病弱少女、転生して健康な肉体(最強)を手に入れる~友達が欲しくて旅に出ましたが、どうやら私の魔法は少しおかしいようです。私が育ったのが魔界!? またまたご冗談を~ 作:魔界育ちの一般人
「どうした! どうしたぁ! 手も足も出ないかぁぁぁ!」
「ヒャッハー! 嬢ちゃん、油断したなぁ!」
「ヒュー、アニキ! 悪徳貴族はサクッと成敗――格好いいッス!」
モヒカンさんたちが高笑いしながら、無茶苦茶に武器を振り回してきました。
荒々しくも綺麗な太刀筋。
しかしあまりにも動きが素直で、見切るのは容易です。
軽やかにステップを踏みながら、私は攻撃を回避していきます。
(何を企んでるんでしょう?)
何かを狙っているのかと思いきや、モヒカンさんたちは愚直に攻撃を繰り返してくるのみ。
これが油断を誘うための演技だとしたら、大した策士ですが……、
「3対1だからって遠慮してるんですか? もっと本気でやっていいですよ?」
「アニキ!? こいつ、すばしっこいです!」
「どうなってるんだ。当たらねえぞ!?」
「慌てるな! 敵は魔術師――詠唱の隙さえ与えなければ、俺たちの勝利は揺るが――ふべしっ!」
埒が明かないので、こちらから仕掛けます。
何かを言いかけたリーダーモヒカンを、私は思いきりぶん殴り……、
「ホギャァァァアア!?」
「「アニキィィィィ!?」」
モヒカンさん(リーダー)は、凄まじい勢いで吹っ飛び、そのまま場外に墜落していきました。
(あれぇ……?)
ポカーンとしたまま動きを止めるモヒカンx2。
「は……?」
「嬢ちゃん、おまえ――魔術師じゃねえの?」
「何でもやりますよ。なんてったって私、健康ですから!」
ドヤっと答える私。
ルナミリアでは、毎日のように模擬戦をして遊んでいた私です。
だいたいの武器なら扱えますし、ある程度の肉弾戦だってお手のもの。
虚弱で動けない前世とは違うのです。
「か……、怪力女!!」
「なっ!? 年頃の女の子に向かって、なんて言うことを言うんですか!!」
ムカッときた私は、身体強化魔法をフル活用。
一気にトップスピードまで加速し、そのまま1人の後ろを取ると、
「おまえ……!? いつの間に――」
「え~いっ!」
情け容赦なくグーパン。
拳を受けたモヒカンさんは、またしても天高く吹き飛び、
「フベシッ!」
地面に突き刺さりました。
「これで……、あなただけですね!」
「ヒィィィイ――参った!!!」
サーベルをポイッと投げ捨て、見事な土下座を決めるラストモヒカンさん。
やけに手慣れた美しいフォームの土下座でした。
「そこまで! 2人戦闘不能――1人は降参。勝者――フィアナ!」
そう宣言する審判。
「あの嬢ちゃん、やるなあ!」
「まさか三馬鹿モヒカンを一方的にノシちまうなんて!」
「あいつら、頭に筋肉しか詰まってない馬鹿ばっかりだけど、実力だけは確かだからなぁ……」
どっと湧く観客席。
不思議と戦いが始まる前に向けられていた敵意も薄れているようで。
それどころか、戦いへの称賛の声も聞こえてきます。
(むぅ……、なんか欲求不満です)
そんな反応をよそに、私は唇を尖らせます。
予想外にあっさり決着が付いてしまった……、というのが本音で、
「まだまだ戦い足りないですね――」
私が、ぽつりとそんなことを呟いていると、
「嬢ちゃん! いいや、姉御!」
「……は?」
リーダーモヒカンが、むくりと起き上がり……、仲間になりたそうにこちらを見てきました!
「俺、感動しちまったよ。支配者の証を敵地に着てくるその勇気。完全アウェイの中でも、気圧されずに戦い抜く胆力。なにより笑顔のまま、情け容赦なく敵を屠るその冷徹さ――姉御は漢の中の漢だ!」
「だ~れが男じゃっ!」
精神攻撃なら100点満点です。
「へっ……、姉御にならこの命、預けてもいいかもな。この世界は力がすべて――約束どおり、俺たちは、あんたの舎弟になろう!」
「ノーサンキューです!」
「ヒャッハー! オレっち、殴られるのが快感になっちまったぜぇ!」
「知りません!? 帰って下さい!!」
だらだら流血しながら、ナチュラルに狂ったことを言い出すもう1人のモヒカン。
元気そうで安心しましたが、もう黙って頂きたいところ。
「訂正があります! 舎弟だとか、支配者の証とか言われてますが――すみません。私、本当に編入したばかりで、エリュシアンの制服を着てくることの意味を知らなかっただけで――」
「なにぃっ!? じゃあ姉御は、俺たちを従えようと乗り込んできた、お貴族さまって訳じゃないのか?」
「だから最初からそう言ってるじゃないですか……」
疲れたようにため息をつく私。
「それは悪かった……。てっきり、エリュシアンのクソ野郎が、また無茶な命令を通すために乗り込んできたのかと――」
「皆さんも苦労してきたんですね」
聞けば過去に、権力を振りかざして無茶な命令を押し通そうとしたエリュシアンの学生が居たそうで。
そういった迷惑な学生は、軒並みエリュシアンの制服を権威として使っていたことから、やがては制服=支配者の証――ま~た迷惑な馬鹿貴族のお出ましだと、それはもう冒険者たちから嫌われていたようで……、
「そもそも私、地方出身の平民ですし……」
「「「すいませんでした!!」」」
「これを機に、少しは人の話を聞いて下さいね」
「「「はい、姉御!」」」
見事な土下座を決めてみせるモヒカン3人衆。
「姉御呼びはちょっと――いや、もういいか…………」
私は色々と諦め、乾いた笑みを浮かべるのでした。
***
そうして冒険者ギルドに戻る私たち。
闘技場では次の戦いが始まっていましたが、誤解が解けた私はそのままフェードアウトしたのです。
何人か腕試しをしたそうにウズウズしていましたが、今日の目的は冒険ライセンスの発行ですしね。
「フィアナの姉御! お荷物、お持ちします!」
モヒカン三人衆が1人――最年少のサブロウが、恭しく私に頭を下げます。
三馬鹿モヒカン――タロウ、ジロウ、サブロウは、大層覚えやすい名前をしていました。
「その……、姉御呼びは止めてくれませんか?」
「はい、姉御!」
(大変です! 友達が欲しかったのに、なぜか舎弟が増えてます!!)
(どうしてこうなった~!?)
内心では涙目の私は、ギルドの受付に向かいます。
冒険者ライセンスを発行するためです。
列に並んでいる私は、
「エリン、おまえのような役たたずは我がパーティーに必要ない! おまえは追放だ!!」
「そ、そんな! 許してください。私、どうしても、このクエストをクリアする必要が――――」
そんなトラブルを耳にします。
パーティーからの追放を言い渡す男の声と、悲壮感すら漂っている少女の声。
その少女の声には聞き覚えがあり……、
「まったく! 特進クラスの人間なら、どんな活躍をしてくれるかと思えば──とんだ貧乏くじじゃねえか」
「そこを何とか……! 前みたいに荷物持ちでも、前衛でも――、私にできることは何でもやりますから!」
深々と下げられたライトブルーの髪。
背中に背負われた不釣り合いに大きな杖を背負った少女は……、
「エリン……、ちゃん?」
「フィアナちゃん!?」
私のクラスメイトであり、授業中に遠慮がちに起こしてくれる天使――エリンちゃんでした。
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