ブラックドミノホテル最上階のスイートルームの一室。
そこには二人の女性の姿があった。
一人は初代決闘女王、杠葉色音。
そしてもう一人は二代目決闘女王となった癲狂院遊羽だ。
「必要な手続きは一通り終わったわね」
女王杯から一週間が経過した。
その間に行われたのは遊羽に対する決闘女王の地位の譲渡及びA区の市民権の付与。
色音が協力的だったこともあり、それらの作業はスムーズに行われた。
歴代決闘王の中にはデュエルキングの地位を失うことを拒みゴネた者も何人かいたというが、それも仕方ないことだろう。
決闘王の資格をはく奪されるというのはトップスの市民権を失うということに他ならないからだ。
その条件は初代決闘女王である色音も同じ。
だが色音は歴代決闘王たちとは比較にならない程の膨大な資産を保有していたらしく、その資産の一部でA区の住宅を新たに購入したそうだ。
そのため現在も変わらずトップスの市民である。
本人曰く、住居には左程拘りはなくB区でも構わなかったが、デュエルアイドルのステータスとしてトップス市民の立場は維持しておいたとのこと。
「これが女王邸の鍵よ」
色音から手渡されたのは決闘女王に用意された住居である『女王邸』の鍵。
元は『王邸』だったが、色音の就任時に『女王邸』と名称が改められたという。
「ここまでは歴代決闘王も行ってきた事務的な手続き。けれども決闘女王に勝利したあなたにこの程度の報酬では見合わない」
色音は金色の小箱を取り出すとその蓋を開けた。
そこに入っていたのは二枚のカード。
《クイーン・バタフライ ダナウス》と《熾天蝶》。
ブラックマーケットにも中々出品されない昆虫族のウルトラレアカードだ。
二枚合わせれば、おそらく百億円以上はするはず。
「アンティカードとして受け取りなさい」
色音が小箱にある二枚のカードを差し出してくる。
「私は相手が」
「相手がくれると言って差し出した物は遠慮なく貰う。そうでしょう」
こちらの言葉に被せるように色音が言った。
「かまわないわ。あなたは決闘女王に勝利した。ならば、それに相応しい報酬を受け取る権利がある」
言外に新たな決闘女王の肩書に恥じぬデュエルをしろと含ませている。
「だったら遠慮なく貰うよ」
受け取った《クイーン・バタフライ ダナウス》をメインデッキに《熾天蝶》をエクストラデッキに投入した。
「伝えるべきことは一通り伝えたと思うけど、他に何か聞いておきたいことはあるかしら」
この一週間、お互い話題にしなかった一つの事実。
それを確認しておく必要がある。
「……真帆と沙良は?」
色音は目を伏せながら小さく首を横に振った。
分かっていたことだ。
仮に彼女たちが無事ならアイドル番組で言及したり、一緒に出演させるなりして、何らかの形でこちらに伝えてくれただろう。
それがなかった時点で覚悟はしていた。
涙は出ない。
癲狂院遊羽はこれまで一度として人の死で涙を流したことはない。
それが萩原真帆であっても例外ではなかったということ。
仮に杠葉色音が死のうがキース・ハワードが死のうが自分は涙を流すことはないだろうという確信がある。
それでも。
――師匠、あなたは生きてください。
今は自分を師匠と慕ってくれた少女の死を悼みたいと思った。
◇
深夜。
ブラックドミノシティA区、龍堂院邸にて二名のデュエリストがデュエルを行っていた。
一人は白い寝間着姿の金髪ショートヘアの少女、龍堂院清香。
現在は追放された龍堂院麗華の妹だ。
もう一人は黒い外套を着た女性のデュエリスト。
それは本来あり得ないことだった。
犯罪率1%以下のA区の中でもより安全域である住宅街、その一等地にある自宅で清香は黒い外套を纏いフードで顔を隠した女にデュエルで襲撃を受けたのだ。
トップス各所はロイヤルガードというデュエル兵により警備されているが、更に龍堂院邸には個人で雇った凄腕のデュエル警備員が複数人いる。
清香がオベリスクブルー寮ではなく龍堂院邸から通学しているのも、アカデミア以上に自宅の方が安全だからだ。
だが当主の娘が襲撃を受けてデュエルをしているにもかかわらず、一行に警備は駆けつけてこない。
