切り札はゴキボール   作:白銀蟷螂

85 / 100
未知なる青眼

 インセクト遊羽 / LP2700

 

    VS

 

   ユウミ   /  LP5000

 

 

 《銀龍の轟咆》によりユウミの場に特殊召喚されたのは、世界に四枚しか存在しないとされるレアカード《青眼の白龍》だった。

 

 《青眼の白龍》

 星8 光属性 ドラゴン族

 攻撃力3000→2500 守備力2500

 

 一方で遊羽の場には二体の昆虫族上級モンスターがいる。

 

 《アルティメット・インセクトLV5》

 星5 風属性 昆虫族

 攻撃力2300 守備力900

 

 《マザー・スパイダー》

 星6 闇属性 昆虫族

 攻撃力2300 守備力1200

 

 《青眼の白龍》の攻撃力は《アルティメット・インセクトLV5》の効果によって500下がり2500になっているが、それでも二体の昆虫族モンスターの攻撃力を上回っている状態。

 現在の遊羽の手札は《超進化の繭》と《鉄鋼装甲虫》の二枚であり、ここは攻撃を断念せざるを得ない。

 

「私はターンエンド。あんたのターンだ」

「青眼の白龍を前にしても恐れはないのですね」

「生憎だけどブルーアイズの相手は慣れてる。何度か倒したこともある」

 

 無論、だからと言って油断はしないが、委縮する程のモンスターではない。

 《青眼の白龍》の真骨頂は三体融合にある。

 攻撃力4500で三回攻撃可能な《真青眼の究極竜》は驚異的なモンスターだが《青眼の白龍》自体は効果を持たない攻撃力3000のモンスター。

 単体性能であれば《青眼の白龍》を上回る最上級モンスターはいくらでもいる。

 

「それはあなたが青眼の白龍を使うに値しない紛い物の使い手を相手にしてきたからです」

 

 ユウミの声には怒りが含まれていた。

 

「だけどそのブルーアイズ四枚目だよね。あんたは一枚しか《青眼の白龍》を持ってないはずだ」

 

 龍堂院麗華が《青眼の白龍》を三枚所持しているのは今では有名であり、仮にあの令嬢が《青眼の白龍》を強奪されるようなことがあれば、表でも裏でも話題になるはずだ。

 そういった話は聞かない以上、このユウミという女性が龍堂院麗華から三枚の《青眼の白龍》を奪ったという可能性は低い。

 

「確かに私のデッキに青眼の白龍は一枚のみ。ですがそのような不完全な状態であっても本物は偽物を凌駕する」

 

 確固たる自信に満ち溢れた言葉だった。

 

「私のターン、ドロー。バトル! 青眼の白龍でアルティメット・インセクトLV5を攻撃! 滅びのバーストストリーム!!」

 

 《青眼の白龍》の光線攻撃によって《アルティメット・インセクトLV5》が木っ端微塵に砕け散った。

 

 インセクト遊羽 LP2500

 

 《アルティメット・インセクトLV5》が戦闘破壊されたことによって《青眼の白龍》の攻撃力は元に戻る。

 

 《青眼の白龍》

 攻撃力2500→3000

 

「ターンを終了します」

「私のターン、ドロー!」

 

 引いたカードを遊羽は即座に発動した。

 

「魔法カード《トレード・イン》。手札からレベル8のモンスター、鉄鋼装甲虫を捨てて二枚ドロー」

 

 最上級モンスターをコストにして手札交換を行う。

 

「魔法カード《貪欲な壺》を発動。完全態・グレート・インセクト、アルティメット・インセクトLV3、アルティメット・インセクトLV5、ジャイアント・メサイア、共鳴虫の五枚をデッキに戻すことで二枚ドロー!」

 

 《貪欲な壺》は墓地のカード五枚をデッキに戻すことで二枚ドローすることができる魔法カード。

 

「魔法カード《孵化》。マザー・スパイダーをリリースしてデッキから究極変異態・インセクト女王を特殊召喚!」

 

 《究極変異態・インセクト女王》

 星7 地属性 昆虫族

 攻撃力2800 守備力2400

 

「プチモスを攻撃表示」

 

