切り札はゴキボール   作:白銀蟷螂

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瞬殺

 望羽の危機に駆け付けた七人のデュエリストを前にしても堂本春男の余裕は揺らがなかった。

 

「なるほど、そちらも援軍を用意していたというわけか。だが所詮は七名。こちらには三十二名のSランクプロデュエリストがいる。数的優位はまだこちらにあるでしょう」

 

 あくまでも望羽狙いを続けるというわけか。

 実際、一斉に強制デュエルを挑まれれば、望羽が対象にされるのを完全に阻止することはできない。

 

「Sランクプロデュエリストごとき、わし一人でも十分倒せるがのう」

「デュエルヤクザだか何だか知らねえが、調子に乗ってんじゃねえぞ、小娘が!」

 

 若いSランクプロデュエリストの一人が怒りを露わにしながら前に出た。

 そのままミカのデュエルディスクが自動的に起動する。

 どうやらSランクプロがミカに対して強制デュエルを仕掛けたようだ。

 

「集まった連中の大半は女じゃねえか! 堂本会長は弱気過ぎるんだよ。お前みたいな小娘がSランクプロデュエリストである俺に勝てるわけがねえだろ!」

 

 カードプレートがソリッドビジョンによって生成される。

 オートシャッフルシステムが起動して、互いのデッキが自動でシャッフルされる。

 デュエルディスクによって先攻、後攻が決定された。

 

 

 蛇沼ミカ /  LP4000

 

    VS

 

 Sランクプロ / LP4000

 

 

「「決闘!!」」

 

 先攻をとったのはSランクプロデュエリストだった。

 

「さっそく来たぜ! ウルトラレアカード《コストダウン》発動!」

 

 《コストダウン》は手札を一枚捨てて発動できる魔法カード。

 このターン、手札のモンスターのレベルを2つ下げることができる。

 

「これが俺たちSランクプロデュエリストのやり方だよ。下の連中の給料をピンハネしてコスト削減する。そうすれば俺たちの懐は潤うのさ」

 

 それは堂本春男と結託して下位のプロから搾取し続けてきたSランクプロデュエリストらしい言い分。

 

「迅雷の魔王-スカル・デーモンを攻撃表示!」

 

 《迅雷の魔王-スカル・デーモン》

 星6→4 闇属性 悪魔族

 攻撃力2500 守備力1200

 

「《伏魔殿-悪魔の迷宮》を発動。俺のフィールド場の悪魔族モンスターの攻撃力は500ポイントアップする」

 

 《迅雷の魔王-スカル・デーモン》

 攻撃力2500→3000 守備力1800

 

「更に《デーモンの斧》を装備。迅雷の魔王-スカル・デーモンの攻撃力を1000アップ」

 

 《迅雷の魔王-スカル・デーモン》

 攻撃力3000→4000

 

「どうだ! Sランクプロデュエリストの実力が分かったか! Bランクプロはもちろん、Aランクの馬鹿女共だって、この戦術を破れる奴はいねえ」

 

 確かに遊羽がこの予選でデュエルしたBランクプロの中に、このコンボに対処できそうな者はいなかった。

 

「俺はこれでターンエンド。次のターンに攻撃力4000の迅雷の魔王-スカル・デーモンで瞬殺してやるぜ、小娘!」

 

 だが蛇沼ミカはBランクプロデュエリストではない。

 

「わしのターン、ドロー。まずはラミアを召喚じゃ」

 

 《ラミア》

 星4 闇属性 爬虫類族

 攻撃力1300 守備力1500

 

「ラミアの効果を発動、デッキから《毒蛇王ヴェノミノン》を手札に加える」

 

 《ラミア》は召喚、特殊召喚に成功した時、デッキからレベル8の爬虫類族モンスターを手札に加える効果がある。

 それによってミカはレベル8の《毒蛇王ヴェノミノン》を手札に加えた。

 

「《トレード・イン》を発動。毒蛇王ヴェノミノンを墓地に送って二枚ドローじゃ」

 

 《トレード・イン》のレベル8のモンスターを捨てて二枚ドローする魔法カード。

 引いたカードを見たミカがペロリと舌を出した。

 

「魔法カード《隣の芝刈り》。このカードは自分のデッキの枚数が相手より多い場合に発動可能。枚数が同じになるようにデッキの上からカードを墓地に送る」

 

 一見すれば後攻で1枚ドローしたのに加え《ラミア》や《トレード・イン》でカードを手札に加えた分、ミカのデッキ枚数が少ないように思えるこの状況。

 

