転生一般人は深海棲艦や艦娘と静かに過ごしたい(旧題:何故か、深海棲艦がたむろする様になりました。) 作:八雲ネム
今回のイベント、掲示板やSNSの活用によって作ったグッズの9割以上が売れた事を考えれば初回の割には上手く行ったと思う。
元々、安全保障条約を締結して暫くした後に公式サイトを開設し、ツイスターと連動させて定期的に情報発信をしていたので知る人が知るサイトになっていたのだ。
そこに、イベント開催の通知が入ればSNSを利用している人達が勝手に拡散してくれるので、新聞社やテレビ局とのコネがないこちらとしてはかなり楽をさせてもらっている。
その為、次の段階として深海棲艦に関する歴史資料館の設置や交流ができる施設などの所謂、箱物と言われている研究施設とは違った建物の発注であり、個人情報保護の観点から個人名などは伏せられ続けた艦娘とは違って深海棲艦についての情報を解禁しようと思っている。
じゃないと、いくらイベントを開催しても表面上の事しか分からないだろうし、掲示板で開示しても限度はあるだろうと判断したので目的を纏めた資料を磨鎖鬼提督に送って、WEB会議を開くと次のような言葉を頂いた。
『必要な情報は可能な範囲で送らせて貰うよ。その中で掲載する範囲の物を政府側との交渉で載せてほしい』
いつもの丸投げパターンだがそれだけ、信頼されているのでその信頼に応える為にも努力するつもりだったのだが、そんな俺の決意とはお構いなしにイレギュラーが発生した。
『新たにポップ型艦娘を発見しました』
「またか。本人の名前とかって分かるかい?」
『武蔵と言っています』
「………」
(駆逐艦に続いて戦艦か………何とも言えないな)
戦艦 武蔵。大和型戦艦の2番艦として建造され、レイテ沖海戦で何発もの魚雷や爆弾によって沈んだ上、生き残った乗組員も陸戦に駆り出されてその殆どが戦死したと言われている悲運な艦の1隻である。
艦これにおいて、彼女は褐色肌に白髪でメガネのお姉さんだったのだが個人的に複雑な感情を持ってしまうのは、前世よりも前である前々世や前前々世で縁があったからだろうか。
(って、前前々世って曲あったよなー。映画の方は知らんが)
『あの?』
「あーいや、普通に説明して連れてきて。戦意がないのは分かってるんだろ?」
『はい。今は警戒しながらも待機してもらってます』
「なら、連れてきて。言葉だけでは信じられないだろうから」
『分かりました』
これで、不用意な戦闘は避けられたが1つの懸念事項が現実味を帯びてきてしまった。
それはポップ型艦娘、船魂を起源に持つ艦娘が活性化して続々とポップしていく様な状況が発生すると言う一種のイレギュラーであり、元々は鳳翔と叢雲の様に短期間でポップした事で個人的に想定した懸念事項である。
今はまだ、政府の支援によって深海棲艦に加えて特例としてポップ型艦娘に対して一定額の給付金が渡されているものの、ポップ型艦娘が増え続けると既存の艦娘との折り合いが難しくなるのが見えるからだ。
何しろ、例外中の例外として鳳翔と叢雲が政府の役人や軍人さん達に認知されているのに、そうホイホイとポップされたら適性によって採用されたワガママな艦娘よりも真面目に働く彼女達の方が良くないか?と言う疑問を持たれかねない。
そうなると、松浦中将の下で働く艦娘を始めとする多くの艦娘の席を脅かされる可能性が出てくる為、適性によって採用された艦娘からの嫌がらせについても警戒しないといけない。
まだ、ポップ型艦娘の事例が少ない事から政府や軍上層部は気楽に構えているものの、ポップし続ける様なら政府の尻を蹴り上げてでも対処を頼まないといけなくなるので、俺は磨鎖鬼提督と共に作成したある資料を机の引き出しから取り出した。
『ポップ型艦娘に関する保護・観察・運用計画』
「大和型戦艦二番艦、武蔵だ。まさか、深海棲艦を率いている奴が居るとはな」
「俺は××××、率いていると言ってもあくまで現場指揮官ってだけで偉い奴なら他に居るさ」
「それでもだ。しかも人類との融和路線を歩んでいるのは貴様のせいか?」
「偉い人も可能なら無駄な争いは避けたいって考えだからね。後は、人類側がどこまで勇気を出して行動に示せるかどうかさ」
武蔵の問いに対して、暗に俺だけの意思じゃない事を伝えながら会話をするのだがやはり大型戦艦だろうか。武人である鳳翔さんとは違った雰囲気、威厳と言うものがあって凄いと思う。
その為、敬意を持って応対していると武蔵は俺をジッと見つめてきてこんな事を言ってきた。
「ふむ、やはり似ているな」
「何がです?」
「私が戦艦、戦闘艦だった頃に勤めていた機関科の1人に貴様は似ている」
「まー、1つの世界には似た顔立ちの奴が3人はいるって言うから世界が違えば似た奴なんて普通にいるのでは?」
「それもあるが………ふむ」
その言葉に、前の世界における戦時中に乗ってたかもなぁと思いながら応えると急に近づいてきて、執務室にある椅子に座っていた俺の頭に自身の胸を当ててきた。
「………あのぅ、急に当てられても困ります」
「む? 折角、当ててるのだから楽しむと良いぞ?」
「いや、そうしたら離島棲姫た 」
「彼は困っている。だからそう言うのはやめた方が良い」
離島棲姫達とヤったので、女性の素肌やら胸やらに慣れていると言ってもこうも急に当てられると
普段から、オドオドして離島棲姫達の後ろにいた彼女が勇気を出して行動してくれた事に感激しながらも、今の
(いや、サムズアップしてねぇで助けろし。何もしねぇとこうするしかねぇだろうがよぉ、えぇ?)
その為、普通ならセクハラで訴えられてもおかしくない行動である女性の胸を揉む、と言う行動を自分の耳たぶを触る様にすると言い争っていた2人は硬直してしまった。
もしも、俺が童貞のままだったら挙動不審になっていただろうが良くも悪くも離島棲姫達で経験値を稼いでいたからな。武蔵は俺がそこそこ女性慣れしている可能性を見落としていたな。
その結果、πサンドと言う天国空間は物の数分で終わってしまったので少し寂しく思う一方で、今回のポップで来てくれた武蔵と言う人物がどう言った人物なのかは多少なりとも分かった気がする。
ポップした鳳翔さんや叢雲と一緒で、帰る場所がない。
同じ日本でも、世界が違う以上は歩んできた歴史が違っているので同じ姿形をしても親しかった友人知人が、全くの別人になっていた事を知った時に衝撃を受ける様に今の武蔵には精神的に帰る場所がない。
だから、自分の体を売ってでも帰る場所を作ろうとするのは叢雲が泣いた時を見れば普通に予想ができたので、当面は資料館の開催に向けての提案書の作成と武蔵のメンタルケアがメインになりそうである。
(このまま、ポップ型艦娘が増え続けたら政府からの横槍が面倒になるな。何か手を打たねぇと)
そう思いつつ、今回来た武蔵の面倒を南方棲戦姫と港湾棲姫に任せて作業に取り掛かった。