転生一般人は深海棲艦や艦娘と静かに過ごしたい(旧題:何故か、深海棲艦がたむろする様になりました。)   作:八雲ネム

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第24話 2件目のポップ艦娘

「またポップした艦娘が来たそうよ?」

「またかよ」

 

 貿易港としての建設が進む中、洋上に遠征している深海棲艦から通信が入った様で離島棲姫が事務所として、使っている仮設の公民館で仕事をしている俺にそう言ってきた。

 政府との折衝で忙しくなった、と言っても基本的には政府と磨鎖鬼提督の両方から事務所に来る書類の確認と、折衝や建設で必要な打ち合わせで行うWEB会議に出席するぐらいの比較的、安定している中での話に俺は眉間に皺が寄るのを感じた。

 磨鎖鬼提督の場合、ちゃんとマニュアルまで作って渡してくれたのでやり易いのだが、政府の方は煩雑な上に前例主義な所があるので説明して回るのが億劫なのだ。

 

 しかも、深海棲艦を公表した事による腹いせからかグチグチと嫌味を言われるので精神的に苦労する上、艦娘の事になれば政府が管轄する役所の仕事だとしたり顔で言って色々と指図してくるのでウンザリするからだ。

 一応、共同開発地区として艦娘の自由意志も必要になりますと言う建前で多少は跳ね除けているのだが、それでもどこの所属でもないポップした鳳翔だけでこうなのだから更に増えたら何を言われる事やら。

 

「それで、その艦娘と敵対行為はしてないんだろうな?」

「えぇ、事情を説明して同行してもらってるってさ」

「そうか。名前とかって分かる?」

「吹雪型5番艦の叢雲だそうよ」

「今度は駆逐艦か」

 

 日本の駆逐艦、と聞くと個人的には余り良い印象はない。

 太平洋戦争前、第一次世界大戦の時に当時のドイツ海軍が実施した無制限潜水艦作戦によって、多数の船舶を沈めた実績を上層部の艦隊決戦思考によって無視された結果、駆逐艦までそれに沿って建造されてしまったからだ。

 本来、各種資源を海外から輸入しないと経済を回せない島国である日本にとって、海上交通路(シーレーン)の確保と維持に大量生産できる駆逐艦を割り当てるのが最適なのに、艦隊決戦の前哨戦に割り当てるのはアホの極みでしかない。

 

 確かに、戦艦同士での殴り合いに小型艦で前もってある程度のダメージを与えたい、と言うのは理解できるもののそれまでに急速に発展した潜水艦を、世界最大の工業大国である仮想敵国だったアメリカが量産して使用すると考えなかった時点で、アホと言わないで何とするかと考えてしまう。

 まぁ、それを当の本人に言っても仕方ないので日本政府にポップした艦娘を受け入れ中との連絡をして叢雲を待った。

 

 

 

「吹雪型5番艦の叢雲よ。あんたがここの首領?」

「首領よりも責任者って言った方が正しいな。日本政府とのパイプ役だしね」

「はん! 如何にも深海棲艦の親玉って雰囲気なのによく言うわ!」

「どーどー、落ち着け」

 

 叢雲との初顔合わせの際、かなりの物言いにこの場に居た離島棲姫達は怒りの感情を露わにしたので宥めながら話を続けた。

 

「まー、親玉ってのも否定しないがそれよりも聞きたい事がある。良いかね?」

「何よ」

「君は艦娘としての記憶か、戦闘艦としての記憶のどちらか、或いは両方の記憶を持っているかね?」

「何よ、いきなり」

「良いから答えて」

 

 俺の質問には理由があって、当然ながら前世の歴史と今世の歴史は深海棲艦の有無によって分岐した大きな違いがある。

 まず、前世の歴史は普通に太平洋戦争を起こした結果として当時のアメリカに負けた後、脅威の経済復興を果たして世界2位の経済大国になったものの政策の失敗によって、色んな問題が発生していた。少なくとも俺がくたばるまではそうだった。

 一方、今世の歴史は太平洋戦争や第二次世界大戦が発生する時期に深海棲艦が活発化して、当時の海軍大国を初めとする世界各国は大打撃を受ける事になった。

 

 その為、既存の戦闘艦では時間的猶予やコスト面で大幅に減った数の穴埋めをする事が不可能と判断した結果、兵器を人間サイズにして大量生産大量消費する事にした。

 国家存亡の危機に際して、男女の差や人命優先なんて呑気な事を言っている暇なんてなかったので生産できる艦娘(男も含む)から生産し、戦場に送り出していったので前世の歴史よりもかなりの死傷者を出す事になった。

 前世の日本では、太平洋戦争で亡くなった方が300万人以上だと歴史書に書かれていたが、この世界における日本で当時の戦争で1,000万人超の人が男女関係なく、艦娘として戦場に駆り出されて900万人以上が亡くなっている。

 

 しかも、深海棲艦による日本全土に及ぶ空爆も含めれば1,500万人以上の人が亡くなっているので、全世界に範囲を広げれば合計の死者数は5億人は超えているとの計算が出ている。

 20億人超の世界人口の内、5億人も死ねばかなりの被害が出るのは当たり前であり、海岸沿いの都市は甚大な被害が出たので戦争終結後は東西冷戦なんてやっているよりも経済回復が優先、と言わんばかりに発生した紛争の数は前世よりも少なかった。

 

「そんなの決まってるじゃない! 南方作戦や古鷹の救援を行なった戦闘艦としての記憶よ!」

「………そうか。彼女を鳳翔がいる食堂に案内してやってくれ」

「鳳翔さん!? 鳳翔さんがいるの!?」

「あぁ、会ってくると良い」

 

 そんな背景から、この質問をしたのだがどうやら熾烈を極めた深海棲艦との戦争を経験したこの世界の記憶はないらしい。

 その為、報告が面倒になったなと思いながら叢雲を鳳翔がいる食堂に案内すると離島棲姫が話しかけてきた。

 

「大変な事になったわね」

「全くだ。鳳翔さんの場合、この世界の記憶があったからまだ何とかなったが彼女の場合は説明が面倒だ」

「どっちに対しての説明?」

「りょーほう」

 

 彼女の言葉に、政府との調整が面倒だなと思いながら気怠げに答えて艦娘がポップした際に提出する用紙を引っ張り出して必要項目を書き上げていった。

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