転生一般人は深海棲艦や艦娘と静かに過ごしたい(旧題:何故か、深海棲艦がたむろする様になりました。) 作:八雲ネム
「ったく、素人だった俺を大佐にさせるとか、防衛省も馬鹿が極まったっつーか何つーか」
「仕方ないでしょう? 提督としての適性があって深海棲艦に精通している人って言えば貴方ぐらいなものですよ」
「だからって、軍隊に関してど素人に最低限の教育を施して防衛拠点の司令官にするかね」
「それだけ被害が大きかった、と言う事ですよ」
横須賀基地にて、秘書艦である高雄とそんな会話をしながら日々の業務である書類仕事に明け暮れていた。
本来、民間人で軍隊とは縁遠かった俺が横須賀基地にいるかと言うと1年に及ぶ深海棲艦である離島棲姫達との生活で、彼女達は人類と共存する可能性を見出させる事ができなかったからだ。
その結果、世界中で同時多発的に深海棲艦が人類に対して襲撃を開始したので過疎地から東京都心に避難したのだが、度重なる襲撃によって首都圏及び日本に所属する防衛軍は日に日に損耗していった。
そして、日本国政府は日本全土の防衛は不可能と判断して首都機能として東京の次に設備が整っている京都へ、政府の機能を移して徹底抗戦の構えを示したのだが横須賀基地を捨てるのが惜しいと判断して、避難民として生活していた俺に白羽の矢が立った。
担当していた人曰く、深海棲艦についてよく知っている俺を検査した結果、提督としての適性があったので任命するとの事だったので最初は拒否したね。
ゲームでは、誰でも提督になれたがそればあくまでゲーム内での話であって、ゲームとリアルは全く違うと言うのは離島棲姫達を通してよく知っていたからだ。
その為の拒否だったのだが、俺に提督の話が回ってくる頃になると深海棲艦の地上侵攻が始まっている頃で、四の五の言っている余裕がない状態になっていたので半強制的に艦娘を率いる提督に就任させられたのだが、当初は素人ながらにまー酷い状態だった。
何しろ、艦娘になった女性達は装備の使い方すら知らない人達ばかりな上に国家存亡の危機に瀕している状態で、戦いたくないだの逃げ出したいのと寝言を言っている状態だったからな。
気持ちとしては、俺も資産を持って海外に逃げ出したいので分かるのだが、こうやって徴兵された以上は最低限の仕事はやってもらわないと困るので、ブラック企業も真っ青になるレベルの強権発動で侵攻してくる深海棲艦を迎え撃った。
その結果、最初の数ヶ月で4桁を超える艦娘を沈める事になったが深海棲艦の侵攻を食い止める事に成功し、横須賀基地を中心とした南関東の防衛を続けてる事に成功した。
多大な犠牲を支払って、成功した戦果に対する報酬して臨時少尉から大佐にまで成り上がって、その間に北海道から東北地方は深海棲艦の侵攻によって失陥して北関東にまで深海棲艦が攻めてきているので気が抜けない状態だ。
正直に言って、夢から醒めてくれと就任してから何度も思ったのだが、そもそも俺が離島棲姫を拾ったのが全ての原因なので何とも言えない気持ちになる。
その為、南関東を失陥しない様に国から渡される防衛計画に沿った事務処理を行なっているのだが、転生前に妄想していた艦娘ハーレムは完全に死んだと言っても過言ではない。
理由は単純で、国を滅ぼされない上で俺が生き残る為に多くの艦娘を死なせ過ぎた事によって気軽に現を抜かせるだけの気分になれないからだ。
後悔はない。故郷を失わない為に必要な強権だったし、たかが数ヶ月と言う短い期間だったとしても避難する時間を稼いだ事によって、多くの命が助かった事実が残ったのでそれまでに命を落とした彼女達へ報いる為に前を向いて進み続けなければいけない。
「そう言えば新しい提督が、着任してくるんだったよな? 何時だったかな」
「午後2時からです」
「そうか。じゃあ、準備するか」
「はい」
そして、俺にとっての幸運は深海棲艦との戦闘で第一線で戦っていた松浦中将の指揮下で共に戦えた事であり、艦娘を指揮する為のノウハウを直に学べた事が大きかった。
彼が居なかったら、どこかでデカいヘマをして更迭されていただろうし、こうやって後塵を迎え入れる事もできなかったのだがここに来る新任提督は俺も知っている女性だった。
「 残念だったな」
「構いません。こうやって直に見聞きする事ができましたから」
「そうか。なら、今日は基地内にある施設の案内と部署の長に挨拶するのが仕事なので、提督としての仕事は明日からになる」
「分かりました」
新任の提督は、艦娘と深海棲艦の漫画を描く事を目標にしていたJKの相田 薫であり、最初の秘書艦となる少女は後で着任してくるので彼女と一緒に基地内の施設を案内したい。
とは言え、こんな時期に着任するのは余程の理由がなければこないと思っていたので聞いてみると薄々、予想していた答えが返ってきた。
「実は家族が深海棲艦の爆撃で亡くなったんですよ。だからその復讐で来たんですが間違っているでしょうか?」
「いや、間違っちゃいねぇ。だだ、それに固執し過ぎて判断を間違えるなよ?」
「えぇ、そのつもりです。ですが、番頭さんは良いんですか?」
「何が?」
「離島棲姫さん達が去ったせいでこうなったじゃないですか。引き留めなかったんですか?」
彼女の目は、最初に会った頃と比べて家族を失った事に対する絶望と仄暗い怒りで死んだ魚の目の様な状態になっていた為、既に家族が居ない俺からとやかく言うつもりなかったものの逆に聞き返されてしまったので本音を語るとしよう。
「彼女達を引き止められる程の交渉材料はなかったし、あったとしても長続きはしなかっただろうね。それだけ、人間と言うのが愚かで醜い存在だったんだろうな」
「そう、ですか………じゃあ、戦って再起不能にしないといけませんね」
「あぁ。その為に俺はここに居るし、君も来たのだろう?」
「そうです」
深海棲艦と言う化け物によって、世界が滅茶苦茶になったので彼女は家族を失った事に対する復讐の為に、俺は個人の安寧の為に離島棲姫を始めとする深海棲艦を1匹残らず、駆逐する事を共有した。
すれ違い、価値観を共有できなかった為に意図しない形で提督になった話でした。