

 

「トラップカード《攻撃の無敵化》を発動!」

 

 伏せていた二枚目の罠カードを使用する。

 《攻撃の無敵化》は自身への戦闘ダメージを0にするか、特定のモンスターを戦闘とカードの効果による破壊から守るか、どちらか一つを選択するカード。

 

「このターン、究極変異態・インセクト女王は戦闘及びカードの効果では破壊されない」

 

 インセクト遊羽 LP75

 

 ライフポイントは風前の灯火だが《究極変異態・インセクト女王》は無事だ。

 

「……カードを一枚伏せてターンエンド」

 

 エンドフェイズに《究極変異態・インセクト女王》の効果によって《インセクトモンスタートークン》を守備表示で特殊召喚する。

 

 現時点において遊羽のフィールドに《ゴヨウ・エンペラー》の攻撃力を上回るモンスターはいない。

 トークンも増えたので最悪の場合、防戦に回ればいいように思えるがそれは悪手だ。

 《ゴヨウ・エンペラー》には自身が破壊したモンスターだけでなく、コントロールを奪取したモンスターが破壊した相手モンスターも蘇生する能力がある。

 《究極変異態・インセクト女王》と《鉄鋼装甲虫》を守備表示にしようものなら、あっという間にどちらも奪われてしまう。

 故に次のドローに全てがかかっている。

 

「私のターン、ドロー!」

 

 引いたカードを見て遊羽は薄く笑った。

 

昆虫機甲鎧(バイオインセクトアーマー)を究極変異態・インセクト女王に装備」

 

 《昆虫機甲鎧(バイオインセクトアーマー)》はバトルフェイズ開始時に装備したモンスターの攻撃力を1500、守備力を2000上昇させることができる。

 

「バトルフェイズ!」

 

 《究極変異態・インセクト女王》

 攻撃力2800→4300 守備力2400→4400

 

 これで《究極変異態・インセクト女王》の攻撃力が《ゴヨウ・エンペラー》を上回った。

 現在の夜桜射亜のライフポイントは600であり、この攻撃が通れば勝負は決まる。

 

「究極変異態・インセクト女王でゴヨウ・エンペラーを攻撃!」

「……トラップカード発動」

 

 険しい表情で夜桜射亜が伏せカードを発動した。

 

「《破壊指輪(はかいリング)》」

「なっ! そのカードは」

「自分フィールド場のモンスター1体を破壊して、お互いに1000ダメージ受ける。《究極変異態・インセクト女王》の耐性が機能するのは君の場にいる昆虫族だけだ」

 

 確かに《破壊指輪(はかいリング)》であれば《究極変異態・インセクト女王》の耐性は関係ない。

 現在の遊羽のライフポイントは75であり、これを受ければ一撃で0になる。

 だがそれは夜桜射亜も同様だ。

 ライフポイント600である彼女も同時にライフが0になる。

 

「ゴヨウ・エンペラーを破壊して効果発動」

 

 《究極変異態・インセクト女王》が命中する前に《ゴヨウ・エンペラー》が木端微塵に爆散する。

 その余波が互いのプレイヤーを襲った。

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