転生一般人は深海棲艦や艦娘と静かに過ごしたい(旧題:何故か、深海棲艦がたむろする様になりました。)   作:八雲ネム

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第35話 危険分子との遭遇

「基本的な艦隊編成を組みたい?」

「あぁ。どーせ、来るのを止められねぇんだったら今のうちに艦娘と深海棲艦の合同艦隊の原型を作っておきたくてね」

「私達、深海棲艦は構わないわ。共同基地の件もあるし、丁度良いんじゃない?」

「私達、艦娘も賛成したいけど問題なのは艦娘の数よ。答えを出しかねている吹雪たちを除いたら私と鳳翔さん、そして武蔵しかいないもの」

「それは今後の課題だな」

 

 共同基地の開設に向けて、色々と議論を重ねているのだが今回の議題は深海棲艦と艦娘による合同艦隊の運用についてであり、開設後の混乱を少なくする為に互いの運用に関する差を可能な範囲で減らしたいのが目的だ。

 そうする事で、効率的な運用方法の確立に繋がるし、深海棲艦の全てが敵ではない事をアピールする事が狙いなので、一定の成果が出れば報告書として政府に提出する事も可能だ。

 いわば今後、起きるであろう厄災(大規模侵攻)に対する布石の一環として合同艦隊の運用なのだが、問題なのは叢雲が指摘した艦娘の人数が深海棲艦と比べて圧倒的に不足しているのだ。

 

 まず、艦娘として生きていこうと決意した叢雲達3人と決断し切れていない吹雪達4人の計7人と、人数で言えばゲーム開始から少ししか経っていないレベルで数が少ないのが現在のネックと言えよう。

 艦娘の建造も、仮設の設備でできなくはないが艦娘の運用許可は共同基地の運用開始と同じ日に降りる為、下手な事をして政府側に悪い印象を与えたくないので今はまだ建造する事はできない。

 好き勝手に運用できないのがゲームとの違いだな、と思いながら情報の交換から運用計画まで色々と練っていき、共同基地の件で担当している政府側の役人とのWEB会議に参加する時間の直前になっていつもの報告が来たが今回のは少し違った。

 

「………そうか、遂に来てしまったか」

「どうする?」

「武装解除は済ませているんだろう? なら連れてきて。近くに監禁小屋があったからWEB会議が終わるまでそこに突っ込んでおいて。一応、話は聞きたい」

「なら、監視要員はこっちで決めておくわ。叢雲達にあたらせると勧誘されそうだしね」

「そう言うのは断るわよ。吹雪達は分からないけど」

「まー、そこら辺は任せるよ」

 

 報告を受けた俺に対し、武蔵が聞いてきたので事情を聞いた後でその艦娘の処遇を決めるとして、今は政府との会議が優先事項なので監視任務は離島棲姫達に任せる事にした。叢雲達だと離反されるきっかけになりかねないし。

 そんな訳で、洋上で彷徨っていた艦娘の対応を任せた後で俺は政府とのWEB会議に参加する事になった。

 

 

 

 

 

   分かりました。式典を行えるように調整致します」

『よろしくお願いしまーす』

 

 WEB会議にて、共同基地の建設に目処が立ったので開設に伴う式典を政府と磨鎖鬼提督の連名で開くとの事だった。

 恐らく、式典に伴って立食形式でパーティも開かれるだろうから引き篭もり気質が抜けない俺からすれば、何をすれば良いのかが分からないので完全に他人行儀な対応になる事は避けられないだろうな。

 やれやれ、建設の目処が立ったと言っても基本的な建物が完成する計画しか進んでないがな、と突っ込みたくなったが基地としての機能は完成する予定なので後は順番に拡張していけば良いと考えて何も言わなかった。

 

 とは言え、打ち合わせのWEB会議が終わったので退席後にPCの電源を落としてから、既に到着して監禁小屋に投獄されているであろう艦娘の元へ向かった。

 今回の艦娘、何をやらかしたのかと言うと海上警備の行動中に深海棲艦と遭遇した際、話しかけようとした深海棲艦に対して発砲した上に撃退して戦闘不能にしても噛みつこうとした過激派だったのでやむを得ず、投獄する羽目になった。

