転生一般人は深海棲艦や艦娘と静かに過ごしたい(旧題:何故か、深海棲艦がたむろする様になりました。) 作:八雲ネム
インド洋に派遣され、生き残った艦娘が持ち帰った様々な知見は提督達が行う演習に対して大いに反映される事が決まったのだが、肝心の生き残った艦娘の過半数を元番頭である共同基地の長が率いる艦娘を占めている為、各提督が率いる艦娘の割合はどうしても少なくなる。
その結果、提督達は事前の机上演習において効果的な演習が行えない事に頭を悩ませる事になったのだが、そこに政府を通して共同基地長からのある申し出があり、提督達は歓喜する事になる。
何しろ、共同基地に所属する200名余りの内、2割に及ぶ40名が配置換えを申し出ている事が判明した為であり、練度に不安がある現状において最低でも練度が50程の艦娘は教官クラスの艦娘として喉から手が出る程に欲しい人材である。
配置換えにより、転勤してきた彼女達をその基地では立場が最も高い人物の元で一元的に運用する事や、今回の配置替えによって共同基地に対して資源の融通する事などの諸条件はあるが、その対価で練度が上がれば新規建造を行なって新たに練成するよりも安く済む。
そう考えた提督達により、より良い人材が来る様に正式な配置換えが決まる前に様々な根回しを行う事にした。
番頭 side
「にしてもここまで応募が殺到するとはねぇ」
「当然だと思うわよ。インド洋に行った艦娘の中で生き残ったのがここ所属の艦娘が多かったんでしょ?」
「勿論。先遣隊に参加させるのに問題ない程度の練度は用意したからな。離島棲姫達がいなければ生存率はかなり悲惨だった筈さ」
「えぇ。前もって私達、姫級の他にレ級やヲ級と言った面々に揉まれれば当然と言えば当然ね」
配置換えの打診を政府にした結果、横須賀基地を始めとする日本にある5つの基地から教官として迎え入れたいとの打診が強くあったので、政府や軍の方で調整して欲しいとの内容を伝えた。
何しろ、建前として民間軍事会社の社長で共同基地の基地長という都合から俺個人は軍籍を持ち合わせていない為、海軍と言う組織からすれば部外者なので海軍の人事に口出しできる権利を持ち合わせていない。
そう言った背景から、配置換えを願い出た艦娘を放り出す事はできても受け入れ先が決まっていないと彷徨う事が確定している以上、せめて受け入れ先が決まってから放り出したいのが人情と言うものだ。
その為、配置換えする艦娘の人事権を握る為に色々とやっているであろう提督達を片目に、離島棲姫と話しながら書類仕事をしていると鳳翔さんが昼食を持ってきてくれた。
「お疲れ様です」
「あぁ、持ってきてくれてありがとう」
「お仕事の方、忙しいので?」
「先遣艦隊に参加した艦娘のメンタルチェックの経過報告と配置換えする艦娘の経歴書の作成でね。軍の方に出さなきゃいけないんだ」
「はぁ」
普段なら、基地内にある食堂に足を運ぶのだが今は日々の業務に加えて先遣艦隊に関する経過報告で忙しいので来てもらったのだ。
特に、艦娘の精神面に関してのデータは前の運用が数十年前に加えて鬱だったりの精神的な病気は個人の気質とか、本来なら脳の異常なのに心の病だとかの間違った認識によって不足しているとの事だったので、政府から調査する様に強く言われている。
実際、俺も改めて最新の医学書を分かりやすくまとめた書籍を読んだりして分かったのだが、精神病は物理的な病気や怪我と違って目に見えない分、放置すると本人も気が付かずに重篤になりやすく、重篤になればなる程、治療が長引く上に完治はせずに寛解する程度だと知った。
つまり、1度なった以上は治らずに一生引き摺る事になる事から戦闘で相手を死傷させる戦闘組織に所属している以上、発症したら戦力の低下に繋がるので見逃せない病気である。
その為、先遣艦隊が帰ってきてからは定期的に専門医を呼んで艦娘達と面談しているのだが、専門医の報告によると何人かの艦娘に鬱の初期症状が出ているとの事が書かれているので注意が必要だな。
「それで何度か、お医者さんと面談したんですね」
「そゆこと。鬱は甘えと言う一言でどれだけの人が不幸になったのか、考えるだけでも恐ろしい」
「でも不思議ね。船魂型の艦娘でも鬱になるなんて」
「それだけ、人間の精神面は複雑って事さ。スポ根的精神論がまかり通っていた一昔前の方が異常なのさ」
人間の精神面は複雑であり、スポ根漫画の主人公の様に努力と根性で勝ち上がれる様なタイプはいると言えばいるが、全員に当てはまるのかと聞かれればNOと答える人が大半だろう。
ネズミの様に、徹底的に危険やリスクを回避して成果を得ようとする人もいれば、知的に立ち回ってリスクを最小限にしようとする人もいる様に人間と言うのは多様である。
個人的に、スポ根漫画等のジャンルは否定しないものの根性よりも先に大量のデータが必要だし、データがあれば傾向が見えてくるので根性だけで押し進めるのは非常に危険だ。
特に、命が掛かっている戦場ではデータを取って傾向を把握しないと対策しようがないので、対策が不十分な状態で指揮を取れば無駄な損失を増やしてしまい、作戦が失敗してしまう。
つまり、深海棲艦や艦娘を指揮する立場から言わせてもらえば余裕がある時はスポ根漫画の様な無駄に疲弊させる事はなく、可能な限りのローテーションを行うのがベストと言う事になる。
勿論、余裕のない時はローテーションもへったくれもないので持ちうる戦力を総動員するつもりだが可能な限り、そうならない様に調整するのが上の立場の役割だと思っているし、総動員に参加した艦娘達に対して報酬の上乗せは必要だとも思っている。
そんな訳で、メンタルチェックの報告書と経歴書の作成をしていると廊下が騒がしくなった為、作業の手を止めて聞き耳を立てていると執務室の扉が開いて金髪美人のチャンネーが入ってきた。
「ここに
「この基地のトップ、と言う事なら俺だが要件は?」
「ここにも深海棲艦がいるの!? 一体どうなってるのよ、この基地は!」
「あー………その事か。話すと長くなるから紅茶でも飲むかい?」
「………もらうわ」
金髪美人のチャンネー、ビスマルクが来たので軽く驚いていると深海棲艦の事についてだったので、「あぁ、その事か」と思い至ったので離島棲姫を始めとする深海棲艦が人類と共存しているのが如何に異常かを再認識した。
(離島棲姫達と出会って1年以上が経過するのかー。妙に感慨深いっつーかなんつーか。てか、そう言う記念とかって必要だったりするんだろうか?)
そんな事を考えつつ、来客時の応対の一環として前もって用意していた紅茶を持ってくる様に鳳翔に伝えた。
鬱は中々にキツい(経験談)