転生一般人は深海棲艦や艦娘と静かに過ごしたい(旧題:何故か、深海棲艦がたむろする様になりました。)   作:八雲ネム

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第2話 尋問

 長時間、離島棲姫と話し込んで分かったのは物理的に深海棲艦の大半は消滅したのは確かだが、生き残った極小数の深海棲艦は反抗の機会を伺っているし、肉体を捨てても亡霊などによって地上に来ている深海棲艦も一定数いるらしかった。

 その為、近代における産業革命以降、人類は霊的な物よりも物質的な方向に進んできたので、霊界通信の様な物はオカルトに分類されて技術的な断絶がかなり大きいと実感できた。

 

(こんな事なら霊媒師にでもなっておけば良かったな。確かめようがねぇし)

 

 そんな事を考えながら、夜遅くまで話し込んで寝落ちした頭で朝食を作っていると、離島棲姫の艤装の側で座っていた砲台小鬼が近寄ってきた。

 

「んー、食べたいのか?」

「………」

 

 砲台小鬼に、人間の顔の様な物がないので表情は読み取れないが長い砲身を上げ下げしたので、食べたいんだろうなぁと勝手に思いながら塩を軽く振った目玉焼きを皿に移して砲身の下に差し出すと、その辺りが大口を開ける様にバカァと開いた。

 その光景にやっぱ、深海棲艦なんだなぁと軽く戦慄しながら食べさせると美味かった様でトテトテと走り回ったので、可愛さと恐怖の感情がごちゃ混ぜになった。

 その為、深く考え込まずに朝飯を作っていると寝ぼけ眼でボリボリと掻きながら離島棲姫がやってきた。

 

「朝ゴ飯、何?」

「目玉焼きとトーストにベーコンやポテトサラダがあるぞ」

「ン、モラウ」

 

 夜遅くまで起きていたので結構、眠いのだが離島棲姫も眠い様で昨日と比べてかなり口数が減っているので、サクサク準備して朝食にありついた。

 

「今日ハドンナ予定カシラ?」

「イレギュラーがなければ旅館の掃除と案内が中心になるな。んで、時間が余ったら浜辺か街の散策でもするかい?」

「出来レバ街ノ方ヲ散策シタイワ。人類文明二接触スルノ初メテダモノ」

「分かった。時間的には正午前後になるな」

「分カッタワ」

 

 旅館、と言っても規模は部屋数は5部屋なのに加えて20人が同時に宿泊できれば良い方なので、ホテルと比べたらかなり小さい方だと思う。

 しかも、その内の一室を離島棲姫に貸す予定なのだがそもそも寂れたリゾート地に観光できて、宿泊しようとする猛者なんてそう多くないので問題はない。

 その為、今日は彼女が寝泊まりする部屋の掃除をしてから街に出向いて散策ついでに、日用品の買い出しなどをするつもりだなので朝食を済ませた後はその準備をしていると玄関から声が聞こえてきた。

 

「すみませーん!」

「はーい」

 

 その声に返事をしながら、玄関に向かうとスーツ姿の女性を筆頭に何人かの艦娘がいた。

 

「あの、何か御用で?」

「ここに深海棲艦がいるとのタレコミがあったのですが」

「あー、一応居るっちゃ居る、のかな?」

「随分と曖昧な反応ですね?」

「いや失礼。彼女を拾ってからまだ、他の誰にも見せてない物で自分でも信じ切れてないんですよ」

 

 俺の言葉に、スーツ姿の女性は兎も角として艦娘側は半信半疑で冷やかな眼差しを送ってきたので、可能なら君らと仲良くなりたかったよと思いながら離島棲姫を呼ぶと一気に物々しくなった。

 

「離島棲姫!?」

「本当にいたの!?」

「フフフ、何ヲ驚イテイルノカシラ?」

「あの戦いで全滅したんじゃないの!?」

「アラ心外。貴女達ハ海底ノ隅々マデチャント調査シタノカシラ?」

 

 どうやら、離島棲姫の発言は正しかった様で現時点における人類の技術力では深海調査はよく行えても、地球上の7割を占める海の海底調査を隅々まで調査できていなかった様だ。

 何しろ、水圧と言うのは海を10メートル潜る毎に1気圧分の圧力が増えていく為、海底1万メートルともなれば海面の1,000倍、つまりは1㎠(小指の爪)に1トンもの圧力が掛かる事になる。

