転生一般人は深海棲艦や艦娘と静かに過ごしたい(旧題:何故か、深海棲艦がたむろする様になりました。)   作:八雲ネム

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第50話 対談

 更なる戦力の抽出を命じられてもやる事は変わりない。

 短期間で艦娘を練兵して、素人の新兵から普通に戦える一般兵に引き上げる事を目的にしている以上、演習だけで熟練兵にするにはコストが掛かり過ぎるので全体的な練度は下がっても、1人でも多くの艦娘が生き残れる様に演習の調整を行なった。

 正直、演習期間を極端に減らすと戦死の数が増えるだけなので減らしたくはなかったが、政府の方から1人でも多くの艦娘を派遣したいとせっつかれたのでやむを得ない判断だった。

 

 その為、これ以上の期間短縮は費用対効果として望ましくないので無理です、と担当者に強く念押ししながら第二次先遣艦隊の派遣の準備を行なっていると磨鎖鬼提督から連絡があった。

 

“インド洋の深海提督から会談したい、との連絡があったので政府との調整を行いたい”

 

 どうやら、現場監督的な立場である俺では会談の話は半信半疑のネタだと思われた様で、彼自信が実際に乗り込んで事情を説明するとの事だったので、俺からも政府の役人に連絡を取ってその事について話をするとかなりバタついていた。

 何しろ、磨鎖鬼提督以外に深海棲艦側話ができる提督がいる事に驚いている様子だ、との事だったので可能なら外務省にでも俺がやろうとしている事を押し付けてぇ、と思いながら話は通しておいた。

 じゃないと、不意打ち気味な現場監督と巨大組織のトップがやり取りを始めたと言う情報は国として困るだろう、と言う素人ながらの考えだった上に磨鎖鬼提督も同じ懸念を示したからだ。

 

 その懸念とは、深海棲艦の一派が人類側に寝返る工作を始めようとする行為を他国に咎められる可能性があると言う懸念だ。

 何度も言う様だが、経済を回す為に必要な資源の大半を海外からの輸入に頼る日本からすれば、輸入先との国交を断ち切ってまで深海棲艦と手を結ぶと言うのはリスクの点からすれば未知数だからだ。

 一応、磨鎖鬼提督と共同基地の運営で協調路線を結んているが、あくまで個人の活動に国が口出しすると言う建前を元に活動を限定する事で、他国からとやかく言われるリスクを軽減しているに過ぎない。

 

 それに対して、今回の交渉の話は国としての立場なのかを明確にする意図があり、深海棲艦が大規模な侵攻作戦を実行している現状においてA国などからイチャモンを付けられるのは確実だろう。

 なので、すぐに結論は出ないだろうが交渉が成功すれば先遣艦隊の負担がかなり軽減される上、深海棲艦も一枚岩ではない事を世界にアピールする事はできると言うのが個人的な意見だ。

 その為の仕込みやら何やらを、政府の役人で考えなければいけないんだから彼らも彼らで無理難題だと思っているんじゃないかな。現場の監督的な立場の人間だからよく分からんが。

 

(現場はどこも苦労するもんよな。まぁ、こっちもこっちで艦娘を宥めすかさなきゃいけないから面倒なんだが)

 

 そう思っていると、いつもの様に共同基地で建造された天龍が龍田を連れてノックもせずに執務室に入ってきた。

 

「なぁ! いい加減、オレ達も実戦に出してくれよぉ!」

「うん、すぐには無理だねぇ」

「すみません。いつもながら」

 

 毎日、座学や訓練と言った練度向上の他に事務作業や海運関係を中心とした関係各所への周知する為の手伝いなど、実戦とは程遠い日々を送っていた為に川内(夜戦バカ)程ではないが戦いに飢えている状態になっていた。

 共同基地、と銘打っている都合もあるのだが大抵の軍隊ってのは養ってくれる国に対して予算の請求をして装備を調達するが、政府の方針に対して何かを言う事は余りないと思っているので、政府からの依頼がない場合はこちらから戦闘地域に赴く事はしたくない。

 特に、今は戦力の抽出した後の事後処理で新たな戦力を練兵している最中なので、戦力が整うまでは自衛戦闘を行なっても攻勢に出たくはない。数が少なすぎて長く戦えないしね。

 

 その為、退屈でくたばりそうだと文句を言う天龍を宥めていると離島棲姫が息を切らせて執務室にやってきた。

 

「大変な客が来たわよ!」

「………離島がそう言う程なんだから、よっぽどなんだろうな? ほい、水」

「えぇ、ありがとう………それにしても、今まで梨の礫だった彼の海域の提督が来るなんて思ってもいなかったわ」

「本当か!?」

「えぇ、じゃなかったらここまでの芝居は打たないわ」

「………マジかよ」

 

