デュエル乱闘の大勢が決しつつあった。
強制デュエルによって無力化されたSランクプロデュエリストは八割を超え、残りの二割が制圧されるのも時間の問題だ。
そして女王杯予選における、堂本春男とのデュエルの決着も近づいていた。
インセクト遊羽 / LP4000
VS
堂本春男 / LP1600
現在遊羽の場にいるのは三体の最上級昆虫族モンスター。
《ポセイドン・オオカブト》
星7 地属性 昆虫族
攻撃力2500 守備力2300
《ブレイン・クラッシャー》
星7 闇属性 昆虫族
攻撃力2400 守備力1500
《
星8 地属性 昆虫族
攻撃力2800 守備力1500
一方で堂本春男の場にカードはなく、残りの手札も一枚のみ。
「ブレイン・クラッシャーでダイレクトアタック」
「くそ! 手札からクリボールを捨てることで攻撃モンスターを守備表示にする」
このデュエルで三枚目の《クリボール》が使用される。
これで堂本春男の手札は全てなくなった。
バーンや特殊勝利等の勝ち筋となるカードを一切投入せずに、妨害系カードのみで構成された遅延デッキ。
デュエルにおける勝ち筋を放棄して防御に全振りすることで、一枚でも多くの妨害系カードを入れられるのが強みだろうが、こうして全てのカードを使い切らせてしまえば防御の手段はなくなる。
「ポセイドン・オオカブトでプレイヤーにダイレクトアタック。トライデント・スパイラル!」
堂本春男 LP0
《ポセイドン・オオカブト》の直接攻撃によって堂本春男のライフは0になった。
「……決闘女王の言う通りになったか」
「どういうこと?」
「あのお方は言っていたよ。プロデュエリストでは君には勝てないと」
女王杯の取り決めに従って堂本から二個のスターチップが渡される。
「プロデュエリストのやり方では君には勝てなかった。ならデュエリストとして勝負だ!」
堂本がデッキを入れ替えてからデュエルディスクを再起動する。
同時に遊羽のデュエルディスクも自動的に起動した。
女王杯デュエルモードではない強制デュエルだ。
「まだやる気なの」
「安心するといい。もう三条望羽を狙うのはやめだ。言っただろ、プロデュエリストとしてではなくデュエリストとして相手をすると」
おそらく入れ替えたデッキは遅延用ではなく、堂本春男の本来のデッキ。
「君を強制デュエルで倒した後にレイプして一か月後の女王杯本選に出場できなくする」
プロデュエリスト協会の会長が白昼堂々、B区でそんな真似をするのは賢い行為とは言えないだろう。
思えば龍堂院を使っていた時はともかく、女王杯予選の最中にSランクプロをこれだけ集めて望羽を襲わせるのもリスクは高めだ。
この男の資産があれば、各所に金をばら撒いて隠蔽することが可能だろうが、どう考えても割に合う行為ではない。
「いや駄目だな。僕は多くの女を抱いてきたからね。これでも女を見る目はある。癲狂院。君はレイプされたぐらいじゃ本選に出場するだろう。だからレイプはなしだ」
今の堂本春男の行動原理は性欲ではないということ。
「代わりに両手の指の骨をへし折って全治二、三ヵ月、いや念のため両手両足を骨折させて全治半年以上の重症を負わせることにするよ」
何が何でも遊羽の女王杯本選出場を阻止したいらしい。
「正直、僕としてもこんなやり方は不本意だ。言っておくが、これまでこういう野蛮な行為をしたことはない。だが今はデュエリストとして、デュエルで君を倒してから四肢を骨折させる」
オートシャッフルシステムが起動して、互いのデッキが自動でシャッフルされる。
デュエルディスクによって先攻、後攻が決定された。
VS
堂本春男 / LP4000
「「決闘!!」」
先攻を取ったのは堂本春男だった。
「僕のターン。魔法カード《コストダウン》を発動!」
Sランクプロデュエリストたちと同じように、堂本春男も初手から《コストダウン》のカードを使用してくる。
「《コストダウン》の手札コストとして捨てた《魔轟神ルリー》の効果発動。このカードを墓地から特殊召喚する」
《魔轟神ルリー》
星1 光属性 悪魔族
攻撃力200 守備力400
だが手札コストとなったカードを活用したSランクプロデュエリストは、これまで一人たりともいなかった。
「迅雷の魔王-スカル・デーモンを攻撃表示!」
《迅雷の魔王-スカル・デーモン》
星6→4 闇属性 悪魔族
攻撃力2500 守備力1200