 《プチモス》

 星1 地属性 昆虫族

 攻撃力300 守備力200

 

「《災いの装備品》をプチモスに装備。このカードを装備されたモンスターは私のフィールド場のモンスター1体につき攻撃力が600ポイントダウンする」

 

 《プチモス》

 攻撃力300→0

 

「速攻魔法《超進化の繭》を発動! 装備カードを装備した昆虫族モンスターをリリースすることにより、デッキから召喚条件を無視して新たな昆虫族モンスターを特殊召喚する」

 

 《超進化の繭》によって《プチモス》が黄金の繭に包まれる。

 呼び出されるのは遊羽のデッキにおける最大の攻撃力を誇るインセクトカード。

 召喚口上を遊羽は高らかに言い放つ。

 

「地べた這いずる虫けらも

 ――羽虫となって(ソラ)を舞う!」

 

 黄金の繭から巨大な蛾のモンスターが姿を現す。

 

「究極完全態・グレート・モスを特殊召喚!!」

 

 《究極完全態・グレート・モス》

 星8 地属性 昆虫族

 攻撃力3500 守備力3000

 

「《災いの装備品》の効果発動。墓地に送られた時、相手フィールド場のモンスターにこのカードを装備する。対象は青眼の白龍」

 

 《青眼の白龍》

 攻撃力3000→1800

 

「墓地の《超進化の繭》を除外して効果発動。共鳴虫をデッキに戻して一枚ドロー」

 

 引いたカードは《蝕みの鱗粉》。

 

「バトル! 究極完全態・グレート・モスでプレイヤーにダイレクトアタック! モスパーフェクトハリケーン!」

 

 巨大な蛾の竜巻攻撃によって伝説の龍は木っ端微塵に砕け散った。

 

 ユウミ LP3300

 

「究極変異態・インセクト女王でプレイヤーにダイレクトアタック!」

「トラップカード《カウンター・ゲート》! 直接攻撃を無効にしてカードを一枚ドロー!」

 

 現在の《究極変異態・インセクト女王》は相手の効果の対象にならず、効果では破壊されない状態だが《カウンター・ゲート》は対象をとる効果でも破壊効果でもない。

 

「カードを一枚セットしてターンエンド」

「私のターン、ドロー。魔法カード《調和の宝札》を発動。手札から太古の白石を捨てて二枚ドロー!」

 

 引いたカードを見たユウミの表情が僅かに強張った。

 

「……ここから先は青眼の白龍の真なる使い手として実力を見せましょう。まずは墓地の太古の白石を除外することで、墓地から青眼の白龍を手札に戻します」

 

 ここで《太古の白石》を除外した場合、エンドフェイズ時にデッキから《青眼の白龍》を特殊召喚する方の効果は使えないが、デッキに《青眼の白龍》が一枚しかないのであれば躊躇いはないか。

 

「このカードは手札の青眼の白龍を相手に見せることで特殊召喚できます」

「……何?」

 

 遊羽の知る限り、そのような条件で特殊召喚できるモンスターは存在しない。

 

「青眼の亜白龍を特殊召喚!!」

 

 《青眼の亜白龍》

 星8 光属性 ドラゴン族

 攻撃力3000 守備力2500

 

「……青眼の……亜白龍?」

 

 舞い降りた新たな白いドラゴンを前にして遊羽は目を見開く。

 在学中デュエルアカデミアのライブラリで現存する全てのカードの知識を習得した。

 その中に《青眼の亜白龍》という名前のカードはなかった。

 

 VIP観戦ルームに視線を向ける。

 そこにいる決闘女王、杠葉色音は驚きの表情を見せていた。

 あれが演技ではないことは、長い付き合いの遊羽だからこそわかる。

 現在の状況は決闘女王にとってもイレギュラーであるということ。

 

「トラップカード《蝕みの鱗粉》発動! 究極完全態・グレート・モスに装備カード扱いで装備する。このカードが装備されている限り、相手はこの装備モンスター以外の昆虫族を攻撃できない」

「青眼の亜白龍のカード名はフィールド、墓地に存在する限り《青眼の白龍》として扱います。そして攻撃を放棄することで相手モンスター1体を破壊することができますが」

「究極変異態・インセクト女王の効果でこのカード以外の昆虫族がいる時、私の場の昆虫族モンスターは効果の対象にならず、効果では破壊されない」

 

