決勝戦開始前。
試合場に向かうためクイーンドームの廊下を歩く遊羽を背後から呼び止める者がいた。
「師匠!」
白いワンピースを着たベージュ色の髪の少女、三条望羽。
遊羽の事を師匠と慕う現在の弟子だ。
「何の用、望羽」
「観客席での様子が普段と少し違ったから」
「そっか。ありがとう」
自らのことを気遣ってくれた弟子の頭を優しく撫でる。
望羽が嬉しそうに顔を綻ばせた。
「確かに、いつもより緊張してる。バンデット・キースはこれまで女王杯で戦った誰よりも強い」
ブラックドミノシティ二大決闘強姦魔、聖園叡傲。
ヨーロッパ無敗の貴公子、ジークフリード・フォン・シュレイダー。
未知なるブルーアイズ使い、ユウミ。
女王杯における対戦相手だった三名に誰一人として容易く勝てた相手はいなかった。
だがキース・ハワードはそんな超一流のデュエリストたちを上回る存在。
「いや、それは違うか」
キースがその三人より強いかは、実際に本人同士でデュエルが行われたわけではないので確定はしていない。
遊羽とのデュエルだけ見ても、レイプデビル叡傲は手抜きをしていたし、ジークのワルキューレはワンキル特化、ユウミに至っては他にも未知の青眼を所持しているようだった。
「私がキース・ハワードというデュエリストに、その三人に限らず、これまで戦った誰よりも強くあってほしいと思っているんだ」
◇
女王杯、決勝戦。
自己強化とメタル化を施された《デモニック・モーター・Ω》により《アーマード・ビー》が戦闘破壊された。
両モンスターの攻撃力の差分のダメージが遊羽のライフから差し引かれる。
インセクト遊羽 LP1400
「何?」
「あんたのメタル化にチェーンして私もダメージステップ時に伏せカードを発動した。速攻魔法《収縮》。これでデモニック・モーター・Ωの元々の攻撃力は半分になる」
《デモニック・モーター・Ω》
攻撃力5250→3850
「更に《大樹海》の効果発動。デッキから応戦するGを手札に加える。そしてデモニック・モーター・Ωはエンドフェイズに自身の効果でメタル化の装備カード諸共自壊する」
そうなればキースに残るのは《モータートークン》と手札一枚のみ。
「言ったはずだぜ、デメリットは問題ねえと。魔法カード《アドバンスドロー》。デモニック・モーター・Ωをリリースして二枚ドローだ!」
例えこのターンで決めきれなかったとしてもリソースを回復する手段があったということか。
「モータートークンをリリースしてブローバック・ドラゴンをアドバンス召喚!」
《ブローバック・ドラゴン》
星6 闇属性 機械族
攻撃力2300 守備力1200
現れたのは《リボルバー・ドラゴン》と同じ機械龍のマシーンモンスター。
《リボルバー・ドラゴン》より攻撃力は劣るが、モンスターだけでなく魔法、罠ゾーンのカードも二分の一の確率で破壊する効果がある。
「てめえの場の《大樹海》を対象として、ブローバック・ドラゴンの効果を発動!」
だが発砲音は鳴らず不発。破壊効果はまたしても失敗。
遊羽は特別ギャンブルに強いわけではないが、このデュエルに限れば異常なまでの偏りだった。
「ならば魔法カード《迫りくる機械》を発動!」
《迫りくる機械》は『メタル化・強化反射装甲』のカード名が記されたモンスター1体か『メタル化』罠カード1枚を自分のデッキ、墓地から手札に加える魔法カード。
「俺様が手札に加えるのは《悪魔獣デビルゾア》。こいつは手札から守備表示で特殊召喚することができる」
《悪魔獣デビルゾア》
星7 闇属性 悪魔族
攻撃力2600 守備力1900
「この効果で悪魔獣デビルゾアを出した時、てめえは手札からモンスター1体を特殊召喚してもいいぜ」
現在の遊羽の手札は先ほど《大樹海》の効果でサーチした《応戦するG》一枚のみ。
「……私はモンスターを出さない」
守備表示で特殊召喚することは可能だが、ここは温存することを選択。
「悪魔獣デビルゾアの効果で、デッキから《メタル化・強化反射装甲》を俺様のフィールドにセットだ」
