クイーンドームデュエルスタジアム。
準決勝出場者である両選手がデュエル場に足を踏み入れたのは、ほぼ同時だった。
遊羽が入場した時、反対側の選手入り口から対戦相手が入ってくるのが目に入る。
右側が茶髪で左半分を白く染めているツーサイドアップの女性。
無名のデュエリスト、ユウミ。
向かい合って先に口を開いたのはユウミだった。
「あなたは何故、女王杯に参加したのですか」
このユウミという女性はこれまでの試合で対戦相手にこのような問いかけをしてはいなかった。
準決勝だから問うたのか、或いは他に理由があるのか。
「女王戦で決闘女王とデュエルして勝つため」
真剣な面持ちで問われたこともあって、遊羽も真剣な回答を返す。
観客席の決闘女王のファンがブーイング気味にざわつくが外野のリアクションはどうでもいい。
「……わかりました。ではあなたの代わりに私が決闘女王を倒しましょう」
この発言で更に決闘女王のファンが声を荒げるが、ユウミも気にしている様子はなかった。
「悪いけど決闘女王は私が倒さなくちゃならない」
それを聞いてユウミは悲しそうな顔をする。
「それは無理です。あなたは私に勝つことはできないのですから」
その声には憐憫が含まれていた。
『両選手意気込みだけは十分なようです。それでは準決勝を開始します。双方デュエルディスクを展開してください』
若干苛立ちを含んだ口調でアナウンサーが試合開始を宣言する。
そう言えば、この司会者の男性も決闘女王のファンだったか。
両者のデュエルディスクが展開され、カードプレートがソリッドビジョンによって生成される。
オートシャッフルシステムが起動して、互いのデッキが自動でシャッフルされた。
デュエルディスクによって先攻、後攻が決定される。
害虫 ――
VS
ユウミ / LP4000
「「決闘!!」」
先攻をとったのは遊羽だった。
「私のターン。モンスターをセット」
まずは裏側守備表示でモンスター1体を場に出す。
「カードを二枚セットしてターンエンド」
「私のターン、ドロー。フィールド魔法《ユニオン格納庫》を発動。その効果でデッキからY-ドラゴン・ヘッドを手札に加えます」
《ユニオン格納庫》は発動時の効果処理としてデッキから機械族、光属性ユニオンモンスター1体を手札に加える事ができるフィールド魔法。
「自分フィールド上にモンスターがいない時、このカードは手札から特殊召喚できます。カイザー・ブラッド・ヴォルスを攻撃表示!」
《カイザー・ブラッド・ヴォルス》
星5 闇属性 獣戦士族
攻撃力1900 守備力1200
「続けてY-ドラゴン・ヘッドを召喚」
《Y-ドラゴン・ヘッド》
星4 光属性 機械族
攻撃力1500 守備力1600
「《ユニオン格納庫》の第二の効果。召喚した機械族、光属性ユニオンモンスターに装備可能な新たなユニオンをデッキから装備します。Y-ドラゴン・ヘッドにZ-メタル・キャタピラーを装備。攻撃力と守備力を600アップ」
《Y-ドラゴン・ヘッド》
攻撃力1500→2100 守備力1600→2200
「永続魔法《X・Y・Zコンバイン》を発動。そして《Y-ドラゴン・ヘッド》と《Z-メタル・キャタピラー》を除外することにより、エクストラデッキからYZ-キャタピラー・ドラゴンを特殊召喚!」
《YZ-キャタピラー・ドラゴン》
星6 光属性 機械族
攻撃力2100 守備力2200
「《X・Y・Zコンバイン》の効果。自分の機械族、光属性のユニオンが除外された時、デッキからX-ヘッド・キャノンを特殊召喚」
《X-ヘッド・キャノン》
星4 光属性 機械族
攻撃力1800 守備力1500
「手札を一枚捨てることでYZ-キャタピラー・ドラゴンの効果発動。あなたの場の裏側守備表示モンスターを破壊します」
「永続トラップ《デモンズ・チェーン》。このカードでYZ-キャタピラー・ドラゴンの効果は無効化され、攻撃宣言はできなくなる」
