クイーンドームの特別観客席にて遊羽は試合を観戦していた。
特別観客席に空きがある場合、選手はそこを利用することができる。
第八試合目のデュエルの決着がついたことで一回戦が終了した。
遊羽の次の対戦相手は一回戦第二試合の勝者であるレイプデビル
「二戦目の相手が二大決闘強姦魔とは、奴隷杯の時と同じじゃのう」
ミカの言う通り奴隷杯二戦目の相手はセックスデーモン豚島。
強姦悪魔の異名を持つデュエリストであり、レイプデビル
「ですが癲狂院遊羽、19歳。考えようによっては好都合なのでは。君はセックスデーモン豚島を倒している。ならば同じ二大決闘強姦魔のレイプデビル叡傲にも臆せず戦えるでしょう」
「確かにあんたなら決闘強姦魔相手でも普段通りのデュエルができそうね」
奴隷杯を見た上での大瀧と幸の発言。
事実として決闘強姦魔に畏縮するという感覚は遊羽にはない。
「ですが懸念すべき点がないというわけではありません」
おっとりとした口調で指摘したのは明美。
「セックスデーモン豚島は1000人以上の女性を決闘強姦したことで二大決闘強姦魔の称号を手に入れたデュエリスト。強姦数においてはブラックドミノシティ№1とされています」
女性を強姦した数においては、この街においてセックスデーモン豚島の右に出る者はいない。
「それに対してレイプデビル叡傲が決闘強姦した女性の人数は10人。そして犯された女性は全員死んでいる」
だからこそレイプデビル叡傲は強姦数10名でありながら二大決闘強姦魔と呼ばれている。
「そのレイプデビル叡傲という男は人を殺しているのか」
詳細を知らないセレナであれば、そう思っても無理はない。
「いや、それは違う。幾ら何でも10人殺した奴が大腕振って表の大会に出るのは無理」
デュエル犯罪に寛容なブラックドミノシティとはいえ10人もの女性を殺害したとなれば重罪だ。
トップスの市民であれば各所に金をばら撒いて隠蔽できるかもしれないが、レイプデビル叡傲はB区の出身者だったはず。
そもそも決闘強姦魔は基本的に人を殺さない。
強姦だけに留めておけば罪が軽くなり、数か月で出所できるからだ。
賄賂を払えば即日釈放される場合も多いという。
「その二人の方が奴の被害者については詳しいだろう」
黙って話を聞いていたヘルカイザー亮が牛尾と射亜の方を見ながら言った。
裏で活動していただけあって彼もレイプデビル叡傲に強姦された被害者のことを知っているようだ。
「確かに俺たちは奴に犯された……被害者を把握している。だが相手が誰であっても奴がクズの決闘強姦魔であることに変わりはねえ」
「牛尾と同意見だね。まぁレイプデビル叡傲は薄汚いデュエル性犯罪者だけどデュエル殺人鬼ではない。射殺できないのが残念だよ」
セキュリティである牛尾と射亜らしい言葉。
特に女性である射亜は決闘強姦魔に対する嫌悪感というものが強そうだった。
「
複雑そうな表情をしながら口を開いたのはアカデミアの教師である美玲。
聖園叡傲というのはレイプデビル叡傲の本名だったはず。
「もしかして美玲先生の教え子だったりするの」
「いいえ。遊羽さんや亮君と異なり、彼は私が教師になる以前にアカデミアを卒業した生徒です」
B区の出身であるということから予想してはいたが、やはりレイプデビル叡傲もデュエルアカデミアに通っていたようだ。
「聖園叡傲は在学中、一度もデュエルに敗北することなく主席で卒業したと聞いています」
それ程までに凄まじい成績を残したデュエリストならアカデミアで語り継がれてもおかしくはないはず。
だが遊羽が在学した三年間、聖園叡傲の名前を耳にしたことは一度もなかった。
「ですが卒業直後に彼は女性を決闘強姦して逮捕され、決闘王への挑戦権を失うことになった」
それを聞いた時、一瞬だけ表情が固まった。
主席で卒業して決闘王に挑むのは、かつて遊羽にとって何を差し置いても成し遂げるべき目的だった。
それをレイプデビル
怒りではなく困惑、むしろ興味が出たと言ってもいい。
