転生一般人は深海棲艦や艦娘と静かに過ごしたい(旧題:何故か、深海棲艦がたむろする様になりました。) 作:八雲ネム
鳴り響く銃声、絶叫する雄叫びや悲鳴、何かが引きちぎられたり、潰されたりする音が過疎地だった街に鳴り響いているが、警察やらの執行機関が来る気配が一向にないのは周囲に文句を言う住人がいない事を物語っている。
俺自身、一般的にミリオタと呼ばれる趣味を持つ人間として色んな武器に興味があったものの、現段階で実際に使われて多数の犠牲者が出ている事に対してはかなりの恐怖を感じている。
何しろ、エアガンなとのサバゲーで使われる装備から出る音と違う音が聞こえるし、その音を発した対象がいつ自分自身に向くかも分からない恐怖が心の中で横たわっているので、冷静になって平常心を保てと言われても困ると言うものだ。
その為、旅館の用務員室に閉じこもって窓をカーテンで閉め切って外から見えない様にしつつ、その部屋で少しでも早く離島棲姫達の報告が来る事を願いながら待っていた。
(こんな状況で特殊部隊の人が来たらどうしようもないな)
そんな事を思いつつ、事前に用意した飲み物が入ったペットボトルからコップに入れて飲んだ。
言い様もない恐怖といつ上がり込んで来るのか、と言う緊張から喉の渇きが頻繁に来るので数分おきに飲んで一息吐くのが今のルーティンになっているのだが、時間が経つごとに銃声やら叫び声やらが小さくなっていったのでそろそろかなと思いながら時計を見ると深夜2時を指していた。
「丑三つ時だなぁ」
小声でそんな事を呟きつつ、飲み物に手を伸ばしながら監視カメラと連動しているモニターに目を向けると、玄関を映しているカメラに変化があって離島棲姫が入って来るのがわかった。
以前であれば、旅館内の照明は俺しか使わない事も相まって深夜は非常灯以外の照明を落としていたのだが、離島棲姫達の要望で移動に困らない程度に照明を付ける様にしているので確認には困らなかった。
とは言え、現在でも散発的に銃声が聞こえてくるので大丈夫かいなと思いながら待っていると、用務員室の扉が開いて離島棲姫が入ってきた。
「………終わったのか?」
「えぇ、後は掃討するだけよ」
「そうか。考えたくもねぇが、建物の被害を考えると気が滅入る」
「周辺の被害もあるから後処理も大変よ」
「やれやれだぜ」
どうやら無事、殲滅する事ができたらしいので今後のことを考えると頭が痛くなると思いながら、身の安全を確保できた事による安心感によって抑えられていた眠気が来たので仮眠を取る事にした。
寝ている間、周辺の警戒は離島棲姫がやってくれるらしいので後の事なんて考えたくねぇと思いながらソファで眠る事にした。
「 それで? この死体をどうするの?」
「正直、やりたくはねぇが素直に引き渡すと揉み消されそうだから意趣返しをしようと思う。やりたくねぇけど」
「やりたくないのにやるんだ」
「そうしないとより調子に乗るだろうしね」
旅館の前に並べられた死体は、所々で原型を残さないレベルで損壊して死体によっては上半身と下半身が強い力で無理矢理、引きちぎった状態になっているのでかなり酷い匂いが立ち込めている。
その匂いを嗅いだ事で、吐き気が込み上げてくるのだがそれを無理に抑え込みながら離島棲姫達と会話をしているだが、凄惨な現場で我慢の限界が来つつある中で事前に連絡した人物がやってきた。
「やぁ、××××君。盛大にやったね」
「急に呼び出してすみません、磨鎖鬼提督。盛大にやらかしてくれましたからね」
「まー、このぐらいの事をしてくれないと信用できないからね」
「お陰で引き返せなくなったんですが?」
そう。俺が呼び出したのは、深海棲艦の長にして人類側との接触を図っていた深海磨鎖鬼提督であり、彼に今回の襲撃の事に関して話すとある方法で宣戦したいとの話を聞いた。
