転生一般人は深海棲艦や艦娘と静かに過ごしたい(旧題:何故か、深海棲艦がたむろする様になりました。)   作:八雲ネム

38 / 79
第34話 予兆

   かなり、嫌な感じがしているのね」

「あぁ。なんつーか、砂を齧る様な、騒つく様な感じがしてたまらねぇ」

「そんな貴方に磨鎖鬼提督から伝令よ」

「ネットを使わず、紙による伝令か」

 

 今の時代、ネット環境が整っているのでFAXによる送信は兎も角としてもメールなどで内容を伝えず、封筒に紙を入れて離島棲姫を使って伝えに来たと言う事はそれだけ、機密性の高い内容と言う事は察した。

 その内容がどう言ったものなのか、と言うのは読んでみないと分からないので開封して内容を読んで驚きと共に困惑する事になったので、離島棲姫に聞いてみた。

 

「なー、本当に磨鎖鬼提督以外にも深海提督って居るの?」

「いるわよ。今はまだ、活発化していないから詳細は言えないけど今の7つの海洋にはそれぞれに最低でも1人は居るわ」

「てぇ事は合計で2桁は居るんだな? 全く、こんな事を現段階で政府に伝えたらパニックになるだろうよ」

「えぇ、そうなるわね」

 

 ここに来た吹雪達に安心させる間もなく、2択を迫ったのは俺個人が感じ取った猛烈に嫌な感じと言うものをここ最近になって感じ取っていたからであり、その嫌な感じが現実になったら世界経済が吹っ飛ぶ可能性すら感じている。

 これが、離島棲姫達がいなければ笑い話で済む話なのだが彼女達がいて俺個人の魂を弄られた結果、個人的には笑い話で済まされない様な気がして仕方がないし、伝令の内容も同じ様な事が書かれている。

 

「大西洋側で大規模な侵攻作戦………人間に対して排他的な考えを持つ深海提督がいるからこんな作戦が発生するんだよなぁ」

「仕方のない事だと思うわよ? 人類だって環境破壊やら何やらをやってるんだし?」

「それに関しては何も言えんよ。そうしなければ今の生活を送れないんだし」

 

 不法投棄などによる環境汚染などに関して、俺個人としては何も語るつもりはないが深海棲艦による大規模侵攻の準備が粗方、終わっている事に恐怖を感じている。

 何しろ、産業革命以降に先進国となった欧米各国は軒並み、規模の大小はあっても少子高齢化の波が来ている以上、人口ピラミッドがつぼ型と呼ばれるその国における1番、人数の多い年代層が中年層になりつつあるからだ。

 つまり、若年層が減りつつある中で経済を支える層が一気に軍隊へ持っていかれたら、少子高齢化が更に進んで老人ばかりの状態になってしまうのだが少子高齢化は勿論、大規模侵攻を止める術は俺にはない。

 

 磨鎖鬼提督と知り合い、と言っても今の俺はあくまで人間側の存在である以上、敵対意識を持つ深海提督が聞く耳を持たない上に純粋な深海提督になるつもりもないので、この件に関しては完全にお手上げと言った感じだ。

 できる事と言えば精々、人類と協調路線を取る深海棲艦に加えて深海棲艦に理解のある艦娘を集めて一定の戦力にする事ぐらいなのだが、戦争経験のない俺がこの大規模侵攻でどこまで活躍できるかは未知数だ。

 一応、戦争系のシミュレーションゲームで多少の知識はあるものの本職の方に比べればお粗末極まりないので、実際の戦争になったら本職の方に作戦を考えてもらい、俺らは民間軍事会社と言う実行部隊として活躍するしかないだろう。

 

 大規模侵攻が発生する前に、どれだけの戦力を集められて修理や休養も含めた運用をどれだけ、出来るかが課題になるだろうな。

 

「あーヤダヤダ。君らと出会う前は普通の一般人だったのに今や政治だけじゃなく、戦争に関わろうとしてるんだから面倒で敵わんなぁ」

「あら、それじゃあ私達から逃げちゃう?」

「まさか。ここで逃げたらつまらん人生に逆戻りさ。だからまぁ、死なねぇ程度に頑張るさ。大変だがね」

「そう。なら、貴方が逃げ出すまでは一緒に居てあげるわ。逃げたければいつでも言って。その時は楽にしてあげるから」

「どうやって楽にしてくれるんですかねぇ?」

「内緒」

 