伏せられたのは三種類目の『メタル化』カード。
「俺はこれでターンエンド」
「私のターン、ドロー」
「この瞬間、トラップカード発動。《メタル化・強化反射装甲》! 悪魔獣デビルゾアをリリースしてデッキから《メタル・デビルゾアX》を特殊召喚!!」
《メタル・デビルゾアX》
星8 闇属性 機械族
攻撃力3000 守備力2300
《メタル化・強化反射装甲》によって悪魔族だった《悪魔獣デビルゾア》が機械族の《メタル・デビルゾアX》へと変貌を遂げる。
《メタル・デビルゾアX》は1ターンに二度まで相手が魔法、モンスター効果を発動した時、相手フィールド上の表側表示モンスターを破壊できる効果を持つ凶悪なマシーンモンスターだ。
「そして《メタル化・強化反射装甲》は《メタル・デビルゾアX》の装備カードとなって場に残る」
《メタル・デビルゾアX》
攻撃力3000→3400 守備力2300→2700
装備カードとなった《メタル化・強化反射装甲》の効果によって《メタル・デビルゾアX》の攻撃力、守備力は400ポイントアップして、魔法、モンスターの効果では破壊されず、相手の魔法、モンスターの効果の対象にはならなくなる。
「私は永続トラップ《血肉の代償》を発動」
《血肉の代償》はライフポイントを払って召喚権を増やせる永続罠だが、今回はその効果を使用するのが目的ではない。
「魔法カード《マジック・プランター》。《血肉の代償》を墓地に送って二枚ドロー! 更にモンスターをセット」
前のターンに《大樹海》でサーチした《応戦するG》を裏側守備表示で場に出す。
「カードを二枚セットしてターンエンド」
「防戦一方だな。だが容赦しねえぜ! 俺様のターン、ドロー!」
「1000ポイントライフを払い、永続トラップ《スキルドレイン》を発動」
インセクト遊羽 LP400
「《スキルドレイン》の効果でフィールド上の表側表示モンスターの効果は無効化される」
ライフをギリギリまで減らす形になるとはいえ、これで《メタル・デビルゾアX》と《ブローバック・ドラゴン》の効果は封じた。
尚且つ墓地で効果を発動する《応戦するG》は《スキルドレイン》の影響を受けない。
「《アイアンドロー》でカードを二枚ドロー! 俺様の場にメタル化トラップカードがある時、墓地の《迫りくる機械》を除外して、てめえの場のモンスター1体を攻撃表示にできる」
《応戦するG》
星4 地属性 昆虫族
攻撃力1400 守備力1400
「今度こそ終わりだ。メタル・デビルゾアXで応戦するGを攻撃!」
耐魔法装甲を施された悪魔獣がゴキブリを捻りつぶすべく突撃してくる。
「トラップカード《攻撃の無敵化》。私がこのターン受けるダメージは0になる」
《メタル・デビルゾアX》により《応戦するG》が戦闘破壊された。
「応戦するGの効果発動。デッキから
「俺様はターンエンド」
「私のターン、ドロー」
引いたカードを見て遊羽は薄く笑った。
「甲虫装甲騎士を攻撃表示!」
《
星4 地属性 昆虫族
攻撃力1900 守備力1500
「
《
攻撃力1900→3400 守備力1500→3500
「甲虫装甲騎士でブローバック・ドラゴンを攻撃!」
バンデット・キース LP2000
「俺様の場の機械族、闇属性モンスターが破壊された時、このカードは手札から特殊召喚できる。来な、デスペラード・リボルバー・ドラゴン!!」
《デスペラード・リボルバー・ドラゴン》
星8 闇属性 機械族
攻撃力2800 守備力2200
姿を現したのは《リボルバー・ドラゴン》と同型の機械龍。
出し易い特殊召喚条件と高いステータスを兼ね備えた最上級マシーンモンスターだ。
バトルフェイズ中に最大三体までロシアン・ルーレットで相手モンスターを破壊できるという凶悪な効果が《スキルドレイン》で封じられているのが、せめてもの救いか。
「速攻魔法《超進化の繭》発動! 装備カードが装備された昆虫族をリリースしてデッキから新たな昆虫族モンスターを呼び出す!」
