転生一般人は深海棲艦や艦娘と静かに過ごしたい(旧題:何故か、深海棲艦がたむろする様になりました。) 作:八雲ネム
『 どうぞ!』
司会の人の発言で、セレモニー用のテープが代表者達によって切られていく。
離島棲姫達と出会って1年半、旅館があった場所は深海棲艦の常駐場所になったのと同時に艦娘も徐々に、ではあるが増えてきた段階で俺を番頭提督として共同基地のトップに置く事で開設が正式に決定されて今日、開設する事になった。
本来なら、トップに置くにはそれ相応の経験を持った奴の方が良いのだろうが今回の共同基地の場合、人類側で深海棲艦の事をよく知っている奴に任せる一方、いざと言う時の腹切り要員として俺が選抜された経緯があるので少し複雑な気分だ。
それに、今はもう居ないやさぐれた時雨にもこの場に参加してほしかったのも個人的には大きな心残りである。
〜〜やさぐれた時雨を拾ってから暫くしたある日〜〜
「やはり、ダメなのか?」
「うん。番頭さんには良くしてもらったけどやっぱり、信じ切れない。どうしようもないぐらい、こべりついてどんなに洗っても落とせない油汚れみたいに染み付いちゃってるよ」
「………そうかい」
確かに、SNSを見れば人間は醜い所が凝縮されているし、俺自身も過去の事故から人間不信になっていたが離島棲姫達のお陰で、ある程度は改善されているものの時雨の場合は心の芯にまで届く事はなかった。
暫く、監獄小屋で観察したもののの戦う気力がない事が分かったので解放して他の深海棲艦や叢雲達と交流させ、艦隊演習に参加させたりして日常生活を共に過ごしたものの、彼女の人間不信は消える事はなかった。
だから、こうやって人気のない監獄小屋の近くに呼び出されて彼女の答えを聞かされたので、深いため息と共に本当は使いたくはなかった物をカバンから取り出した。
磨鎖鬼提督が作らせた、と言う対艦娘・深海棲艦用の特殊な拳銃で人間相手にはエアガン程度の威力しかないが、深海棲艦や艦娘には当たれば一撃必殺の威力を持つと言う代物だ。
実銃は勿論、サバゲー用のエアガンすら碌に持っていなかったもののいずれ、深海棲艦や艦娘を率いる事は確定している以上は自衛用として拳銃でも使える様に、と一通りの訓練を受けてきたが最初に使うのが艦娘とはな。中々に笑えない。
「こちらとしては、これからも共同基地の一員として長く働いてほしかったが仕方ない。被害を少なくする為に君には死んでもらう」
「うん、それが良いと思う。このまま行けば、いつかは番頭さんを殺す事になるだろうから」
「残念だよ、本当に」
離島棲姫達と出会う前は、誰かを殺す事なんて状況は前世から創作物の範囲だったので縁遠い世界として自分とは無関係だと思っていた。
しかし、離島棲姫達と出会い、磨鎖鬼提督と対面し、特殊部隊の強襲を受けた時から自分自身の手は綺麗なままでは居られないと勘付き始め、艦娘を拾ってから共同基地を開設する話が持ち上がった時点で確信に変わった。
いつかは、深海棲艦や艦娘の生死に携わる事になると。
正直に言うと、今すぐにでも海外に高跳びして今の立場から逃げ出したかったが、海外で食っていこうとするガッツがなければ海外で必要な技能もない現状では、海外生活は長続きしないなと思って上記の事も引っくるめて覚悟を決めた。
死ぬ気はないが、多くの人間から罵られようともある日突然、赤の他人に殺されようとも彼女達をこの手に掛けようとも、深海棲艦と艦娘の為なら命を捧げると言う覚悟。
(離島棲姫を拾ったあの日から逃げずにここまで来た以上、この運命は決まっていたのかもな)
そんな事を考えながら、弾丸を薬室に装填してから時雨に聞いた。
「最後に言い残す事は?」
「ないよ。ただ、楽に殺してくれると助かるよ」
「分かった。眉間を狙って撃つよ」
「うん。よろしく」
そして、彼女の答えを受け取って彼女に照準を向けてから引き金を引いた。
「 俺だ」
『終わったかしら?』
「あぁ、彼女は天に召された。遺体は水葬に伏すのが良いだろう。曲がりなりにも彼女も艦娘だしね」
『分かったわ。すぐにやらせるわ。番頭は彼女達が来たら戻ってきて』
「分かった」
後で、薫や吹雪達に怒られるだろうなと思いながら離島棲姫への連絡を済ませると今回、使った自動拳銃から
