転生一般人は深海棲艦や艦娘と静かに過ごしたい(旧題:何故か、深海棲艦がたむろする様になりました。)   作:八雲ネム

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第44話 欧州陥落による余波

「現地時間○月○日未明、UK国及び(パスタの)国が陥落したとの報告が入った。UK国の方は四方八方から上陸で後手後手となり、空路による政府中枢及び王族の脱出も失敗に終わった事から長くない事は分かりきっていた事だが」

「海軍国の弊害ですねー。海軍に予算が取られる都合で相対的に陸軍へ予算が少ないって言うのが問題になってましたし、彼の国は大分前から金融関係で生き永らえていましたから工業は弱くなってましたし」

「しかもパスタの国はイベリア半島の早期失陥による弊害でジブラルタル海峡を自由に行き来するのが可能な上にアルプス越えまでしたらしい」

「カルタゴのハンニバルや大陸軍(グランダルメ)のナポレオンみたいな事をしたんですね。中々に笑えない状態です」

「全くだ」

 

 深海棲艦による欧州侵攻により、欧州大陸の西欧は早々に陥落したのだが大陸から程近く、何かとネタになる島国のUK国も例外ではなかった様で四方八方から上陸し、目に付くものは全てを破壊する深海棲艦によって国土は破壊し尽くされた。

 挙句に、王族が乗った飛行機が墜落した事で数百年の歴史を有する連合王国は今回の戦争で呆気なく、消滅する事になったのだがそれはパスタの国も例外ではなかった。

 確かに、大西洋から上陸した深海棲艦は東欧まで一直線で東進したもののR国の粘り強い抵抗に加え、R国が潰れれば長い国境からの進行に耐えられないと判断したC国と(ナンとカレーの)国からの増援によって東進は停滞。

 

 何とか、戦線の維持に成功したが深海棲艦がそこで止まるかと言えばそうではなく、まるで蝗害の様に手持ち無沙汰になった深海棲艦は進路を変えて南欧へと奴らの牙が向いた。

 その結果、ギリギリで抵抗できていたパスタの国は過去の歴史をなぞる様にアルプス越えをした深海棲艦によって戦線は崩壊し、南欧も次々に飲み込まれていくのと同時に北欧諸国があるスカンジナビア半島も半分以上が失陥している。

 ここに来て、漸くA国は非常事態宣言を発令して国内にある全てのリソースを軍備に当てる大統領命令が発令されて、国家総動員の体制になったので日本も近いうちに似た様な状態になるかもしれない。

 

 その為、中枢棲姫に頼んで投機目的で買い占めていたマンションなどの大型物件は戦時農園として水耕栽培ができる様に改装を依頼し、仮想通貨などの投資は農業と戦争に関連する産業に転換した。人類文明が崩壊するかもしれない状況でそれ以外の産業に振り分けている余裕はないし。

 今の状況を太平洋戦争に置き換えるなら、マリアナ沖海戦が始まる前ぐらいの時期だと思うぐらい、西欧各国の陥落は大きな痛手だと言っても過言ではない。

 何しろ、衰退したと言っても一定の工業力と港湾施設を持っていた先進国の半分が地図上から消えたともなれば、彼らが持っていた技術力などの消失に繋がっているので戦力の再生産にかなりのデバフが掛かる事になる。

 

 なので、杉山さんの他に息抜き兼欧州情勢の情報共有をする為にきた磨鎖鬼提督と共に憂いているのだが、離島棲姫達が来てから政府から派遣された担当の女性、沢口さんから電話が来た。

 

「はぁ、欧州の艦娘を生産して欲しい?」

『はい。欧州諸国の大半が消滅した以上、生産できるのは我々かA国ぐらいなものですから』

「あー、でしょうね。でしたら正式な依頼として書類をこちらに回してください。こちらでできる範囲の事をしてみます」

『よろしくお願いします』

 

 話の内容は、消滅した国の艦娘を日本で生産する様にとのお達しだったので、試しにやってみる事を伝えてから磨鎖鬼提督達と共有した。

 

「海外艦の建造………確か、先の大戦で多少の融通はあったと軍学校で習いましたね」

「技術交流と言う事で相互利用していたんでしょう。まぁ、当時の我々深海棲艦側からすればなんで、そんな非効率な事をするのかが疑問でしたが」

「人間社会は色々と面倒な事がありますからね。それはそうと、武蔵達に連絡っと」

 