 しかも、連行途中でも深海棲艦は絶対に殺すとか、絶滅させるまで暴れてやるとかの物騒な事を喋っていた様なので、交渉の余地なしだよなぁと思いながら監獄小屋へ足を運んだ。

 

「それで? 彼女はどうしてる?」

「投獄したら大人しくなったわぁ。恐らく、殺される事も覚悟の上ね」

「そうか。見張っててくれ」

「えぇ」

 

 監獄小屋に到着すると、入り口で南方棲戦姫が待っていた様で事情を聞くとまぁ、先行きはよろしくないのが伺える。

 その為、ため息を吐きながら監獄小屋に入って離島棲姫に案内される形で1番奥の部屋に行き、近くにあったパイプ椅子を広げてそれに座ると投獄された艦娘に話しかけた。

 

「初めまして、だな」

「驚いたね。まさか、1番偉い人が来るなんて」

 

 俺の言葉に、簡素なベッドで寝ていた艦娘   時雨が起き上がって俺と向き合ったのだが、彼女の瞳は荒んだ心情を表しているかのように死んでいた。

 

「随分と暴れたそうじゃないか。ここに来る前に所属していた場所では待遇は悪かったんかな?」

「どうしてそう思うんだい?」

「君の前に、かなり待遇の悪い鎮守府から流れ着いた艦娘がここに来たんでね。彼女達からの証言で予め予想できていた」

「ふーん、そうなんだ」

 

 俺の疑問に、肯定も否定もしないで話を促してきたので改めて彼女の話を聴く事にした。

 

「さて。俺と話して色々と察しているだろうが少なくとも現在の世界において今、深海棲艦と人間は共存しようとしている真っ最中でね。君の発言によって今後の処遇が決まると言っても過言じゃないから気をつけて話してくれ」

「懐柔のつもりかい? なら諦めた方がいいよ」

「どうしてだい?」

「人間の醜い部分を見続けて疲れたのさ。足りない補給、無謀な作戦、木の葉よりも軽い艦娘の命。一体、どれだけの艦娘が沈んだ事か」

 

 どうやら、彼女も中々に闇を抱えているようだな。

 まぁ、彼女の境遇を考えればそれも仕方のない事だと発言の節々から見えてきたのだが、だからと言ってパッと見ではあるものの頑迷な輩ではなさそうだと個人的には感じた。

 どちらかと言えば、諦めからのヤケクソな精神状態だと感じ取ったので、今すぐに殺そうとは思えないもののすぐに解放したら何をしでかすか、分からないので暫くは投獄の状態が続くだろうな。

 

「同情はする。だが、今すぐに結論を出すには早すぎるのでね。暫くは投獄生活を楽しんでいってくれ」

「深海棲艦に与するのに法治国家の一員のつもりかい?」

「生憎、どんな状況であっても法律や規則が機能しているならそれに従うのが法治国家に所属する人間だ。だから君を生かすにしろ、殺すにしろ、他のメンバーと意見の交換をするのが今の俺の立場だ。それ以上でもそれ以下でもないよ」

「そう。なら何も言わないよ」

 

 彼女の境遇にこそ、同情したもののだからと言ってそれに流されては組織のトップは務まらないと思い、疑問に対する答えを毅然と返すと時雨は興味を失った様にベッドに寝っ転がったので俺達も退席した。

 

「どうだった?」

「答えはまだ出ていない、が方針は決まった」

「ふぅん? 聞いても?」

「みんなが集ってからな」

 

 監獄小屋から出ると、南方棲戦姫が笑みを浮かべながら聞いてきたのでそう答えるとニタニタと笑みを浮かべながら、他のメンバーを集めに行ったので離島棲姫と共に執務室へと向かった。




次回で一旦、第1章として区切ろうと思います。
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