転生一般人は深海棲艦や艦娘と静かに過ごしたい(旧題:何故か、深海棲艦がたむろする様になりました。) 作:八雲ネム
「交通量、あまり多くないんですね」
「内戦の影響です。何しろ、国内各地で多大な流血が流れましたし、復興の最中ですので」
「やはり、影響は大きかったんですね」
「えぇ」
ノーフォーク軍港近くまで、大陸横断用に整備された鉄道で移動した後は車での移動になったのだが、その際に同行する女性に道路が空いている事を聞いてみるとやはり内戦の影響が強かったらしい。
何しろ、国内を移動するだけで敵対組織が収める地域を通過する必要がある場合が多々あった様なので、命の危機と引き換えに移動するよりもその土地で安全に過ごした方が良いと思うのは自然な事だと思う。
これを日本で例えるなら、県境を越える度に殺される確率が5%だったとして最初は95%の確率で大丈夫だったとしても、5回も通れば約77%の確率にまで下がるし、10回も通過すると助かる確率は60%を下回る。
とは言え、これはあくまで例え話なのでここまで過激ではなかったにしても、長距離を移動するだけで命を落とす可能性があるのなら余程の命知らずな奴でもない限りは安全な場所で生活するに決まっている。
その結果、長距離移動に使う車の数は減ったので移動がスムーズになったのはそれだけ、内戦の影響は大きい上に尾を引いているという事だろう。
(にしても、A国で捕らえた深海棲艦か)
やっぱ、戦争ってダメだなと結論付けてからノーフォーク軍港への道中で流れる風景を楽しみながら、列車内で聞いた内容について思い出していた。
何しろ、A国側でも多大な犠牲を払って中破させた深海棲艦の1体を確保して隔離した部屋に押し込める事に成功させたのを聞かされた以上、実験の一環として俺と合わせたい事を伝えられたのだ。
勿論、この事は国家機密に当たるので下手に口外すればA国側での裁判だったりに巻き込まれるので、機密厳守の規則に契約する羽目になった。
こうなるんだったら、番頭時に強襲を掛けてきた特殊部隊の様に敵対してくれたら楽だったんだけどなぁ、と思いながらノーフォーク軍港へと向かった。
☆☆☆☆☆
「基地の端ですなぁ。立場を考えたら当然ですが」
「寝床があるだけでもありがたいと思った方が良いな。その上、君には大規模侵攻をしている深海棲艦と繋がっている疑いがある訳だし」
「当然の反応ですな」
ノーフォーク軍港に来た俺は、他の提督や艦娘達と共に海沿いの建物に案内された。理由は勿論、他の建物は既に使用中だからだ。
その上、俺に割り当てられた部屋は建物の地下室なのでどれだけ、A国から警戒されているかが分かるもののここで争っても仕方ないと思いながら持ってきた荷物を解いていた。
幸い、部屋の自由な出入りは許されているのでストレスはそこまで掛からないだろうが、長居したいとは思わないので早めに解決したいなと思いながら武蔵と共に作業をしていると、部屋に備え付けられた電話が鳴った。
「はい、××××です」
「A国軍の特務案件で準備が整った。10分後に正面入口に来てくれ」
「分かりました。すぐに行きます」
どうやら、向こうも俺と深海棲艦を会わせる準備が整った様なので荷解きの作業を中断して、武蔵と共に建物の正面入口に向かうと今回の遠征に参加した何人もの提督の1人と彼に従う艦娘、そしてA国海軍の担当者が車と共に待っていたので車に乗って隔離室がある場所へと向かった。
「それで今回、捕獲したとされる深海棲艦はなんでしょうか?」
「80年前のデータと照らし合わせた結果、欧州棲姫と思われます」
「なるほど。確か、航空戦艦タイプの深海棲艦でしたか。捕らえた経緯などが分かれば接触した際に色々と捗るのですが」
その道中、担当者に聞いてみると姫級の深海棲艦だったので一筋縄では行かなかった事が推測できる為、捕らえた経緯を聞いてみた。
「報告書によれば、深海棲艦側の一団が
「そうですか。捕らえたのはいつ頃でしょうか?」
「半年前との事です」
「分かりました、ありがとうございます」
半年前、深海棲艦がEEZに迷い込んだとなれば大規模侵攻が発生してから暫くした後、紅海経由でやってきた深海棲艦とは別の深海棲艦だと分かったものの、こちらが得ている知見がどこまで役立つのかは不明だ。
