転生一般人は深海棲艦や艦娘と静かに過ごしたい(旧題:何故か、深海棲艦がたむろする様になりました。) 作:八雲ネム
核保有国による大規模熱核攻撃が発表された後、共同基地はかなり荒れた。
何しろ、使用先が欧州だった為に蹂躙されていたとは言っても故郷を核の炎で焼かれたので欧州艦娘の大半は泣き叫んだり、現実を受け入れられなかったりと一定の混乱が発生したからだ。
戦艦や正規空母、と言った大人組も驚いた様子だったものの精神年齢が高めだった為にそこまでパニックにならなかったものの、駆逐艦と軽巡を中心にパニックになっていたので彼女達を宥めるのに苦労した。
しかも少し落ち着いた後、実行した国の中でも主犯であるR国の艦娘 ガングート達に敵意が向いて集団リンチが発生しそうだったので、基地長権限で欧州艦娘とガングート達を引き離して暫くの間は引き合わせない様にした。
そうしないと、人類側で内部分裂して大規模侵攻を行なっている深海棲艦に対する反抗作戦もクソもなくなる可能性が浮上するしね。
その為、双方を隔離しながらメンタルケアに努めて何とか冷静さを取り戻させたのだが、両者が遭遇するとその場の雰囲気がギスギスするのでストレスで胃痛が発生する様になった。
「だぁーもう! どうすれば良いんだよ!」
「ブチ切れ案件不可避な状況だね」
「R国が実行犯である以上仕方ない事だけど今の状況はマズいわね」
そんな状況なので、執務室でキレ気味でそう叫ぶとレ級はケタケタと笑い、離島棲姫はため息を吐きながらボヤ付いた。
いくら何でも、基地長になったとは言ってもボンクラ一般人に国際関係で対立している連中の仲裁をしろ、なんて言うのは難題過ぎるのでそう簡単に答えなんて出ない。
以前、艦娘と深海棲艦で対立したのを仲裁した事もあったが、あれは価値観が似ている日本の艦娘だったから上手く言いくるめられただけであり、価値観が違う海外艦娘の場合はキレるにしても慎重に言葉は慎重に選ばなければいけない。そうしないとストライキを起こされかねないからな。
「で、どうすんの?」
「放置するっつー選択肢はあり?」
「彼女達も戦争に駆り出すつもりなら無しよ」
「だよなぁ。せめてきっかけがあれば良いんだがなぁ」
レ級の質問に聞き返すと、離島棲姫に否定されたので仲良くとまではいかなくとも共に戦う戦友ぐらいまで、相互理解が進むきっかけがないとこちらとしては打つ手がない。
上官命令で上から押さえ付ける、と言う方法もあると言えばあるのだがそうすると一定の反感を買う事に繋がるので、乱発するといざって時に後ろから頭に向けて銃弾が飛んで来るからなるべく使いたくない方法だ。
そう言った事から、欧州艦娘とR国艦娘の関係性に頭を悩ませていると扉をノックする音がしたので入る様に伝えるとネルソンとガングートが一緒に入ってきた。
「君らの隔離を解除した記憶はないが、一緒に入ってきたって事は理由があるんだろうな?」
「勿論。実戦に近い形で演習を開催してほしいのよ」
「実戦に近い演習ね。どれぐらいまで実戦に近い状態にするんだ?」
「装備がぶっ壊れるぐらいのレベルを考えている」
「沈むレベルじゃないだけでも御の字だな。演習に参加するメンバーは決まってるのか?」
「はいコレ」
ネルソンとガングート、国としてやった側とやられた側である以上は仲が良いと言う訳ではないが、このままでは艦娘側で暴走しかねないと言う判断からか、演習の提案をしてきたので内容を聞くと紙を渡されたので中身を読んだ。
演習内容は、6対6の通常編成で3回も行う様でどちらが勝つにしても今回の演習で双方が双方に対して難癖を付けたり、危害を加える事を禁止するのが今回の演習の目的らしい。
「こう言っちゃなんだが、演習で決着を付ける必要はあるのかい?」
「私達も言葉では言っているけど聞かなくてね」
「私達もやられっぱなしは好かん、と言って鼻息を荒くしていて困っているのさ」
「なるほどね。今回の演習で折り合いを付けるって事か」
「そう言う事」
「可能か?」
どうやら、艦隊旗艦たる彼女達自身も部下には手を焼いているそうで、今回の演習で行きようのない感情のガス抜きをしながら折り合いを付ける、と言う軍人らしい価値観で提案をしてきた様なので許可する事にした。
「許可しよう。俺としてもどうやって君らの部下を宥めるかで頭を悩ませていたんだ」
「あらそう? それはごめんなさいね」
「今回の件で手打ちにする様、私からも言っておこう」
「そうしてくれ。政府への報告は君らの実力を確かめるのが目的だったとしておくよ」
「お願いね」
「よろしく頼む」
俺としては、彼女達の関係が丸く収まるのであれば拒否する理由はないし、ギスギスした雰囲気が解消されれば胃痛で苦しむと言う事もなくなるの加えて艦娘からの苦情も減るので願ったり叶ったりである。
組織の長である以上、慣れたと言っても無理解による下からの突き上げは精神的に来る物があったので、現時点に於ける最大の懸念事項が解消される方向に向かうのは精神衛生上、非常にありがたいと実感した。
それはそうと、6対6の演習を3回もすると言う事はガングート側が不利だと思うかもしれないが*1、この世界では30名程が共同基地に在籍しているので3回程度であれば問題はない。
そう言った背景から、演習を開催する日時と編成内容の資料を提出させる様に彼女達に伝えて退室させると離島棲姫達が話しかけてきた。
「いやー、コレで最大の懸案事項が解消されたね」
「つっても、あくまでガス抜きでしかねぇ。その後、どこまで宥められるかは彼女達次第さ」
「あら。自分で何とかするんじゃないの?」
「それができれば苦労はしねぇよ。今の俺にできる事は場を整えて円滑に物事を進める事ぐらいさ」
レ級の言葉に、他人任せな返しをすると離島棲姫が意外そうに聞いてきたのだが、組織の長として組織に属する人が多ければ多いほど、1人1人に使える時間は少なくなってしまう。
その為、他人に任せられるのであれば任せて自分にしかできない事に集中した方が良い、と共同基地の基地長を勤めている間に自然と判断してしまった。
その結果、彼女達が暴走したのならその時に考えれば良いだろうし、収まったのであれば次のステップとして大西洋に向けての進出も可能になる。
(ここで立ち止まる訳にはいかねぇんだ。こんなクソッタレな戦争を終わらせる為には、どんなに歪み合っても共同基地だけでも一丸になって事に当たらないと)
「大丈夫よ。私達がいるから」
「そーそー、アタシ達なら行ける所まで行けるさ」
「あぁ、そうだな」
個人的な決意を固めていると、離島棲姫達が俺に密着しながら言ってきたので笑みを浮かべからそう応えたのだった。