転生一般人は深海棲艦や艦娘と静かに過ごしたい(旧題:何故か、深海棲艦がたむろする様になりました。)   作:八雲ネム

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第31話 取材と観光

「やっぱり、工廠と訓練場は必要よねぇ?」

「勿論よ。後は生活の基盤にしたいから宿舎と教育ができる部屋は欲しいわ」

「となると最大で何人、暮らせるかの想定が必要になるな。無作為に規模を増やしても困るだけだし」

 

 共同基地の提案をして、その認可が降りたので基地内に建造する建物の規模についての議論を離島棲姫達、人型の深海棲艦と俺達と共に暮らしている叢雲達、艦娘を交えて議論していた。

 何しろ、貿易港の建設と共に取り壊された旅館の代わりに仮設住宅で暮らしているので、長く暮らす為には事前にしっかりとこちらの要望を反映させたいのが本音だからだ。

 そんな思いから、議論を進めて基地を作るのに何が必要なのかを洗い出していって一先ずの草案が完成した。

 

 まず、公式で分かっている範囲で深海棲艦と艦娘の両方を人数に加えて新たに発見されるであろう艦娘も含めて、最大で1,000人もの人数が居住できる建物群とその人数に供給できるだけの食堂や上下水道などのインフラ整備。

 次に、工廠や開発施設なども含めた仕事場や訓練場などの業務に従事できる施設と教育施設に加え、息抜きに必要な各種娯楽施設の併設させた上で、外部からの侵入者からフェンス等で侵入できない様に設置して出入りを制限するなどの対抗策が必要になる。

 

 何しろ、旧九十九里浜は観光名所がない過疎地なので貿易港があるからと言っても完成して発展するまでは陸の孤島である事は変わりない為、どうしても近場に娯楽施設だし、艦娘は兎も角として深海棲艦に無理解な輩が近寄って何をするかも分からないので、普段から一定の防御策が必要なのは言うまでもない。

 その為に必要な資金は、リターンにもよるが下手にケチらない方が後悔しなくて済む傾向が強い、と工場などで発生した事故の事例を見て感じているので出せる範囲でこちらからも出すつもりだ。共同基地だからこそ、政府からの出資に頼りきるのは愚策だしね。

 

「番頭、そろそろ行かないといけないわ」

「おう、分かった」

 

 そんな考えから、あーでもないこーでもないと話し合っていると南方棲戦姫がそう言ってきたので、俺は薫や南方棲戦姫達で横須賀基地に取材に行くのと同時に連載のネタを集めに1泊2日の観光をしに行くつもりだ。

 その準備は既に終えている為、後は出発するだけなので取材組が待っている駐車場へと向かった。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

   取材に応じてありがとうございました!」

「いえいえ、こちらとしても連載に期待しています」

 

 取材は滞りなく、進んで連載に必要なキャラの設定や戦い方などの情報は充分に集まった様だ。

 他人事の様に語っているが、実際に描くのは薫なので漫画を連載させる事に関して素人の俺がアレコレ聞くよりも、彼女が聞きたい事を松浦中将が指揮する艦娘に聞いた方が変な勘違いを起こさせないで済む。

 その為、取材時の俺は薫の付き添いで立ち合っているので南方棲戦姫達は別室で待機してもらっているのだが、取材が長引いたので下手にイラついていないかが心配である。

 

 数ヶ月、離島棲姫や南方棲戦姫と言った深海棲艦達と生活しているとそれぞれの個性と言うのをある程度、把握できる訳で離島棲姫の場合は控えめな性格で港湾棲姫の場合はオドオドとした性格、南方棲戦姫の場合は刹那的な生き方をする性格と言った感じだ。

 その為、恋愛感情なんてものはとっくに消滅して今では手間は掛かるが気の許せる親しい同居人に近い感情を持っている為、下手に苛立ってなきゃ良いんだがな。南方棲戦姫を宥めるのは結構、大変だったりするし。

