転生一般人は深海棲艦や艦娘と静かに過ごしたい(旧題:何故か、深海棲艦がたむろする様になりました。) 作:八雲ネム
「よー、どうだった?」
「悪くないと思う。順調に練度が上がってるよ」
「なら良いんだ。そうじゃなかったらこっちから出向いて殴り飛ばしていた所だよ」
共同演習、と言う体で共同基地から横須賀基地を始めとする日本の海軍基地に艦娘を派遣して練度の確認をしてもらったのだが、青森にある大湊基地に行ってきた時雨の個人的な感想では大丈夫そうだ。
これで問題が発生していたら、送り出したこっちが悪く言われかねないので、現地で問題を起こしている艦娘を海軍精神注入棒でフルスイングする勢いで殴りに行っていただろうな。
「ところでこの書類に目を通してくれ」
「うん。うん? 大規模改造の許可証?」
「そ。軍の上層部は渋っていたけど政府の意向でね。その許可証によって、設計図と資材に余裕があれば君らを改二にする事が可能になった」
「そっか。じゃあ、お願いしようかな」
「おう」
そんな訳でつい先日、艦娘を改二以上にできる改造の許可証を政府からもらう事ができたので、前々から改造できる様になったら真っ先にやろうと誓っていた時雨と叢雲を改二にできる。
その為、共同基地に所属する全員にこの事を通知するのと同時に社内報の様に張り紙を出して正式に行う事を告知して、全員が認知するまでの期間を設けた日の午後には大勢の艦娘が俺の執務室に押し掛ける事になった。
「私達も改造してくだサーイ!」
「いーや、私達からよ!」
「夜戦だってできる私達からよ!」
「水上艦ばかりでずるいでちーっ!」
結果、艦種ごとの派閥に分かれての大騒ぎになったので放置して言い合いの行く末を見守っていても良いのだが、何かのきっかけで彼女達が艤装を持ち出して大乱闘スマッシュブラザーズの如く、大暴れして共同基地が焼け野原にされても困るので大声を出して彼女達を制してから話し始めた。
「既に何人かとは先行予約で改造する事が決まっている。なので、君らはその後になる」
「Oh ………」
「くっ、先を越された!」
「折角のチャンスだったのに」
俺の言葉に、戦意が高い艦娘を中心に嫉妬の声が上がったもののやる気がある事は良い事だと思いながら話を続けた。
「とは言え、練度が高ければ誰でも改造できるから定期的に改造できる艦娘を選抜しようと思う」
「どう言った基準で選抜するんですか?」
「今はまだ構想段階できちんと決めてはいないんだが戦績だったり、成果だったりが高い順から選抜しようとは考えている。正式に決めた訳じゃないが」
共同基地に所属する艦娘の内、日本艦娘の大半を先遣艦隊に参加させた事で軒並み高い練度になっている為、全員を改造するとあっという間に資源不足になって当面の間は碌な艦隊行動が取れなくなってしまう。
また、練度差がまだ解消できていない海外艦娘との軋轢も無視できないので、一気に改造しないで段階的にしていくつもりだ。みんなで共同基地を運営する以上、自動的に働き蟻の法則が発動してやる気がないと言うか、だらけている艦娘も一定数いる訳だしね。
その為、一定以上の成果を出した艦娘の中から選抜して改造を施す事によって他の艦娘のやる気を出させて競わせるのと同時に、海外艦娘との練度差の解消や連携の強化に励んでもらうつもりだ。
「まー、それだったら良いか」
「いっぺんにやると大変だしねぇ」
「いつかできるんだったら今すぐにやってもらう必要はないし」
「じゃあ良いか」
そう言った旨の発言をすると、さっきまで暴走状態だった艦娘は一気に冷静になって執務室から出ていったので、一安心するのと同時に計画書の作成で忙しくなるなと思っていると何人かの艦娘、正確には海外艦娘達が残って俺に聞いてきた。
