転生一般人は深海棲艦や艦娘と静かに過ごしたい(旧題:何故か、深海棲艦がたむろする様になりました。) 作:八雲ネム
(………あぁ………またこれか)
沈む。
ただただ海の底へ向かって沈んでいく。
体の反応は鈍く、思考もままならない。
そんな夢を離島棲姫が来た後、暫くしてから見始めたのだが不思議と恐怖心は殆ど湧かず、水面から差し込む光が少なくなっていくに連れて逆に落ち着く感じを受けた。
普通は、暗闇に恐怖するのが人間だと思うのだが俺の場合は誰かが寄り添ってくれる感じを受けているので、そこまで怖くないのだが良い加減、海底にでも着底しねぇかなぁと思い始める頃に目が覚める。
そして、そんな夢を見るのは決まって深海棲艦の誰かが俺と添い寝している時に限るので、自分以外の体温を感じる方に目を向けると今日は飛行場姫だった。
「オハヨウ」
「おう、今日は飛行場姫か」
「ウン、今日ノ朝ゴ飯ハ離島ガ中心ニナッテ作ッテル」
「そうか」
離島棲姫を拾ってから早1ヶ月、色々とあって政府の方でも色々と動きがあると数日前、瑞鶴が失神したとの報告を受けた担当者が来た際に言っていたがそれからの音沙汰はない。
ただ、あれからの瑞鶴はそれまでの上から目線な態度が嘘のように消えて何かに怯えるようになったので、レ級達に聞いてみたのだが失神している最中の彼女にレ級達が持つありとあらゆる怨念をぶつけた結果らしい。
そういや、自分達は亡霊だーなんて離島棲姫が言ってたっけかなと思い出しながら、完全に怯えている瑞鶴を翔鶴に引き取って帰らせた後で新たに来た深海棲艦達を確認した。
・既に来ている深海棲艦
離島棲姫、北方棲姫、港湾棲姫、集積地棲姫、飛行場姫
・新たに来た深海棲艦
戦艦レ級、戦艦ル級、空母ヲ級、重巡ネ級、北方水姫、空母水鬼、深海鶴棲姫、南方棲戦姫、中間棲姫、戦艦棲姫
正直、未知の部分が多い核弾頭並の超絶危険生物である姫級や姫級に及ばなくとも、屈指の実力を持つ人型の深海棲艦の怨念を1つでも受けたら普通は恐怖で動けなくなると思う。
それを10人分、受けても精神崩壊しなかったのは曲がりなりにも瑞鶴と言う正規空母の適性を持った本人の気質か、或いはレ級達が手加減したのかまでは流石に聞く気になれなかった。俺自身、怨念を受けて発狂したくないし。
その為、空いている部屋の割り振りをした後で歓迎会と称して夕飯を豪勢にしたり、パーティーゲームをしたりして夜通し楽しんだりした。
あれから数日が経ち、レ級達も落ち着いてきた頃に改めて買い物に行かないとなぁと考えながら離島達が作ってくれた朝食を食べて、適当に駄弁っていると旅館の固定電話が鳴ったので出てみると担当の人からだった。
『突然の電話、申し訳ありません』
「大丈夫です。何かありましたか?」
『それが………数日前から瑞鶴が担当を外してくれとか、艦娘辞める等と言い始めてこちらからの引き留めを聞かないんです』
「あー………なるほどねぇ」
どうやら、レ級達が当てた亡霊の塊が怖すぎたので辞めたくなったんだろうなぁ、と思いながら話を続けるとある準備が海軍の方で終わって政府がそれを認可したらしい。
その準備とは、100名前後の艦娘を分遣隊としてこの街に設置して深海棲艦の監視に充てると言う物で、その為の時間稼ぎとして翔鶴と瑞鶴を派遣したとの事だった。
(全く、彼女達の相手をさせられるこっちの身にもなってほしかったでござる)
会社勤めてあれば、ああ言った嫌な奴との接触は限定しやすいのだが今の俺には深海棲艦を養うと言う目的があるので、監視任務で来る彼女達との接触を限定できる場所がないと言うのは中々にキツかった。
その為、いつか暴発するなぁと感じていたら肝心の瑞鶴が辞表を出してきたので、内心で一安心しながら100人の艦娘が来るまでの間はどうするのかを聞くと先遣隊として、軽巡を中心とした6人の艦娘を代わりに派遣するとの事だった。
「分かりました。今度は冷静な艦娘を希望しますね」