その方法とは、大国の各国が派遣した特殊部隊の首を派遣した各々のトップが仕事をする机に並べて殲滅した事を知らしめつつ、各国の主要なメディアをジャックしてこの事を嘘を織り交ぜながら如何に下劣な事をしたのか、と言う話を過剰なまでに知らしめるとの事だった。
現代の先進国の大半は、本質は兎も角として建前としては法治国家を謳っている上、特殊部隊に志願して深海棲艦に殺された人を親族や知り合い、周囲の人がどう言うかなんて半ば分かりきっている。
つまり、お宅んとこの家族や友人知人が無茶な命令で深海棲艦と戦わされてくたばったぞ、と言う話を単純明快で分かりやすく何度も何度も話して民間人に刷り込ませていく作戦だ。
深海棲艦との戦い、と言えば艦隊での戦闘が基本でメディアを使った煽動を行うなんて80年以上前なら、あり得ない話だったが今はそんな深海棲艦を統率できる人がいる。
その上、情報戦の一環として情報の伝達もメディアもテレビ番組だけではなく、SNSを使った無秩序な拡散によって収拾がつかなくなる事も視野に入れている発想だ。
「そんな事で引いてくれるのかい?」
「いや、無理でしょうな。しかし、なぁなぁで済ませられても困るんですよね。実際に被害が出てますし」
「確かに、これはかなりのものだ」
俺の言葉に、彼が疑問を投げかけてくれたので弾丸によって壁の至る所が抉れ、一階を中心にガラス窓が割れまくっているので被害額はかなりのものとなる。
これが普通の民間人相手であれば、訴訟沙汰にして賠償請求をする所なのだが今回は国家、しかも海外の大国が相手となるので訴訟するのがかなり難しいだろう。個人の訴訟に対して、国家を跨いでやってくれる存在がいるかさえも怪しいし。
その為、こちらが出来る最大限の意趣返しとして首を返礼するつもりで話すと磨鎖鬼提督がある提案をしてくれた。
「では、こちらからは特急便を提供しよう。足の速い仲間がいるのでね」
「有難い話ですが、タダではないのでしょう?」
「勿論だとも。提供する代わりに私が直接、政府と交渉に出よう」
「………マ、本気ですか?」
その提案に、俺は言葉を詰まらせながら聞くと自信満々に頷いたので彼の身を案じながらもある意味、良い提案かもしれないと思ってしまった。
俺には、深海棲艦と言うアドバンテージがある物の根っからの一般人なので交渉するにしてもやや見下されている感が否めなかったので、深海棲艦のトップとも言える彼がアポを取って交渉に臨めば政府としても本腰を入れざるを得なくなる。
しかも、今回の襲撃で日本政府は大国からの圧力で碌に動けなかったとは言え、多数の民間人だと公表せざるを得ない特殊部隊の人達を犠牲に出している以上は断る方が深海棲艦を刺激して暴れるかもしれない、と言う考えを持つかもしれないからな。
その為、彼の提案を飲むと早急に深海棲艦が特殊部隊だった人達の首を斬ってそれぞれの国へ持っていく為に海へ戻っていった。
「所で離島棲姫達は無事かい? かなりの銃撃音が聞こえたが」
「勿論よ。私達に効く銃を持っていたようだけど、あんなの注射針でチクチク刺されるような物だし」
「………その話を兵器を開発する人が聞いたら発狂しそうなものですけどねぇ」
「まぁ、うちの子達はそこまで弱くないって事だ」
多分だけど、特殊部隊を突入させたと言う事は深海棲艦に対して有効な兵器、ライフルの銃弾だったりを開発出来たんだろうがその効果が殆どないレベルで深海棲艦も成長していたのは、磨鎖鬼提督の発言からも分かってしまった。
まぁ、良くも悪くも一般人の俺からすれば深海棲艦はおっかなくも話が通じる相手なので、身の危険がない限りは一緒に居るつもりだと思いながら吐き気の限界からトイレに駆け込んだ。