転生一般人は深海棲艦や艦娘と静かに過ごしたい(旧題:何故か、深海棲艦がたむろする様になりました。) 作:八雲ネム
起業する、と言っても大した事はしていない。
深海棲艦が活動できる範囲、しかもホームグラウンドと言っても良いぐらいに馴染みのある海での漁業するって話なので、その為に必要な手続きなどを会社で行い易くするだけだ。
株主は政府で、事業報告なんかも政府に提出する必要があるがそれで合法的に働いて稼げるんだったら問題なかろう、と言うのが個人的な考えな上に政府としても深海棲艦の活動が分かる方が良いし、一次産業である漁業の人手不足を多少なりとも解消できるのなら文句も言い難い。
問題になるとすれば、漁業をする上で欠かせない魚の保存方法なのだがそれに関しては人間の技術と経験を用いて、専用設計の船体を建造するので問題ない。
正確には、魚などを大量保存ができる大型の冷蔵庫とそれに必要な発電用エンジンとモーター、そして燃料タンクと充放電可能なバッテリーを載せた船体を基本設計にして建造すれば良い。
航行に必要な動力は、人型ではない深海棲艦が牽引すればいいし、後は釣り上げる魚の種類ごとに冷蔵庫や釣り上げる道具を変えれば良いだけなので、活動自体はそこまで苦労しないだろう。
問題があるとするなら、漁業組合やら国際的な漁業の取り決めぐらいなのだが、そこら辺は政府の仕事なのでこちらからとやかく言うつもりはない。やれと言われたらすぐに出来る準備をしている段階だ。
それと並行して、農業は無理だとしても動画配信サイトにてゲーム実況などをして収入源を増やそうと考えている。
どうしても、投資などでは大損のリスクがあるし、漁業に至っては既得権益の兼ね合いから会社を作ったは良いが許可が降りない可能性があるので、収入の数は可能な範囲で増やしていきたい。
そう考えながら、あーでもないこーでもないと日常生活を送っているとある人物が辺鄙な旅館に訪ねてきた。
「こんなのはどうでしょうか! 番頭さん!」
「………」
その人物とは漫画化志望の少女であり、見せられたラフ画は艦娘と深海棲艦がバトルする漫画だった。
しかも、ツイスターや掲示板に上がっている写真から大凡の顔を特定した上で描いている為、ラフ画の時点でかなり上手い事からなんでこんな辺鄙な場所に来てまで深海棲艦を描こうと思ったのかを聞いてみた。
「深海棲艦って人類の敵って教わるじゃないですか」
「そうだな」
「その割には艦娘は疎か、深海棲艦についての情報が殆どないので前々から知りたいと思っていたんです」
「艦娘や深海棲艦を?」
「はい、そうです」
そう言えば、公式に発表されている艦娘の写真なんて今まで見かけてこなかったし、教科書なんかに記載されていた深海棲艦もイ級やロ級と言ったゲームでは雑魚キャラ扱いの深海棲艦しかなかった。
つまり、創作活動を行う人達からすれば艦娘や深海棲艦に関する情報が少な過ぎて扱おうにも扱えない状況だったのに、それを真横からぶん殴ってきたのが俺と俺が所有していた旅館に寝泊まりする離島棲姫達と言う事になる。
その為、どうしても創作に活かしたいと言う心意気のある人が少ない情報を元に探し当てて、俺達の元に来るのは時間の問題だった事に今更ながら思い至った。
「うーん、まぁ俺も暇潰し程度に創作活動をするから気持ちは分かる。だから無碍に出来ないんだが、いくつか聞いても良いかい?」
「はい、どうぞ」
「君、今何年生?」
「高校3年です。来年の3月に卒業予定です!」
「どうやって、ここを特定した?」
「それは勿論、ツイスターとネットのソースです!」
情報の出所に関しては、政府も放置している部分があるので特定は時間の問題なのは仕方ないとは言え、将来は漫画家志望の女子高生がここまで来るなんて想像もしなかった。
とは言え、暇潰し程度に妄想を書き殴った小説もどきをたまに小説の投稿サイトに投稿する書き手として、彼女の活動を応援したい気持ちがあるので幾つかの条件を出した。
