転生一般人は深海棲艦や艦娘と静かに過ごしたい(旧題:何故か、深海棲艦がたむろする様になりました。) 作:八雲ネム
「………」
「オハヨウ」
「………あぁ」
深海磨鎖鬼との邂逅後、どうやって政府に認知させるかで話し合ったものの結論が出ないまま、起きる時間になった様で眠りから覚める前の様な浮遊感を感じた。
そして、意識が浮上して目を開けると覆い被さる様に離島棲姫が俺を見下ろしていたので、ぼんやりとした頭で軽く驚きながら彼女の挨拶に返答をした。
深海磨鎖鬼、ね。まさか、深海棲艦側に彼女達を纏める立場の人間、と言っていいかは分からないが実際にいるとは思ってもいなかった。リアイベだったり、二次創作で存在を認知はしていたが。
しかし、彼がいて最終的な目的が分かった以上は行き当たりばったりの対応をしなくて済む、と一安心して起き上がりながら離島棲姫に話しかけた。
「毎夜、沈んでいく夢を見せていたのは彼に会わせる為かい?」
「ソウヨ。普通ノ人間が私達、深海棲艦ノ世界で生きテいくのは難シいし」
「そうか。て事は魂とか精神に干渉していたのかい?」
「勿論。現に私ノ言葉が流暢に聞こエるんじゃないかしら?」
「あぁ」
前世において、深海棲艦=亡霊説と言うのを知ってから実際にいてそっちの方面だったら怖いなぁ、と思った記憶が実体験を伴って蘇ったし、亡霊による精神攻撃で怯え切った瑞鶴が配置換えでいなくなったのを思い出して軽く竦み上がった。
歴史上、人類は科学を重視して文明を発展させて今の社会を築いてきた一方で精神面、特に呪詛だったりの方面は非科学的だとして疎かにした結果としてかなりの技術がロストテクノロジーと化してしまった。
世界を探せば、呪術的なものはあるんだろうが亡霊とか怨念とかの塊と言っても過言ではない彼女達は歩く災害の群れ、と言っても差し支えないのでその分野で人間が大々的に対抗するのは無理だろうな。個人的な見解だが。
「にしても精神汚染とかを根気強く、それに違和感なくやってのけたもんだぜ。手元が狂えば廃人不可避だろ?」
「えぇ、そうね。もしも、廃人になってたら私達の仲間に取り込むつもりだったけど、貴方のは特別だったからやりやすかったわ」
「と言うと?」
「前世の記憶持ち、と言った方が分かりやすいかしら?」
「 」
彼女が言った言葉は、寝起きの状態に冷や水よりも冷たい氷水をバケツ一杯にかけられた様なものだったので、咄嗟に言葉どころかそれまでの考えとかが全て吹き飛ばされた。
何しろ、前世の記憶を持っている事は離島棲姫達は疎か親や親戚、知人友人にまで言わずに墓場まで持っていくつもりで胸の奥に仕舞っていたのに、それを難なく掘り返される形になったからだ。
「どこまで知ってる?」
「今の貴方とは別の名前がある事、今の世界と似た世界で生きていた事、事故死して今の世界に来た事、そして私達、深海棲艦と艦娘の戦いを描いたゲームやアニメがある事」
「全て知っているっつー事か。他の深海棲艦達も知っているのか?」
「勿論。この旅館に住む全員が知ってるわ」
「そうか。なら、他の人が居る場所では言わないでくれ。第三者に余計な情報を渡したくない」
「分かったわ」
その為、深く息を吐いてから彼女に聞くと前世に於ける俺が見聞きした事の全てを知って、旅館にいる深海棲艦と共有しているとの事だったので他言無用を頼むとあっさりと了承してくれた。
彼女達からすれば、あまり意味のない情報かもしれないが俺からすれば下手に触られたくない部分、厨二病よりも隠しておきたい個人的な地雷原なので使うとしてもかなり慎重に使いたいのが本音だ。
「そう言えば、深海棲艦の国を地上に創りたいなんて言ってたけど本気なのかい?」
「本気よ。人類によって、80年以上前に地上から追い出されたから取り戻したいって言うのが彼の最初の目標」
「そう簡単に行くとは思えんのだがね」
「それでもやるつもり。じゃなかったら、私達も地上に出なかったしね」
「それもそうか」
領土問題ってのは、有史以前からある問題なので深海棲艦だとしてもそう簡単に行くとは思えないし、地上の国ができたとしても深海に住まう彼らに維持管理が上手く行くとは思えない。
その事から、個人的にはかなり懐疑的だったのだがそうでもしない限りは深海棲艦が人間社会に来る事はないな、と結論付けたので朝食の準備をする為に寝間着から普段着に着替えたりしてから調理室へと向かった。
「それではありがとうございました!」
「おう、気を付けて帰るんだぜ」
朝食後、午前の内に薫をイ○ンモールがある街の駅まで乗せていくと満足げに俺に礼を言ってきたので、それを受け取りながら彼女が駅のホームに降りてくるのを見届けてから車を発進した。
そして、暫く走っていると携帯の着信音が鳴ったので路肩に停車してから携帯を確認すると担当の人からの着信だった。
「はい、番頭です」
『さっき、報告を受けたのだけど民間人を受け入れたって本当ですか?』
「本当です」
『理由を聞いても?』
どうやら、薫の事について知りたかった様なので簡潔に話す事にした。
「なんでも知りたかったらしいですよ? 彼女達について」
『どうして断らなかったんですか?』
「説得できる程、こちらには交渉材料はありませんでしたし、それに政府が許可した範囲で公表しても良いと仰ったのはそちらの筈では?」
『ですが、だからと言って一泊させるのはどうかと思います』
「では、女子高生を1人で野宿させろと仰るので?」
実際、こちらから話せる範囲で話したし、写真なんかも他の人に見せないと言う事を伝えてはある。口約束程度の物ではあるが。
それに、彼女と話して分かったのは創作意欲がある今の段階ではそう簡単に他人へ見せない気質を感じ取ったので、一先ずは擁護に回る事した。
その為、担当の人とは多少の口論になったものの最終的には彼女の創作活動も認めさせたので、後はこちらの情報を受け取った薫のやる気と腕次第な部分はある。
(せめて、下手な設定は盛り込まないでくれよ)
そう思いつつ、旅館への帰路についた。