転生一般人は深海棲艦や艦娘と静かに過ごしたい(旧題:何故か、深海棲艦がたむろする様になりました。)   作:八雲ネム

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第61話 内戦へ至る理由と亡命

 何故、A国は内戦状態になったのか?

 

 この疑問に対しての回答は、様々な要因が重なり合っている為に複雑化した背景があるので難しいのだが敢えて答えるのであれば、以下の5つが個人的にはデカい要因だと考えている。

 1つ目に致命的に開いた格差、2つ目に不充分な医療制度による薬物への依存、3つ目にグローバル化による工業の衰退、4つ目に移民の受け入れ、そして5つ目に独裁化した大統領の権限。

 まぁ、A国に行った経験がないのでニュースやら動画配信者が発信している情報を個人的に総括した結果なので、他にも要因はあるのだろうが今上げた要因を通して内戦が発生した理由を考えれば納得が行く所が多々ある。

 

 では何故、1つ目の格差が致命的に開いたかと言うとA国の歴史を振り返る必要がある。

 そもそも、A国の成り立ち自体が新大陸の発見以降に欧州大陸の貧民層を中心に宗教家や新たなビジネスチャンスとして商人が(こぞ)って集まった比較的、歴史が浅い国なので差別感情はあれど出生地主義と言うA国で生まれたらそいつはA国国民、と言う考えから移民自体に強い抵抗感がなかった。

 それに加えて、A国に行ってビジネスで成功すれば大金持ちになれると言う夢が広まった事によって、世界各国からA国に向けての移民が流入した為、4つ目の理由に繋がる。

 

 とは言え、移民の受け入れだけでは内戦のきっかけが説明できないので、次にA国の基幹産業である工業の変遷について語る必要がある。

 A国がUK国から独立した当初は、田舎の国家として当時の欧州各国から見下されていたが国内の産業を活性化させ、工業などにおいて徐々に力を付けてきた段階で欧州大陸を中心として発生した人類同士で戦う世界大戦が勃発した。

 幸い、A国は大西洋を挟んで欧州大陸から離れていた為に本土を荒らされる事はなく、逆に欧州各国が必要とする軍需物資の一大生産国として生産・輸出した事によって、深海棲艦との戦争が発生するまでに世界の工業生産高の約3割を一国で担っていた。

 

 その工業力は、深海棲艦との戦争でも遺憾なく発揮されて人類側の勝利に貢献したものの国土が荒廃した日本や欧州各国が復興していく中で工業力が飛躍的に伸びる一方、国家間のイデオロギーの違いから冷戦へと発展し、ユーラシア大陸の中小国を中心に自陣営へ引き込む為に工業のグローバル化が進んだ。

 グローバル化により、国が富めば技術供与をしてくれた大国の下にいる方が良いという判断になる事を見越した行動だったものの、利益を求める自動車産業などの企業群は人件費などのコストが高い自国よりもコストが安い新興国などに工場を移した。

 その為、A国の工業が衰退して多くの人が仕事を失った為に格差が広がるきっかけになったのだが、そこに追い打ちをかけるかの様に2つ目の不充分な保険体制によって医療費が高騰した事で適切な医療を受けれない貧民層の人達は、病気などの苦しみから逃れる為に手を出せば破滅に繋がる麻薬に手を出し始めた。

 

 日本の国民皆保険は、社会保険料等によって給料などから天引きされる代わりに大抵の医療に対して自己負担が3割に抑えられるのだがA国の場合、国民皆保険がないので救急車に乗るだけで数万円、手術を受ける為に何日か入院するだけで数百万円の金額を必要とする。

 中間層ですら、支払うのに躊躇する金額を支払えないA国の貧民層は病気による痛みや苦しみから逃れる為、安く入手可能な麻薬や違法薬物に手を出さざるを得ないし、そもそも日本よりも深刻なインフレによって食費や家賃の両方がそれぞれ、日本の倍は掛かると言う試算があるので中間層でも生活がカツカツな家庭が多いとの事だ。

 その結果、デカい病気や怪我をしたら高額な医療費によって借金地獄になるケースが多発し、自己破産を選択する家庭もある事に加えて近年では所謂、子供部屋おじさんや車上生活を選択するケースが増えているとの事だった。

 

 以上の背景から、元から富裕層だった人達は多少の費用が掛かっても自分の子供達に有名私立の学校へ通わせで充実した教育を施しながら富を蓄え、より裕福になる一方で貧民層は不充分な教育しか行えない公立の学校に通わせるしかなく、貧民層に固定化されている。

