転生一般人は深海棲艦や艦娘と静かに過ごしたい(旧題:何故か、深海棲艦がたむろする様になりました。) 作:八雲ネム
第37話 全面戦争
戦争とは何か?
この問いに対して、簡潔に答えられる奴は歴史や国際関係にある程度は精通していると思われるが最低限、必要なものがあって戦い合うAとBに加えて審判と調停を下す第三者であるCの存在と戦う場所だ。
つまり、個人レベルのケンカであれば裁判官の判断が必要だし、小国同士の紛争であれば大国の意向が反映され、大国同士の戦争であれば戦後処理として第三国の意見も含めながら戦勝国の要求が戦った場所によって変化しながら出される。
これらは、人類社会が長い年月を掛けて形を変えながら構築してきたシステムであり、そのシステムが通用しない存在、SF物であれば宇宙人だし、今回の場合は深海棲艦と言う事になる。
『先程、パトロール中の警備艇から救難信号が、発令されたとの事でした。ここからではハッキリと見えませんが あぁ!見てください!また爆発が起こりました!ここから1番近く、警備艇のすぐ後ろです!爆発が2つか3つ起こりました!大変です!』
『○○さん!○○さん!聞こえます!?』
『えぇ、聞こえてます!みなさん、そこを退いてください!退いて!あれは一体何?ハッキリとは見えませんが何かがいます!大勢の人の間から見ているのでよく見えないんですが…なんでしょう』
『はっきりとは見えませんが人影の様なものが見えます!5、6、7、8体ほどでしょうか私は避難します!ここにいると危険だと思います!』
『早く逃げて!』
海外のニュース映像を転用したのだろう、朝のニュース番組で流れる映像には海から現れる大量の深海棲艦が砂浜に上陸しながら、砲撃を行なっている様で1つの爆発で浜辺でリゾートを楽しんでいたであろう人達が何人も巻き込まれていく映像が流れていた。
「うへぇ………まさか正面切って上陸戦を行うなんて予想してなかったぜ」
「そうかしら? 寧ろ、前回の戦争時に良くもまあ、島嶼部しか狙わなかったわねと思っていたわ」
「そこが要求の変化って訳か。てか、深海棲艦が大陸に攻撃を仕掛けて大丈夫なのかよ?」
「そこまでは分からないわぁ。ただ、大丈夫と判断したから攻撃しながら上陸しているんでしょう?」
「それもそうか」
そんなニュースを事務所で眺めながら、鳴り止まない電話の中を離島棲姫と話していた。
「所で、電話に出なくて良いの?」
「恐らく、ヨーロッパにおける深海棲艦についての問い合わせだ。政府からの直通以外は出なくて良いとのお達しをもらっている」
「正確には私達から磨鎖鬼提督を介して止められないかとの話しでしょ」
「深海棲艦に関する事なら磨鎖鬼提督頼みですね」
「人類は昔っから困った時は神頼みだ」
複数の固定電話から、呼び出し音が鳴り響く事務所に居た南方棲戦姫や飛行場姫達とも話していると、担当の女性を引き連れたスーツ姿の男が入ってきた。
「××××だな?」
「はい、そうですが………」
「直ちに私に同行してもらいたい」
「ヨーロッパの件、ですね?」
「そうだ。君は重要参考人である事に変わりはないのだから」
現代において、初めて深海棲艦と接触して共存している事を公式に認められている現状において、政府としても俺の身柄を確保しておきたいと言う思惑が見えるものの一般庶民出の俺よりも重要人物がいるだろうに。
「それでしたら、もっと重要な人がいると思いますが?」
「磨鎖鬼提督は既に東京に向かっている。可能なら不要な争いは避けたい」
「自分が行っても対して意味はないと思いますが良いでしょう。命と生活の自由が保証されていれば」
「話が早くて助かる」
現在はヨーロッパ、特に西欧と呼ばれる地域の大半の沿岸部で深海棲艦の出現が確認されている以上、磨鎖鬼提督は兎も角として凡人が1人参加しても意味ないでしょうにと思わなくはないし、極短期間と言っても過去に留置所生活を送らされている以上は離島棲姫達も警戒感を露わにしている。
しかし、ここで日本政府と争っても何の利益にならないのは明白なので素直に同行する事を決意したのだが、政府側からの配慮で2人まで深海棲艦の同行を許されたので離島棲姫と深海鶴棲姫を連れて、彼らと共に東京へと向かった。
残りは、共同基地に残って拠点防衛と何かあればすぐに動ける様に待機してもらう事にした。
