転生一般人は深海棲艦や艦娘と静かに過ごしたい(旧題:何故か、深海棲艦がたむろする様になりました。)   作:八雲ネム

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第25話 艦娘が彼女になってくれた

『君ら深海棲艦と接触したポップ型艦娘を保護する様に』

「………承りました」

 

 叢雲が来た後、報告書を作成して日本政府と磨鎖鬼提督に報告してから数日後で彼女を初めとするポップした艦娘に関する処遇の通達を受け取った。

 磨鎖鬼提督からは、艦娘の扱いは日本国政府に任せるとの判断であり、その政府はこちらに丸投げする結果になった為、ため息を吐きたくなるのを堪えてからそう答えてからWEB会議を終了した。

 本来なら、保護した国が責任を負うべきだと思うのだがポップする数が極端に少ない事から法整備は全くと言って良い程にしておらず、政府の省庁間でも面倒を嫌った消極的な権利争いによってこっちに押し付けてきた感じだ。

 

 その結果に、テメェらの血は何色だーっ!と言ってやりたくはなったものの決まってしまったものは仕方ないので、叢雲を呼び出すと離島棲姫が付いてきたのだが肝心の本人はかなり荒れていた。

 

「ねぇ、何でこの世界は深海棲艦にボロクソにされたのよ」

「そりゃあ、人間サイズに普通の砲弾を当てる方が難しいからだろ」

「そうじゃなくて! 何で並行世界的な所にきてるのよ!」

「それは分からん。神様じゃないしね」

「私が知ってる仲間がいないじゃない! こんなの、こんなのってぇ!」

 

 その理由は単純で、彼女が居た世界と今の世界は違う事を知ったからであり、半ば自暴自棄気味に叫んでから泣き始めてしまった。

 想像してほしいのだが、仮に平和な世界で生きていたのにある日、唐突に人類が敵対的な地球外起源種から侵攻を受けて必死に抵抗しているのに、後10年で滅びようとしている世界に飛ばされたとしたら素直に受け入れられるだろうか?

 1度、転生している俺ですら中々に厳しい世界だがそうじゃなくとも姿形が同じの知人友人が、それまでと全く違う記憶を有しているのを知ったらかなり混乱するのは目に見えているので、今の叢雲が置かれている状況はかなり深刻だと思う。

 

 その為、彼女が落ち着くのを待って話を切り出した。

 

「何も言わずに送り出してすまなかった」

「良いわ、別に。深海棲艦と人間が仲良くやってる事に気が付かなかった私にも原因がある訳だし」

「そう言ってもらえると助かる。それで、今後の話をしたいのだが大丈夫か?」

「えぇ、大丈夫。パニックになっただけだから」

 

 ひとしきり泣いたからか、落ち着いた様子だったので今後の方針について彼女に聞いてみた。

 1つ目は、艦娘としてこの街に暮らして深海棲艦と共に生きる道。この街で暮らす事は、政府の決定事項なので変えたければ政府が提示する条件を飲む必要があるが、その条件が分からないので何とも言えない。

 2つ目は、艦娘を辞めて一般社会で暮らしていく道。艦娘を辞める代わりに戸籍を用意するとの事なので、深海棲艦と関わりたくない場合はこっちを選ぶのもありだと思っている。

 

「なら、艦娘を辞めるつもりなんてないわ」

「理由を聞いても良いかい?」

「だって、今の私は艦娘の力しか頼れるものがないんだもの。それがなくなったら発狂する自信はあるわ」

「深海棲艦については気にならないのか?」

「この街は彼女達が居る前提で作られているんでしょう? なら、そこに疑問を挟む理由がないわ」

「そうか。じゃあ、受け入れる方向で行くから生活に必要な物は何でも言ってくれ。全てを揃えられる訳じゃないが、可能な範囲の物を用意するよ」

 

 どうやら、離島棲姫達からある程度の事情は聞いている様なので受け入れる方向で決まったのだが、彼女との会話中に閃いたらしい離島棲姫が悪魔的な笑みを浮かべながら叢雲に近づいて囁いた。

 何を囁いたのかは、多少の距離があったので聞き取れなかったのだが直に聞いた叢雲の挙動がぎこちなくなったので、碌でもない事でも話したんだろうなぁと思いながら書類の作成に移っていると、叢雲が顔を赤らめながら聞いてきた。

 

「ね、ねぇ」

「ん?」

「もしも、私が彼女にしてくださいって言ったら受け入れてくれる?」

「!?」

 

 その発言に、衝撃を受けていると離島棲姫がニヤニヤと笑みを浮かべながら言ってきた。

 

「別に私達だけでも良いんだけど、そうなるといつかは取り込まれる事になるわよ?」

「………マジで?」

「マジマジのマジ。現にかなりの侵食を受けてるのが頭髪に現れてるし」

「てっきり、過労による若白髪だと思ってた」

 

 あまりの発言で、突拍子のない話かと思ったらかなり切実な問題だった件。

 実際、惰性でニート生活を貪っていた頃と比べて充実感はあっても仕事量が多い事からストレスで白髪になったのか、と思っていたのでリアルタイムで深海棲艦化しているとは考えもしなかった。

 

「て事はこのまま行けば肌まで白くなる事確定?」

「そうなるね!」

「中々に笑えねぇ」

 

 人間としてのプライドはないに等しいが、だからと言って深海棲艦になるのは避けたいなぁと思いながら叢雲に向き直って聞いてみた。

 

「仮に君を彼女にするとして、かなり面倒臭い彼氏になるとも思うよ? 現に深海棲艦を多数、侍らせてるし」

「良いんじゃない? 英雄色を好むって言うし」

「昼ドラや火曜サスペンス的な人間関係がドロドロになる展開は避けたいでござる」

「他の奴なら兎も角、離島棲姫達は問題ないでしょ?」

「まーな」

 

 実際、前世では彼女いない歴=年齢な人生を送ってきたし、今世では幼馴染が他の男の元に行った過去から離島棲姫達が来るまで異性との交流がなかった身柄から、ハーレムの願望はあっても実行してこなかった。

 今だって、離島棲姫達が団結してくれているから深海棲艦のハーレムが成り立っているのに、そこへ叢雲を初めとする艦娘や人間の女性が入ってきて引っ掻き回したら火曜サスペンス的な人間関係になって刺されてもおかしくはない。

 個人的には、それだけは避けたいのでかなり慎重になっているのだが叢雲はお構いなしに来る為、俺が根負けする形で恋人関係から始める事にした。その方が気楽で良いし。

 

 しばらく前に来た鳳翔さんとは、同じ職場で働く同僚的な関係に収まってから碌に発展していないのだが、ボンクラヒキニートな俺と武人として生きてきた彼女とでは価値観の違いから、それ以上に発展しようがないのでこのぐらいが丁度良いと思う。

 相手の価値観へ、下手に踏み込んで掻き回すのは不快感しか与えないのは過去の経験から充分に知っているので、鳳翔さんとは同僚として接して叢雲とは恋人として接していこうと思う。

 その代わり、2人を同じ職場で働かせるつもりはないし、仕事でダブらない様に調整する必要があるがそれに関しては追々、調整すれば良いので今は新たな仲間ができた事を喜びたい。

 

 そう思いつつ、書類の作成と今後の方針について話し合う事になった。

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