転生一般人は深海棲艦や艦娘と静かに過ごしたい(旧題:何故か、深海棲艦がたむろする様になりました。)   作:八雲ネム

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第72話 A国の気質

「ふぃーっ、船酔いは中々に辛いンゴねぇ」

「顔色は兎も角、口調が変になるレベルでキツいの?」

「そりゃあ、船旅も含めて船での生活は経験皆無なもんでね。中々にキツい」

 

 持ち運ぶ機材が多くなった為、A国西海岸に到着するまでの2週間は船旅で過ごせと言われたのでやむを得ず、乗ったものの前世のも合わせて船旅に対する経験値の低さから普通に船酔いになった。

 しかも、今乗っている船は大型客船を国が買い取って輸送艦仕様に改装した為、娯楽施設が少なくなったのも相待って部屋でグロッキー状態になっている所に時雨が話しかけてきたのだった。

 しかも、出立までの3年間で改造の目処が立った順から艦娘を改造していった為、改造を受けた今の時雨は改三にまで成長している事から無駄な時間ではなかったのは確かだな。

 

「それで、今の所は問題ないんだな?」

「うん。磨鎖鬼提督との打ち合わせでどちらかが相手に攻撃しなければ基本的に不干渉、という事になっているからね」

「こうして見ると人に恵まれたと思うよ。じゃなきゃ、今頃彼らとも戦っていたからな」

「まぁね。僕としては複雑だけど」

「あぁ」

 

 俺の指揮下にある時雨は、別の世界でブラック鎮守府に所属していたのだがふとしたきっかけで今の世界に流れ着き、そして折り合いを付けるために俺の手で処した。

 まぁ、大西洋側の深海棲艦が大規模侵攻をしたせいで建造に勤しんだ結果として、その時の記憶を有した彼女が建造された際には半ば絶望しながら笑うしかなかったのだが。

 とは言え、内面ではどう思っているかは知らないが処す前と比べてかなり落ち着いているので、こうやって話せる訳だが何もしないのも中々にキツいので船内を歩き回りますかね。

 

「さてと、見回りでもしますかね」

「良いの? 顔色悪いけど」

「いーのいーの、何もしてないとストレスで精神的に死ぬし」

「はぁ」

 

 そんな訳で、ベッドから離れて部屋から出ようとすると時雨もついてきたので船内を見回り、他の艦娘の調子を確認しながら話し込んだ。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「漸く、ロサンゼルスが見えましたよ!」

「おーう………そうだなー………」

「物凄いやつれているが大丈夫か?」

「何とかなー………」

 

 横浜港から出発してから2週間後、数時間でA国西海岸にある都市サンディエゴに到着する距離まで来たのだが、その頃には船酔いによる負荷によってかなりやつれたと自覚できるぐらいには疲れ果てていた。

 正直、ここまで船酔いに弱いとは思ってもいなかったので着いた後での会議に出席できるんだろうか、と考えながら到着する2日前の打ち合わせを思い出していた。

 

 

 

「北米大陸の情勢を踏まえた結果、当初の案で行動する事が決まった」

「て事はサンディエゴからいくつかのルートに分かれてノーフォークに?」

「あぁ、途中でブリティッシュコロンビア州やアラスカに上陸して陸路で移動する事も考えられたものの政府の分析結果は芳しくないとの報告が来た」

「理由を伺ってもよろしいですか?」

「現在のK国は一見すると落ち着いている様に見えるが、様々な派閥が蠢いて不穏なのに加え、A国の政治体制も一枚岩ではない事が影響している」

「………」

「仮にこの2つに上陸した場合はそれらの派閥が手を出してくる可能性がある為、確実に東海岸を拠点にして大西洋で戦うのであれば、当初の案であるサンディエゴを直接目指した方が良いとの結論が出た」

 

 これがもし大規模侵攻の前であればそこまで気にしなくても良いのだろうが、大規模侵攻が発生した現状ではそれまで抑え込めていた時の政権やらに反発する勢力が実力行使に移ってもおかしくはない。

 特に、隣国であるA国で巨大な内戦が勃発した以上は彼の国の北側に国境を接している国も一定の影響を受けていると言って良いだろう。南の国は政府の押さえが効かなくなったマフィアが暴れ回っているので論外。

 その為、サンディエゴから北米大陸を横断する事が決まったのだがその際、オブザーバーとして打ち合わせに出席しているアイオワが話し始めた。

 

「その通りね、私は現政権だって信用しちゃいないわ。私達A国人はあらゆる選択を取るけど、それは全てA国の為よ。世界が平穏ならA国も繁栄できるから世界の秩序維持を目指しているだけであって、それ以上でもそれ以下でもない」

 

「我が母国は建国以来、そこから外れずにやってきた」

「つまり、君は俺が持つ能力の解析が済んだらそれを独占する事もあり得ると捉えて良いんですね」

「答えろと言うのであればイエスよ。最悪、この船の拿捕だってあり得るし、貴方は過去に経験した事があるんじゃなくて?」

「確かになぁ。結局、1回だけだったけど」

 

 彼女の話に、敢えて問い掛けをすると冷静な眼差しで見てきたので同意するとアイオワは話を続けた。

 

「その点、安心して良いわ。その為に私達は亡命する前は陸戦隊としての経験を積んでいたし、この3年間だって貴方の元で技術を忘れない様に努力してきたわ。だからいざと言う時は我が隊の存在意義を賭してでもこの船を始めとする艦隊を逃すわ」

「それで海戦以外にも陸戦の演習をしていたのか」

「えぇ。それに今の私は半官半民の共同基地に在籍するA国艦隊の旗艦よ? 日本軍に食事を受け取っている以上は義務を果たすつもり。軍隊って言うのは昔から食事を取らせてくれる所の味方だからね。それは今でも変わらない」

「そう、なら良かった」

 

 どうやら、アイオワもアイオワで共同基地に来る前は艦娘としての立場以外にも海兵隊的な働き方をしていた様なので、それを踏まえてどうやったら大西洋で戦えるのかを考えた結果として色々と準備をしてきた様だ。

 そして、共同基地で共に生活してきた3年間で一定の信頼を重ねられていたらしい。互いに赤の他人であればこう言う話は中々できないしね。

 勿論、そんな俺らの事情を知っている彼らからは生暖かい目で見られた物の特に気にする事でもないので他の議題に移った。

 

 

 

   さて、俺らも準備しようじゃないか」

「分かった」

「護衛なら任せておけ」

 

 あの時のことを思い出しながら、共にサンディエゴの街並みを見ていたら時雨と武蔵と共にA国側との会議に向けて最後の準備をした。

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