 俺の質問は、彼女にはぐらかされてしまったが磨鎖鬼提督と政府との間で調整を行う一方、深海棲艦の広報や貿易港と共同基地の運用、流れ着いてきた艦娘の受け入れなどの多岐に渡る仕事で色々と大変ではある。

 以前の俺であれば、やる理由がないと言ってすぐに逃げ出すレベルのハードワークではあるが離島棲姫達のお陰で何とか、続けられているので精神的にかなり依存しているのは自覚している。

 

(ハッ………これは仕事のストレスからバブみを求めて彼女達に依存する様にしている離島棲姫達の策略だったんだよ!)

 

 な、なんだってー!!とセルフツッコミをしながら離島棲姫を見るとニッコリと微笑んだので、大体の事を察した俺はいつも通りに仕事を処理する事にした。

 

 

 

 

 

「にしても、番頭よ」

「どーしたよ、武蔵」

「こうも退屈だと暴れたくなるぞ?」

「一応、実際の演習の他に暇している深海棲艦とボクシングだったりのトレーニング時間を作ってるからそれで我慢してくれ。下手に暴れられると取り返しが付かなくなるから」

 

 深海棲艦と同居しながら、艦娘を迎え入れているとは言っても日本は平和なので戦う機会があったとしても、近隣諸国と接している排他的経済水域でいざこざがある程度だ。

 なので、基本的に事務処理を中心とした仕事がメインとなる為、忙しい奴は忙しいが暇な奴は暇を持て余しているので株式で金を稼いだり、資格の取得を始めとした各種教育や筋トレをしていたりと色々やっている。

 日本で生まれ育った為か、全員が勤労に励むのが美徳だと感じてしまうのだが離島棲姫達は深海棲艦なので無理強いはできないな、と思いながら仕事をしながら暇を持て余した武蔵の相談に乗っていた。

 

「そういや最近、来た吹雪達から聞いたんだが艦娘を続けるかどうかを迫ったんだって?」

「あぁ。あのまま、グダグダと艦娘を続けても互いの為にはならないからねぇ。だから決断するなら早い方が良い」

「ははっ、私や叢雲にはそこまでしなかったのにそれをした理由を聞いても良いか?」

 

 紛いなりにも、適性云々で選ばれていない戦闘艦としての性質が強い艦娘だからか、人間の機微に敏感な所がある様だ。

 

「正直に言って、少し焦っているな」

「焦っている? 貴様が?」

「あぁ。このまま、別世界から艦娘が来るのが止められなかったら一体、どうなると思う?」

「………なるほどな。貴様が言いたいのは、私達の様な他者の境遇を理解できる余力がある艦娘だけが来る、とは思えないから焦っていると言う訳か」

「そう言う事。増え続ける艦娘の中には、人間に敵対的な行動を取る奴がいるかもしれない。だから今のうちに敵味方の目星はある程度、付けておきたい」

 

 人生において、親友レベルで仲良くなる奴はかなり稀で大抵はその時の状況によって立場が変わる人が大半だ、と思っているので他派閥の深海棲艦による大規模な侵攻が始まった際、味方になってくれそうな奴を探しているのだ。

 一応、共同基地に参加している政府や政府に所属している海軍も味方ではあるものの彼らは自国民保護を優先するし、そもそも離島棲姫達が深海棲艦なので国際社会に対してどこまで協調路線で通せるかが疑問だ。

 いくら、こちらが敵意がないと声明を出しても同じ深海棲艦である以上はいつ人類側に牙を剥くかが分からない事から、悪魔の証明じみた事になるので深海棲艦側としては勿論、今のうちに艦娘側としても一定の戦力を有しておきたい。

 

 そう言った背景から、余裕のなさや焦りが出ているんだろうなと思いながら今後、現れるであろう艦娘に対して武蔵と意見を交わす事になる。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。