転生一般人は深海棲艦や艦娘と静かに過ごしたい(旧題:何故か、深海棲艦がたむろする様になりました。)   作:八雲ネム

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第69話 説教

 結論から言えば、今回の演習は1勝1敗1引き分けの引き分けになった為、結果は兎も角として今回の演習で欧州艦娘からR国艦娘に対する一方的な言い掛かりを止める、と言う事で手打ちとなった。

 もしも、どちらかが負けたら余計に拗れるのを避ける為に負けた方を他の基地に転属させないといけなかった為、一先ずの決着が付いた事に安堵しつつも再発を防止する為に今回の演習に参加しなかった艦娘や共同基地の職員も集めて強い口調でこう言った。

 

「核兵器保有国の核兵器使用に際し、被害を受けた国に所属する側が使用に踏み切った国に所属する側に対して差別的な発言や侮辱する発言をしていた事は、共同基地に所属しているメンバーの中で大勢が聞いた事があると思う」

 

 実際に、基地内で色々と噂になっていたから共同基地に所属するメンバーの大半は聞いていると考えている。統計調査はしていないから正確な事は分からないが。

 

「核兵器の使用自体は非難されるべき事ではあるが、それとは別に差別的な発言や侮辱する発言に激怒しているならここは君のいるべき場所だ。あの様な振る舞いは共同基地だけではなく、正規軍や予備校、士官学校でもあってはならない」

 

 まぁ、ネット上で関係が悪い国同士でバッシングし合っているのは日常茶飯事だが、だからと言ってリアルの生活でも公言したら顰蹙(ひんしゅく)を買うのは当然だと思う。

 ましてや、ここは多国籍の艦娘が集う共同基地である以上は母国を失っている艦娘はいれど、各々が国の代表である以上は国際問題に発展しかねないからここで釘を強く打っておく。

 

「君らは激怒すべきだ。共同基地に所属する艦娘としてだけではなく、人間としてとんでもない言葉やとんでもない考えに対する相応しい反応や適切な反応と言うのはもっとマシな考えを返す事だ」

 

 個々人でどう思うかは自由であるべきだが、差別的発言や侮辱する発言は発言をした人物の価値を落とすどころか、聞いている側の価値も下げる行為であると考えているので、大西洋への遠征の前までには是正したい。

 

「みんなを集めたのはその為だ。壇上に職員がこれだけ大勢上がったのはその為だ。おまけに本当に大勢が窓辺にぐるりと並んでいる」

 

 そして、今回の演習を申請した際にその理由について海軍の方から根掘り葉掘り聞かれたので正直に答えると、幕僚監部と言う司令部の中でもトップの方まで話が行って差別的な発言に対する話し合いが行われる事になり、その末席に俺が呼ばれてしまった。

 しかも、大将や中将と言った将官の中でも偉い方の人まで来たので胃痛で根を上げたいぐらいには辛かった。

 

「この人達は共同基地の職員や共同基地でそれぞれが艦隊を持つ提督、共同基地を運営する上で雇用契約に応じてくれたOB、OG達だ。横須賀基地の司令部からも来ている。厚木基地の航空集団司令部や江田島の幹部候補生学校の全部門からも来ているし、東京の海上幕僚監部からも来てもらっている」

 

 しかも、彼らの意見としてはそう言った発言の是正は共同基地の基地長である俺が言うべきである、との見解で一致した為に各々が忙しい中で時間を空けて来てくれたのだ。そう簡単に気の抜けた発言はできない。

 

「統合幕僚監部に所属する将官達にも話が伝わっている。だからみんな、ここに集まったんだ。もっとマシな考えがあると考えているからだ。諸君らの中であれは核兵器が使用された側の艦娘の出来事で、自分達には関係ないと思っている人もいるかもしれない」

 

 そう言った個人的な苦痛は別にして、基地長として感じたのはどうも差別的な発言に対して当事者でない側、艦娘に限らず、基地のメンバーは可能な限り、関わりたくないと言う雰囲気を感じ取った。

 他人からどう思おうが、こちらに影響がなければ好きにすれば良いが大西洋への遠征ではこの手の話、差別的な発言などはどうしても避けられないと思っているので当事者意識を持たせる意味で話を続けた。

 

「自分達は何もかも完璧でそんなヘマはしない、と思っているのならおめでたい能天気だ。この話題を話し合うべきではないと思うのもおめでたい能天気だ。そして核兵器が我が国に向けて撃たれない、と思うのであればそれはあまりにも歴史と世界情勢に鈍感すぎる」

 

 実際、A国におけるアジア人差別ってのは結構すごいらしいので差別的発言や侮辱する発言は避けられないと予想している為、例を示すのもありと思って話した。

 

「例を挙げるとするなら80年前の深海棲艦との戦争による影響や、近年の深海棲艦による大規模侵攻などだ。だから私達にはもっとマシな考えがあるんだ。その考えの一つとして関係各所の皆さんを集めて今回の件で話し合った。我々は真っ当に話し合い、きちんとこう言う問題について向き合うべきだからだ」

 

 幕僚監部での話し合いでも、歴史的な経緯などから根深い問題だと言う事で認識が一致した為、この場にいる全員にも認識を共有して冷静で理性的な判断をしてもらう為にも続ける。

 