「わしのデッキは60枚デッキじゃ。よって差分の16枚が墓地へ送られるのう」

 

 枚数処理はデュエルディスクが自動で行うので間違いはないが、やはりSランクプロデュエリストのデッキ枚数は40枚のようだ。

 

「60枚デッキ? はは、素人かよ。いいか、Sランクプロデュエリストの俺が教えてやるがデッキってのは40枚にするのが当たり前なんだぜ」

 

 Sランクプロデュエリストの言っていることは基本的には正論。

 実際、遊羽のデッキも40枚デッキである。

 

「大体、カードを墓地に送ったって意味がねえだろ。手札が減っただけ損じゃねえか。《隣の芝刈り》。そんなクソカードを入れてるとは、デュエルヤクザってのも大したことはねえな」

 

 だが《隣の芝刈り》の真価には気づいていないようだ。

 カードを墓地に送る戦略的な意味も理解できていないらしい。

 

「魔法カード《死者蘇生》発動じゃ。わしは墓地から毒蛇王ヴェノミノンを攻撃表示で特殊召喚する」

 

 《毒蛇王ヴェノミノン》

 星8 闇属性 爬虫類族

 攻撃力0 守備力0

 

「はは、攻撃力0。そいつもクソカードじゃねえか」

 

 一瞬だけミカの顔が引きつった。

 《毒蛇王ヴェノミノン》は亡くなった父親から受け継いだカードだと、以前デスティニーランドで遊んだ時に話してくれたことがある。

 

「毒蛇王ヴェノミノンの攻撃力は墓地の爬虫類族モンスター1体につき500アップする」

「な、何だと」

 

 流石にSランクプロデュエリストも状況を把握したようだ。

 

「わしの墓地に落ちた爬虫類族モンスターは、ふむ、15枚か」

 

 《毒蛇王ヴェノミノン》

 攻撃力0→7500 守備力0

 

「駄目押ししておくかのう。《スネーク・レイン》発動。手札から《イピリア》を捨てて、デッキから4枚爬虫類族モンスターを墓地へ送る」

 

 これでミカの墓地には更に五体の爬虫類族モンスターが追加された。

 

 《毒蛇王ヴェノミノン》

 攻撃力7500→10000 守備力0

 

「こ、攻撃力10000だと!」

「毒蛇王ヴェノミノンの攻撃、ヴェノム・ブロー」

 

 《毒蛇王ヴェノミノン》に攻撃によって《迅雷の魔王-スカル・デーモン》が戦闘破壊される。

 

「普段なら両手両足の指を切断するところじゃが、遊羽に免じて今日はこれで勘弁してやる」

 

 Sランクプロ LP0

 

 リアルソリッドビジョンの衝撃によってSランクプロデュエリストが吹っ飛ばされた。

 

「奴らがリアルソリッドビジョンでこちらを痛めつける戦略をとるなら、ワンターンキルすればいいだけじゃ」

 

 それは堂本春男の戦略に対する一つの対抗策。

 

「あ、あいつら強いんじゃねえのか」

「だから堂本会長も言ってんだろ、プロデュエリストじゃ裏には勝てねえ」

「そうだ、だからあの三条望羽っていう小娘を狙うんだ!」

「いや、集まった連中の中には弱い奴もいるはず」

「やはり女の中の誰かを狙うのがいいのか」

「女よりも、むしろあのおっさんが弱そうだと思うね」

 

 Sランクプロデュエリストたちは、まだ戦意を喪失していない。

 こうなった以上、望羽を、そして仲間たちを信じるしかなかった。

 

「ふん、僕はこれでターンエンドだ」

 

 残り時間が少なくなったのか堂本春男が渋々エンド宣言する。

 

「私のターン、ドロー」

 

 引いたカードを遊羽が手札に加える中、他の者たちもSランクプロデュエリストとの強制デュエルを開始した。

 

 

 獄城幸 /  LP4000

 

    VS

 

 Sランクプロ / LP4000

 

 

「「決闘!!」」

 

 先攻をとったのはSランクプロデュエリスト。

 

「《コストダウン》発動。デーモンの巨神を召喚」

 

 《デーモンの巨神》

 星6→4 闇属性 悪魔族

 攻撃力2400 守備力1600

 

「デーモンの巨神に《デーモンの斧》を装備」

 

 《デーモンの巨神》

 攻撃力2400→3400

 