まずは高校を卒業する事。大卒ですら、就職に失敗するケースがあるのに漫画にかまけた結果として高校を中退して中卒になるのは気持ち的に辛いし。
次に何かしらの賞に受賞する事。ラフ画だけでも、かなり上手い上にストーリー構成なんかも上手で、漫画に必要な道具がない状態のこの場で実際にA4サイズの用紙と鉛筆で書かせてもかなりしっかりと描けていた。
その為、彼女自身で書いた作品で何かしらの漫画コンテストに応募して入賞以上の評価をもらえれば第三者の評価として参考にできるし。
後、何かしらのやり取りをしたければ通話アプリを使う事。こんな辺鄙な街に来る事自体、電車やバスの本数が少ない事も相まって中々にハードな道のりだから負担を掛けたくないし。
高校生である以上、ある程度は自分の判断で行動できるだろうから親の許可とかは彼女自身に任せるとして、入賞した場合の事を考えるとそう簡単に会わせる訳にも行かない。
「つかぬ事を聞くが帰りの時間とか、宿の事とかって考えてるかい?」
「最悪、野宿を考えていました!」
「流石にそれは許容できないな」
この後の予定を聞くと、帰りの予定はその時に決めるつもりだったらしいので話が長くなって夕方の時間帯に差し掛かっている為、流石に高三の女子高生を野宿させる訳にも行かない。
その為、この後の予定を考えて彼女に言った。
「俺はこの後、用事があって厨房で作業しているよ。部屋を出たら右手の廊下の奥に部屋が一室空いているから今日はそこを使いな。今の時間から艦娘の監視が付かねぇから自由に見て回れるだろう。分からねぇ事があったら旅館に住む連中に聞いてみな。色々、話してくれるだろうよ」
「………分かりました」
俺の言葉を反芻した彼女は、笑みを浮かべてそう答えてくれたので報告書の作成の為に応接室を出て、厨房で夕食の準備に取り掛かる事にした。
女子高生 side
艦娘と深海棲艦の戦いを描きたい。
物心が付いた頃から、心の奥底から湧き上がる衝動に掻き立てられるように絵を描く事に熱中して親にも心配されたけど、そんな心配を他所に成長と共に色んな情報を漁りながら絵はやがて漫画に変わって描き続けた。
けど、どうしてもネックになるのが艦娘や深海棲艦についての情報が少な過ぎる問題で学校の図書室から近くの図書館、挙句にネットで調べ回っても中々見つからなかった。
情報が隠蔽されている、と小学校の半ばから感じ取っていたけどまさかここまで隠されているとは思ってもいなかったのでこのまま、ダラダラと本意ではない漫画を描き続けるのかなぁと悩んでいた時にあるツイートを見かけた。
それは、とあるイ○ンモールにてコスプレをした女性達を連れ回す男の人についての話で、ツイートに載っている写真は遠くからの物で分かりにくかったけど、彼女達が深海棲艦だと私の直感が告げてきたので色々と調べてみた。
すると、大手掲示板にて「【誰か】深海棲艦を拾ったんだけど質問ある?【知恵を貸してくれ】」と言うスレッドの中に、深海棲艦と思しき女性がカレーを食べている写真が載っているのを確認した私の行動は早かった。
親には、友達の家に泊まりに行くと偽って貯めていたお小遣いを使って深海棲艦がいると言われている旅館のある街に行き、そこを訪ねて素性を明らかにした後、目的を話したら彼は驚きながらも半信半疑で応接室に通してくれた。
そして、深海棲艦とは別の私の作品を読んでくれた彼は他の内容で世の中に出さないのか、と聞いてきたのでどうしても艦娘と深海棲艦の話が書きたいと強く説得した。
その結果、彼が折れてくれた上に長時間の話し合いで昼過ぎだった時間はいつの間にか、夕方の5時前になっていたので宿はどうしようかと思っていると、彼が温情を出してくれて旅館に泊めてくれる事になった上に旅館に住む深海棲艦と話して良い事を言ってくれた。
その為、私は来た甲斐があったと満足げに割り当てられた部屋に向かった。