「フィールド魔法《伏魔殿-悪魔の迷宮》。僕の悪魔族モンスターの攻撃力は500ポイントアップする」
《迅雷の魔王-スカル・デーモン》
攻撃力2500→3000
「更に《伏魔殿-悪魔の迷宮》の第二効果を発動。自分フィールド場のデーモンと名のつくモンスターを選択して、それ以外の悪魔族モンスター1体を除外する。そして選択したモンスターと同じレベルのデーモンを特殊召喚する」
Sランクプロデュエリストたちは《伏魔殿-悪魔の迷宮》を悪魔族の攻撃力を500上げるパンプアップカードとしてしか使用しておらず、第二の効果を一切発動していなかった。
「そのコンボ、他のSランクプロデュエリストに教えてやらなかったの」
「教えたさ。だが残念ながら墓地効果の活用や《伏魔殿-悪魔の迷宮》の第二効果を使いこなせる者は一人もいなかった。それどころかプレイングミスを連発してね」
実際、デュエルアカデミアのオベリスクブルー生であっても、このレベルのプレイングができるデュエリストはほんの一握りだ。
「だから《デーモンの斧》や《ミスト・ボディ》などの使い易いカードで代用させているよ」
元々、堂本春男と言えばプロデュエリスト協会で『上の下』程度の実力でありながら、エンタメデュエルを利用した汚い手段で会長になったことで有名な男だ。
だが言い換えるのであれば、腐敗した現プロデュエリスト協会ではなく、ヘルカイザー亮レベルのデュエリストが複数在籍していた全盛期のプロデュエリスト協会において『上の下』の実力と評されていたデュリストでもある。
「《魔轟神ルリー》を除外して《コストダウン》の効果でレベル4となった《迅雷の魔王-スカル・デーモン》と同じレベルを持つ《ライトロード・デーモン ヴァイス》をデッキから守備表示で特殊召喚」
《ライトロード・デーモン ヴァイス》
星4 光属性 悪魔族
攻撃力0→500 守備力1700
《伏魔殿-悪魔の迷宮》の効果によって特殊召喚されたのは『ライトロード』カードでもある光属性のチューナーモンスター。
「レベル4《迅雷の魔王-スカル・デーモン》にレベル4《ライトロード・デーモン ヴァイス》をチューニング。シンクロ召喚! レベル8、カオス・デーモン-混沌の魔神-!」
《カオス・デーモン-混沌の魔神-》
星8 闇属性 悪魔族
攻撃力2500→3000 守備力1800
「《強欲で貪欲な壺》を発動。デッキの上からカードを十枚裏側表示で除外して二枚ドローする」
一枚五十億円の《強欲で金満な壺》には劣るが《強欲で貪欲な壺》も十数億円はするブルジョアレアカードである。
高額なシンクロモンスターを所持していることも含めて、流石に数年間にわたって下位のプロから搾取し続けてトップスに届きうる資産を築いたというだけはある。
「カードを二枚セットしてターンエンド」
人格はどうであれ現在のプロデュエリスト協会では、最も強いデュエリストであるのは間違いない。
「私のターン、ドロー」
遊羽の手札に堂本春男が伏せた二枚のカードを除去する手段はない。
それならば効果破壊耐性を昆虫族に与える《究極変異態・インセクト女王》を特殊召喚する戦術によってリバースカードに対処する。
手札にある《プリミティブ・バタフライ》と《孵化》のコンボなら、デッキから《究極変異態・インセクト女王》を出すことが可能だ。
「自分フィールド場にモンスターがいない時、このカードは特殊召喚できる。プリミティブ・バタフライを特殊召喚」
《プリミティブ・バタフライ》
星5 風属性 昆虫族
攻撃力1200 守備力900
「トラップカード発動! 《
堂本春男の場にはシンクロ召喚された悪魔族モンスター《カオス・デーモン-混沌の魔神-》がいる。
「そしてデッキから悪魔族を一体墓地に送ることができる。僕は《トリック・デーモン》を墓地に送ってその効果を発動。デッキから《デーモンの呼び声》を手札に加える」
《究極変異態・インセクト女王》の起点となる《プリミティブ・バタフライ》を的確に潰しただけでなく、手札補充まで行う辺り抜け目のない男だ。
「なら私はチューナーモンスター竜咬蟲を召喚」
《
星4 闇属性 昆虫族
攻撃力1000 守備力1000
「召喚に成功した時、手札からレベル4以下の昆虫族モンスター1体を特殊召喚できる」
《
「共振虫を守備表示で特殊召喚」
《
星4 地属性 昆虫族
攻撃力1000 守備力700
「レベル4《共振虫》にレベル4《竜咬蟲》をチューニング。シンクロ召喚! レベル8、
《