「更に《ミスト・ボディ》を装備する。これでデーモンの巨神は戦闘では破壊されない。私はターンエンドだ」

 

 効果破壊耐性を持つ《デーモンの巨神》の攻撃力をアップさせた上で、戦闘破壊耐性まで付与するSランクプロデュエリストのマジックコンボ。

 

「ぬるいわね。私のターン、ドロー!」

 

 引いたカードを幸は手札に加えた。

 

「邪神機-獄炎を攻撃表示で召喚よ。このカードはリリースなしで召喚した場合、エンドフェイズ時に破壊されて、自分はこのカードの元々の攻撃力分のダメージを受けるわ」

 

 《邪神機-獄炎》

 星6 光属性 アンデッド族

 攻撃力2400 守備力1400

 

「お前にも上級モンスターをリリースなしで召喚する戦術があるようだが、攻撃力ならデーモンの巨神の方が上だ。しかもこちらには戦闘破壊耐性と効果破壊耐性がある」

「はん! 攻撃力や耐性なんて関係ないのよ。《反目の従者》を邪神機-獄炎に装備」

 

 《反目の従者》は装備モンスターのコントロールが移った時、装備モンスターのコントローラーに、そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを与える装備魔法。

 

「そして魔法カード《強制転移》。お互いのプレイヤーはそれぞれモンスターを1体選んでコントロールを入れ替えるわ。私が選ぶのは当然、邪神機-獄炎」

「くっ、私はデーモンの巨神を選択する」

 

 お互いの場にモンスターが1体しかいない以上、選択肢は事実上ないに等しい。

 

「《反目の従者》の効果であんたには2400ダメージを受けてもらうわ」

「なっ、馬鹿な! そんな方法で」

 

 Sランクプロ LP1600

 

「私はこれでターンエンド。エンドフェイズ時、リリースなしで召喚された邪神機-獄炎は墓地に送られ、あんたは更に2400ダメージを受けるわ」

「こ、これが堂本会長の恐れる裏のデュエリストの力だというのか」

 

 Sランクプロ LP0

 

 リアルソリッドビジョンの衝撃を受けたSランクプロが地面に倒れた。

 

 

 

 獄城明美 /  LP4000

 

    VS

 

 Sランクプロ / LP4000

 

 

「「決闘!!」」

 

 先攻をとったのはSランクプロデュエリスト。

 

「俺のターン。魔法カード《コストダウン》発動。迅雷の魔王-スカル・デーモンを召喚」

 

 《迅雷の魔王-スカル・デーモン》

 星6→4 闇属性 悪魔族

 攻撃力2500 守備力1200

 

「更に《二重召喚》を発動」

 

 《二重召喚》は通常召喚を二回まで行うことができるようになる魔法カード。

 《コストダウン》の効果で、このターン中、Sランクプロデュエリストの手札にある全てのモンスターはレベルが2下がっている状態。

 

「コスト削減した人材は薄給で可能な限り使い倒してやらないとな。冥界の魔王 ハ・デスを召喚」

 

 《冥界の魔王 ハ・デス》

 星6→4 闇属性 悪魔族

 攻撃力2450 守備力1600

 

「これでターンエンド」

「それでは私のターンですね、ドロー」

 

 おっとりとした口調で言いながら明美はカードを引く。

 

「迅雷の魔王-スカル・デーモンと冥界の魔王 ハ・デスをリリースすることで、あなたの場に《溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム》を特殊召喚します」

 

 《溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム》

 星8 炎属性 悪魔族

 攻撃力3000 守備力2500

 

「俺の場のモンスターをリリースだと! だが代わりに攻撃力3000のモンスターが手に入ったなら悪くねえか」

「溶岩魔神ラヴァ・ゴーレムはスタンバイフェイズごとにコントロールしているプレイヤーに1000ダメージ与えますよ」

「何っ! とんだクソモンスター! モンスター社員じゃねえか!」

「それならこのカードを使ってもかまいませんね。《所有者の刻印》を発動」

 

 《所有者の刻印》はフィールド場全てのモンスターのコントロールを元の持ち主に戻す魔法カード。

 これによって《溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム》のコントロールは明美に移った。

 

「ちっ、モンスター社員がバックレやがったのか。そういう社会人意識の低い奴が一番迷惑なんだよ」

「給料が安いなら、さっさと職場を変えるのが普通ではないですか」

 

 少なくとも明美はそうやって金払いのいい雇われ先を転々としてきた。

 

