転生一般人は深海棲艦や艦娘と静かに過ごしたい(旧題:何故か、深海棲艦がたむろする様になりました。) 作:八雲ネム
「思った以上に来てない!?」
「今回の大規模侵攻でたまに来る様になったらしいよ!」
「くそっ、思った以上に多い!」
インド洋へ、先遣艦隊の一員として派遣された艦娘は数ヶ月に1回と言うペースで深海棲艦から大規模に派兵される時期と重なった為、数えるのも億劫になるレベルの膨大な数に艦娘側は圧倒される形で戦っている羽目になった。
その結果、到着直後から連戦に次ぐ連戦ですぐに疲弊して轟沈する艦娘が現れる事になったが1つの部隊だけ、大破する艦娘は出すが轟沈に至る艦娘を出していない部隊があった。
何を隠そう、番頭が率いる深海棲艦による大規模演習と言う名のハードなブートキャンプに鍛えられた艦娘達であり、即席ではあったが練度はレベル30超えが当たり前であり、率先して参加していた時雨を始めとする艦娘に至ってはレベル40に近い数値を叩き出していた。
先の大戦から80年が経過している為、他の基地では試行錯誤で行われていた演習に対して共同基地では別個体とは言え、本人達が在籍しているので実戦に近い形で演習が行われる事が多々あった。
その為、共同基地に在籍する深海棲艦に鍛えられた艦娘達は紅海や希望峰からやってくる深海棲艦の強さについて、おおよそではあるが把握する事ができる様になった。
後に、当時の指揮官だった人物は彼女達の見立てはかなりの精度を有していたと報告書に残す程、先遣艦隊に所属する時雨達は他の艦娘よりも突出して強かった。
「ここら辺も静かになったね」
「着任当時は大変だったよねー。波ってか、侵攻の強弱的な物の中で強い時期に来ちゃったっぽいし」
「そんな中で生き残れたのは、良くも悪くも共同基地にいたお陰だね」
「一時期はどうなるかと思ったけど、まさかここで役に立つとは思ってもいなかったよ〜」
紅海とインド洋を繋ぐ海峡、バブ・エル・マンデブ海峡の手前であるアデン湾の周辺海域まで川内を艦隊旗艦とした6隻で深海棲艦の侵攻がないかを確認する為の哨戒に当たっていた。
アフリカ大陸に存在する各国は、内陸国が多いのに加えて政治的にも経済的にも先進国と呼ばれる国々に比べて未成熟な部分が多いので、それに比例して軍隊の規模もそこまで大きくない。
陸軍戦力は別にしても、海軍艦艇は少数のコルベットやミサイル艇などの小型艦艇が主力になっている事から、深海棲艦から領海を守る事は兎も角として攻勢や妨害に出る事はかなり厳しいと言わざるを得なかった。
その結果、深海棲艦から攻撃を受けていない日本から先遣艦隊を派遣する事になったのだが、日本全体で派遣した500名の艦娘の16%に当たる80名が番頭が率いる共同基地から来ていて、その内訳は以下の通りである。
| 艦種 | 派遣された艦娘 計80名 |
|---|---|
| 戦艦 8隻 | 大和型2隻:大和、武蔵 長門型2隻:長門、陸奥 金剛型4隻:金剛、比叡、榛名、霧島 |
| 空母 10隻 | 赤城、加賀、蒼龍、飛龍、大鳳 翔鶴型2隻:翔鶴、瑞鶴 雲龍型3隻:雲龍、天城、葛城 |
| 重巡 12隻 | 妙高型4隻:妙高、那智、足柄、羽黒 高雄型4隻:高雄、愛宕、摩耶、鳥海 最上型4隻:最上、三隈、鈴谷、熊野 |
| 軽巡 16隻 | 球磨型5隻:球磨、多摩、北上 大井、木曽 川内型3隻:川内、神通、那珂 阿賀野型4隻:阿賀野、能代、矢矧 酒匂 香取型2隻:香取、鹿島 夕張、大淀 |