 《蝕みの鱗粉》による対処が有効だったと確信する。

 《青眼の亜白龍》に攻撃力で劣る《究極変異態・インセクト女王》は《究極完全態・グレート・モス》がいる限り攻撃対象に選択されず、《究極変異態・インセクト女王》がいる限り《究極完全態・グレート・モス》は効果では破壊されない。

 

「《トレード・イン》を発動。手札から青眼の白龍を捨てて二枚ドローします」

「《蝕みの鱗粉》の効果。相手が召喚、特殊召喚、魔法、罠、モンスター効果を発動するたびに、相手の場のモンスター全てに鱗粉カウンターを一つずつ置く。そして鱗粉カウンターの数だけ攻撃力、守備力が100ダウンする」

 

 《青眼の白龍(青眼の亜白龍)》

 攻撃力3000→2900 守備力2500→2400

 

「魔法カード《死者蘇生》発動!」

 

 《青眼の白龍(青眼の亜白龍)》

 攻撃力2900→2800 守備力2400→2300

 

「墓地から青眼の白龍を特殊召喚!」

 

 《青眼の白龍》

 星8 光属性 ドラゴン族

 攻撃力3000→2900 守備力2500→2400

 

 《青眼の白龍》が再びユウミの場に蘇生された。

 

 《青眼の白龍(青眼の亜白龍)》

 攻撃力2800→2700 守備力2300→2200

 

 鱗粉カウンターの蓄積によって《青眼の亜白龍》の攻撃力が《究極変異態・インセクト女王》を下回る。

 

「自分フィールド上の二体の青眼の白龍を墓地に送ることで、青眼の双爆裂龍をエクストラデッキから特殊召喚!!」

 

 《青眼の双爆裂龍》

 星10 光属性 ドラゴン族

 攻撃力3000→2900 守備力2500→2400

 

「また、知らないブルーアイズ」

 

 『青眼』の融合モンスターは《真青眼の究極竜》と《青眼の究極竜》の二種類だけのはずだ。

 《青眼の白龍》二体による融合体など、ブラックマーケットでもそのようなカードが出品された履歴はない。

 

「バトル! 青眼の双爆裂龍で究極完全態・グレート・モスを攻撃!」

「迎え撃って! 究極完全態・グレート・モス! モスパーフェクトハリケーン!!」

 

 見たところ《青眼の双爆裂龍》なる融合モンスターの攻撃力は《青眼の白龍》と同じ。

 だがこうして攻撃してきた以上、何かしらの特殊能力があるのは間違いない。

 

 ユウミ LP2700

 

「青眼の双爆裂龍は戦闘では破壊されない。そしてこのカードの攻撃で相手モンスターが破壊されなかったダメージステップ終了時に、そのカードを除外します」

「何!?」

 

 破壊ではなく除外では《究極変異態・インセクト女王》による耐性も機能しない。

 

「更に青眼の双爆裂龍は一度のバトルフェイズで二回までモンスターに攻撃できます」

「連続攻撃能力までっ!」

 

 遊羽は舌打ちを堪えた。

 効果を把握していない未知の青眼により盤面が崩壊する。

 

「青眼の双爆裂龍で究極変異態・インセクト女王に攻撃!」

 

 青い瞳を持つ双頭の龍の攻撃によって昆虫の女王が木っ端微塵に砕け散った。

 

 インセクト遊羽 LP2300

 

「理解できましたか。これが青眼の白龍の本来の力です。紛い物の使い手ではこの美しいモンスターの真価を発揮することはできない」

 

 それに関しては認めざるを得なかった。

 このユウミという女性は龍堂院麗華より圧倒的格上のブルーアイズ使いだ。

 

「私はこれでターンエンド。さぁ遊羽、あなたのターンです」

 

 恩師から渡された《究極完全態・グレート・モス》と弟子から託された《究極変異態・インセクト女王》。

 二体のエースモンスターが粉砕された状況で、現在の遊羽の手札は0枚。

 墓地で効果を発動できるカードもない。

 

「私のターン」

 

 次のドローに全てがかかっていた。

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