 すると、2人から否定的な意見は出てこなかったので艦娘の中でも深海棲艦に理解のある武蔵や時雨達に連絡を取り、海外艦も含めた建造計画へ修正する様に伝えた。

 データ自体は、80年前に発生した深海棲艦との戦争時とかなり古い物なので正確性は担保できないが、建造の際にある程度の指針になるので無計画で建造するよりかは遥かに効率的だ。

 大規模な戦争において、質よりも必要な時に必要な分の数が必要になるのである程度、数的な余裕はあった方が良いのだが今の日本では横須賀を始めとする5つの基地でも艦娘の建造が進んでいる。

 

 その為、共同基地で下手に建造して他の基地に配置換えするのは補給や整備の他に海軍としての面子、と言う点でよろしくないと杉山さんが語っているので共同基地所属の艦娘が揃いつつある現状では、損失が出た際にどうやって損失分の穴を埋めるかにシフトしている。

 その一環で、海外艦娘を生産するのもやぶさかではないので武蔵達を呼び出す事にした。

 

 

 

 

 

 時雨 side

 

「時雨、やっぱり行くのね」

「うん。僕にとって大切な人だから」

「そう。なら、あたしからは何も言う事はないわ」

「………ぽい」

 

 散々、白露姉さんや姉妹艦(みんな)と話し合った結果として出した僕の結論に白露姉さんは何も言わなかったし、夕立も残念がっていたけど変えるつもりはなかった。

 普通の艦娘からすれば、倒すべき相手である深海棲艦に与する人物である××××に対して、多少なりとも警戒するのが当たり前で頑固な艦娘だと過激な敵対感情を持つ艦娘もいる。

 けど、僕からすれば他の人から非難されようとも暴走する僕を止める為に引き金を引いてくれたし、それからあまり日数が経っていないのにノコノコと建造された僕を戸惑いながらも受け入れてくれた。

 

 だから、そんな彼に恩を返すつもりで専属秘書艦になろうと自分1人で決めて、彼が政府との調整などで忙しくしている間に白露姉さん達と話し合い、時には罵倒じみた非難や反対されようとも自分の意思を貫いた。

 もしも、この決断を彼から否定されようともこの気持ちはしっかりと伝えたいし、その結果を受け入れるつもりだ。

 

「来たわね」

「うん、来た」

「私から事前に事情は話してある。私が言えた事じゃないけど白黒しっかり付けるのよ」

「うん、分かってる」

 

 そう思いながら、彼がいる執務室に向かっているとその入り口に僕と同じ人を慕っている叢雲がいて、彼に話を付けていてくれていた。

 その為、彼女に礼を言ってから執務室のドアをノックして入室の許可を貰うと執務室に入って彼と向き合った。

 

「叢雲から話は聞いた。俺の専属秘書艦になりたいんだって?」

「うん」

「薄々、勘付いていたけどまさかそこまで考えていたとはね。自分で言うのもなんだが色々、面倒になるぞ?」

「うん、分かってる。けど、それでも君の隣に居たいと思ってるんだ。迷惑だったかな?」

「覚悟ガンギマリすぎだっつーの。これで断ったら中身はどうであれ、女を捨てたクソ野郎っつー評価になっちまうじゃねぇか」

 

 僕の言葉に、彼は諦めの気持ちを露わにしたけどそれも仕方ないと思う。

 何しろ、今は人間になった吹雪達から非難され、漫画家志望の女性から距離を取られた原因である僕が専属秘書艦になると叢雲から聞かされ、色んな葛藤があって反発もしたと思う。

 けど、それでも僕の中にある気持ちを察して受け入れてくれると信じてここに来た。

 

「まー、専属秘書艦にするとして練度の低いままだと他の艦娘から下手な言い掛かりを吹っかけられるからな。暫くは、それこそ非常に高い練度になるまで積極的に戦場に送り込むから覚悟しといてくれ」

「うん、分かった」

 

 どうやら、今回の賭けは僕の勝ちだった様なのでその喜びを噛み締めながら退室すると叢雲が待ってくれていた様だ。

 

「どうだった?」

「専属秘書艦にしてくれるって」

「そう。なら私達、頑張らないとね」

「と言う事は叢雲も?」

「えぇ、私も彼に救われた。だから今度は彼を救いたい」

「そうだね」

 

 どうやら、叢雲も彼の専属秘書艦になったらしい。

 今はまだ、深海棲艦との共同基地に理解して受け入れている艦娘は武蔵さんや鳳翔さんを含めてたった4人しかいないし、専属になるレベルで彼に入れ込んでいるのも僕達2人しかいないけど、これで彼が救われるのならなんだってやる。

 そう思いながら、叢雲と一緒に今後の事について語り合った。

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