転生一般人は深海棲艦や艦娘と静かに過ごしたい(旧題:何故か、深海棲艦がたむろする様になりました。) 作:八雲ネム
「はてさて、動くかなっと」
翌朝、ほっぽちゃん達を街に連れていくと言ったものの肝心の足である車が動かなければ話にならないので、旅館の仕事をした当初に購入したワンボックスカーに乗ってエンジンを動かしてみると普通に動いた。
まー、尋問を受けている間に燃料を入れる給油口から濃度の高い砂糖水をぶち込まれたりとか、エンジンを弄られて壊されているとかの問題がなければ大丈夫だろう。
旅館の周辺は、政府の働きかけによって入場制限が掛けられていたらしいし、政府としても下手に俺個人の所有物に手を出した結果として事故が起きて俺や離島棲姫達が怪我をした、とかの事態が発生するのは嫌だろうしね。
その為、車内にある座席の調整や掃除を行なっていると離島達が来たので席順について決める為に聞いてみた。
「一応、聞いておくが前に座りたい人」
「勿論、私ガ乗ル権利ガアルワヨネ?」
「ホッポガ乗ルーッ!」
「ワ、私モ乗リタイ」
すると、3人が一斉にそう言ってきたのであーだこーだ言い合って決めた結論は、3人が順番に座ると言う物で順番を決めるじゃんけんをする事になった。
「マ、負ケタ」
「………次ニ期待スルヨ」
「マァ、ヨロシク」
「はいよ」
結果は案の定、離島棲姫が最初で次に北方棲姫、最後が港湾棲姫と言う順番になったので前もって伝えておいた注意事項の確認に移った。
「さて、モールに行った際のルールは覚えてるかなー?」
「知ラナイ人ニツイテ行カナイ、貰ワナイ」
「貰ッタリ、何カアッタラ相談スル」
「身ノ危険ガアルマデハコチラカラ手ヲ出サナイ」
「よくできました。後は向こうの準備ができたら出発できるな」
これが普通の人であれば、ほのぼのとした日常の会話なのだが彼女達は曲がりなりにも人よりも遥かに強い深海棲艦で、見た目も白く化粧をし過ぎた連中と勘違いするレベルで違うので変な輩に手を出されるんじゃないかとかなり心配だ。
本来なら、もっと準備が整ってから行きたかったのだが北方棲姫がどうしても行きたいと言うので、担当の人に無理を言って何人か一般人に紛れる形で現役の艦娘を護衛として呼んでもらった。
話によると所謂、戦後世代の艦娘と言って大戦での実戦経験はないが海軍に所属しているらしく、理由としては対人戦では破格の力を有しているとの事だ。
(深海棲艦相手だと厳しいだろうが、人間相手だと艦娘パワーで何とかなるっつー話なんだろうな。じゃなきゃ、第二次世界大戦時の装備しかない彼女達を雇い続ける理由がないし)
古今東西、実戦における優先事項は索敵の次に長射程の兵器の活用であり、前世での海戦は航空機が登場するまでは大艦巨砲主義が広まり、登場後は航空主兵論が広がって実際に戦いの主力は戦艦から空母と空母に発着艦する航空機に移行した。
第二次世界大戦後はミサイルが登場し、事故死する頃には極超音速滑空体やら
それらは、如何にして自軍の被害を減らす為の研究開発が行われていたのに対して、ゲームにおける艦娘の兵器基準は第二次世界大戦レベルで頭打ちになっていた。
ゲームの設定上、上限を決めないと数値のインフレが起きるので仕方のない部分はあるのだが、今の世界における艦娘の兵器がどこまで開発されているかが分からないのがネックだな。
何しろ、その国が保有する兵器や開発中の兵器を見ればある程度の戦力が分かるのだが開発がスローペースだったり、古い兵器を改装しながら使っているなら悪い方で察してしまう。それだけ、平和な時代の証拠なのだが。
その為、対人戦で頑張ってもらいますかねと思いながら担当からの連絡を待っていると準備ができた、とのメッセージが携帯端末に来たので離島棲姫達と共にモールへ移動した。
「ココガモール!」
「話ニ聞イテタケドカナリ賑ワッテルワネ」
「人類文明ノ初接触。カナリ緊張スル」
「そういや、あの街はかなり閑散としてるもんなー」
俺が来たのは、旅館がある街から程近い地方都市にあるイ○ンモールであり、街よりかは遥かに賑わっているので離島棲姫達はかなり興奮していた。
離島棲姫達から色々、聞いてはいるのだが深海棲艦が暮らしている海底都市がどうなっているのか、詳細に関してはまだまだ不明瞭な部分が多いのだが彼女達からすれば人の文明に初めて触れるだろうな。先の大戦では敵対関係だったし。
(入り口に来るまでに確認できた艦娘は計6人。軽巡や駆逐艦だった娘だとは確認はできたが………全体での人数までは分からんな)
「よし、今日来たのは必要な物を買う為だからモール内を見て回ろう。気になるものがあったら言ってくれ」
『ハーイ』
そう思いつつ、楽しみにしている離島棲姫達の返事を聞きながら周囲を警戒しながら、モール内を見て回って色んな物を見せて洋服などの日用品を買っていった。
今のモールに艦娘が何人、紛れているかは分からないが警護に関しては素人の俺なら、人手に余裕があれば6人で1つのチームに纏めてそれを3〜4チームを先に潜入させておいて、イレギュラーに対応できる様にする。
1チーム目が対象の周辺を警護、2チーム目が遠巻きに見張りをして3チーム目と4チーム目を他の所で待機させて、ローテーションで配置を変えれば下手に目立つ事なく、警護に専念できると素人ながらに考えている。
勿論、これだけの人数で警護するのは良くも悪くも深海棲艦と言う化け物が相手だから、俺や彼女達に対する牽制と言う意味も込めてこのぐらいは必要じゃないかなと思っている。
とは言え、これらはあくまで素人目線での警護に対する考えなので実際にどうなっているかは分からないし、担当の人も情報漏洩を危惧して敢えてこちら側に伝えていないだろう。
その為、休憩や昼食を挟みながらモール内にある各店舗で必要な物を買い込むのと同時に、ゲームコーナーで軽く遊んだりしたので全てを買い終えた時にはすっかり夕方になっていた。
「アー楽シカッタ!」
「色ンナ物ガ買エテヨカッタネ」
「必要ナ時ニマタ来ヨウ」
「気に入ってもらえて何より」
日用品から、服に至るまでに支払った金額が6桁に達したのと引き換えにホクホク顔の彼女達を見れて、俺としても満足できたので遠巻きに見ている艦娘であろう人物に軽く会釈をしてから車に乗って旅館に戻る事にした。