「改造は私達も受けれるんでしょう?」
「勿論だとも」
「改造をする理由を聞きたいわ」
「A国の内戦が終結に向かっている以上、必ずと言って良いぐらいには欧州に関する戦闘で軍事支援を求めてくるはずだ」
「北極海を挟んで対峙する羽目になるからね?」
「そうだとも」
今はまだ、R国を中心とした大陸国家が必死の抵抗をする事で深海棲艦の大規模侵攻を食い止めているものの、彼らの国力や軍事力がどこまで持つかが分からない以上はいつでも出撃できる様にしておきたいのが俺個人の本音だ。
陸戦は兎も角として、深海棲艦との海戦に限って言えば今はまだ日本を始めとするどこの国の海軍戦力よりも上だ、と判断しているもののまだまだ成長の余地はあるし、世界各国の艦娘が集まっているとは言っても数的にはまだまだ足りないと思っている。
何しろ、実際の戦闘艦の機能を人間サイズに収めている都合で深海棲艦は何千何万もいる為、高々千人にも満たない艦娘では限度がある。
その為、横須賀基地を始めとした日本の海軍基地にこちらの艦娘を派遣して実戦に関して教鞭を取っているのだがいずれは海外、特に海軍を持つ中小国相手に教鞭を取る事になるかもしれない。
ましてや、いくら
いくら首脳陣が内戦で視野狭窄になっていようとも、よっぽどの馬鹿でもない限り折角の終結を台無しにされたくないだろうから、少なくとも海戦に限って参戦すると見込んでいる。
そこら辺は当事者にならないと分からない為、何とも言えないが俺からすればそこまで愚かではないと信じたいのだが、極端なバカは突拍子のない事をしでかして盛大にやらかしかねないので注視する必要があるな。
とは言え、WW2で発生した独ソ戦やノルマンディー上陸から続く欧州戦線の他、太平洋戦争時の沖縄や硫黄島で発生した地上戦などの様に大量の出血を用いて領土を奪取する、なんて事は少子高齢化が全世界に及んでいる以上は難しいと言わざるを得ない。
今世でも受験戦争や就職難なK国や一人っ子政策により急激な少子高齢化が発生するC国は勿論だが、バブル崩壊から続く不況から脱していない日本を筆頭に、南北米大陸や中東でも出生率が減っている事が統計的に判明している。
つまり、沢山の子供が産まれていた事からその内の何人かが命を落としても全滅しなければ大丈夫だった昔と違い、大抵の家庭が1人か2人の子供を出産したらそれ以上の出産を控える様になった現代では、簡単に命を落とす戦場に向かわせる軍隊に子供を放り込むのは難しくなっている傾向にある。訓練とかもキツいって聞くしね。
要は、自走砲から発射される砲弾や航空機から落とされる爆弾の様な限定された火力では深海棲艦の大規模侵攻を食い止めて停滞させる程度のものでしかないが、圧倒的な熱と爆風を展開できる核兵器を使用すれば大量の深海棲艦を吹き飛ばせて戦線を押し上げる事も可能ではある。
まぁ、そんな事をすれば大量の粉塵が舞い上がって空を覆う事から程度の差はあれど気温の低下は避けれない事から、食糧生産に大きな影響が出て大多数の国で飢餓が発生するだろう。
「つまり、私達は海から深海棲艦を干上がらせれば良いのね!」
「そう言う事」
「任せてくれ。貴様が望む成果を見せてやろう」
「おう、期待してるぜ」
そんな事を考えていると、ビスマルクやネルソンと言った各国の象徴とも言える艦娘がやる気に満ちていたので、彼女達に同意して出ていくのを見送ると一人心地に呟いた。
「室内菜園の規模、増やすか」
軍隊は補給や組織の規律維持まで自分達の組織で行える自己完結性が基本なので、ある程度の食料自給を行いたいしね…と思いながら計画書の作成に取り掛かった。