星8 闇属性 昆虫族
攻撃力2500 守備力2200
「墓地に送られた共振虫の効果発動。デッキからレベル5以上の昆虫族モンスターを手札に加えることができる」
遊羽のデッキには多くの上級、最上級昆虫族モンスターがいるが、今回手札に加えるのは《共振虫》と同様にこの五か月で手に入れたウルトラレアカードの一枚。
「私は《デビルドーザー》を手札へ」
レベル8の最上級昆虫族モンスター《デビルドーザー》。
「更に
《ゴキボール》
星4 地属性 昆虫族
攻撃力1200 守備力1400
「そしてゴキボール以上の攻撃力を持つ《カオス・デーモン-混沌の魔神-》を破壊する」
「ならばカオス・デーモン-混沌の魔神-の効果発動。このカードが相手によってフィールドから離れた場合、『カオス』シンクロモンスターをエクストラデッキから特殊召喚できる。カオス・アンヘル-混沌の双翼-を特殊召喚!」
《カオス・アンヘル-混沌の双翼-》
星10 闇属性 悪魔族
攻撃力3500→4000 守備力2800
「そしてカオス・アンヘル-混沌の双翼-が特殊召喚された時、フィールド場のカード1枚を除外する。
最上級シンクロモンスターを破壊されても、更に攻撃力が上のモンスターを出しながら、こちらのシンクロモンスターを除外してきた。
これがプロデュエリスト協会会長の底力というわけか。
「魔法カード《孵化》発動。ゴキボールをリリースしてアルティメット・インセクトLV5を特殊召喚」
《アルティメット・インセクトLV5》
星5 風属性 昆虫族
攻撃力2300 守備力900
「墓地の《共振虫》と《プリミティブ・バタフライ》を除外して、デビルドーザーを特殊召喚する」
《デビルドーザー》
星8 地属性 昆虫族
攻撃力2800 守備力2600
「共振虫が除外された時、デッキから昆虫族モンスター1体を墓地に送る。昆虫機甲鎧を墓地に送ってからデビルドーザーに装備」
《
「バトルフェイズ。
《デビルドーザー》
攻撃力2800→4300 守備力2600→4600
「デビルドーザーでカオス・アンヘル-混沌の双翼-を攻撃!」
《デビルドーザー》に装着された《
堂本春男 LP3700
「デビルドーザーが戦闘ダメージを与えた時、相手のデッキの上からカードを1枚墓地に送る。続けてアルティメット・インセクトLV5でダイレクトアタック!」
「僕はまだ終わらないぞ! 速攻魔法《デーモンとの駆け引き》。レベル8以上のモンスターが墓地に送られたターン、デッキから《バーサーク・デッド・ドラゴン》を特殊召喚だ!」
《バーサーク・デッド・ドラゴン》
星8 闇属性 アンデッド族
攻撃力3500 守備力0
「アルティメット・インセクトLV5の攻撃を続行」
「くっ! 攻撃力はこちらが上だ。迎え撃て、バーサーク・デッド・ドラゴン!」
攻撃力で劣るモンスターで攻撃するのには何かしらの意図があるということを、おそらく堂本春男は理解している。
だが伏せカードを二枚とも使い切り手札もない以上、分かっていても何かすることはできない。
「手札から速攻魔法《収縮》を発動。バーサーク・デッド・ドラゴンの攻撃力を半分にする」
《バーサーク・デッド・ドラゴン》
攻撃力3500→1750
《アルティメット・インセクトLV5》の攻撃によって《収縮》で攻撃力が半減した《バーサーク・デッド・ドラゴン》が戦闘破壊された。
堂本春男 LP3150
「《超進化の繭》を発動! 昆虫機甲鎧が装備されたデビルドーザーをリリースして、デッキから召喚条件を無視して新たな昆虫族モンスターを特殊召喚する」
《超進化の繭》によって《デビルドーザー》が黄金の繭に包まれる。
呼び出されるのは遊羽のデッキにおける最大の攻撃力を誇るインセクトカード。
召喚口上を遊羽は高らかに言い放つ。
「地べた這いずる虫けらも
――羽虫となって
黄金の繭から巨大な蛾のモンスターが姿を現す。
「究極完全態・グレート・モスを特殊召喚!!」
《究極完全態・グレート・モス》
星8 地属性 昆虫族
攻撃力3500 守備力3000
「……ああ、やはりプロデュエリストでは裏のデュエリストには、癲狂院遊羽には届かないのか」
「究極完全態・グレート・モスでプレイヤーにダイレクトアタック! モスパーフェクトハリケーン!」
攻撃の宣言によって巨大な蛾の竜巻攻撃が放たれる。
堂本春男 LP0
リアルソリッドビジョンの衝撃によって堂本春男の体が吹っ飛んだ。