《昆虫機甲鎧》を装備した《甲虫装甲騎士》が黄金の繭に包まれる。
「地べた這いずる虫けらも
――羽虫となって
黄金の繭から新たな巨大な蛾のモンスターが姿を現した。
「究極完全態・グレート・モスを特殊召喚!」
《究極完全態・グレート・モス》
星8 地属性 昆虫族
攻撃力3500 守備力3000
「究極完全態・グレート・モスでメタル・デビルゾアXを攻撃、モスパーフェクトハリケーン!!」
巨大な蛾の繰り出す竜巻攻撃によって、メタル化した悪魔獣は木端微塵に砕け散った。
バンデット・キース LP1900
「墓地の《超進化の繭》を除外して効果発動。ゴキポールをデッキに戻して一枚ドロー」
引いたカードは《リビングデッドの呼び声》。
「カードをセットしてターンエンド」
最後の手札を伏せてからエンド宣言した。
「俺様のターン」
ドローしたカードをキースが即座に発動する。
「魔法カード《7カード》!」
《7カード》は機械族モンスターの攻撃力か守備力を700ポイントアップする装備魔法。
「デスペラード・リボルバー・ドラゴンの攻撃力を700アップ」
《デスペラード・リボルバー・ドラゴン》
攻撃力2800→3500
これによって《究極完全態・グレート・モス》と《デスペラード・リボルバー・ドラゴン》の攻撃力が並んだ。
「バトル! デスペラード・リボルバー・ドラゴンで究極完全態・グレート・モスを攻撃!」
「迎え撃って! 究極完全態・グレート・モス!」
機械龍の銃撃と巨大な蛾の竜巻攻撃がぶつかり合って相殺、その余波で両方のモンスターが破壊された。
「デスペラード・リボルバー・ドラゴンが墓地に置かれたことで、デッキからリボルバー・ドラゴンを手札に加えるぜ」
「ならこっちは《大樹海》の効果でデビルドーザーを手札に」
これでお互いの場にはモンスターがいなくなった状態。
「魔法カード《闇の誘惑》。デッキからカードを二枚ドローして手札の闇属性モンスター1体を除外する。俺様が除外するのはリボルバー・ドラゴン」
現在のキースの手札は二枚。
「カードを二枚セットしてターンエンド」
「私のターン、ドロー。墓地からアーマード・ビーと応戦するGを除外してデビルドーザーを特殊召喚!」
《デビルドーザー》
星8 地属性 昆虫族
攻撃力2800 守備力2600
キースのライフは1900であり、直接攻撃が決まれば0にすることができる。
「バトル! デビルドーザーでプレイヤーにダイレクトアタック!」
「トラップカード発動!《闇次元の解放》!」
《闇次元の解放》は除外されている自分の闇属性モンスター1体を特殊召喚できる永続罠。
「俺様はリボルバー・ドラゴンを攻撃表示で特殊召喚!!」
《リボルバー・ドラゴン》
星7 闇属性 機械族
攻撃力2600 守備力2200
《デビルドーザー》に攻撃力で劣る《リボルバー・ドラゴン》を攻撃表示で出してきた以上、残り一枚の伏せカードはおそらく攻撃力を増加させるカード。
「デビルドーザーでリボルバー・ドラゴンを攻撃する!」
それを理解した上で攻撃の続行を選択。
「今度こそジ・エンドだぜ、癲狂院。俺様がダメージステップに発動するのはこのカード。《リミッター解除》!!」
《リミッター解除》は自分フィールド上の機械族モンスター全ての攻撃力を二倍にする速攻魔法。
《リボルバー・ドラゴン》の元々の攻撃力は2600であり、それを二倍にすると5200。
デメリットとして《リミッター解除》の効果が適応されたモンスターはエンドフェイズに破壊されるが、現在の遊羽のライフは400。
攻撃力2800の《デビルドーザー》が戦闘破壊された瞬間、ライフは0になる。
伏せている《リビングデッドの呼び声》は自分の墓地からモンスター1体を攻撃表示で特殊召喚する永続罠。
ダメージステップに発動できないカードであり、そもそもこの攻防を覆せる効果ではない。
「反撃しろ! リボルバー・ドラゴン! ガン・キャノンショット!!」
制限回路の振り切れた機械龍による銃撃が炸裂した。