 その理由は、インド洋の深海棲艦を仕切る提督の唐突な来訪であり、碌な準備をしていなかった俺からすれば何を話せば良いのか、分からんので息を整える為に水を渡した離島棲姫に来た理由などを聞いてみた。

 

「単純に、前から興味があったらしいわよ? 人間がどうして深海棲艦を受け入れたのかってね」

「その理由を聞きにここへ来たとすればよっぽどの自信があるのか、或いは対策があるのかどうかだな」

「えぇ、ある程度の戦力を連れてきているみたい」

「それだけ、自信があるみてぇだな。しゃーねーか」

 

 できれば、もっと準備ができてからにしてほしかったよと思いながらメールにて、第一報としと磨鎖鬼提督に連絡してから応接室に通した提督さんと話をする事にした。

 

 

 

 

 

「××××です。共同基地の基地長を勤めています」

「インド洋海域を配下に持つ深海箆羅雄(のりお)である!」

「本日は御足労頂き、ありがとうございます」

「気にする必要はない。興味本位で来ただけだからな」

 

 まさか、どこぞやの特務局第13課所属で再生者(リジェネレーター)の能力を持つ某神父の外見で若本ボイスな深海提督だとは思ってもいなかったので、少し面食らいながら挨拶をすると普通に挨拶を返してくれた。

 その為、初見時に殺されずに済んだ事に対して安堵しながら箆羅雄提督改めて話を伺った。

 

「こちらに来て頂いた理由は私達、共同基地に在籍している離島棲姫から伺っています。何故、人類と深海棲艦が共存しているのかに興味を持たれた、と」

「その通りだが、理由はもう一つある。理由は分かるな?」

「深海棲艦との共闘、ですよね?」

「そうだ。本来、我々インド洋の深海棲艦も人類との共存はしなくても良いと思い、傍観の構えを取っていた。それなのに何故、貴様らは共闘の話を持ち掛けてきたのかが疑問だった。だからこうして出張って来た訳だ」

 

 なるほどな。箆羅雄提督からすれば、ボロクソになっている西洋の国々は兎も角としてまだ安全な海域を維持している東洋の国、特に大陸と太平洋の間に挟まれて国土そのものが万里の長城と化している日本と共闘する理由がない。

 あるとするなら、それだけの対価が必要になるのだがそれを用意できる国家は大規模な侵攻前であろうとも、人類側の国家群にはなかったと推測できる。

 だからこそ、その疑問を少しでも解消しようとこうやって対談をしに来てくれたので、こちらも本音の部分を織り交ぜながら話をしようと思う。

 

「これは私個人の考えですが、人類単独で深海棲艦との戦いは時間を掛ければどうにかなるでしょう。しかし、それでは先の大戦と何も変わらないので相互理解の一助になりたいと考えています」

「その為に彼女達を受け入れ、我々と共闘すると?」

「えぇ、そうです。今回の大規模な侵攻が起こった事でハードルはかなり高く、当事者の事を考えれば実現は不可能だと思えるでしょう。しかし、だからと言って相互理解をしないと言う判断は余りにも愚かだと愚考し、共存共栄の第一歩として今回の提案を致しました」

 

 国家間の関係を左右する交渉の場に出た事もなければ、発言1つで国が消滅する機会に立ち会った事もないど素人が考えた事なんてたかが知れているので素直に話すと彼からある指摘が飛んできた。

 

「だが、いずれは人類は裏切るだろう?」

「えぇ。ですが、それはそちらも同じでしょう?」

「何?」

「大西洋の深海棲艦と袂を分かった深海棲艦の一派を保護しています」

 

 箆羅雄提督の指摘は当然であり、共闘の為の条約やらを結んでもいずれは失効する時期が来るのだが、人類側に派閥がある様に深海棲艦側にも派閥がある事は今回の大規模侵攻で分かっていた。

 もしも、深海棲艦が本当に一枚岩であれば離島棲姫達は早々に磨鎖鬼提督の元に帰っていたし、こうやって慣れない交渉事に顔を出さなければここまで頭を悩ませる事もなかった。

 それだけ、離島棲姫達に入れ込んでいるとも受け取れるのだが俺と彼女達との間で相互理解が進み、体を重ねる夜の営みまで進展している以上は人類側か、深海棲艦側かの二元論で判断したくない。

 

「いつ頃だ?」

「大規模侵攻初期に来ましたよ。人類側と戦いたくないとの事で日本まで来たそうです」

「そうか。どれぐらいの数か、聞いてもいいか?」

「詳細に関しては差し控えますが、最低でも2桁を超える数です」

「なるほどな。だから貴様は甘っちょろい判断を下したのか」

「えぇ。でなければ今頃、海の藻屑か新たな深海提督になっていますよ」

「それもそうだな」

 

 そんな訳で、対談の場で詳細は伏せた状態で大西洋から日本まで来た深海棲艦を保護している事を伝えると、少し興味を持って貰えたので彼が満足するまで対談を続けた。

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