転生一般人は深海棲艦や艦娘と静かに過ごしたい(旧題:何故か、深海棲艦がたむろする様になりました。) 作:八雲ネム
「 この様な観点から、譲渡頂いた資料やサンプル等の解析と理解にはもう少し時間を頂きたく思います」
「検証する研究機関で解析する期間は?」
「3ヶ月は掛かると言ってきている」
「正直に言えばもっと早くに解析を終わらせたい所だが」
「ここが限界といった所でしょう」
(かなりサクサク進んでいるが本当に大丈夫なんだろうな? つーか軍の首脳陣が出席する会議に民間人が参加してもいいのかが疑問だ)
最悪、吊し上げるつもりで参加させたんじゃなかろうかと思いながら会議の内容を聞いていると、A国側の軍人からこちらに質問が飛んできた。
「所で資料には深海棲艦との対話は可能だと言う記述がありますが本当でしょうか?」
「事実です。手元の資料65ページに書いてある演習内容及び89ページのインド洋での戦闘経緯は彼女達の協力がなければ成し得なかった事です」
「確かに、これが事実であれば深海棲艦の実力がかなりの部分、明らかになるな」
「となれば一旦、この資料を元に演習を組むとしよう」
「作戦遂行の一助になるだろうしな」
「ありがとうございます」
質問の内容は離島棲姫達、共同基地で過ごしていた深海棲艦達についてであり、その事を事実として認めると彼らも参考資料として活用する内容が聞けたので一先ずは良しとする。
何しろ、深海棲艦と仲良くできるなんて話は当事者でもなければ80年以上前の戦いや昨今の大規模侵攻の事もあって信じられないだろう。
となれば、今は単なる敵対勢力と言う枠組みから場合によっては役に立つ存在に格上げさせる方が優先なので、俺が民間出身と言う立場も相待ってこの場では強く言わなかった。
(後はアメリカ側で認識を変化するのを待つしかないな。アメリカ国籍を持たない奴が何を言っても意味がないし)
これが日本であれば、海軍側との演習で深海棲艦の実力を見せ付ければ良いのだが生憎、A国なので下手な事を言って反感を買うよりも半信半疑でもやってもらった方が良いと言う事で日本海軍とも話がまとまっている。
その為、それ以降も俺は聞かれた範囲で答える事を繰り返していると今日の分の会議が終わった事から今日は一旦、解散する事になったので他の日本海軍の軍人さんと共に退室した。
「にしても、敷地内を案内されたけど建物なんかは綺麗だったな」
「内戦があった割には、でしょ?」
「理由、分かったりする?」
「当時のここの海軍基地の司令官が自分の立場と引き換えに中立の立場を取ったからよ」
「なるほどな」
A国側との会議終了後、船の一室で会議の振り返りと共にアイオワにサンディエゴ海軍基地の建物が綺麗な理由を聞いてみると、随分と気概のある人が将官クラスにいるんだなと失礼ながら思ってしまった。
いやまぁ、どの国にも下手な戦闘で無駄に命を消費するべきではないと思う人がいるとは思うのだが、大将や中将と言った将官クラスにまで上り詰めた人が自分の立場と引き換えにしてまで戦闘に参加しないのはかなりの勇気が必要になる。
軍隊と言うのは、基本的に上からの命令が絶対である以上はそれに反抗するのは抗命行為に値するし、A国の場合は大統領が軍全体の最高司令官である為、大統領の命令に反抗すると抗命罪が適応されて不名誉除隊にされる事もあり得る。
その為、A国内で内戦が勃発した際に大統領からの出兵要請を拒否した事で抗命罪が適応されて本人は除隊したが、その代わりに海軍基地に所属する兵員に余計な出血が出なかった事で治安が維持されて、建物も見える範囲だけではあるが綺麗に保たれている様に見える。
今となっては、当の本人に聞く事はできないが深海棲艦の事も見据えて無駄な出血や損害を出さずに温存してくれただけでも頭が下がる思いだなと思いながら報告書をまとめていると武蔵が書類を持って入ってきた。
「どうだった? 今回の会議は」
「順調そのものだったよ。深海棲艦の事を除けば」
「やはりそう簡単に受け入れられないか」
「言っておくけど、今の国際情勢で普通に彼女達と共同生活を送っている方が異常だからね?」
「まぁ、だろうな」
今回の会議において、深海棲艦の話は議題の1つでしかなかったのでそこまで時間は取らず、日本からは対深海棲艦の戦術だったり、今回の大規模侵攻に対する参加の見返りとして砲弾薬の提供や屋内農園など、政治的な議題の方が大半だった。
本来、政治的な議題は外務省を通じて行うのが鉄則なのだが今のA国国内は内戦こそ、終わったとは言っても分裂する火種は燻っている状態なので一定の戦力を保有して、現政権とも強い繋がりを有している海軍を通して話を進めた方が話が早いと言う判断に至ったらしい。
勿論、その場には両国の外務省の役人も同席していたので
その為、会議に出席していた武蔵も含めて報告書を書き上げて必要な部署に提出した後、艦娘達の調子と装備を確認しながら数日を過ごすと遂に俺らにも命令が下達された。
「遂に、ですね」
「あぁ、今からノーフォークに向けての移動する準備が完了したとの報告が入った。知っての通り、移動の際はいくつかの部隊に分かれて彼の地を目指す事になる。その際のルートだ」
「拝見します………シカゴ辺りまでしか記載されてないのは、反対勢力を警戒してですか」
今回の遠征において、最高責任者である中将の人から目的地までのルートが示された紙を渡されたのだが、その紙には途中までのルートしか書かれていなかった。
「その通りだ。現在のA国は安定しているとは言い難いのでな。いくつかのチームに分かれて目的地まで行ってもらうが、その道中ではなるべく列車外に出ないでほしいそうだ」
「どの列車に乗っているかを分からなくする為、ですね」
「そう言う事だ」
この国に来るまで、早く大規模侵攻に参加している深海棲艦を殲滅する為の一助になりたいなぁと思っていたのだが、着いたら着いたで色々と気を使う事になるとはねと軽くため息が出そうになったのを堪えた。
「分かりました。ルート設定は彼らにお任せしますし、到着するまで列車に引き篭もる事にします」
「そうしてもらえると助かるよ」
こりゃ、向こうに到着しても一苦労しそうだと思いながらノーフォーク海軍基地に行くメンバーについても伺った。