現在、清香のフィールドにはエースモンスターである《ホワイト・ホーンズ・ドラゴン》がいた。
《ホワイト・ホーンズ・ドラゴン》
星6 闇属性 ドラゴン族
攻撃力2200→3100 守備力1400
相手の墓地の魔法カードを除外することで自己強化することができるドラゴン族のウルトラレアカード。
あの無能な姉のエースである《青眼の白龍》に価格こそ劣るが、実用性では《ホワイト・ホーンズ・ドラゴン》の方が上だと自負している。
その自慢のエースモンスターである《ホワイト・ホーンズ・ドラゴン》が木端微塵に砕け散った。
龍堂院清香 LP400
ライフポイントも風前の灯火であり伏せカード等の防御手段もない状況。
このデュエルは普通ではなかった。
モンスターが破壊されたりライフポイントが減るたびに尋常でない激痛を受ける。
これは断じてリアルソリッドビジョンの衝撃などではない。
「あなたの目的は何! 金なら幾らでも払います!」
黒い外套の女の目的が身代金目的の誘拐等であるなら金銭で解決しようという発想。
トップス市民としてはありふれた思考回路。
「……黙れ」
これまでデュエルに必要なこと以外は口にしなかった黒い外套の女が初めて会話に応じた。
「あては嫌いなんだ。トップスの市民が。その中でも四大企業。恵まれた環境で何不自由なく育った令嬢は見ているだけで虫唾が走る」
黒い外套の女は金銭目的ではなくブルジョアへの怨恨でデュエルをしかけてきたということ。
こういう輩にはどのような交渉も無意味だ。
「誰か! 誰か来なさい!」
深夜の屋敷に声が反響するも人が来る気配はない。
「お父様! 助けてください! お父様!」
駆けつけてこないのは警備員だけでなく父親も同じ。
「お姉様。お姉様、助けて!」
現在は追放されている無能と称した姉にすら助けを求める。
「攻撃」
だが、そんな叫びも空しく清香を助ける者は誰一人として現れず、相手モンスターの攻撃を受けて激痛と共に清香の体は宙を舞った。
龍堂院清香 LP0
◇
C区の裏路地で二名のデュエリストが対峙していた。
一人は露出の多いボンテージ・スーツ姿の女、サディスティックまり子。
本名は山岡まり子。二十八歳。
もう一人は黒い外套を纏った小柄な体格の娘。
高身長でスタイルの良いまり子に対して、その半分以下の身長の幼女だった。
顔はフードで覆い隠されていて口元しか見えないが、絶えず相手を小馬鹿にするような笑みを浮かべている。
「クソ! 何だってんだい、アンタは!」
サディスティックまり子は奴隷杯と同規模の裏のデュエル大会、嗜虐杯の常連優勝者である。
まり子はデュエルに敗北した多くの男たちをアナルバイブでファックして観客を笑顔にしてきたアダルトエンタメデュエリスト。
男に限らず相手が女であっても容赦なく凌辱してきた。
少女の処女を玩具でぶち抜いて観客を笑顔にしたこともある。
では現在行われているデュエルはまり子が幼女を襲うために行っているのかと言えば否だ。
実際はその逆であり強制デュエルを挑まれたのはまり子の方だった。
「この嗜虐地獄の異名を持つ私がこんな得体のしれない子供に!」
既にまり子の場のモンスターは全て破壊されており、ライフポイントも800。
「ざぁこ」
黒い外套の小娘が嘲るように言った。
「ざぁこ、ざぁこ。嗜虐地獄とかマジでウケるんですけど。この街って地獄とかヘルとか付く異名持ちが多いけど、所詮は皆紛い者のざぁこなんだよね」
「ふざけたことを抜かんすじゃないよ! 小娘が!」
激しい痛みを伴う異常なデュエルにおいてもサディスティックまり子は戦意喪失せずに怒りのまま吠えた。
それは嗜虐地獄の異名を持つ裏のデュエリストとしてのプライド。
「きゃははははは! ざぁこのオバサンがわめくなよ。本当の地獄を知ってるのは私だけ。私以外の地獄はみーんな紛い者のざぁこ!」
そんなまり子のプライドを黒い外套の幼女は嘲笑った。
「ヴァンパイアの眷属でざぁこにダイレクトアタック」
《ヴァンパイアの眷属》
レベル2 闇属性 アンデット族