遊羽のような目的がないにしても、トップスの市民権を手にすることができる機会をレイプで手放すのは意味不明だ。
「師匠、気を付けて。多分、あの人はセックスデーモン豚島より強い」
望羽はモニター越しに奴隷杯の試合を観戦していたという。
その上で今回女王杯の一回戦第三試合を見て、同じ二大決闘強姦魔でもレイプデビル
そして、その見立てはおそらく正しい。
セックスデーモン豚島は1000人以上の女性を強姦したレジェンド級決闘強姦魔だが、見方を変えれば自分より立場が弱い女性ばかり狙って勝ち続けたデュエリストとも言える。
一般的な女性は敗北時に強姦されるという条件でデュエルを行うと普段通りのプレイングができないらしい。
結局のところ、決闘強姦魔は性的圧力によってデュエルを有利に進めるハンデ付き強者でしかない。
それは二大決闘強姦魔のセックスデーモン豚島であっても例外ではないということ。
豚島は一流のデュエリストだったが、ヘルカイザー亮のような超一流クラスには決して及ばない。
一方でレイプデビル
つまり少なくともアカデミア在学中無敗の記録と主席での卒業は純粋なデュエルの実力で成し遂げたということ。
アカデミアを次席で卒業した遊羽だからこそ、主席で卒業するということがいかに難しいか分かっている。
「仮にレイプデビル叡傲が君に強制デュエルを仕掛けて犯そうとしたら、私が会場に乱入して奴をデュエルで拘束するよ。射殺はしないが股間の玉二つと棒を銃弾で弾き飛ばす。三発あれば十分だ」
射亜が拳銃を手に取ってくるくると回した。
「生憎だけど、その必要はない。女王杯で決闘強姦なんてしたら失格になる以上、奴もそんな軽率な真似はしないはず」
現に一回戦のレイプデビル叡傲の相手は女性だったが、彼が決闘強姦をするようなことはなかった。
とはいえ気が変わって二回戦で突発的に強制デュエルを仕掛けて強姦に及ぶ可能性もある。
何せ決闘王への挑戦権を放棄してまで女性をレイプした男だ。
だが、だとしてもそれは遊羽にとって何ら問題にならない。
レイプデビル叡傲が失格覚悟で強制デュエルを仕掛けてきて、万が一こちらが敗北したのであれば黙って犯されるだけのこと。
デュエルの結果を拒絶するのはデュエル軽視に他ならないからだ。
どんな形であろうとデュエルの結果は受け入れる。
「それに負ける気はないから」
だがデュエリストとしてデュエルに負けるのは我慢ならない。
「私も君が敗北するとは思っていないさ。ただその娘が不安にならないように言っただけだよ」
望羽を不安にさせないためと言うなら、玉二つと棒を銃で撃つという発言は控えた方がいい気もする。
まあ射亜が決闘強姦魔に対してそれだけ嫌悪感を抱いており、多分それが一般的な女性の感覚なのだろうが。
程なくして二回戦開始時刻の十五分前になったので遊羽は席から立ち上がった。
◇
スタジアムに到着すると既にレイプデビル叡傲の姿があった。
スペインカールの茶髪にダークブラウンの革ジャンを羽織った中年男性。
整った顔立ちながら半笑いのような歪んだ口元が印象的な男だ。
立ち位置について向かい合うもレイプデビル叡傲は何も言ってこない。
セックスデーモン豚島は試合開始前に女がどうだのごちゃごちゃ言ってきたと思うが、この男はこちらにプレッシャーをかけてくる様子はなかった。
試合開始三分前になったタイミングでレイプデビル叡傲が口を開く。
「Ladies' End Gentlemen!!」
非常に流暢な英語の発音である。
アカデミアを主席で卒業しているだけあって英語力は高いようだ。
「突然ですが、ここで皆さんにお伝えすることがあります」
芝居がかった口調のレイプデビル叡傲の声が音声拡張ドローンを通して会場全体に響き渡る。
「俺が女王戦で勝利した後、このクイーンドームのど真ん中で最高のエンタメショーをお見せしましょう」
現在は二回戦であるが、既に優勝して女王戦でも勝つことを前提とした上での発言。
「それは決闘女王の強姦。女王戦で敗北した決闘女王、杠葉色音を皆さんの目の前で公開レイプします!」
