転生一般人は深海棲艦や艦娘と静かに過ごしたい(旧題:何故か、深海棲艦がたむろする様になりました。)   作:八雲ネム

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第22話 日常の風景

「良かったのかい? こっちに来て」

「はい。今の時代に私の居場所はありませんから」

「探せば他にもあるとは思うがねぇ」

 

 俺の問いに、そう答えたのは太平洋上でポップした鳳翔であり、通常なら海軍所属として横須賀基地などに滞在する筈なのだが何故か、こっちに来たので理由を聞くと価値観の違いによる疎外感を感じたからとの事だった。

 掲示板などで情報発信はしているものの、この世界における大抵の人間は人間である俺と深海棲艦である離島棲姫達が同居している方がおかしいと思って近づかないし、現段階でこの街に来た人間と言えば折衝で来る人や監視の為に来ている艦娘ぐらいで後は数えるぐらいしかない。

 勿論、メディアなどを使って大々的に発信すれば来てくれるかもしれないが、そうなると今度は冷やかしや意図的に厄介事を引き起こそうとする輩が増えるし、そもそも受け入れ体制も整ってない事からキャパシティはそこまで大きくないので使ってはいない。

 

 つまり、こんな所に来るのは余程の変わり者か俺らに集ろうとする奴しかいないのだが鳳翔の場合は前者だろうな。

 日本にいる連中の大半は、疎外感を感じても色々と便利な都市部から我慢を強いられる過疎地に行く方が珍しいし、ましてや大勢の深海棲艦が屯しているこんな過疎地に来るなんて変わり者以外の何でもない。

 

「まぁ良いさ。いずれは食堂みたいな店を構えようと思っていたし」

「食堂、ですか」

「あぁ、今はまだ過疎地だが日本で最大の貿易港にしようとする計画が進んでいるからな。建設に関わる人からそこで働く人らに食事を提供するのも、俺らに割り振られた1つの仕事さ」

 

 正確には、食堂を経営する会社を誘致する事なのだが目的は単純で働く人の胃袋を掴む事だ。

 今でこそ、機械化が進んでコンテナの運搬は専用のクレーンで行なっているものの日本最大規模の貿易港を目指している以上、その敷地面積は相当なもので移動するだけでも一苦労する。

 その為、事務仕事などをする建物の近くなどに食堂があれば便利だろうなぁと言う事で俺を介して日本政府と磨鎖鬼提督の協議の結果、こちら側からも食堂を出すと言う事になった。

 

「その一員として働いてくれると助かるのだが」

「………考えておきます」

「頼む。今は比較的、平和な世の中だからな。艦娘でも第二の人生を考えなきゃいけない時代さ」

 

 人間から艦娘になれば、海軍関係者として働けるが艦娘が自然にポップした場合は戸籍等の社会で生きていくのに必要な物から、組織の中でどこに席を置くかと言った派閥の兼ね合いまで様々な点で問題になってくる。

 特に鳳翔の場合、軽空母としての性能やら彼女自身の価値観と言った所で今の時代に合わない部分がある、と色々と検証した結果を伝えに来てくれた担当の人が言っていたので暫くの間はこっちで生活するのも良いかもしれない。

 俺の場合、前世を思い出した時に時代的な差異は殆どなかった上に深海棲艦と遭遇して徐々に忙しくなってきたから、そこまでのギャップを感じないがもしもいきなり目の前で深海棲艦と戦ってますとなればかなり戸惑うと思う。

 

 その為、鳳翔の待遇はあくまで客人として扱って海軍側の判断に沿って変化させようと思いながら、彼女と一緒にやっていた昼食の準備を済ませた。

 

 

 

 

 

「大分、利益が出た様だな」

「えぇ、多少の損失が出たけどかなりの利益となった筈よ?」

「これなら次のステップに行けるな」

「次?」

 

 集積地棲姫に割り振られた部屋は、いつの間にやら幾つものサーバー機器が並んでいるサーバールームみたいになっていて、その中で作業しているのだが収支はかなり黒字になっているのは画面を見れば分かる。

 俺も仕事の合間を縫って、彼女に任せたFXの動向をチェックしていたのだが変動の波に上手く乗っている様で、銀行口座を確認すると9桁の大台に到達していた。

 たったの2ヶ月程度で、資金を数百倍に増やせたのは彼女の才能かもなと思いながら次のステップを話した。

 

「今まで稼いだお金を使って投資やらに回すんだ」

「理由を聞いても良い?」

「リスク分散さ。FXだとどうしても当たり外れの差が大きいからな。波に乗れている今はまだ良いが、乗り外した際の損額を考えたらゾッとするし」

「分かった。すぐに移し替えるけど、FXはどのぐらいまで畳むのかしら?」

「全体の1割前後、多くても2割だな。それ以上だと損失の心配がデカい」

「分かった」

 

 FXは、手っ取り早く金儲けをしたい時などに便利ではある分、リスクも大きくて一点掛けやハイレバをした際は僅かな変動で大赤字になる場合が多いので始める際、集積地棲姫に念押しして伝えたのはハイリスクは避けた上で肩の力を抜いて続けろだった。

 その結果、約20%の税金を持っていかれてもある程度の節約すれば一生遊んで暮らせる程度の利益が出せたので、資産運用をする上でリスクが高いFXの比率を下げて余った資金を他に回せると踏んだ。

 その事を集積地棲姫に伝えてから、他の深海棲艦の所に向かった。

 

 

 

 

 

「水深50メートルにしたい?」

「そうよ。世界最大のコンテナ船だと30メートルは超えるらしいじゃん。なら、今後の発展も加味してそのぐらいの深さはあっても良いと思うわよ?」

「なるほどなぁ。確かに、深い方がよりデカいコンテナ船も入れるから詰め替え作業が不要になるし、その分の費用が浮くって言うなら政府に打診してみる価値はあるな」

 

 南方棲戦姫達が集まって、議論していたので話を聞いてみると貿易港の規模を示す水深の深さについてであり、掘削の際に必要な労力をどうするかで白熱していた。

 貿易港に限らず、港の規模を測る上で重要な要素は収容できるコンテナ数の他に水深の深さがあり、深さによって港の大きさが決まると言っても過言ではない。

 何しろ、大型のコンテナ船は物資を大量に運ぶのに必要な浮力を稼ぐ為に水深30メートル前後の物が多い為、必然的に水深はそれ以上に深くしないといけない。

 

 つまり、コンテナ船の拡大や地震による地殻変動によって海底が隆起する事も考えると、50メートル前後の水深は必要だよねって結論に至ったらしいので次の定例会議でこちらから打診しようと思う。

 海底の拡張工事は、深海棲艦のデカブツによるローラー作戦で拡張は簡単にできるだろうし、必要があれば予定よりも大きめに掘っても良いかもしれないしね。

 その為、南方棲戦姫達の話を報告書に纏める為に整理していった。




前回が前回だったのでちょっとした口直し回でした。
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