「ならば墓地に捨てた《錬装融合》の効果発動。このカードをデッキに加えてシャッフルすることで一枚ドローします」
手札コスト1枚分のディスアドバンテージを即座にリカバリーしてくる。
「《X・Y・Zコンバイン》第二の効果を発動。YZ-キャタピラー・ドラゴンをデッキに戻すことで除外されている《Y-ドラゴン・ヘッド》と《Z-メタル・キャタピラー》を特殊召喚」
《Y-ドラゴン・ヘッド》
星4 光属性 機械族
攻撃力1500 守備力1600
《Z-メタル・キャタピラー》
星4 光属性 機械族
攻撃力1500 守備力1300
「私のフィールド上の《X-ヘッド・キャノン》《Y-ドラゴン・ヘッド》《Z-メタル・キャタピラー》を除外することによりXYZ-ドラゴン・キャノンを特殊召喚!!」
《XYZ-ドラゴン・キャノン》
星8 光属性 機械族
攻撃力2800 守備力2600
三体のユニオンモンスターが合体して最上級機械族モンスターへと変形した。
「XYZ-ドラゴン・キャノンの効果。手札を一枚捨ててフィールド上のカード一枚を破壊します。対象はあなたの場の裏側守備モンスター。ハイパー・デストラクション!」
「速攻魔法《禁じられた聖杯》。XYZ-ドラゴン・キャノンの効果を無効にして攻撃力を400アップする」
《XYZ-ドラゴン・キャノン》
攻撃力2800→3200
「これも止めましたか。ならばバトルといきましょう。カイザー・ブラッド・ヴォルスでセットされたモンスターを攻撃!」
《共鳴虫》
星3 地属性 昆虫族
攻撃力1200 守備力1300
「カイザー・ブラッド・ヴォルスの効果発動。戦闘でモンスターを破壊した時、攻撃力を500ポイントアップします」
《カイザー・ブラッド・ヴォルス》
攻撃力1900→2400
「共鳴虫の効果発動。戦闘破壊された時、攻撃力1500以下の昆虫族モンスターを特殊召喚する。二体目の共鳴虫を特殊召喚」
《共鳴虫》
星3 地属性 昆虫族
攻撃力1200 守備力1300
「バトルフェイズを終了します」
《XYZ-ドラゴン・キャノン》で追撃してくれば墓地を肥やしつつ《アルティメット・インセクトLV3》をリクルートして、返しのターンに《アルティメット・インセクトLV5》を特殊召喚できたのだが、この準決勝まで残っているだけあって、そんなぬるいプレイングはしてこないようだ。
「カードを二枚セットしてターンエンド」
「私のターン、ドロー。魔法カード《マジック・プランター》。永続罠の《デモンズ・チェーン》を墓地に送って二枚ドロー」
まずは無意味に場に残った《デモンズ・チェーン》をコストにして手札を補充する。
「ジャイアント・メサイアを召喚」
《ジャイアント・メサイア》
星3 地属性 昆虫族
攻撃力1200 守備力1500
「ジャイアント・メサイアの効果発動。墓地から共鳴虫を攻撃力と守備力を500アップする装備カードとして装備する」
《ジャイアント・メサイア》
攻撃力1200→1700 守備力1500→2000
「装備カードを装備した守備力2000の昆虫族モンスターをリリースして、エクストラデッキから完全態・グレート・インセクトを特殊召喚!」
《完全態・グレート・インセクト》
星9 地属性 昆虫族
攻撃力3000 守備力2600
「速攻魔法《非常食》を発動!《ユニオン格納庫》を墓地に送りライフを1000回復します」
ユウミ LP5000
おそらくユウミの真の狙いはライフを回復することではなく、フィールド魔法である《ユニオン格納庫》を処理すること。
《完全態・グレート・インセクト》は場にフィールド魔法がある時、バトルフェイズに相手の場のモンスターを全て破壊できる効果がある。
この効果は女王杯では一度も見せていないにもかかわらず、このユウミという女性は適切に対処してきた。
「だったらグレート・インセクトでXYZ-ドラゴン・キャノンを攻撃!」
「速攻魔法《収縮》を発動。完全態・グレート・インセクトの攻撃力を半減」
