転生一般人は深海棲艦や艦娘と静かに過ごしたい(旧題:何故か、深海棲艦がたむろする様になりました。)   作:八雲ネム

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第60話 挨拶回り

 外交の場、と言うのは戦闘艦同士が攻撃し合う戦場とは違って目に見える戦果が乏しい割には、互いの合意できる場所に落とし込む為の努力と苦労が多いのが難点である。

 俺自身、外務省の職員として働いた経験がないので国家レベルの折衝を間近で経験できたもののまさか、海外艦娘が所属する各国と個別で会談をするとは思ってもいなかった。

 しかも、相手国は故郷の国を失っている都合で自国を最優先で復活させたいと考えている為、彼らの気持ちも分からなくはないが同じ様な内容の話を異口同音で聞かされると食傷気味にもなる。

 

 一応、海外艦娘達を建造した基地長として紹介された際に自己紹介をした後は、表面を取り繕って話を聞いていたのだが内容としては欧州に進出した暁には自国の復興を優先してくれと言う話ばかりだし、あからさまな物だと俺がいる目の前で自分達の元に来ないか、と言う海外艦娘の引き抜きが行われたので流石に話に割って入って止めたがね。

 とは言え、有能な人を自分達の組織に引き抜くヘッドハンティング自体は違法ではないので、彼女達が応じるかはともかくとして外務省を通してくれの一点張りで断った。今回はあくまで顔合わせ兼諸外国の要望を聞き出す事だったしね。

 その為、一通りの挨拶回りをして政府と今後の方針についての打ち合わせを済ませた後の帰路にてたまたま、隣に座ったネルソンが話しかけてきた。

 

「にしても良かったのか?」

「何が?」

「我が国を舐めて掛かると痛い目に遭うぞ?」

「確かにUK国の手練手管には目を見張るものがあるし、今までの歴史において数多くの逸話があるのも知っている。なのである程度、警戒しているがあくまで相手の出方次第だな」

「なら心待ちにしているんだな」

 

 ネットスラングでブリカスなんて言う単語があるぐらい、色々とやらかしているUK国ではあるが本土を失っている以上、西欧諸国が行うハニー・トラップ系の諜報活動はかなり縮小していると思われる。

 何しろ、そう言うのは本土や本国が存在し続ける事が前提であり、国がないと国益としてどう言った情報を欲しているかが分からなくなってしまうからだ。

 精々、A国にある国連の本部に近い大使館か領事館が主体となって欧州を奪還した後、国家を再編する際に行われるであろう国土の分配だったりの取り決めで諜報戦が行われるだろうが、ハニー・トラップに関しては今の俺には縁遠い世界だ。

 

 逆に、基地内のシステムにハッキングされてサーバーにある情報が流出しない様にサイバー・セキュリティの分野に力を入れていて、ハッキング等に対抗する為に1人辺り、月2,000万円から4,000万円を目安にホワイトハッカーの何人かと契約した。

 彼ら曰く、凄腕のハッカーともなれば依頼内容にもよるが企業のサイバー・セキュリティを守る為なら、それぐらいは必要だとの事で交渉の上で契約している。

 たかが情報で、と思うかもしれないが日本で発祥した最大級の動画配信サービスを運用している企業を傘下に持つ大手出版社がランサムウェアを含めたサイバー攻撃によって、グループ会社全体で2ヶ月ほどのサービス停止を行なっている以上は侮れない脅威である。

 

 その為、共同基地にあるPCは全て業務用のPCだし、共同基地で働く従業員は俺も含めて仕事中は支給した業務用のスマホやタブレットでやり取りする様に社内の規定で定めている。

 そう言った機密保持をする為の規定は定めているものの、大統領選で発生した内部情報の持ち出しによる流出など、社内の情報が漏れ出す可能性はゼロではないので日頃の情報共有と教育の徹底なども行なっている。

 それでも、人間である以上は完全な情報の統制はできないのである程度、漏洩する事前提で行動するしかないとダメだろうな。漏洩しないように対策できる所はしたし。

 

「ふむ、所でAdmiral?」

「どうした? ネルソン」

「長門から聞いたのだが、艦娘の大幅な能力向上が見込める改造の件なんだが私にも可能か?」

「勿論。それに似合うだけの練度と改造に必要な資源があればな」

「では、その時が来たら頼むとしよう」

「あぁ、分かった」

 

 諜報活動に対する行動を振り返っていると、ネルソンが改造についての話をしてきたのでまたそれか、と思いながらこちらが持ち得る情報を話した。

 日本自体が安定している為、大規模侵攻が発生した当初の混乱は収まって呑気な雰囲気に戻りつつあるが今は歴とした戦時であり、欧州戦線は一進一退な一方でA国内戦は治りつつあるがそれでも戦闘は続いている。

 つまり、軍隊に属している以上は否応がなしに戦場に駆り出されるので日頃から諸外国の動向が気になる上、欧州戦線へ派兵したくとも太平洋と大西洋の両方にアクセスできるA国が安定しないと補給がままならない。

 

 南米やアフリカの諸国を経由すれば、赤道から南側までなら何とかなるだろうが南米大陸及びアフリカ大陸の両方は元から政情が不安定な国が多数ある上、今回の大規模侵攻で先進国と言うストッパーが居なくなった事でより一層の混沌が起きているので、行った所で多勢に無勢で死にに行くようなものである。

 しかし、時雨や叢雲の様に改造を受けて能力が大幅に上がっていれば助かった艦娘が多かったのも事実なので、安定した状況下でできる事は可能な範囲でやっておきたいと言うのが人情と言うものだろう。

 確か、異世界に飛ばされて廃棄物と戦う信長も合戦に至るまでに準備してきた事の帰結だとか言っていたので、共同基地で新しく建造された海外艦娘に加えて他の基地に所属する艦娘の練度向上は必須だろうな。

 

 その為、ネルソンとの会話内容はそろそろ公にすべき内容と判断して共同基地に到着してから、その事を軍の上層部に聞いてみようと思いながら到着するまで政府がよこした大型バスに揺られた。

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