 面倒事、起こさないでくれよと思いながら待合室となった一室に向かうと、そこには南方棲戦姫の他に今回の取材で同伴させた深海棲艦に質問を投げかける海軍所属の隊員達がいた。

 

「何、この、何?」

「凄い熱気ですね」

 

 しかも、接待じみた光景になっているので薫は軽く引いている上に俺としては病的にまで白いと言っても、美人な彼女達が他の人を接待するのは見たくはなかったのでため息を吐くしかなかった。

 ここで、割って入っても屈強な男達に一般人の俺が勝てる見込みがないのでどうするべきか、と考えようとした段階で松浦中将が大声を出してその場を諌めた。

 

「今回の件における処分は事情を聞いた上で言い渡す。客人に無理な接待は止めるように」

「ほな、行くべ」

「はいはーい」

 

 松浦中将の言葉に、賑やかだった空気は堅苦しくなったので逃げるように南方棲戦姫達に声を掛けると、彼女達は素直に従ってくれたので松浦中将に礼を言って横須賀基地を後にした。

 

 

 

 

 

   全く、あれで本気にされてこっちに来て入り浸られても困るからな?」

「大丈夫よ〜。あくまで()()()なっただけだし」

「その言葉が信じられないから心配してんの」

 

 横須賀基地を後にした車中で、南方棲戦姫達にそう言うとお気楽な返答が返ってきたので眉間に皺ができるのを感じながら話を続けた。

 

「ただでさえ、学校教育で深海棲艦が悪役で描かれる事が基本なのに下手なハニトラで引っ掻き回されても困るんだよ」

「その考えも分からなくはないけど、私達からすれば敵だった国の軍人がどんな感じなのかが知りたくてやったのよねぇ」

「目的があってやったんなら別に良いが次からは一言、声を掛けてからやってくれ。心臓に悪い」

「分かったわぁ」

 

 ただ、闇雲にやらかした訳ではないので松浦中将にLANEで事情を説明して下手な誤解を招かないようにしながら、連載に必要な観光地を巡って各種情報を集めていき、事前に決めていた観光地巡りをし終えた後で薫に聞いてみた。

 

「どうだい? 連載はできそうかね?」

「はい。今回の取材と観光地巡りで初期プロットの構想は固まってきたので当面は連載できそうです。完結するまでの間をどうするかは決まっていませんが」

「まーそれは追々、決めていけば良いさ。月並みだが連載が進めば見えてくるものもあると思うし」

「ですね。それはそうと1つだけ、お願いして良いですか?」

「俺ができる範囲だが良いぞ?」

 

 どうやら、連載に関して彼女の中で整理している様なので余り口出しせずに見守ろうと思った矢先、お願いをされたので聞くだけは聞こうと思う。

 

「この観音崎公園で一緒に写真を撮ってもらえませんか?」

「俺は別に構わんが良いのかい? 南方棲戦姫達の方が見栄えは良いと思うのだが」

「番頭さんだから良いんです。ダメでしょうか?」

「分かった。一緒に撮ろう」

 

 薫は普通に美人の部類に入ると思う一方、俺は可もなく不可もない見た目なので俺と一緒に撮るよりか、連れてきた南方棲戦姫達と一緒に撮った方が良いと思うんだが彼女はそれを拒否したので一緒に撮る事になった。

 これが恋愛ゲームなんかだと、恋愛に繋がるイベントなんだろうがここは現実な上に俺自身は三十路のしがない野郎なので、高校を卒業した彼女からすれば恋愛の対象になり得ないだろうよ。

 それに、俺の周りには離島棲姫や船魂型の叢雲と言った人間と一線を画す連中で固めているので、第三者が恋愛対象として見るにはかなりハードルが高いと思うから普通に考えて漫画のネタにするんだろうな。

 

 そう思いつつ、取材と観光を終えた俺達は帰路に就くのだった。

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