《完全態・グレート・インセクト》
攻撃力3000→1500
「グレート・インセクトは戦闘では破壊されない」
「ですがダメージは受けてもらいます」
インセクト遊羽 LP2700
「カードを一枚セットしてターンエンド」
ここで《XYZ-ドラゴン・キャノン》を破壊できなかった以上、返しのターンで効果を使用されれば《完全態・グレート・インセクト》は破壊される。
だが現在のユウミの手札は0枚であり、次にカードをドローしても一枚。
《XYZ-ドラゴン・キャノン》の欠点は手札消費が激しいことであり、そう気軽に何度も効果を連発することはできないはずだ。
「私のターン、ドロー。魔法カード《命削りの宝札》。手札が三枚になるようにデッキからドローします」
その手札コストの問題をユウミはいとも容易く解決してみせた。
「手札を一枚捨てることでXYZ-ドラゴン・キャノンの効果発動。完全態・グレート・インセクトを破壊。ハイパー・デストラクション!!」
《XYZ-ドラゴン・キャノン》の砲撃で《完全態・グレート・インセクト》が木っ端微塵に砕け散る。
「バトル! カイザー・ブラッド・ヴォルスで共鳴虫を攻撃! 戦闘でモンスターを破壊したので、更に攻撃力が500ポイントアップ」
《カイザー・ブラッド・ヴォルス》
攻撃力2400→2900
「共鳴虫の効果発動。デッキからアルティメット・インセクトLV3を特殊召喚」
《アルティメット・インセクトLV3》
星3 風属性 昆虫族
攻撃力1400 守備力900
「XYZ-ドラゴン・キャノンでアルティメット・インセクトLV3を攻撃!」
「トラップカード発動!《進入禁止!No Entry!!》。フィールド上に攻撃表示で存在するモンスター全てを守備表示にする」
これによって《XYZ-ドラゴン・キャノン》と《カイザー・ブラッド・ヴォルス》は守備表示になった。
「私はカードを二枚セットしてターンを終了します」
エンドフェイズ時《命削りの宝札》の効果によって手札を全て捨てる必要があるが、現在のユウミに手札はない。
「私のターン、ドロー。アルティメット・インセクトLV3の効果発動。このカードを墓地に送ることでアルティメット・インセクトLV5を特殊召喚!」
《アルティメット・インセクトLV5》
星5 風属性 昆虫族
攻撃力2300 守備力900
「この効果で特殊召喚されたアルティメット・インセクトLV5が場にいる限り、相手フィールド場の全てのモンスターの攻撃力は500ダウンする」
《XYZ-ドラゴン・キャノン》
攻撃力2800→2300
《カイザー・ブラッド・ヴォルス》
攻撃力2900→2400
伏せカード二枚は気がかりだが《進入禁止!No Entry!!》によって相手の場のモンスターを処理する布石は打った。
「このカードは私の墓地に存在するモンスターが昆虫族の場合のみ、相手フィールド場に表側守備表示で存在するモンスター二体を墓地に送り特殊召喚できる。《XYZ-ドラゴン・キャノン》と《カイザー・ブラッド・ヴォルス》を墓地送りにしてマザー・スパイダーを特殊召喚!」
《マザー・スパイダー》
星6 闇属性 昆虫族
攻撃力2300 守備力1200
「バトル! マザー・スパイダーでプレイヤーにダイレクトアタック!」
「速攻魔法《銀龍の轟咆》。このカードによって私は墓地のドラゴン族、通常モンスター1体を特殊召喚します」
対象のモンスターを捨てたタイミングは《XYZ-ドラゴン・キャノン》の効果を発動した時のコストか。
だがこれまでの女王杯の試合でユウミが通常モンスターのドラゴン族を使用した場面は一度もなかった。
「私が墓地から蘇生するのは……青眼の白龍!!」
《青眼の白龍》
星8 光属性 ドラゴン族
攻撃力3000→2500 守備力2500
《青眼の白龍》は世界に四枚しか存在しない激レアカードであり、その内三枚は龍堂院麗華が所持している。
つまりこれは四枚目。
最後の《青眼の白龍》が女王杯の舞台に降り立った。