「社会を舐めた女だな。底辺の労働者ってのは過労死するか自殺するまで文句を言わず働いて薄給で使い潰されればいいんだよ」

「私もあまり人のことを言えませんが、あなた相手に容赦する必要はなさそうですね。《火炎地獄》発動」

 

 《火炎地獄》は相手プレイヤーに1000ダメージ、自分に500ダメージ与える魔法カード。

 

 Sランクプロ LP3000

 

 獄城明美 LP3500

 

「ま、まずい! そのバックレモンスターの攻撃力は3000。このままじゃ」

「バトルフェイズです。溶岩魔神ラヴァ・ゴーレムの攻撃、ゴーレム・ボルケーノ!」

 

 《溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム》の灼熱溶岩攻撃が直撃する。

 

 Sランクプロ LP0

 

 リアルソリッドビジョンの衝撃によってSランクプロデュエリストが吹っ飛ばされた。

 

 

 

 大瀧修三 /  LP4000

 

    VS

 

 Sランクプロ / LP4000

 

 

「「決闘!!」」

 

 先攻をとったのはSランクプロデュエリスト。

 

「僕は《コストダウン》を発動。デーモンの巨神を召喚」

 

 《デーモンの巨神》

 星6→4 闇属性 悪魔族

 攻撃力2400 守備力1600

 

「更に《伏魔殿-悪魔の迷宮》を発動する。フィールド場の悪魔族の攻撃力を500アップ」

 

 《デーモンの巨神》

 攻撃力2400→2900 守備力1600

 

「そしてデーモンの巨神に《ミスト・ボディ》装備する」

 

 《ミスト・ボディ》によって《デーモンの巨神》は戦闘では破壊されなくなった。

 

「ターンエンド。僕の見たところ、援軍の中で一番弱いのはあんただ、おっさん。他はともかく、あんたじゃこの盤面を突破できないだろう」

「大人を侮るとどうなるのか教えてあげましょう。私のターン、ドロー」

 

 引いたカードを大瀧は手札に加える。

 

「まずは《ロイヤル・ペンギンズ・ガーデン》を発動。効果でペンギン勇士を手札に加えます」

 

 《ロイヤル・ペンギンズ・ガーデン》は発動処理として『ペンギン』カード一枚を手札に加えることができる永続魔法。

 

「モンスターをセット。自分フィールド場にモンスターがセットされた時、ペンギン勇士を特殊召喚」

 

 《ペンギン勇士》

 星5 水属性 水族

 攻撃力1800 守備力600

 

「ペンギン勇士の効果発動。裏側守備表示のモンスターを表側守備表示に変更」

 

 大瀧が最初にセットしたモンスターが表向きになる。

 

 《ペンギン・ナイトメア》

 星4 水属性 水族

 攻撃力900→1100 守備力1800

 

「ペンギン・ナイトメアがリバースした時、相手フィールド場のカード1枚を手札に戻します。私が選ぶのはデーモンの巨神」

「何!? バウンスだと」

「効果破壊耐性のあるデーモンの巨神に装備魔法で戦闘破壊耐性を付与したようですが、そんな小細工は通用しません」

 

 《ペンギン・ナイトメア》の効果によって《デーモンの巨神》が手札に戻る。

 

「プロデュエリストの空っぽの頭で考える浅知恵など、お見通しなのですよ。更に《トランスターン》を発動」

 

 《トランスターン》はフィールド場に存在するモンスター1体を墓地に送り、種族、属性が同じでレベルが一つ高いモンスターを特殊召喚する魔法カード。

 

「ペンギン・ナイトメアを墓地に送り大皇帝ペンギンを特殊召喚」

 

 《大皇帝ペンギン》

 星5 水属性 水族

 攻撃力1800 守備力1500

 

「ペンギン勇士に《ペンギン・ソード》装備し、800ポイント、パワーアップ!」

 

 《ペンギン勇士》

 攻撃力1800→2600 守備力600

 

「バトル! 大皇帝ペンギンで攻撃!」

 

 Sランクプロ LP2200

 

「ぼ、僕はSランクプロデュエリストだぞ! それが、こんなおっさんに」

「もはや君は万策尽きている。行け! ペンギン勇士! ダイレクトアタック!」

 

 《ペンギン・ソード》を装備した《ペンギン勇士》の刃が振るわれる。

 

 Sランクプロ LP0

 

 リアルソリッドビジョンの衝撃によってSランクプロデュエリストが吹っ飛んだ。

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