時雨との一件以降、事情は話したものの相田 薫とは疎遠になって彼女は東京に上京する事になり、吹雪達ブラ鎮から抜け出した4人は人間の事が信じられなくなったとの意見から武器を置き、人間として生きていく事を決めて共同基地から去った。
薫には漫画を通して広報を、吹雪達には艦娘としての戦力を期待していたのだが、その両方が使えなくなった事で人生は儘ならねぇなと深く実感する事になった。
それも、個人的な人間関係を傍に置いて共同基地の長期的な安定を取るか、長期的な安定を傍に置いて個人的な人間関係を取るかの二者択一的な状況だったので半ば仕方のない事ではある。
もう少し、考える時間があればもっと良い結果を出せていたと思うのだが決断した以上は結果を受け入れるしかない。所詮、物語の主役にならないモブができる事なんてそう多くない訳だしね。
諦観気味にそう思いながら、東京の行政機関が置かれている場所に向かうとまぁ、酷い状態で「会議は踊る、されど進まず」という言葉の通りに議論が紛糾している。
何しろ、難民などの問題がありながらも紛争地域と比べれば安定した地域だった西欧が一晩にして、前世における第二次世界大戦も真っ青な地獄の戦場に様変わりしたのだからな。誰1人として答えが出せる訳がない。
その為、紛糾する会議室にて周囲を見渡すと見知った顔があったので近付くと、彼も疲れた表情を浮かべていた。
「お疲れ様です」
「あぁ、ここまで紛糾するとは思わなかった」
「でしょうね」
俺が話しかけた人物、磨鎖鬼提督は今までに見せた事のない表情を浮かべていた事から彼の苦労を察する事ができた。
(大方、深海棲艦の脅威がこっちに向かないかどうかなんだろうがな)
人間は誰しも、自分に差し迫った脅威や体験した痛みについてはとやかく言うのに対して、他人の事になると無関心に近くなる。
その結果、離島棲姫達が太平洋側の房総半島にいると言う脅威は俺と言う要石があった事で軽んじられてきたものの、ヨーロッパ大陸に深海棲艦が攻撃を仕掛けた事で楽観的な雰囲気は消し飛んだ。
ここにきて漸く、深海棲艦の脅威を実感したと思われるが時間はあったのに碌な議論すらしてこなかった事から、基本的な方針が決まってなくて議論が紛糾する事になったと推測できる。
ヤレヤレだぜ、と思っていると人間の中で数多くの深海棲艦と接してきた俺の存在を認識した人によって会議室は静かになり、次々に質問が飛んできた。
「所でアンタ、アイツらを止められないのかね?」
「無理です」
「深海棲艦と言っても所詮、ただ海洋生物みたいなものなんだろう?」
「一体、どこからそんな説が出た事やら」
「報告書にあった離島棲姫とやらと共に止めに行ったらどうだ?」
「では皆さんにお伺いしますが、人類同士での紛争を残らず停戦に導けますか?」
「そんなの詭弁だろう!」
「では民間人に紛争に行かせると言う馬鹿な発想する方を馬鹿と言っても良いんですよね!?」
その質問からわかったのは、誰が責任を取るのかという責任の押し付け合いであり、この場にいる殆どの人が余りにも他責思考な考え方を持っている事に頭が痛くなってくる。
俺は離島棲姫達の面倒を見る、と言う責任を負っているのでそれ以上の責任を負わせたいのなら何かしらの利益となる物が欲しいし、ないのであれば不当だとしてこの場を去ろうと考えながら答えていると磨鎖鬼提督が助け船を出してくれた。
「彼には深海棲艦側と貴方方、人類側との窓口になると言う立場を与えています。その範疇を超える責任を取らせようとするなら、私も実力行使に移さなければならなくなりますが、それでもよろしいでしょうか?」
立場のある存在から、実力行使と言う言葉が出た為に会議室は再び静かになったので、内容を整理した後で議論が進んでいく事になる。
第2章はイージーモードで始まると思った?
残念、ハードコアだよ。
因みに、アンケート結果はこんな感じになったよ。
第2章以降も書いてほしいかどうかのアンケート
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完結で良いだろ。飽きたし。
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続けてほしい。次章も気になる。