攻撃力1200 守備力0
幼女が場にいるモンスターの一体に攻撃命令を下す。
それを防ぐ手段はまり子にはない。
「畜生ッ!」
サディスティックまり子 LP0
◇
B区にある住宅内でデュエルをする二名のデュエリスト。
片方はフードを被った黒い外套の女。
もう片方は家の主である男性、植木森林。
プラントコーポレーションの社長であり、
現在、植木のフィールドにはエースモンスターである《ギガプラント》がいる。
《ギガプラント》
星6 地属性 植物族
攻撃力2400 守備力1200
だがそれ以外の場のカードや手札はなく、ライフポイントも900であり劣勢だった。
「……私は許さない」
これまでデュエルに必要なことしか言わなかった女がうわ言のような言葉を発する。
ぞっとする程に憎悪の籠った声だった。
許さないと聞いて真っ先に植木の頭に思い浮かんだのは、自分が商品の宣伝のために触手マシンで女性を凌辱してきたということ。
この黒い外套の女が触手マシンで凌辱した女性たちの中の一人であるという可能性。
女性の体に極力負担を掛けず、後遺症を残さない商品を作ってきたつもりだ。
しかし、たとえ不具者にするようなことがなくとも、公の場で女性を辱めてきたことは事実。
植木とて、そのことに一切後ろめたい気持ちがなかったわけではない。
だが植木森林はプラントコーポレーションの社長であり妻子を持つ身である。
社長としての一番の責務は社員に給料を払うこと。
そして夫としての責務は妻子に不自由のない生活をさせて笑顔にすることだ。
そのためならば商品をPRする手段は選べない。
万が一にでも会社が倒産することがあれば、社員が、そして愛する妻と娘が路頭に迷ってしまう。
「姉だった女がいた」
そんな植木の内心の葛藤をよそに黒い外套の女のうわ言は続く。
この女は被害者ではなくその身内。
触手マシンで凌辱された姉の敵討ちに来たということだろうか。
「実の妹を見殺しにして、男たちに股を開き、女王の座に居座っていた薄汚い売女が」
「……何?」
ここで認識の相違があるのではないかということに気づく。
黒い外套の女の憎悪が植木に向けられたものではないという可能性。
「許さない。あの姉だった売女を私は絶対に許さない」
もはや間違いなかった。
この女の憎悪は植木ではない何者かに向いている。
思わず拳を握りしめた。
植木の胸にこみ上げてきたのは怒りだ。
本来、別の相手に心を縛られて、目の前の対戦相手から視線を外して勝てるほど決闘は甘くはない。
デュエリストとしてのタブーをこの女は犯している。
そんな女に負けそうになっているという事実。
この怒りはデュエリストとして不甲斐ない自分自身に対するものだ。
黒い外套の女の使用したカードの効果で《ギガプラント》が木端微塵に砕け散る。
それと同時にリアルソリッドビジョンとは比にならない痛みが植木を襲った。
詰みだ。もはや植木に相手の攻撃を凌ぐ手段はない。
「ダイレクトアタック」
ファックプラント植木 LP0
尋常ではない激痛と共に植木は床を転がった。
それを見た黒い外套の女が懐から一枚のカードを取り出す。
薄れゆく意思の中で植木は妻子が無事にこの場から逃げ延びてくれることを願った。
◇
D区の裏通りをカーキー色のジャケットを羽織った中年男性が歩いていた。
彼はセックスデーモン豚島。
強姦悪魔の異名を持つデュエリストであり、かつて奴隷杯のスター選手だった男だ。
以前行われた奴隷杯において豚島は害虫の異名を持つデュエリスト、癲狂院遊羽に敗北した。
そこからが豚島の転落人生の始まりだった。
あの敗北で多くのパトロンが豚島を見放したが、それでも全ての支援者がいなくなったわけではない。
故に次の奴隷杯にも豚島は参加費を払わずに出場することができた。
その奴隷杯において悲劇は起こった。
ある意味では癲狂院遊羽に敗北した時以上の悲劇が。
奴隷杯の一回戦はやられ役の女たちが正規の出場者に一方的なデュエルで倒された後、レイプされるというショー、所謂余興。
その余興において豚島は手札事故を起こしたのだ。
