病弱少女、転生して健康な肉体(最強)を手に入れる~友達が欲しくて旅に出ましたが、どうやら私の魔法は少しおかしいようです。私が育ったのが魔界!? またまたご冗談を~ 作:魔界育ちの一般人
冒険者ギルドで、私が出くわしたのはエリシュアンの生徒たち。
エリンちゃん以外の生徒に見覚えはなく、別クラスのメンバーのようです。
私がまじまじと彼らのことを見ていると……、
「エリシュアンの魔王!?」
「なんで!?」
男子生徒の一人が、ぽつりとそんなことを呟きました。
ちょっぴりショックです。
(なるほど……、ここでは本当に制服は着てないんですね――)
彼らの装いは、いかにもな冒険者然としたものでした。
1人制服姿の私は、たしかにギルドでは浮いているかもしれません。
「フィアナちゃんは、どうしてここに?」
「えっと……、冒険者になりたいなって」
私がそんなことを考えていると、フィアナちゃんがそんなことを聞いてきました。
まさか友達が欲しくて、とも答えられず私は言葉を濁します。
「エリンちゃんは?」
「私は――はやく魔法を使えるようにならないといけないから」
ぎゅっと杖を握りしめながら、エリンちゃんは表情を曇らせます。
(エリンちゃん……。パーティーを辞めたってことは──今、ソロなのかな?)
気まずそうなエリンちゃんの元パーティーメンバーたち。
しかし私が考えていたのは、全然、別のことでした。
(パーティーを組めれば、一緒に何度も死線をくぐり抜けて、そのうち固い友情が芽生える可能性も……!)
そうとなれば善は急げ。
「エリンちゃん、私とパーティーを組みませんか?」
「え……?」
私がそう言うと、エリンちゃんは目をまん丸にして驚き、
「それは……、願ってもない話ですが――私でいいんですか?」
「もちろんです!! エリンちゃんがいいんです」
これは、夢に向かっての大いなる第一歩!
私はエリンちゃんの手を掴み、ぶんぶんと振り回します。
無邪気に喜ぶ私と、なぜか困惑しているエリンちゃん。
そんな様子を見て、パーティーリーダーの男が、
「止めとけ止めとけ。無能者のエリンなんかと組んだら、せっかくの才能が台無しだぞ」
そんなことを言い出しました。
「もし冒険者として活動していくなら、仲間はちゃんと選んだ方がいい。例えば──俺たちのパーティーとかな」
ドヤッと胸を張るリーダー。
聞いてもいないのにペラペラとそんなことを喋り、最後には私を勧誘してきたので……、
「エリンちゃんが無能者って。どういう意味ですか?」
ムッとした私は、パシッと差し出された手をはたき落としました。
「なっ、正気か!?」
断られると思っていなかったのか、男は驚いた様子で私を見返してきます。
「俺たちのパーティーは、エリシュアンの中では第十九位の上位ライセンス持ちで──」
「知りませんよ、そんなこと。言いたいことは、それだけですか?」
怒りの籠もった私の視線を受け、一瞬、リーダーの男は怯んだようでしたが、
「な、何をそんなに怒ってんだ? 役立たずを役立たずと言って何が悪い!」
「私が、エリンちゃんとパーティーを組みたいと思ったんです。それ以上の理由が必要ですか?」
「だが……!」
なおもそう言い募る相手に、
「あぁぁあん? 姉御が、立ち去れって言ってるんだ。さっさと消えろ!」
「ヒャッハー! 姉御に逆らうやつは、皆殺しだぁぁぁ!」
「ヒィィィィ、三馬鹿モヒカン!?」
「「「あんだと!!?」」」
いきり立って凄む自称舎弟のモヒカンの皆さん。
(どこの世紀末ですか……!)
「すみません。話がややこしくなるので、黙って頂けると――」
「「「すみませんでした!!」」」
どうどうと宥めると、スン……と黙り込み、またしても私に神速で土下座を決めるモヒカンさんたち。
「すげぇ、もう三馬鹿モヒカンを完全に従えてるよ」
「さすがは支配者の証を身にまといし者……」
「あれ、誤解だったらしいぞ?」
「俺……、蔑んだ目で踏まれたい──」
「こ、これが──エリシュアンの魔王!」
「ぎゃ~!? だ・か・ら、誤解ですって!!」
広がる噂が不穏過ぎます!
(……って、あぁぁああ!? なんかエリンちゃんに恥ずかしいところ見せちゃった!)
(姉御呼びって!? 姉御呼びって! ――って、なんかエリンちゃん、すごい目をキラキラさせてこっちを見てるぅぅぅぅうう!?)
無邪気にニコニコ笑ってるエリンちゃん、可愛い。
「こほん」
軽く咳払い。
私は、いまだに納得いかなそうな相手を見て、
「そもそもエリンちゃんは、凄腕の魔法使いの卵ですよ」
そう宣言します。
「はぁ? そんな訳が――」
「やれやれ、分かりました。そこまで言うなら……、私がエリンちゃんの実力を見せつけてあげますよ!」
「…………え!?」
その言葉に驚いたのは、エリンちゃん本人でした。
「いや、そんな……、私は――」
あたふたした様子で、エリンちゃんは言葉にならない言葉を紡ぐのみ。
(冒険者は実力主義……、とは言いますが)
(いったい何があったんでしょうね。すっかり自信を失ってしまってるみたい……)
なんとも言えない気持ちになる私です。
まだエリンちゃんは、自分の魔法の使い方に気がついていないだけです。
その才能は、他と比較できない唯一無二のもので……、
「大丈夫です、エリンちゃんには間違いなく魔法の才能があります」
「そんなはず――」
「私が保証します。エリンちゃんの持ってる力は、間違いなく人の役に立つもの──だから少しだけ信じてあげて下さい。ね?」
エリンちゃんが宿していたのは、ルナミリアに流れ着いた元聖女のナリアさんと同じマナです。
極めた先にある可能性は、計り知れません。冗談抜きに世界を変える可能性だってあるのです。
私の言葉に、エリンちゃんはおずおずと。
それでも最後には、強い意思を持って頷いたところで……、
「――というわけで善は急げです。エリンちゃん、せっかくですし今日はこのままクエストに向かいましょう!」
「ぇえええ!?」
私はエリンちゃんの手を掴んだまま、勢いよく駆け出すのでした。
……目的地も知らぬまま!