 調査をする度に、それだけの圧力に耐えるだけの強度に加えて度重なる潜航と浮上による圧力の変化に対応できる靭性(粘り強さ)が必要になる為、技術的なハードルが高い上に指定した海域に向かう為の船などのコストも掛かるので地上や空中と比べて、海底について知っている範囲はかなり限定される。

 

 その結果、深海棲艦の棲家が海底にあるのは間違いないだろうなと思いながら、離島棲姫と艦娘の言い合いを聞いているとスーツ姿の女性が咳払いをしてその場を収めた。

 

「うちの者が失礼しました」

「構いません。敵対していた存在と数十年越しに遭遇したら、誰だって興奮状態になりますから」

「そう言ってもらえると助かります。ですが、事情聴取したいので大人しく付いてきてくれると更に助かります」

「分かりました。準備するので少しお待ちください」

 

 彼女の言葉を受け入れつつ、彼らが所属する組織が管理する施設への連行が確定したので携帯端末とその周辺機器に加えて、数日分の着替えを用意して行く準備を整えるとそのタイミングで離島棲姫が話しかけてきた。

 

「本当ニ行クツモリナノ?」

「行かないと色々と問題になるからね。いくら、面倒だからと言っても国レベルで指名手配されるのは御免被るって事さ」

「アラ残念。折角、深海ニ連レ込モウトシタノニ」

「冗談でも笑えないからな? 人間は海ん中では生きられない生物だからな?」

 

 怪しく微笑む彼女に、割と真面目なツッコミを入れながら玄関に向かうと、既に出発できる準備を済ませた彼女らが待機していたので彼女達が乗ってきたバスに乗って目的地へと向かった。

 

 

 

 

 

「どうやってあの深海棲艦と接触した!」

「だから何度も言ってるでしょーが。浜辺を散策したら偶然見つけたって」

「それだけじゃないだろう!」

「それだけですよ」

 

 スーツ姿の女性に連れられてきたのは、どこかの研究施設だったのだがそこで行われた尋問は苛烈とも言っても良いぐらいにかなり絞られる羽目になった。

 何せ、公式としては数十年前に深海棲艦は全滅したとなっているので1体でも深海棲艦、しかも姫級が発生したら数百体もの深海棲艦が護衛として登場してもおかしくないので、徹底的に調査して少しでも侵攻の芽を摘み取るのが国の仕事なのだから仕方のない部分もある。

 とは言え、数え切れないぐらいに同じ質問をされたのでウンザリしながらも応対しているとサイレンが鳴った。

 

『緊急警報!緊急警報!多数の深海棲艦の存在を確認した!至急、対応せよ!』

「これも貴様のせいか!」

「自分じゃないですよ。全知全能の神様じゃないですし」

 

 訓練かは分からないが、俺に対する尋問を担当していた厳ついおっちゃんが聞いていたので、否定するとフンと鼻を鳴らしながらズカズカと部屋を出ていったので漸く尋問から解放された。

 日本にいる以上、公的機関が年単位の拘束や勾留は法的に難しいと聞いた事があるので、特例や例外がなければある程度の期間で解放される筈だ。深海棲艦と接触したので怪しい部分はあるが。

 その為、ストレスで脱毛症や胃潰瘍になりそうだなと思いながらそこまで悲観的にならず、尋問室の椅子に座って待っていると尋問のおっちゃんではなく、研究施設に連れてきたスーツ姿の女性が尋問室に入ってきてある事を伝えてきた。

 

「新たな深海棲艦が現れたわ」

「訓練とかではなく?」

「えぇ。どうやら、離島棲姫と会いたがっているそうよ?」

「それで、組織の判断は?」

「釈放、とまでは行かなくともその深海棲艦と接触させる一方、研究の為に暫くの勾留はしてもらうつもり」

「うっす、分かりました」

 

 どうやら訓練ではなく、実際に深海棲艦が現れた様なので下手な刺激を与えない様に俺と離島棲姫は一時的に釈放され、その深海棲艦に合わせるつもりらしい。

 その後で、色々と研究するつもりなのだろうが俺個人は生まれも育ちも日本なので大した研究対象じゃないんだろうな、と思いながらスーツ姿の女性に連れられて現地に向かった。

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