 そして、その煽りを1番受けているのが中間層であり、高い税金と生活費によって徐々に貧民層に近づいているので深海棲艦の大規模侵攻が発生する前は近い将来、中間層を中心に不平不満が暴発して内乱や内戦が発生してもおかしくはねぇわなと思っていた。

 幸いにも、A国の政府側は内戦に便乗して核兵器を乱射していない事で対策がしっかりとできているので、外野からすれば独裁化した大統領が上手く統制しているのか、軍隊との連携が上手く取れていないのか、或いは大統領を中心とした政府側が劣勢なのかが分からなかった。

 

 何しろ、国内がガタガタな上に今のA国大統領はA国の憲法で禁止されている3期目に突入した挙句、国内を立て直す名目でA国国内の治安維持を勤める警察組織であるFBIを解体するなどの強権的な行動が目立っていた。

 そして、そんな強権的な大統領に反発してテキサスやカルフォルニアと言ったA国内の南部にある州が分離独立派となり、政府側と対立して内戦となったのだが戦況に関してはよくわからない。

 何しろ、政府側も分離独立派も大本営発表をしているのでどちらの情報が正しいのか、なんてものは個人的には求めていないし、期待もしていないが情報を漁っていくとどうも政府側が不利なんだよな。

 

 分離独立派の方は、定期的な戦況報告を記者の前で発表して取材を受けているのに対して政府側の発表はワンパターンな上、ここ半年は記者の取材を拒否しているとの事だった。

 R国の様に、ガス抜きはしても反体制派の政治家や活動家を間引ける国であれば話は変わるが、A国の場合は自由に報道できるシステムが構築できている国で取材を拒否する、と言う事は暗に自分達が不利な状況ですと言っている様なものだ。

 その為、近いうちに政府側の主要メンバーは殺されて分離独立派が勝利すると個人的に推測しているのだが、こちらもこちらで問題が発生している。

 

 

 

 

 

「政府側が不利なのは察していたけど、本当に来るとはねぇ………」

「貴方の国に聞いたら暫くはこっちに居ろと言われたんだけど?」

「いやまぁ、面倒事に関わりたくないのは分かってるけど、デカい不発弾が転がり込んできたなぁ」

 

 半官半民の共同基地なので、政府からの命令は基本的に従うのが共同基地の意向なのだが、だからと言ってA国海軍所属の艦娘であるアイオワ達が実際にやって来るとは思ってもいなかった。

 来るとしても、内戦が始まる前にA国の無茶振りな外交に付き合わされた結果だったりを想定していたので、来た理由を考えるならA国の政府側の戦況がかなり逼迫している事から、彼女達の身の安全を確保する為に日本へ派遣する(てい)で派遣したと言うのが妥当な理由だろうか?

 とは言え、政府側と分離独立派のどちらもがA国でもある以上はそれを理由にA国艦娘の強制送還を強く求められ、彼女達が応じればこちらとしては争う術がない。

 

 これだから外交と言うのはややこしくて仕方がない、と思いながら彼女達の意向を確認する事にした。

 

「まぁ、来ちまった以上は仕方ないとして一応の確認として政府側の命令で来ているんだよな?」

「勿論。でなければ陸戦に参加したかったわ」

「分離独立派の指揮下に入る事は?」

「悪くはないけど信用できないわ。だから暫くの間、こちらに在籍したいわ」

「………となるとA国国内が安定するまで亡命すると言う形を取るしかないな。一時的に国を捨ててもらうぞ?」

「構わないわ。ここに来た全員がそのつもりで来ているもの」

 

 すると、共同基地に来たのはA国国内の事情を鑑みてこちらに来た方が安全だと判断した艦娘達で構成されている様なので、彼女達を受け入れる代わりに政府の方で亡命の受け入れをしてもらうとしよう。

 確か、日本に亡命者を受け入れるとするなら難民として受け入れるんじゃなかったかなと思いながら、武蔵に彼女達の寝床と基地内の案内をしてもらう事にして、俺の方で政府とのやり取りを行う事にした。

 政治的駆け引きは、基地長としての業務範囲外なのでできる事と言えばアドバイザーとして助言する事ぐらいだが、素人が下手に手を突っ込むと碌な事にならないので被害がこちらに回ってこない限りは様子見としようじゃないか。

 

 そんな事を考えつつ、政府に連絡を取った。

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