両手を広げながら高らかに宣言するレイプデビル叡傲。
一旦、会場が静まり返り、次の瞬間、観客席から鼓膜を破るような怒号が鳴り響いた。
『ふざけんな! この薄汚い決闘強姦魔が!!』
『死ね、このデュエル性犯罪者!!』
『馬鹿野郎! ふざけるな!』
幾つかの怒号が音声拡張ドローンによって拾われてコロシアムにも伝わる。
「……何のつもり?」
「ハンデだ。一回戦は暇潰しにもならなかったんでね。これで会場全体がお前の味方になったぜ」
セックスデーモン豚島が観客を使って圧力をかけてきたのに対し、レイプデビル叡傲が行ったのはその真逆の行為。
「ああ、宣言した内容は本当だ。俺は女王戦で勝った後、決闘女王を公開レイプする。これは決定事項だぜ。どうせ今日も俺は全勝しちまうだろうからな」
それはあまりにも傲慢な態度であったが、自分がデュエルに勝つという思考はデュエリストとしては正しくもある。
まぁ、態度はともかくハンデに関しては不要であるが。
そもそも外野の応援や罵倒など、どちらも等しく無意味で――特別観客席が目に入り一旦思考を打ち切った。
「ていうか、観客が煩くて試合が開始できないんじゃないの」
レイプデビル叡傲に対する罵詈雑言は一向に収まらない。
「あの女王サン、ここまで人気とはね」
この決闘強姦魔としても、ここまで観客が荒れるのは予想外だったようだ。
『皆さん、落ち着いてください。これより試合が……いや、落ち着いてる場合じゃねえ! 死にやがれ! このデュエル性犯罪者野郎!!』
ついに大会のアナウンサーまでもが罵倒に加わる。
どうやら彼も決闘女王のファンらしい。
『試合開始の時間よ。その決闘強姦魔がどのような発言をしたとしても、女王杯の進行が妨げられることがあってはならない』
凛とした決闘女王の声。
それによって観客たちは瞬時に静まり返る。
『この試合がどのような結果になるにせよ、決闘女王に敗北はない。デュエルに負けないのだから決闘強姦魔に犯されることもありません』
自信に満ち溢れた決闘女王の宣言。
『だから皆が怒ったり不安になる必要はないわ』
決闘女王の言葉に観客たちが歓声を上げた。
『流石は決闘女王、何と広い心の持ち主なのでしょう。そして確かに決闘強姦魔の妄言で大会の進行を止めてはなりません。これより第二回戦、第一試合を開始します! 両者、デュエルディスクを起動してください!』
両者のデュエルディスクが展開され、カードプレートがソリッドビジョンによって生成される。
オートシャッフルシステムが起動して、互いのデッキが自動でシャッフルされた。
デュエルディスクによって先攻、後攻が決定される。
害虫 ――
VS
強姦魔王 ――
「「決闘!!」」
先攻をとったのはレイプデビル叡傲だった。
「さて俺の先攻か。それじゃあこの魔法カードを使うとするかね。《予見通帳》を発動」
《予見通帳》はデッキの上からカードを三枚を裏側表示で除外して、それを三回目の自分のスタンバイフェイズに手札に加える魔法カード。
「更に《強欲なカケラ》を発動するぜ」
《強欲なカケラ》は自分のドローフェイズ毎に『強欲カウンター』が二つ置かれる永続魔法。
『強欲カウンター』が二つ以上置かれている《強欲なカケラ》を墓地に送ることで二枚のカードをドローできる。
《予見通帳》と《強欲なカケラ》。どちらも長期戦用のカードだ。
「俺は二枚カードをセットしてから《命削りの宝札》発動。手札が三枚になるようにデッキからドローする」
現在のレイプデビル叡傲には手札がないので、最大数である三枚ドローできる。
「更にカードを二枚セット。そしてモンスターをセット」
「決闘強姦魔がモンスターを裏守備で出した?」
遊羽は僅かに目を細める。
決闘強姦魔は女性を威嚇するため必ずモンスターを攻撃表示で出す。
少なくともこれまでデュエルした決闘強姦魔たちは皆がそうだった。
それは二大決闘強姦魔のセックスデーモン豚島であっても同じだ。
