転生一般人は深海棲艦や艦娘と静かに過ごしたい(旧題:何故か、深海棲艦がたむろする様になりました。) 作:八雲ネム
「インド洋先遣艦隊、只今帰還致しました!」
「長期間の任務、お疲れさん。報告書は政府の方から回されてきているので報告する必要はない。各員、思う所はあるだろうがまずは装備を整備に出した後は充分に休息を取る様に。命令は追って出すので暫くは待機だ。以上」
「では解散!」
先遣艦隊の任務期間が終わり、結果的に2回に分けて送り出した艦娘達が帰ってきた。
激しい戦闘により、全員で帰って来る事はできなかったがその割には8割以上の艦娘が帰ってきた事を考えれば、前もって深海棲艦との演習を行なった事は間違いではなかった。
その為、まずは日本各地にある海軍基地の提督達との技術と文化の交流が行われるだろうなと思いながら、帰ってきた艦娘達に休息を取らせると時雨と叢雲が近付いてきた。
「提督、帰ってきたよ」
「私達、結構頑張ったんだから褒めてよね」
「おう、できる事はしようと思う」
その発言に、俺は彼女達の頭を撫でながら答えた。
1年と言う期間の間に、何度も深海棲艦との海戦が発生した事で日本政府は
これは、UK国や
また、I国は実情は兎も角として消滅したUK国と歴史的にかなり関係の深い国家とも言えるので、ある程度の制限は受けるだろうがUK国の艦娘を建造して運用する事も可能だと考えられる。
その為、日本からの駐在武官として提督を送り込んで警戒監視に当たらせるのと同時に技術支援を行なって、インド洋の制海権を当事国として維持してもらおうと言う魂胆である。
I国にはかなりの負担だろうが、A国が内戦に近い状態で膠着している現状では彼の国の支援は見込めない為、陸軍も派遣しているI国にはかなりの負担を背負わせる事になるがそうしないと形はどうあれ、人類文明が消滅しかねないのでやってもらうしかない。
幸い、本土が消滅しても各国に派遣された外交官が今も大使館等に在籍しているので、色々と大変だろうが彼らにも頑張ってもらうしかない。
色々、大変になるなと思いながら時雨達の要望を聞いていると離島棲姫が話しかけてきた。
「あら、色々と大変だったみたいね」
「そうだね。この1年間、沢山戦ってきたから××××に甘えたいんだよね」
「まあ、練度もそこそこ上がったんじゃないかしら」
「うん、艦娘で言うなら2人とも70以上は確定ね」
「確かに時雨達は他の艦娘よりも多く戦った様だからな。弾むしかねぇな」
練度と言うのは、ゲームに於けるレベルと同じで上がれば上がるほど、経験値は多く必要になるので練度が40近くから70以上になるにはそれ相応の働きが必要になる。
報告書にも、深海棲艦の撃破数に関する項目があって誤認などで多少の増減はあるにしても、駆逐艦の中では彼女達が最も多く撃破している事が分かっている為、報酬に色を付けないといけないだろう。
その為、今の段階で何が最も必要かを尋ねるとこんな事を言ってきた。
「改造して能力向上を計りたい、か」
「うん。砲雷撃での火力不足を感じる事が度々あったから欲しいかなって」
「実際、ほんの少しの火力不足で沈んだ艦娘が多数居たからせめて私達だけでもって思ったのよ」
「………分かった。必要な物は取り揃えよう」
話を聞いて、確かに競技とかで後少しの所で負けたなんて話を耳にした事があるのでいつ、命を落としてもおかしくない戦場ではその重要度はかなりの物だろうと判断して色々と調整する事にした。
幸い、先遣艦隊の実績で1位と2位だった為に政府から表彰されるのと同時にかなりの資源を優遇される事が決定した為、頑張った2人に免じて有り難く改造に使わせて貰おう。
他にも欲しい物があるかを尋ねると、俺と一緒にいる時間が欲しいと言う要望があったので了承すると離島棲姫から揶揄われたので適当に返しながら4人で食堂へと向かった。
「マジか」
「大マジですよ。今回の先遣艦隊で第一陣は最低でもレベル60以上の練度、第二陣だと50前後になりますね」
「彼女達には権利を行使するだけの理由があるっつー事か」
「そうなりますね」
時雨と叢雲の場合、専属秘書艦と言う目的の為にダントツの撃破数を誇った事から後日、先遣艦隊に参加したメンバーの練度に対して正確な測定を行うと時雨が80、叢雲で79と言う戦争が始まって1年と言う期間を考えると異常なまでの高い練度になっていた。
それだけ、激戦が続いた事が分かったのでインド洋に行った提督達の事を軽く心配しながら、他の艦娘も確認すると参加した期間の差はあれど練度は軒並み向上していたので大規模侵攻様々だな。
その為、報告してきた明石に転勤の事に関して暗に伝えると彼女も同意する様に頷いたので転勤届の受付を開始する事にした。
何しろ、インド洋で深海棲艦と戦って帰ってきたら似た様な姿の共同基地所属の深海棲艦が待っているとか、一歩間違えれば戦場で感じた過大なストレスによって味方同士で殺し合いに発展しかねないからだ。
以前、共同基地が建設される前の旅館だった頃にその周辺で特殊部隊の人達と離島棲姫達が戦った事があった物の、あれだって事が収まった後の事後処理を軽く手伝った程度なので、戦場で感じるストレスがどれぐらいの物かは把握し切れていない。
その事から、時雨や叢雲と言った極小数の物好きな艦娘以外の全員が転勤してもおかしくないな、と思いながら日常化した業務を行なっていると利根と筑摩がやってきた。
「相変わらず、この基地はとち狂っとるのぉ」
「こら、利根姉さん。提督に失礼な事は言わないの」
「いやすまんすまん。ほれ、頼まれていた書類じゃ」
「はいよ、確かに受け取った。だが良かったのかい? 転勤するなら今が良い機会だと思うが」
どうやら、頼んでいた仕事が終わった様なので受け取って内容を確認すると問題がない様なので、確認した事の判子を押しながら転勤しない事を決めた彼女達に聞いた。
「最初は驚いた物じゃがの。話してみれば姿形は違えど我らと同じ知的生命体で、しかも我らに対して敵意がないと来た。となれば他の基地に行くより、ここで働いた方が楽しいと踏んだんじゃ」
「確かに、前の大戦では敵同士でインド洋で戦った深海棲艦も敵でしたが今は状況が違います。なので仲間であれば一緒に戦おう、と思いまして残る事にしました」
「そうか。なら何も言う事はねぇよ」
転勤届を受け付ける事を公表すると、チラホラと出す艦娘が出てきたので受け取っているのだが、思ったよりも出してきた数が少なかった事に首を傾げながら聞いたのだが彼女達の答えを聞いて腑に落ちた。
何故なら、80年前の戦いでは国から半強制的に敵だと教え込まれて戦ってきたのに対して、今回は半官半民の共同基地と言う特性からどっしりと腰を据えて話し合う事も可能だからだ。
その事から、彼女達なりに折り合いを付ける為にも離島棲姫達と話し合った結果、相互理解が進んで少なくとも共同基地にいる離島棲姫達は共に戦う仲間だと言う事が分かったのだろう。
勿論、受け入れられずにいた艦娘は今回を機に他の基地に行くだろうがそれでも比較的、多くの艦娘が離島棲姫達と共に過ごして戦いたいと思って残留する事を決断した以上、俺から何かを言うつもりはない。
せめて、彼女達が快適に過ごせる様にしようじゃないかと思って新たな仕事を利根達に割り振った。