これまで融合素材と《融合》が初手に入るのが当たり前だったにも関わらず、その日は《融合》のカードどころか通常召喚できるモンスターすらいない状況。
それでも一回戦を突破できたのはやられ役の女に許されているプレイングがモンスターの召喚のみだからだ。
攻撃宣言が許可されてない以上、豚島がダイレクトアタックを受けることはなく、やられ役の女の場にモンスター五体並んだ頃にようやく通常召喚可能なモンスター《デーモン・ソルジャー》を引き当てることができた。
相手がやられ役の女でなければ豚島のライフポイントが0になっていたのは誰の目にも明白。
その憤りをぶつけるべく豚島はやられ役の女を普段通りレイプしようとした。
だが裸にひん剥いた女を前にしても、豚島の股間のモノはふにゃふにゃ。
どうやっても勃起せず挿入することができなかったのだ。
会場は大爆笑に包まれ、観客たちは皆が笑顔になった。
一見すれば、それはこれまでと同じ。
豚島はアダルトエンタメデュエルによって観客を笑わせてきた。
だが今回は豚島が観客から笑われている状況。
笑わせるのと笑われるのでは天と地ほども違う。
二回戦で豚島は再び手札事故を起こして敗北。
これによって全てのパトロンから見放されて奴隷杯を追放された。
そして現在。
女を前にしても勃たないのでは決闘強姦魔としても事実上の廃業。
手札事故を連発するため裏の大会や賭けデュエルで稼ぐこともできない。
貯金を切り崩しながら生活している。
最近ではブラックドミノシティにおける代表的な《デーモンの召喚》の使い手としての立場さえデーモンプリンセス魔里亜とかいう表のデュエリスト、それも女に奪われてしまった。
以前ならその女を強姦すべくデュエルを挑んだのだろうが、もはや豚島にそのような気力はない。
あれ以降も特に女とのデュエルでは手札事故が起こるし、仮に勝利できても股間のモノが勃たない以上、レイプができないのだ。
「あ? 何だ」
その時、豚島の目に黒い外套を纏った人物が現れた。
フードを被っていて顔は見えないが、外套越しでも分かる程に豊満なバストの女だ。
同時に豚島のデュエルディスクが自動的に起動した。
「お、おい! まさか」
強制デュエルを挑まれたのだと理解する。
カードプレートがソリッドビジョンによって生成される。
オートシャッフルシステムが起動して、互いのデッキが自動でシャッフルされた。
デュエルディスクによって先攻、後攻が決定される。
強姦悪魔 ―― 豚島優一郎 / LP4000
VS
??? / LP4000
「決闘」
「ク、クソ!」
この黒い外套の女はおそらく過去にレイプした女で、豚島のことを逆恨みしているのだ。
敗北すれば半殺しにされるか、最悪の場合殺される。
この場を切り抜けるにはデュエルで勝利するしかない。
「お、俺のターン」
先攻をとったのは豚島。
最近は手札事故を頻繁に起こしていたが、今回は珍しく動けそうな手札だった。
「魔法カード《融合》を発動。デーモンの召喚でトリック・デーモンをご、強姦。デーモンの顕現を融合召喚」
《デーモンの顕現》→《デーモンの召喚》
星6 闇属性 悪魔族
攻撃力2500→3000 守備力1200
デーモンの顕現はフィールド場に存在する限りデーモンの召喚として扱う融合モンスター。
そして場にいる限り、自分の場のデーモンの召喚の攻撃力を500アップさせることができる。
「更にトリック・デーモンの効果でダークビショップデーモンを手札に加えてそのまま召喚」
《ダークビショップデーモン》
星3 水属性 悪魔族
攻撃力300 守備力1400
「場にレベル3のモンスターがいる時、このカードを特殊召喚できる」
《サイコウィールダー》
星3 地属性 サイキック族 チューナー
攻撃力600 守備力0
「レベル3ダークビショップデーモンにレベル3サイコウィールダーをチューニング。デーモンの招来をシンクロ召喚」
《デーモンの招来》→《デーモンの召喚》
星6 闇属性 悪魔族
攻撃力2500→3000 守備力1200