| 駆逐艦 30隻 | 吹雪型1隻:叢雲 暁型4隻:暁、響、雷、電 白露型5隻:白露、時雨、夕立、春雨 五月雨 朝潮型4隻:朝潮、大潮、満潮、荒潮 陽炎型7隻:陽炎、不知火、黒潮、親潮 雪風、磯風、浜風 夕雲型6隻:夕雲、巻雲、長波 沖波、早霜、清霜 秋月型2隻:秋月、初月 島風 |
| 補助艦艇 4隻 | 補給艦:神威、速水 工作艦:明石、朝日*1 |
この80人が、現段階の日本が送り出した先遣艦隊の中で最高峰の戦力であり、未だに戦死者を出していない強さを有しているのだが深海棲艦が総力を上げて攻め込めば、あっという間に吹き飛んでしまう程の数でもある。
その為、実際に戦う艦娘は兎も角として指揮を取る海軍の幹部達からすれば全力で来ないでほしい、と派遣されてから願わずにいられなかった一方でそんな幹部達の考えなど露とも知らず、現場の艦娘達は哨戒に当たっていると偵察の為に飛ばしている艦載機から一報が入った。
「っ! 深海棲艦の艦隊を多数確認! 数は………計測不能!」
「ついに来たって感じね!」
「母艦に緊急連絡を取りましょう!」
「えぇ! 可能な限り、観測を続けながら先行艦隊の露払いをするよ!」
『了解!』
これが小規模な艦隊であれば、彼女達だけでも対処可能だったのだが数百から数千規模の艦隊が紅海周辺の国々を無視しながら南下して来る以上、彼女達の母港となっている母艦に連絡を取って救援要請を行なった。
「くっ、キリがない!」
「キリがなくとも本土に帰るまで戦い抜くんだよ! それが先に散っていった仲間達に報いる方法さ!」
「にしてもこの数は流石にまずいよ!」
救援要請を受け、生き残っている艦娘全員で出現したものの余りの多さに砲身は熱を帯びて赤くなり始め、度重なる出撃で艦載機は徐々に数を減らし始めている。
戦闘 → 補給と応急修理 → 戦闘を深海棲艦が殲滅できたり、撤退するまで撤退や繰り返しているのだがこのまま、戦い続ければすぐに弾切れになるぞと思うぐらいの数である。
その為、何も起きないでくれよと思いながら先遣艦隊の全員で戦っていると随伴していた戦闘艦のソナーに新たな反応が出て精査した所、状況は悪い方へ向かう事になる。
番頭 side
「先遣艦隊が半壊、ですか」
「元々はそこまで多くなかったらしい。ただ、派遣された艦娘に反応する様に侵攻に参加する深海棲艦の数が増えるようになった、との事だ」
「ある意味、敵に情報を与える事になった、と言う事ですね」
政府の定例会議に呼ばれ、参加した後に首相補佐官の人に呼び止められたので話を伺ってみると、そんな事を言われたので紅海から戦線の拡大を狙える結果になったと察した。
その為、性急だったかなぁと思いながら用件を聞くと更なる新兵の錬成と戦力の抽出に応じてほしいとの事だった。
「………私の事を魔法のランプが何かだとお考えですか?」
「そうではない。ただ、派遣した期間内で全滅する方が外面に悪いからな。無理に、とは言わないが可能な限り、応じてもらえると助かる」
「………手を尽くします」
政府から、共同基地に必要な費用の半分を出資してもらっている以上は彼らの要求を可能な限り、呑む必要があるのだが今回のは中々に厳しいし要求だった。
何しろ、足が長くて他所の基地に派遣しても恥ずかしくない戦力、それも共同基地の主戦力とも言って良い程の実力者を既に送っている現状において、新たに練兵して戦える戦力にするのは中々に厳しい。
ただでさえ、荒削りの突貫工事で半年の練兵をしたのにそれよりも短い期間で練兵すると、実際の戦闘では死傷者数が加速度的に増える要因になりかねないからな。
できれば削りたくないんだよなぁ、と思いながら政府の意向に従うしかないんだよなぁと考えながら話を振った首相補佐官と詳細を詰める為、空いている小規模な会議室へ向かった。