『大丈夫ですよ。瑞鶴の方が珍しいですから』
「期待しない程度に待ってますよ」
そんな軽口を言い合って、電話を切ると離島達が聞いてきた。
「ドウシタノ?」
「良い事と悪い事があるけど………どっちから聞きたい?」
「「良イ事カラ!」」
彼女の問いにそう返すと、北方棲姫とレ級が元気よく聞いてきたので話す事にした。
「まず、良い事はあの性悪女が別の場所に行く事になった。もう会わなくて済むぞ」
「アラ、嬉シイ報告ダワ」
「ただ、条件がある。艦娘が100人以上、来る事になった」
「ソレハ………面倒ネ」
「私達トハ相容レナイノニネ」
俺の言葉に、一同は面倒臭いなと言う顔になったのでそれを無視して話を続けた。
「状況は変わるさ。ただ、これを飲まないといつ戦争になってもおかしくはない。個人的には避けたい所ではあるがね」
「ジャア、私達ハ貴方ノ判断ニ従ウワ」
「ダナ。折角ノ生活ナンダカラ長ク楽シミタイシ」
「今マデ通リ、生活シヨウ」
「助かる」
彼女達の答えに、俺は感謝を伝えながら頷いて担当の人から聞いた話の詳細を話し始めた。
艦娘・先遣隊 side
「ったく、新しい任務が来たかと思えば最近、噂になってる深海棲艦の監視任務なんざ、ツイてねぇなぁ?」
「仕方ないわよ。すぐに動けるのが私達ぐらいだったもの」
俺ぁ最近、漸く改二になった天龍でバスに揺られながら独り言の様に相方の俺と同じ様に最近、改二になった龍田に問い掛けると彼女も半信半疑と言った感じでまともに信じてはいなかった。
何しろ、深海棲艦との大規模な戦いだったっつー先の大戦から80年以上は経過しているんだから、最初に報告を受けた大抵の人間は信じちゃいなかったし、俺や龍田だって信じちゃいなかった。
だけど、今までに積み上がったデータを見せられた以上は信じるしかないのだが、それでも半信半疑だったのは俺らが艦娘になってから深海棲艦と言うのを一度も見た事がなかったからだ。
そして軍隊に限らず、政府に所属する省庁ってのは予算の取り合いで必死らしいので食わせる金に限りがある以上、使い所のない所に金は掛けれないって事で近いうちに全ての艦娘を予備役に回せっつー圧力もあったらしい。
とは言え、深海棲艦が現れた以上は存在を確認して暴れ出させず、何かあればすぐに動ける様に監視任務が回ってきたのだが、ここにも派閥争いがあってその原因が軍内にある艦娘廃止論と艦娘存続論の争いだった。
廃止論の言い分としては近年、大陸側の近隣諸国とのいざこざによって通常の新鋭艦船等に予算を回して欲しいとの事であり、存続論の言い分としては艦娘は哨戒任務に当たらせていざって時は正規の艦艇に任せれば良いと事だった。
俺としちゃあ、どっちも合ってるので決めれないがやれと言われたからには出来うる範囲で最善を尽くしながらやるだけだ、と思いながら辺鄙な街にある旅館に到着してバスから降りると番頭だと言う人物が待っていたので挨拶をした。
「横須賀鎮守府所属、特別分遣隊の先遣隊の天龍以下6名、現時点を持って到着したぜ」
「この街の旅館を経営していました××××です。よろしくお願いします」
「おう」
すると、意外にも低姿勢の態度で頭を下げてきたので短く返してからそいつの両隣にいた深海棲艦に目を向けた。
「しっかし、本当にいるとはな。かなりの驚きだぜ」
「でしょうね。自分も最初、会った時はかなり驚きましたので」
「浜辺で会ったんだったか?」
「えぇ、最初は軽い人形が流れ着いたものだと思っていました」
「ふーん」
初めての対面としちゃあ、かなり落ち着いているもんだし、そもそも前任の瑞鶴達がかなりの性格難だったらしいのによく冷静で対応出来ているものだと感心した。
これが大人の対応なのかねぇ、と思いながら今後についての話し合いをする為に自分達が拠点とする家へと向かった。
予算の取り合い、派閥争い、文民政府による後手後手の対応
この世界の日本は、戦前の日本政府よりも今の日本政府に近いとイメージしてもらえれば助かります。