もしも、向こうが敵意をむき出しにして襲い掛かってきたら成す術がないし、襲い掛かってこなくとも警戒されているのは確実なので彼女から話を聞けるのは数ヶ月後だろうな。
そんな事を考えつつ、案内されたのは基地内の俺らが寝床とする建物とは正反対に位置する建物であり、雰囲気的には物置的な建物だったので木を隠すなら森の中と言った感じだろうか。
(一応、捕虜なんだろうが欧州を滅茶苦茶にした相手を人間や艦娘と同格にしたくないんだろうな。見た目は人間だけど人間離れした姿をしているし)
そう思いつつ、地下の一室に案内されると牢屋の中に深海棲艦がいた。
「それでは、私は部屋の入り口で待っていますので必要なものがあれば言ってください」
「分かりました。所で制限時間とかってありますか?」
「最大で12時間だと聞いています」
「分かりました。ありがとうございます」
担当者がそう言って部屋から出たので、一緒に来た提督が口を開いた。
「どうするつもりだ?」
「分かりません。彼女と話してみない事には。ただ、特に行動するつもりがない様だから話してみようかなと」
「妙な事を起こしたら私の判断で応援を呼ぶからな?」
「お願いします。自分の判断は他の人とはズレている部分がありますから」
大規模侵攻の件があるので、普通ならば警戒対象になるのだが俺の場合、離島棲姫達と一緒にいて親密な関係になっている事から彼女達基準で深海棲艦を判断してしまう為、他の人と比べて判定が甘くなってしまう。
その為、一緒に来てくれた提督の様に深海棲艦とは縁が薄い人の判断技術は逆に参考になるので、同席する事に拒否反応を示さなかったのだ。
「………貴方、私達と似た感じがする」
「そりゃあ、君と同種の奴らと一緒に過ごしていたもんでね」
「そう。それでそんな貴方はどうしてここに来たの?」
俺が牢屋の前に椅子を置いて座ると、欧州棲姫が話しかけてきたので少し驚きながらも応えると質問が来たのでそれにも答える事にした。
「君がこの国に来た理由を聞きたい」
「簡単よ。私達だって一枚岩じゃない」
「その結果、大陸に侵攻した奴らと仲を違えてふらついていたのか」
「えぇ。貴方も知っているでしょう? 大西洋にいる深海棲艦の大半が侵攻に賛成してるって事に」
「状況から察していたが、本当にそうだったとはな」
そう。この3年間、インド洋での戦闘が続く一方で大西洋の海はA国が内戦状態だった事も相まって恐ろしい程に穏やかであり、大西洋に籍を置く深海棲艦の大半が大規模侵攻に賛成していると推測されていた。
まぁ、彼女達の間で内ゲバが発生して少数派の意見が暴力で潰されているかもと予想されていたのだが、彼女からの話でほぼ確実だと言っても過言ではないだろう。
その事を、なんで初対面の俺に言ってきたのかについては聞かなかったので、彼女の心境にどんな変化があったのかは不明だが内情を知るには充分過ぎる程の情報にホッとしていると、部屋の入り口で待機していた担当者がA国軍のお偉いさんを連れて入ってきた。
「つい数十分前、海底に設置してあるソナーから戦闘で発生したと思われる音を検知した」
「は、はぁ」
「君にも確かめてもらいたいから来てほしい」
「分かりました。同行します」
A国軍のお偉いさん、将官クラスの方が来ると言う事は彼らの海軍が深海棲艦と戦っている訳じゃなさそうだな。そうだったらここに来ないだろうし。
なので、欧州棲姫に別れを告げてから彼に付いていくとこんな事を言われた。
「君の事についてはある程度、話を聞いている。深海棲艦と仲が良いようだね?」
「えぇまぁ、仲良くさせてもらってます」
「そんな君が深海棲艦を連れてこの国に来なかった時点で別行動を取っている事は予想できた。だから君は釈明しなければいけない」
「釈明?」
「君は我が国にとって敵対しない、と言う事をね」
「なるほど」
つまり、釈明できなかったら欧州棲姫と同じ状況に陥る事もあり得ると暗に言っている訳か。
ある漫画で、合衆国と言う国そのものが無数の頭を持つ巨大なヒュドラだ、と言っていたが正にその通りだと思う。
各々の組織が国の利益の為にあらゆる手段を取る、と言う時点で色んな問題を抱えつつも超大国に成り上がった為、俺は俺のやり方で日本に戻る努力をする必要があると言う事だ。じゃないとこの国に飲み込まれる事になるし。
その為、割って入ろうとした提督を制しながらA国軍のお偉いさんについて行った。