何故か、深海棲艦がたむろする様になりました。   作:八雲ネム

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第29話 共同基地の話

 大和型2番艦、武蔵を保護した。

 

 この報告を受けた際、日本政府の役人や海軍の上層部はにわかに色めき立った。

 何しろ、大和型戦艦は先の大戦を通して採用された1,000万人の中で300人しか、適性が現れなかったレア中のレアな艦娘なので可能なら自国の海軍に引き込もうと画策したものの失敗に終わる事になる。

 そもそも、軍隊と言うのは平時から金食い虫と揶揄されている為、余裕のある予算確保が難しい省庁であるが故に発展の余裕がなく、他の装備に予算が割り振られるのも相俟って設備の老朽化によるメンテナンス費用が上がる艦娘の装備を新たに増やす訳にも行かないのが1つ。

 

 そして、面倒を嫌った消極的な権力争いによってポップ型艦娘の管理者は番頭だった青年が行う事を、政府が許可する事を明確にした証書を政府と本人の両方が持っていた。

 その為、政府よりも立場が上の内閣府や首相のハンコ1つで部隊を動かして強奪する事も考えられたが、青年のバックには深海磨鎖鬼提督が指揮する深海棲艦が多数いる為、おいそれと言って簡単に動かせない。

 多数の先進国が合同で行なった、特殊部隊による襲撃事件で返り討ちにあって全滅した事もあって少数の部隊が突入しても同じ事を繰り返す事になるし、大軍を動かせば安全保障条約を破棄した事になるので深海棲艦との全面戦争になってしまう。

 

 つまり、縮小傾向にある生産ラインの再構成に必要な時間と金に加えてデカい組織に対して敵対行為を取ってまでして、大和型戦艦の1人を確保したいかと聞かれたら費用対効果から長期間にわたる交渉の席に座るしか、選択肢がなくなるのだ。

 その結果、青年を通して本人に打診する事になった。

 

 

 

 

 

 主人公 side

 

「君を引き取りたいと日本政府が言っているけど、どうする?」

「はっ。大方、私の性能(スペック)や名声を借りたいだけの馬鹿な発言だろう? なら断る」

「分かっていた事だが、理由を詳しく聞いても良いかい? 今のだと理由が弱いんでね」

「単純に今の政府に懐疑的だってのと価値観が合わん。仮に横須賀鎮守府、今は横須賀基地だったかに勤務したとして周囲の人との会話は難しいだろうな」

「了解した。こっちに居れる様に話すぞ」

 

 本人に行く気がなければ、こちらも行かせるつもりがないので日本政府からの招待や誘致に関しては断る方向で行こうと思っている為、今回の誘いは断る事にした。

 何しろ、現在の日本が置かれている環境は大陸側の近隣諸国に対する国防や中東諸国にいる対テロを主眼に置いている為、装備の大型化や通常の艦艇に予算が取られる事から艦娘が装備する兵装は作られてから10年以上の物を使っているらしい。

 PCや携帯端末などの電子機器は兎も角、頑丈に作られている兵装の更新は短くとも数年単位で行われているから問題ないとして、そこに今まで凍結されていた兵装の生産ラインを再稼働させるとなるとかなりの期間と金が掛かるので生産計画に狂いが生じる。

 

 特に、大和型戦艦の適性が少なかった以上は生産ラインも少数生産が限界で継続的な生産はなかっただろうし、政府から渡される資料の中にもここ20年は大和型戦艦は在籍していない事が判明している為、仮にポップした武蔵が編入しても弾薬の供給はいつになる事か、分かった物じゃないのでそれも断る理由の1つになる。

 一方の深海棲艦は、種類や総数が多い事から生産ラインもしっかり持っていて設備の更新を行いながら、今でも稼働を続けているらしいので46センチ砲弾も融通が効くらしい。

 

(そこが人間と深海棲艦の違いだよなぁ)

 

 そう思いながら、誘致を断る為の書類と同封する形である申請を出した。

 

 その名も、九十九里浜共同基地。

 

 深海棲艦の出先基地であるのと同時に今後、増加するであろうポップ型艦娘の寄合所を目的とした基地であり、日本政府と深海棲艦が共同出資する事で作られる既存の基地や鎮守府とは違った形の基地となる見込みだ。

 正直、こんな構想は夢物語でしかなかったのだが磨鎖鬼提督に話すと賛同を得られたので、計画書を立ててもらって共同で日本政府に提案する形になった。

 いくら、丸投げされているからと言って基地の運用なんてやった事がないので実際にどんな感じなのかがイマイチ、わからない俺に変わって経験者が語れば説得力が増すと言うものだ。

 

 その為、磨鎖鬼提督を交えた会合の際に打ち合わせができる様に調整する事になった。

 

 

 

 

 

「しかし、困りましたね。武蔵さんがそちらに在籍したままですと、こちらの上司もお冠になりますので」

「仕方ないですよ。本人がそちらの風土と合わない、と言っていますので無理に移動させる訳にもいきませんから」

「全くですよ。成果なしで嫌味を言われるこちらの立場にもなってください」

「それはこちらもそちらの政府の役人から言われるので何とかして欲しい所ですよ」

 

 担当の人との打ち合わせはすっかり、愚痴の言い合いじみた感じになったのだがそれも仕方のない事で俺は政府との折衝で、担当の人は上司に報告書を上げる際に色々と言われるからだ。

 普通なら、担当の人に一任して深海棲艦の観察から折衝までをやらせるのが効率的なのだが、こちらにも分け前寄越せと言う政府内の権利争いが横槍として入った為、一見すると非効率なやり方になっている。

 その為の言い合いなのだが、折角だから共同基地の話を予めしておこうと思って切り出した。

 

「それである事を構想しているんですよ」

「何です?」

「艦娘と深海棲艦による共同基地の開設」

 

 その事を切り出すと、担当の人はかなり驚いた様子だったので話を続けた。

 

「ここ最近の政府の動きを見ていると、どうもきな臭くなってきたので今のうちに囲える所は囲っちゃおうかと考えてます」

「ちょちょちょ、それ、話して良い話ですか?」

「これに関しては磨鎖鬼提督とも打ち合わせ済みです。今はまだ、煮詰めている段階ですが次の会合までには完成するかと思います」

「そ、そうですか」

 

 俺の言葉に、担当の人はかなり驚いた様子だったが少なくとも政府にも動きが起きるだろうから精々、対応を決めるのに議論をすれば良いさ。

 国の管理下に置かない艦娘と深海棲艦の共同基地を造り、ポップした艦娘の駆け込み寺にする事は磨鎖鬼提督との相談で決まった事なので日本政府が何かを言ってきても変えるつもりはない。

 それに、今はまだ日本の艦娘しか来ていないがいつかは公式で認められた海外の艦娘も来る可能性がある以上、共同基地に在籍し続けるかどうかは本人に決めさせるつもりだ。下手に国際関係を引っ掻き回すつもりもないしね。

 

(深海棲艦のハーレムはできた。艦娘ハーレムも当初の想定とは違うができつつある。後は、それらを如何にして満足できる所まで発展させて維持していくか、だな)

 

 そう。本来の目的である艦娘ハーレムは諦めていない。

 そりゃあ、深海棲艦のハーレムができてから艦娘ハーレムができるとは思ってもいなかったが、叢雲や武蔵が来て少なくない好意を俺に寄せてくれる以上はちゃんと応えるのが男の筋だと思っている。ちゃんと応えられるかは分からないが。

 その為の共同基地であり、ポップ型艦娘の寄合所として造りたいと心の底から思って今回の計画を話したのだった。


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