「その方がマシな考えだ。今回の件についての議論で関係各所の皆さんから素晴らしい意見が沢山出たし、私にもマシな考えがある。我々には多様性があり、それを生み出しているのは4,000名の諸君だ。壇上や窓際にいる職員全員の多様な集団としての力について、我々が様々な境遇から日本国内だけではなく、海外からもこうして集まってあらゆる人種、あらゆる背景、あらゆる性別や生い立ちの人間がこうして集まった」

 

 艦これと言うゲームにおいて、絵師やCV(キャラクターボイス)の都合で艦娘の数は3桁後半しかいなかったが、現実ではその縛りがないので各国の艦娘がゾロゾロの生産され、支援艦や他の提督の分も含めてこの数に達した。

 我ながら、よくもまぁここまで増やしたものだとは感心しながら多国籍である強みを伝える事にした。

 

「その多様性の力があればこそ、我々はその分だけ強くなる。狭量でとんでもない考えよりもその方がマシな考えだからだ。この部屋には5,500人が集まっている。その事について自分達がどう言う存在なのかを考える良い機会だし、それは我々の物で我々の価値観は誰にも奪えない」

 

 実際、多国籍である強みは異文化交流が活発化しやすい点にあるのでしっかりとしたフォローができれば、柔軟でしなやかな価値観が生まれると考えている為、気は抜けないが将来的な投資だと思って行動しようと考えている。

 

「他者を差別し、侮辱する発言をして我々の価値観を問いただすなど、そんな真似は誰にもできないし、誰も我々の価値観を奪ったりできない。そして万が一、この件についての私の意見がはっきりしないと思われていると困るので、私の今日一番の大事な考えを伝えておこう」

 

 長々と話し、結論や自分の考えを述べない方法は弁舌に長けている人であれば誰でもできる為、この場を借りて自分の考えをはっきりと伝える。

 

「もしも誰かの尊厳を尊重し、敬意と共に接する事が出来ないならここから出て行きなさい。どんなに国家間で険悪な関係であろうとも相手を尊重し、敬意を持って接する事が出来ないなら出て行きなさい。例え、どんな形でも人を侮辱する様な者は出て行きなさい」

 

 相手を尊重し、適切な議論ができない奴は組織を動かす上で障害になるので繰り返し何度も言って、この場にいる全員に理解させる手法を取らないと、こちらの意図を曲解する可能性があるので繰り返し伝えた。

 

「人種が違う、あるいは肌の色が違う相手を尊重し、敬意を持って接する事が出来ないなら出て行きなさい。そしてみんな電話を出して。電話を出してこの事を録画するんだ。保存して活用できる様にするんだ」

 

 そして、この場にいる全員に共有するのと同時に各々が繰り返し、視聴できる様に携帯電話を取り出させて録画する様に伝えた。

 まぁ、実際に取り出して録画をし始めたのは全体の1〜2割程度だったものの彼女達とは別に、初めから録画をしている端末があるので後で共同基地に所属するメンバーに1台ずつ、持たせている社用端末に共有する様に指示を出すとしてそろそろ、話を締め括ろう。

 

「壇上の職員、窓辺の関係者、この部屋の全員が一丸となって道義的な勇気を持てる様にするんだ。これは我々の組織だ。諸君が私の言葉を必要とするなら私の言葉を持ってほしい。私の言葉を使って覚えて共有して話し合う様にしてほしい。他人を尊重して敬意を持って接する事が出来ないならここから出て行け」

 

 その言葉と共に、話を締め括って今回の集まりを解散させてから俺はある部屋へと足を運んだ。

 

 

 

 

 

「皆さん、お忙しい中でご足労頂き、本当にありがとうございました」

「頭を上げてください××××基地長。今回の件は我々にも良い刺激になりました」

「ですね。これから欧州の艦娘が各基地で建造される事を考えるなら他者を重んじる考えはどうしても必要になりますから」

「今回の件、録画データがありましたらこちらにも回してください。教材の一つにしますので」

「はい。必ず回します」

 

 足を運んだ場所は共同基地内にある会議室の一室であり、そこには海上幕僚監部などから来てもらったお偉方が集まっていたので挨拶の一つとして頭を下げた。

 こちらは、半官半民の民間軍事会社なのに対してお偉方が所属しているのは政府が仕切っている軍隊なので立場上は向こうが偉くなるし、将官クラスは会社で例えるなら社長とかの重役になるので前世も含めて縁遠い存在だった。

 その為、彼らの立場から来る質問責めは精神的負荷が強くて胃痛が尋常じゃなかったが、事が終われば意外とフランクに話してくれた。正規軍と民間軍事会社と言う立場の違いはあれど、ね。

 

 そう言った背景から、こちらから頭を下げた後は大西洋での戦闘についてと軍人として誰が最初に出発するかの打ち合わせに移った。




はい。今回はギスギスした雰囲気を出した欧州艦娘に対する説教でした。
平時であれば、そう言った雰囲気は時間をかけて解消する様に行動を取ったのでしょうが、戦時である以上は手っ取り早く分からせる為に説教にしました。
それにしても4,000人か。深海棲艦も含めた多国籍の軍事会社とは言え、増やし過ぎた気もあります。(但し、反省はしていません)
それはともかく、そろそろ大西洋での戦闘に移ろうかと思います。グダグダと続けても意味がありませんし。
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