転生一般人は深海棲艦や艦娘と静かに過ごしたい(旧題:何故か、深海棲艦がたむろする様になりました。)   作:八雲ネム

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第51話 対談の結果

 箆羅雄提督との対談は順調とは言い難く、彼が放つオーラに当てられて冷や汗をかきながらも必死に喰らい付く形になってしまった。

 元々、惰性で生きて基地の長になってから1年も経過していない若造が相対しているのは、深海棲艦の中でも特定海域のトップまで上り詰めるまでに色んな事をしてきた老獪な提督なので勝ち負けは最初から決まっている。

 なので、負けは負けでも最善の負け方と言うものがあり、今の俺からすれば如何にして彼らと敵対しない関係を持てるかを足りない頭で必死に考えて話をした。

 

 その結果、以下の内容で仮締結となった。

 

・インド洋で行われる艦娘に関わる全ての作戦に俺が参加する事(名代(みょうだい)として他の者を参加させるのもあり。その場合は事前通告する事)

・箆羅雄提督が率いる深海棲艦は欧州大陸で行われる全ての作戦に参加しない代わり、日本を始めとする人類側と争わない

・今回の条約が締結された場合、締結後から5年間は有効(延長の際は都度、交渉)

 

 この他にも、細々とした内容がある物の途中から磨鎖鬼提督が来てくれたお陰でかなり譲歩してくれた内容になった。

 とは言え、これはあくまで民間人が勝手に取り決めた事だから本来なら政府側から取り消しと言われてもおかしくないのだが、欧州大陸が酷い事になっている上に俺自身が深海棲艦との架け橋になっている事で無視できない条約となる。

 俺自身、深海棲艦ありきな状況に置かれていると言う自覚はあるので条約の本締結するまでは口出しせずに見守ろう、と思う一方で根拠はないがインド洋に行く事になりそう。

 

 何しろ、深海棲艦の事をよく知っている第一人者な訳で何かあったらすぐに応対できる奴と言ったら、現時点では俺しかいない事から船酔いしやすいから船に乗りたくないんだよなぁと思いながら、この事を離島棲姫に伝えるとこんな反応が返ってきた。

 

「私としては貴方と行ければどこにだって行くわ。けれど、インド洋に行って本当にやっていけるの?」

「まー、無理だろうな。ただ、ああでも言わないと彼が納得しなさそうだからな。できる範囲でやるさ」

「失敗したら貴方、取り込まれるわよ」

「その時は人類の滅亡もやむなしとして諦めるさ」

 

 今の世界に来てから、海外に一歩も出た経験のない俺からすれば海外出張でどこまでやれるかは未知数だが、こうやって話している間も時雨達が先遣艦隊として戦っているのだから、共同基地の長として後方支援としてできる事をしておきたいと思っている。

 そんな訳で、磨鎖鬼提督の元で仮締結した条約を彼と箆羅雄提督に渡して政府の元に向かわせて、俺達は待つ事になったのだが特にやる事がない。

 何しろ、仕事量に圧倒される日々だったので業務の効率化を徹底して運用側は少人数で動かせる様にした事に加え、深海棲艦と艦娘の運用と言う業務に専念しているので本格的な戦闘が近づかない限りは、日頃の業務や演習等で必要な書類を捌く要領を掴んでしまえば暇になる。

 

 なので、共同基地で働くメンバーには定期的に余暇や娯楽を与えて不満や不安を減らしたり、ガス抜きをしているのだが無理を承知でカツカツなスケジュールを組んでいる以上、限界はあるからな。

 

(はよ、戦力の安定化を実現したいでござるよ)

 

 そんな事を考えながら、演習に出ている深海棲艦と艦娘の帰りを待ちながら執務室で離島棲姫と駄弁っている事にした。

 

 

 

 

 

   以上を以てインド洋総司令官である深海箆羅雄提督との連絡所の設置と責任者を任命する」

「承りました」

 

 結論から言ってしまえば、箆羅雄提督との本格的な交渉は政府で行うから俺は基地長としての仕事に専念しろとの通達を受ける事になった。

 それも当然で、会社で例えるなら本社の部長クラスが参加する様な他の会社と提携して行う大きめのプロジェクトに対して、支店の店長が口出しする様な物なので政府としてもそんなド素人に任せたくないのが本音だろう。

 その為、俺からは特に反論とかはしないで改めて与えられた任務を拝任しながらも心の中では安堵の気持ちで一杯だった。

 

 理由は簡単で、慣れない業務が軌道に乗り始めた段階で他の業務に当たらせるのは失敗した際のリスクが高すぎるし、そもそも外部委託的な立場の輩にそんな重要案件を任せる訳がねぇわなと察したからだ。

 恐らく、箆羅雄提督としても人類がどう言った思考パターンを持っているかと言う考えの元で、俺との対談を行なったと思われるので小手調べ的な物だったのだろう。

 そう言った2つの要素から、安堵したのだが政府としては気が気じゃなかったんじゃなかろうか。

 

 何しろ、相手は磨鎖鬼提督とも違う深海提督で彼が纏うオーラも格段に違う、となればかなりの胃痛案件だったと考えられる。失敗すれば大西洋に続いてインド洋も失陥し兼ねないからな。

 その為、担当した人達に内心で謝りながら今後の方針を聞くと艦娘の提督になった士官の何人かを彼女達と共に、(ナンとカレーの)国に本格的な派遣をして前線基地にする予定との事だった。

 そのメンバーの中に、俺や離島棲姫達が入っていないのは下手に派遣して管理が行き届かない状況になったら何をしでかすか、分かった物ではないと言う判断らしいので大人しく待機しよう。

 

 今はまだ、人類に対してそこまで希望を捨てている訳ではないので大人しくしているのが、希望を捨てるきっかけさえあればいつでも捨てる覚悟でいる。捨てたくはないがね。

 そんな訳で、先遣艦隊は本格的な艦隊が到着して引き継ぎ作業が終わるまでを派遣期間となったのだが、問題なのはどれぐらいの数が生き残っているかが問題だ。

 先遣艦隊は、紅海を経由してくる深海棲艦の波を何度も撃退する戦果を上げているものの、それに比例して損害が出て消耗しているので場合によっては戦闘経験を他の艦娘に伝授する前に全滅している可能性だってある。

 

 それを見越してか、政府から新たな戦力を先遣艦隊に合流させる為に戦力を抽出せよとの命令が下達されたので、第一陣と比べて練度はまだまだだが戦線の維持ぐらいであれば問題ないレベルの艦娘を割り当てる事にした。

 正直に言って、共同基地には血気盛んな艦娘が多数いるので彼女達の意見を聞きながら調整するのは骨が折れるし、帰ってこないかもしれない事を考えると気が重くなる。

 その為、必ず生きて帰って来いよと思いながら派遣した。

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