病弱少女、転生して健康な肉体(最強)を手に入れる~友達が欲しくて旅に出ましたが、どうやら私の魔法は少しおかしいようです。私が育ったのが魔界!? またまたご冗談を~ 作:魔界育ちの一般人
フィアナ、転生する
「あーあ、つまらない人生だったなあ」
薄れゆく意識の中。
私は、これまでの人生を思い返していました。
忘れもしない4歳の誕生日。
私に下された診断は、難しい漢字が並んだ何とかという難病でした。
世界で数人しか報告例がない難しい病気。
確立された治療法は存在せず、できることは病院で対症療法を繰り返すぐらい。
(どうせ世界で数人のものを引き当てるなら、宝くじでも当たれば良かったのに)
そんな軽口を叩けたのも最初の数年。
闘病生活は、永遠に続く地獄のようでした。
治療は難しく、徐々に、徐々に忍び寄ってくる死の気配。
同年代の子どもが学校に通い始める頃、私は病院から出ることすら敵わなくなりました。
死の間際、私が感じたのは恐怖ではなく安堵。
もう苦しむことはないんだ、という解放感すら感じられ……、
(神さま。最期に、私の願いを1つだけ叶えてくれるなら――)
(次の人生では、健康な体が手に入りますように)
願ったのは、ささやかな未来。
もっとも私は、神さまなんて信じていなかったけど……、
『聞き届けよう。その願い――』
(ッ!?)
意識が完全に消える直前。
たしかに私の耳に、そんな声が聞こえてきた――気がしました。
(……幻、聴?)
不思議な経験も、薄れゆく意識の前には関係なく。
そのまま私は、どこかの病院で安らかな死を迎え…………、
「おぎゃあ、おぎゃあ!」
気が付いたら異世界に転生していたのでした。
***
そうして時は流れ13年。
私は――無事、13歳になりました!
「健康な体って凄い!」
布団から起き上がり宙返り。
スサッと着地し、私は満面の笑みを浮かべます。
――とある村で、私はスクスクと育ちました。
異世界に転生してからの日々は、それはもう驚きの連続でした。
この体、本当に凄いんです。
一日中走り回っても、息切れひとつ起こしません。
どんなに食べても胃もたれすらなく、それどころか数時間後には、お腹が空いてきます。
グリズリー・ベアとかいうバカでかい熊型モンスターに齧られてもピンピンしてますし、崖から落ちても怪我ひとつありません。
階段を踏み外しただけで、一日寝込んだ前世の虚弱な体とは大違いです。
(ありがとう、神さま。健康な肉体、最高です!)
起き上がった私は、顔を洗いに水辺へ向かいます。
映りこんだ自身の姿を見て、改めて異世界の素晴らしさに感謝。
ぷくりと膨らんだ唇に、サラサラの銀色の髪! 不健康な前世のモノとは似ても似つかぬ健康的な肌。
そこに映っていたのは、アニメでよく見たファンタジー世界の銀髪美少女そのものでした。
なお、断固として育つ気配のない胸はご愛嬌。
きっと数年後には、立派に育ったナイスバディが手に入ることでしょう。
健康的で、穏やかな毎日に感謝。
私が、神さまにささやかな祈りを捧げていると……、
『警告! 警告! ルナミリアに、ドラゴンが接近中』
『グリーンタイプが3体! 戦える人は、すぐに迎撃に向かってください!』
そんな声が、頭の中に響き渡りました。
村の見張りによる通信魔法です。
警報を聞いた私は……、
「やった! 今日の晩御飯は、ドラゴンステーキですね!」
目を輝かせながら、村を飛び出すのでした。
転生した私が流れ着いたのは、ルミナリアという小さな集落でした。
育ての親であるアルフレッド――あだ名はアル爺――によれば、洗濯物を洗うため川に行ったら、カゴに乗せられた私が、どんぶらこっこと川を流されていたそうで、
(な、なんじゃそりゃぁああああ!?)
(神さま! もうちょっと、アフターケアも頑張っていただいて!?)
それでも奇跡的にアル爺に拾われた私は、どうにか今を健やかに生きているというわけです。
ちなみにアル爺は、ルナミリアの村長です。
私は、転生して間もなく、村長の娘なんて肩書きも手にしてしまったのでした。
閑話休題。
村を飛び出した私は、今晩のドラゴンステーキに思いを馳せていました。
(わざわざ向こうから来てくれるなんて)
(親子かな? 若いドラゴンの方が、お肉が柔らかくて美味しいんだよね)
迎撃したモンスターは、そのままルミナリアに生きる人々の糧になります。
取れたてのお肉は、まさに絶品。
ドラゴンを丸ごと食べても、ピンピンしている胃袋に感謝!
そのまま私は、森の中を目的地に向かい一直線。
あっという間に、報告された
魔力をたんまり蓄えた魔障の森。
その外れの崖に立ち、視力を魔法で強化し――、
「うん! 丸々と肥え太ったドラゴンが3体!」
ターゲットを指さし確認。
今日の夕食に思いを馳せます。
そんな私の元に近づいてくる村人が一人。
「ガッハッハッ! 相変わらずだな、フィアナ!」
「えへへ、グレンおじさんこそ。他の人は寝坊ですか?」
「いやいや、おまえの速さに着いてこれる奴が、いったいこの世に何人居ると……、まあいいか」
私に話しかけてきたのは、斧を持った筋骨隆々のドワーフのおっちゃんです。
グレンおじさん――そんな愛称で親しまれる彼は、一介の木こりを名乗っています。
しかし、それは仮の顔。その本性は、戦闘になると鬼のような形相で戦斧を振り回し、敵を殲滅していくバーサーカーなのです。
どうやら仕事中に、偶然、警報を聞きつけ辿り着いた模様。
「どうするよ?」
「う〜んと、待つ義理はありませんよね」
私がニヤリと笑うと、
「まずは一匹ずつ。残りは早い者勝ち――それでどうですか?」
「おう、望むところよ!」
グレンおじさんも、好戦的な笑みを浮かべるのでした。
(よし、合意は取れました!)
私は、地を蹴り飛び上がると、
「ちょっ、おまっ!? 魔法で飛ぶのは卑怯だぞ!」
「へへん、勝負の世界は非情なんですよ!」
グレンおじさんの微妙に情けない声を背に、私はドラゴンの元にまっすぐ飛翔。
緑色の巨体にグイグイ接近し、
「えいっ!」
軽い掛け声とともに、ドラゴンの鼻っ面に魔力を込めた拳を叩き込みました。