転生一般人は深海棲艦や艦娘と静かに過ごしたい(旧題:何故か、深海棲艦がたむろする様になりました。) 作:八雲ネム
「 なるほど、相手はそれを良しとしないと」
『政府としても、可能な限りの交渉をしているのですが芳しくない様子です』
「………」
深海棲艦と動物園で楽しんでいる最中、担当の人から電話が来たので1人になれる場所に移動して聞いてみるとマジかよ、と嘆息したくなるような話を聞いた。
その内容は、諸外国の中で力のある大国が旅行者を装って大多数の特殊部隊を派遣して来るとの事であり、こちらとしては彼女達が来てから再三に渡って戦闘の意思はないと伝えているのにそれを信用できないとの事で実力行使に移したらしい。
正直、こちらとしては穏便に済ませたいから可能な限りの情報開示をしているのに、それを嘘判定させるのは中々に来る物がある。
歴史において、暗殺や抹殺なんてのは良くある話なのだがその
「では、彼らに伝言をお願いできますか?」
『内容にもよりますが聞きましょう』
「『そちらがその気ならこちらもその気で対処する』。この内容でお願いします」
『その言葉で止まるとは思えませんが』
「まー表立って行動しない以上、こちらが実力行使しても文句は言えないでしょう」
なので、大国が実力行使に移るのならこちらもその実力行使に似合う仕返しをしないといけないよなぁ、と思いながら担当の人に伝言を頼んでから電話を切った。
「やれやれ、彼女らがヤベー存在なのに何で馬鹿な事するんだろうなぁ」
深海棲艦の何がヤバいって、人間サイズの割に実際の戦艦レベルで撃たれ強い面があるので、人間が持てる程度の銃火器で倒すにはかなりの弾丸数を用意しないといけない。
しかも、人体なんて平然で引きちぎる程の力がある深海棲艦も多い上にスピードもそこそこあるので、実力行使をしに来た特殊部隊の人にはご愁傷様ですとしか言いようがない合掌を心の中でするしかないのが辛い所だ。
その為、やれやれだぜと思いながら離島棲姫達が待っている場所に向かうと如何にもチャラそうな奴らに声を掛けられていた。
「なぁなぁ、これから飲みに行こうよ」
「困るわぁ。彼氏を待ってるし」
「良いじゃん。彼氏君より、俺らの方が楽しめるよ〜」
「………ハァ」
離島棲姫達は、深海棲艦と言う事を除けばそこそこの美人さんなのでチャラい男に引っ掛かるのは、仕方ない事ではあるのだがその現場に遭遇するのは中々にキツいものがある。
昔の俺であれば、素人童貞なのも相待ってかなり動揺して碌に動けなかっただろうが、今は彼女達とそこそこの関係を築いているので軽く溜息を吐いてから離島棲姫に話しかけた。
「よぉ、離島棲姫。待たせちまったかな?」
「えぇ、お陰でつまらない男に引っ掛かっちゃったし」
「そいつはすまねぇ。トイレが長引いちまったもんでね」
すると、待っていたかの様に離島棲姫はするりと腕を絡ませてきたので抱き寄せると北方棲姫も抱き付いてきたので、唖然とするチャラそうな男達に手を振りながら立ち去った。
「災難だったな」
「全くよ、どこをほっつき歩いていた事やら」
「ことやら」
「すまねぇな。ただ、馬鹿な奴らが来るらしいよ」
「あらぁ」
俺らに言葉はあまり必要としない。
何しろ、離島棲姫達は俺の魂を読み取る事ができるし、俺も何となくではあるが彼女達が何を思っているのかを感じ取れる様になってきた為、順調に人外化してきてるなぁと諦観の境地で話を続けた。
「どうする? 大人しく捕まる?」
「まさか。自己防衛するつもりだけど問題ないかしら?」
「勿論。目立たない様に来るから何があっても行方不明扱いさ」
「なら安心ね」
「ねー」
俺の言葉に、離島棲姫達はニタァと笑みを浮かべたのだが時期的に丁度良いタイミングかもしれないな。
何しろ、政府が普通の市民からすれば多額の金を渡して過疎地であるこの街の住人を他の市町村への移転させた事で、街は盛大に再開発が行える様になったので銃声等の心配は無くなったと言っていい。
つまり、証人となる人が居なければ街が破壊されたとかの大きな異変がない限りはどんな事をしてもいいし、国内の事に関しては大概の事は政府からの圧力で揉み消せる。
いわば、再開発という名目で俺を深海棲艦と共に孤独な状態にして深海棲艦に異変があれば艦娘で、俺に異変があれば特殊部隊や工作員で抹殺すればいい。
深海棲艦の方は難しいだろうが、俺の場合は現段階ではまだ普通の人間なので頭や心臓に鉛弾を撃てばすぐにくたばる。人間の体は金属よりも柔らかい部分が大半だからね
(実際に狙われるって言われたらかなり緊張するでござる)
とは言え、実際に暗殺の対象にされるなんて事は普通に生きていればまずないシチュエーションなので、軽く緊張しているとそれを察した離島棲姫達の力を入れてこう言ってくれた。
「大丈夫よ。来るのが分かっている以上、人類に遅れを取らないわ」
「そーそー。私達を誰だと思ってるの?」
「………深海に棲まうお姫様です」
「判ればよろしい」
彼女達の心強い言葉に、肩から力が抜けていったので政府や艦娘よりも頼りになると実感する一方で、完全に深海棲艦に魅入られてると実感する自分もいる。
これは、深海棲艦の方に引き寄せられていると言っても過言ではないが国や政府に殺されたり、自ら人間を辞める時までは人間として深海棲艦との共存の為に足掻こうと思っている。
最悪、特殊部隊の襲撃をきっかけに国を滅ぼしても良いかなと深海棲艦が来る前なら絶対に考えない様な事を考えつつ、離島棲姫達と共に動物園を見て回った。動物達は少し怯えている様に見えた。
??? side
「 始めよう。予定通りだ」
「6カ国による合同作戦。上手くいきますかね?」
「なぁに。ターゲットは深海棲艦だ。対深海棲艦用兵器で叩き潰せば良い」
番頭が深海棲艦と共に、動物園から帰ってきた日の深夜に街の近くまで降りてきた特殊部隊の隊長が作戦開始の合図を出すと、そばに居た隊員が不安そうに聞いてきたのでいつもの様に返した。
深海棲艦、と聞いた時には歴史の授業でも始まるのかと思ったが現代において日本の片田舎に深海棲艦が現れ、それの処理や捕縛を命じられた以上は従うのが工作員となった特殊部隊の宿命だった。
その為、6カ国が秘密裏に談合をして調査目的に深海棲艦が宿泊している旅館を襲撃し、彼女達を回収するのと同時に目撃者である番頭の処理をするのが今回の任務だった。
その為、A国の隊長が率いる特殊部隊は静かだが迅速に旅館に近づいて旅館の駐車場に到着して全員が降りた後、迅速に正面突破しようとした瞬間に女性の声がした。
「ハァイ、叔父様方。今ハ営業終了中ヨ?」
「女性?」
声がした方向に、全員が顔を向けると南方棲戦姫が自販機の上に座っていたので特殊部隊の全員が少しの間、固まっていたものの隊長の一声で一気に動いた。
「何をしている!深海棲艦だ!」
「う、うおおおお!!」
「殺せ! 殺せぇぇえええ!!」
こうして、深海棲艦と特殊部隊による遭遇戦は始まったのだった。