「俺はこれでターン終了。エンドフェイズに《命削りの宝札》の効果で手札を全て捨てなくちゃらねえが」
「あんたの手札は0枚だ」
「そういうこと。よって俺は《命削りの宝札》のデメリットを受けねえ」
《命削りの宝札》には他にも発動ターンにモンスターを特殊召喚できない召喚制限と相手が受ける全てのダメージが0になる効果がある。
それら三つのデメリットを回避しながら、最大ドロー枚数である三枚の手札を増やす。
成程、無駄のないクレバーなプレイングだ。
だが一見正しい選択が大いなる間違い。
破滅へのロードに繋がっていることもある。
「私のターン、ドロー」
引いたカードを遊羽は手札に加えた。
ここで発動するのは初手にあったカード。
決闘女王とのデュエルに備えて用意したウルトラレアカードの一枚。
「魔法カード《ライトニング・ストーム》を発動!」
《ライトニング・ストーム》は自分フィールド場に表側表示のカードが存在しない場合に発動できる魔法カード。
『相手フィールドの攻撃表示モンスターを全て破壊する』か『相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する』のどちらが一つを選んで使用できる。
この状況で選択するのは当然、後者だ。
「あんたの場の魔法、罠カードを全て破壊する」
レイプデビル叡傲の場には《強欲なカケラ》と伏せカードが四枚。
これら全てを失えば彼に残るのは裏守備モンスターが1体のみ。
手札もなく《予見通帳》で除外したカードが手札に加わるのは三ターン後。
事実上の勝敗が決すると言っても過言ではない。
「カウンタートラップ《大革命返し》。フィールド場の二枚以上のカードを破壊する効果を無効にして除外するぜ」
《大革命返し》によって《ライトニング・ストーム》が打ち消された。
「流石に止めてくるか。なら私は永続魔法《大樹海》を発動。そしてプリミティブ・バタフライを特殊召喚」
《プリミティブ・バタフライ》
星5 風属性 昆虫族
攻撃力1200 守備力900
「プリミティブ・バタフライの効果発動。自分フィールド場の昆虫族のレベルを」
「トラップカード《デモンズ・チェーン》。プリミティブ・バタフライの効果を無効にする」
《デモンズ・チェーン》はモンスター1体の効果を無効にして攻撃を封じる永続罠。
これでレイプデビル叡傲の場の伏せカードは残り二枚。
「魔法カード《孵化》発動。プリミティブ・バタフライをリリースしてセイバー・ビートルを特殊召喚」
《セイバー・ビートル》
星6 地属性 昆虫族
攻撃力2400 守備力600
本来であれば《究極変異態・インセクト女王》を出したかったがここは妥協する。
それにこの状況であれば《セイバー・ビートル》も悪くはない。
「バトル! セイバー・ビートルで裏守備モンスターを攻撃。このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、攻撃力が守備力を超えた分だけ貫通ダメージを与える」
《セイバー・ビートル》の攻撃によって裏守備モンスターが表向きになる。
《キラー・トマト》
星4 闇属性 植物族
攻撃力1400 守備力1100
「おっとじゃあ、これを使っとくか。《ガード・ブロック》。戦闘ダメージを0にしてカードを一枚ドローするぜ」
《セイバー・ビートル》によって《キラー・トマト》が戦闘破壊される。
「この瞬間、キラー・トマトの効果発動。デッキから攻撃力1500以下の闇属性モンスター1体を攻撃表示で特殊召喚できる。俺はレジェンド・デビルを特殊召喚」
《レジェンド・デビル》
星6 闇属性 悪魔族
攻撃力1500 守備力1800
それは一回戦でもレイプデビル叡傲が使用していたモンスター。
この決闘強姦魔は《レジェンド・デビル》のみを攻撃要員にして一回戦を突破している。
「さて、しっかりと手抜きはしてやるが、果たしてお前は俺の暇潰し相手になるかね」
ブラックドミノシティ二大決闘強姦魔、レイプデビル叡傲が半笑いを浮かべた。