《デーモンの招来》もフィールド場に存在する限り《デーモンの召喚》として扱うモンスター。
更に自分フィールド上の《デーモンの召喚》を相手は効果の対象にできなくなる。
「俺はカードを一枚伏せてターンエンド」
セットしたカードは《聖なるバリア -ミラーフォース-》。
攻撃された時、相手の場の攻撃表示モンスターを全て破壊する罠カード。
「私のターン、ドロー。速攻魔法《禁じられた一滴》を発動。手札を一枚捨ててデーモンの招来の攻撃力を半減、効果を無効にします」
《デーモンの招来》
攻撃力3000→1750
「ひ、ひぃ! 俺のモンスターが短小に!」
モンスターの攻撃力を下げるデュエルタクティクスに過去の奴隷杯の記憶がフラッシュバックして豚島は委縮した。
「更に魔法カード《ゼクトライク-紅黄》。手札の甲虫装機ホーネットを墓地に送り、デッキから甲虫装機ダンセルを特殊召喚」
《甲虫装機ダンセル》
星3 闇属性 昆虫族
攻撃力1000 守備力1800
「昆虫、族モンスター」
それは豚島にとって最大のトラウマとも言える種族。
だが意外にも取り乱すことはなく豚島の精神は落ち着いていた。
「あ?」
それは懐かしい感覚。
見れば豚島の股間のモノは最大限にいきり勃っていた。
「そうか! そういうことか!」
今回手札事故を起こさなかったこと。
そして現れた昆虫族モンスター。
「これは神からのGOサイン! この女をレイプして俺に決闘強姦魔として復活しろという啓示!」
豚島はこれまで神なんてものを信じたことはない。
だが今、この瞬間だけは信者になってやってもいい。
「その昆虫族モンスターの攻撃力は1000! 攻撃力の下がったデーモンの招来よりも下だ!」
仮に何らかの効果で《デーモンの顕現》と《デーモンの招来》が破壊されたとしても《デーモンの召喚》を特殊召喚することができる。
その上、場には《聖なるバリア -ミラーフォース-》も伏せてあるのだ。
「俺の盤面は完璧! この豊満なバストの女をレイプして俺は決闘強姦魔として蘇る!」
「甲虫装機ダンセルの効果発動」
それは僅か数分間の出来事だった。
「ゑ?」
豚島の場のカードは全て破壊され、黒い外套の女の場は昆虫族モンスターが溢れている。
「ひっ! ひぃぃぃぃぃいいいいいいいいい!!!」
今度こそ豚島は恐怖のあまり腰を抜かしてその場にへたり込んだ。
このデュエルは普通ではない。
モンスターが破壊されるたびに尋常ではない痛みが体に迸る。
「バトルフェイズ」
総攻撃を受ければ、どれ程の激痛を伴うか想像もつかない。
「や、やめろぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおお!!」
それでもサレンダーしないのは敗北すれば更に恐ろしいことになるという予感があるから。
それは歴戦の決闘強姦魔、デュエリストとしての直感だった。
「ダイレクトアタック」
昆虫族モンスターの一斉攻撃が豚島を襲う。
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
セックスデーモン豚島 LP0
この世のものとは思えない激痛を受けて地面を転がる豚島。
黒い外套の女が懐から一枚のカードを取り出す。
「何だ、それは」
表面の枠内が白紙になっているカードだった。
豚島は生理的な恐怖を感じ、しかし強制デュエルで無力化されているので逃亡することはできない。
黒い外套の女が白紙のカードを投擲する。
投げられたカードは回転しながら宙を舞って豚島の腹に突き刺さった。
次の瞬間、豚島の体が崩れてカードの中に吸い込まれていく。
そこで完全に豚島の意識は途絶えた。
カードが再び回転しながら黒い外套の女の手元に戻る。
女が手に取ったカードを表向きにすると白紙だった枠には豚島の姿があった。
これが黒い外套の女に課せられた使命。
けれどもデュエルに勝利して目的を達成したにもかかわらず女に満足はなかった。
だって本当に欲しいのは、こんなカードじゃないからだ。
「もうすぐ逢えるね」
まるで思い人に恋い焦がれる生娘のような声だった。
「師匠」