転生一般人は深海棲艦や艦娘と静かに過ごしたい(旧題:何故か、深海棲艦がたむろする様になりました。)   作:八雲ネム

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第38話 会議と今後の展望

 深海棲艦の上陸は、ノルマンディー上陸が霞む程の規模で大西洋に繋がっている西欧の長い海岸全域に渡っていた事から、ヨーロッパ大陸に存在していた各国は海を渡ってアフリカ大陸に避難させるのは危険と判断して、地続きの東欧へ民間人を避難させながら保有する軍事力の全てを使って絶望的な遅滞戦術を行使する事になった。

 しかし、産業革命の発祥地と言われた西欧の島国は四方の海から続々と上陸してくる深海棲艦によって、7つの海を支配していた頃よりも遥かに規模を縮小した軍隊で主要な基地に集結して防衛を行う為、大陸側よりも遥かに絶望的な拠点防衛に徹するしかなかった。

 そんな中、世界中に基地を持つA軍もここまで多方面で大規模な軍事行動に出る組織を想定していなかった為、ヨーロッパ大陸の各国と同じ様な行動を取るしか選択肢がなかったので焼け石に水な状態である。

 

 何故、反転攻勢に出ないのかと言えばコンピュータによる戦闘システムの効率化などにより、80年前の兵器と比べて遥かに高価になってしまった事に加えて軍備縮小と言う予算のカットにより、大規模な数を揃える事ができなかったのも大きい。

 そして何より、兵器と言うのは部品の生産から組み立てまで最低でも数ヶ月は必要な上、需要が限定的な事もあって意外な事に掛けた費用に対して利益率がかなり悪く、赤字になる場合もある事から利益を追求する企業からすれば国からのお達がない限りは生産ラインの縮小をしたがっているのが現状だった。

 その結果、80年前の深海棲艦との大規模な戦争とは比べ物にならない程に少数精鋭になり、被害を受けている西欧は苦しい状況になっているものの日本も他人事ではない。

 

 何しろ、磨鎖鬼提督を筆頭に俺達が制御しているとは言っても日本の海岸線は国土の割にはかなり長く、C国やR国と言った大陸国家と比べて内陸への厚みもないので陸上戦力は勿論、海上戦力の中核を成す各種艦艇も数が心許ないのだ。

 ましてや、経済を回す為の各種資源の大半を輸入に頼っている現状を考えれば短期間での決着するなら兎も角、長期間になればなる程にジリ貧になるのは目に見えている。

 その為、国土防衛の方針を急いで固めながら兵器を生産する為の産業の再構築と人材育成は急務なのだが、理想の形にするには何年も掛かるだろうな。グローバル経済やらサプライチェーンとかで産業の海外移転が激しかったし。

 

   では、次の議題は   

 

 そう言った背景から、国の方針を決める会議に磨鎖鬼提督の補佐役として末席に参加しているのだが、こうしている間にも被害は拡大しているのでもどかしい気持ちでいっぱいだ。

 色々と(マニュアル)を作って、文書にしてまとめたのは良いが今となっては形式的な会議を開かないと動けない様になってしまった。それが民主主義の根幹でもあるのだが。

 そんな背景から、深海棲艦による大規模上陸から数日間は会議に次ぐ会議に出席して政府が必要としている手続きを済ませて、俺達が動いても問題ない様にしている。

 

 正確には、日本の陸海空三軍を束ねる統合参謀本部の直下部隊として共同基地に所属するメンバーが加わる事になり、俺には独自に艦娘の建造及び運用に関する指揮権が正式に渡された。

 これを以て、日本国内において艦娘を運用する初めての民間軍事会社となったもののズブの民間人に裁量権を渡し過ぎない様に、報告書やら方針に関する書類やらを頻繁に提出する必要があるし、参謀本部の査察を定期的に受ける事にはなるがな。

 俺としても、多数の深海棲艦を拾って囲っているがどちらかと言えば研究目的の要素が強かった為、個人で軍隊を持つと言う重責に軽く恐怖しているし、いつ欲望が暴走して日本に反旗を翻すかも分からないのでこう言った決まり事があった方が精神的に助かる。

 

 そして、数日間の会議が終わって一通りの役割分担が済んだ後に関係各省庁が各々の持ち場で仕事をする為、会議室を後にしようと立ち上がると俺を東京に連れてきた男性   総理大臣の補佐官を勤めていることが会議で判明   が俺を呼び止めた。

 

「総理が君と話したい事があるそうだ」

「は、はぁ」

 

 総理大臣って言うと、行政のトップなのでそんな偉い人が現場で働く木っ端な俺と話したいのはかなりの異例な事なんじゃないだろうか?

 

(そもそも、ボンクラな俺が今回の件で考え付く事を政府に採用される秀才達が考え付かない筈がないんだよなぁ。てか、こう言うのって普通は大臣や補佐官クラスの人達と話し合うんじゃないのか!?)

 

 たかだか、数日間の会議に出席した程度だが政府内でも陰謀が見え隠れするドロドロな状況なのは、うっすらと感じ取れていたので下手すると物理的に消されるんじゃなかろうかと緊張しながら案内されると普通に総理大臣がいた。

 

「彼が深海棲艦に詳しいと言う人間か」

「えぇ、少なくとも国内では彼よりも詳しい人はいないでしょう」

「そうか、では聞きたい事があるのだが   

(あれ、普通に始まったぞ?)