正直に言って、やさぐれた時雨をこの手で殺した実感はないが殺したのは確実に俺だし、人間でありながら艦娘を殺したと言う事実は罪となっていつかは罰として俺に降りかかるだろう。
だが、後悔はしていない。
やさぐれた時雨を生かしておけば、いずれはもののけ姫に出てきたタタリ神の様に人類への怒りやら憎しみやらで深海棲艦になっただろうし、なった後は彼女が死ぬまで全てを破壊し続けただろう。
その過程で、彼女を止められる術がない以上は殺すしかないので、彼女の怒りや憎しみを引き受ける形で俺が殺す事にした。
そして、水葬の為の道具を持ってやってきた深海棲艦達に後を任せて離島棲姫達が待っている場所に行くと、彼女達から話を聞いたであろう吹雪達4人が駆け寄ってきて思い切り、俺に拳を振り上げた。
「貴方が! 貴方が時雨ちゃんを殺した!」
「あぁ、俺が殺した」
「時雨ちゃんだってもっと生きたかった筈なのに!」
「あぁ、そうだ」
「それなのに! それなのに貴方はそれを全て奪ったんだ!」
「あぁ、そうだ」
「許さない! 絶対に許さないから!」
「言い訳はしない。好きに恨んでくれ」
彼女達は、それぞれの言葉で俺を罵りながら殴ってきたので彼女達の気が済むまで受け止めた後、薫の元に向かうと意外な反応を示した。
「時雨さんは貴方に殺されたがってました」
「本当か?」
「えぇ。以前、取材した時にあの子は自分が自分じゃなくなる前に殺してもらうのが最大の喜びだとも」
「そいつは………複雑だな」
要は、俺にデカい傷を付けるのと同時に艦娘殺しとして罪を被せる事まで考えていたと言う事か。一本取られたよ。
「私も、貴方が彼女に手を掛けた事を許せません。ですので、寿命が尽きるまで逃げないでくださいね?」
「勿論だとも」
どうやら、薫にも嫌われたらしい。
その事が今後、どうなるかは分からないが現状においては最善の一手だと思っているので今後、今回の件の結果がどう出るかを楽しみにしよう。
〜〜現在〜〜
「いやー、それにしても一時はどんな存在なのかと思っていましたが、美人揃いですな!」
「恐縮です」
立食パーティにて、お偉方の話を聞きながら役人の中で敵か味方か、或いはこちらの利益にならない人の目星を個人の判断基準で決めていく。
以前なら、政府の要職に就く人が参加するパーティは縁遠い存在だったものの共同基地の開設に伴って開かれた立食パーティで、人型に近い深海棲艦達がドレスを着込んで配膳をする形式は前例がないので印象に残るだろうな。
しかも、磨鎖鬼提督もドレスを着込んで何処ぞやの貴族の当主かと思われるぐらいに優雅な立ち振る舞いをするので、緊張でガチガチな俺と比べると俺がアヒルなら彼は白鳥レベルだろう。
その結果、彼の所に多くの人が集まっているので早く終わらないかなと思いながら相槌を打った。
一般的な庶民だった俺が、政府や軍のお偉方が集まるパーティに居る事自体が場違いなのは分かっているが、だからと言って避けて通れない場面なので経験値の材料にさせてもらうと考えながらではあるが。
それに、仕方のないと言っても時雨を水葬した後の薫や吹雪達4人との関係は、好感度がない知人程度の関係になっているので下手に関わって地雷を踏み抜くよりも、こうやって話を聞いた方が気が楽なので特に問題はない。
あるとするなら、実際の運用後になるだろうから今は味方作りをした方が良いと思いながら立食パーティに参加し続けた。
光り輝く世界の中で、ひっそりと蠢く陰を一摘みっと。
正直、時雨ちゃんを生かすかどうかで悩みましたが、下手に生かして人間不信を拗らせた結果、深海棲艦化するよりも始末した方が彼女にとっても良いだろうと判断して退場して頂きました。申し訳ないです。
なので、次章からは彼女抜きで始まりますがその前に1点、アンケートに答えていただけると幸いです。
一応、区切りなので続けるかどうかのアンケートなのでどっちかにポチッとするだけ!ポチッとするだけで良いからアンケートに参加してもらえると助かります。
2024/04/26
アンケートを締め切りました
第2章以降も書いてほしいかどうかのアンケート
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完結で良いだろ。飽きたし。
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続けてほしい。次章も気になる。