 

 いやまぁ、物理的に消したら離島棲姫達が黙っちゃいないが、だからと言って普通に話が始まると逆に拍子抜けしてしまうが始まった以上は話さないといけないだろうな。

 

「今後、世界のパワーバランスがどうなるかを一般人の目線で忖度なしに聞かせてくれ」

「は、はあ………では」

 

 総理大臣の言葉に、俺は補佐官の人に目線を移すと話してやれとの合図があったので、言葉を選びながら個人的な見解を話す事にした。

 

「まず、大量の深海棲艦が現れて戦争を仕掛けてきた以上は大規模な社会の変革は免れないでしょう。特に、今回の件で大損害を受けている西欧諸国は産業革命以降、世界を牽引してきた先進国と言う権威は失墜する可能性が高いと思われます」

「にわかには信じられないな」

「えぇ、大規模な戦争が始まるまで自分も西欧諸国は先進国のままだと考えていました。ですが、それはその土地に存在するからこその権威であり、その土地から離れて国家が消滅、あるいは消滅に近い形になったらどうなるのかを考えた結果、今の考えに至りました」

 

 実際、前世におけるオスマントルコ帝国と呼ばれていた国は第一次世界大戦までは広大な領土と多民族による内紛を抱えながらも、大国の地位にいたものの第一次世界大戦で敗れた後は領土の解体によって、内紛が表面化して転生する前にはトルコ共和国まで縮小していた。

 つまり、今回の戦争で西欧諸国は自国に攻め入ってきた深海棲艦に対処できず、難民を大量発生させた挙句に今まで見下してきたであろう東欧やアフリカ諸国に臨時政府を立てた、ともなれば見下されてきた国々はどう思うだろうか?

 表面上は快く受けたとしても、西欧に暮らす数千万から数億人が人の波となって押し寄せてくるので、裏で今までの煮湯を飲まされた鬱憤を晴らすつもりでお礼参りとして色んな嫌がらせをするんじゃなかろうか。

 

 人間、他人にした仕打ちは忘れても自分に受けた仕打ちはいつまでも忘れないので、そんな人間が集まってできた国ともなればまぁ穏便には済まないだろうとは思う。

 仮に、太平洋と大西洋に挟まれたA国が西欧諸国の権威を担保したとしてもアフリカ大陸や中東地域にある諸国を初め、R国やC国と言った現段階では被害がほぼゼロに近い国々はそれに従わないだろう、と思うので覆水盆に返らずと言う諺の様に大きく変化する事には変わりない。

 

「つまり、戦後を見据えるとかなり慎重に国際関係を見直さないといけなくなる、と言う訳か」

「えぇ、そうなります」

「君は今回の戦争、どれぐらいの期間で終わると思っているか、聞かせてほしい」

「分かりません。現段階において、深海棲艦の最終的な目的がどう言った物かさえも不明な現状で予測を立てる事さえ、難しいのですから」

 

 今回の戦争で、それが1番の懸念事項で深海棲艦と彼女達を束ねる提督達の最終的な目的が分からない以上、双方が交渉のテーブルに座って協議する事ができるのかすら分からない上、どの段階を以て戦争を終わりにするのか、と言った予想が立てられない。

 その為、最悪のケースで考えれば人類を絶滅するまで戦い続けるなどの目的になるので人間同士での戦争、どちらかが根負けして降伏文書に調印する程度には加減した戦争とは全く違う争いが起きているので、前例がないのも相待って予測が全く立てられないのだ。

 

「うぅむ、となると当面は各国との協議の他に兵器の準備をするしかない、か」

「えぇ」

 

 今の日本は、前世の日本と比べて軍隊に対する風当たりは強くないのである程度の予算は貰えているものの、だからと言って満足できるものではなく、兵器の高性能化に伴った高価格化によってA国や西欧諸国の様に限られた予算によって数よりも質に拘らざるを得なかった。

 その結果、大量生産大量消費には向いていない兵器群が多い為、弾薬の量産体制への移行に加えて兵器の運用に携わる人員の調達や物資の輸送などの軍隊を動かす為の各種手続きに最低でも数ヶ月間の時間が必要になる。

 それだけ、平和な期間が長く続いたと誇れるもののこう言った突破的な戦争に対処できないのが、自由で民主的な国の弱い部分だなと思いながら総理大臣の言葉に頷いた。

 

「では改めて君に通達する。君が契約する深海棲艦に加えて新たな艦娘を建造して戦争に対応できる様に訓練を施す様に」

「畏まりました」

 

 基地の完成は、まだ不完全ではあるものの正式な通達が来た以上はやるしかないので、総理大臣と彼の補佐官に頭を下げてから退室した。

 

「どうだったかしら?」

「名実共に共同基地の運用が決まった。これで漸く動き出せる」

「なら良かったわ」

「今まで、艦娘の運用に関しては渋っていた政府も漸く首を縦に振ったと言った感じかしらね?」

「さぁな。だが、四の五の言っている場合じゃなくなったのは確かさ」

 

 すると、部屋の外で待機していた離島棲姫達が話しかけてきたので受け答えしながら共同基地へと帰還した。

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