病弱少女、転生して健康な肉体(最強)を手に入れる~友達が欲しくて旅に出ましたが、どうやら私の魔法は少しおかしいようです。私が育ったのが魔界!? またまたご冗談を~   作:魔界育ちの一般人

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フィアナ、爆弾を落とす

 ギャアアアアァァァ!

 

 私の拳を受けたドラゴンは、情けない悲鳴をあげながら墜落していきました。

 そのまま地面に激突し、ピクリとも動かなくなります。

 

(うん、絶好調!)

 

 そのまま私はくるりと回転しながら、次のドラゴンに強烈な蹴りを叩き込みます。

 

 またしても為す術なく墜落していくドラゴン。

 そう、この世界において、ドラゴンとは見かけ倒しの温厚な生物に過ぎないのです。

 

 

(あっ、グレンおじさんの分も取っとかないと……)

 

 えっちらおっちら、こちらに向かっているドワーフのおっちゃんを思い出し、私はふうっと息を吐きます。

 幸い、残されたドラゴンにも戦意はなく、

 

(……って、しまったあ!)

 

 泡を食った様子で、逃亡を始めるグリーンドラゴンの生き残り。

 

(ま、まあ。グレンおじさんが来るのが遅いのが悪いよね?)

 

 私は冷や汗をかきながら、そう開き直るのでした。

 

 

 それから数分後。

 

「こいつ……、やりやがった! フィアナ、俺の分は!?」

 

 私に追いついたグレンおじさんが、ガクリと項垂れていました。

 

 地面にできた巨大なクレーターと、その真ん中に鎮座するドラゴンが二体。

 ここで何が起きたかは、語るまでも無かったのでしょう。

 

「へへん、この世は所詮、弱肉強食。獲物を狩るのは早い者勝ちだって言ってましたよね?」

 

 テヘッと笑う私。

 

「く〜、こいつ! 最初の狩りでは、ピーピー泣きながら俺の後を付いて回ってたっていうのに」

「い、いったい、いつの話をしてるんですか!」

 

 黒歴史を懐かしそうに語るグレンおじさんを見て、私は三角眼になります。

 

 あな恐ろしき、ファンタジー世界。

 私の住むルナミリアは、そこそこの頻度でドラゴンを初めとしたモンスターに襲撃されています。

 朝起きたら育ての親であるアル爺が、ワイバーンと斬りあっていたときの衝撃たるや。

 今でも忘れられない強烈な思い出(トラウマ)です。

 

 

(病弱な身体だったら100回は死んでた)

(ありがとう、神さま。ありがとう、超健康な肉体!)

 

 もっとも、この世界においてモンスターは大した脅威にはならない様子。

 現に私のような小さな子供でも、ドラゴン程度ならポンポン狩れますし、

 

「がっはっは! しっかしフィアナ、また強くなったなぁ。こりゃあ、うかうかしてたらあっという間に追い抜かれちまいそうだ」

「む〜……、いつか一本取りますからね!」

 

 この世界の住人なら、たぶん誰でも同じことができるっぽい。

 ソースはルナミリアの住人。

 

 たとえば武闘家のアンさんは、デコピンでモンスターを消し飛ばします。

 吟遊詩人のナリアさんは歌声ひとつで海を割り、木こり(自称)のグレンおじさんは、斧1つでドラゴンをミンチにしてました。

 ちなみにお母さん――エルフのエルシャおばさんは、挨拶代わりに火山を爆発させます。

 

 皆、私とは比べ物にならないレベルで強いのです。

 

 

(これが異世界のスタンダード! すごいっ!)

 

「グレンおじさん、また遊んで下さいね!」

「よせやい、もう俺に教えられることなんて残ってないさ」

 

 キラキラした目を向ける私に、グレンおじさんは照れくさそうに頭を搔くのでした。

 

 

 

***

 

 ルナミリア村に戻った私たちは、そのまま宴の準備に加わります。

 

(うんうん、やっぱりドラゴンは美味しい。それは全人類共通だよね!)

 

 これほどの獲物が取れるのは数週間ぶり。

 人里離れた田舎の村では、採れた獲物を囲んで村人総出で楽しむ馬鹿騒ぎが、とても貴重な娯楽となっているのです。

 

 思い思いの場所で、お酒を楽しむ村人たち。

 まだ未成年の私が、ちびちびとオレンジジュースを飲んでいると、

 

「今日の獲物は、全部フィアナちゃんが取ったんだって? グレンの野郎が、さめざめと泣いてたぞ」

「うわっ……、酒臭っ!? ごめんなさいって!」

 

 酔っ払い特有の面倒くさい絡みに、私は思わず顔をしかめます。

 

 ガハハと笑いながらやってきたのは、グレンおじさん含むドワーフ族の兵士たち。

 村を守る頼れるエースでありながら、こうした場では誰よりはっちゃける迷惑――こほん、陽気な人たちです。

 すっかり出来上がった様子の彼らは、

 

「俺だって、まだまだやれらあ! 空を飛ぶなんて卑怯な魔法が無ければ――力比べなら誰にも負けねえ」

「ガッハッハ。いいぞグレン、その域だ!」

「いやいや、こんな見るからにか弱い女の子を捕まえて、力比べを挑まないで下さいって!」

「「か、か弱い女の子?」」

 

 まじまじと聞き返さないで欲しい。

 べ〜っと舌を出し、私は新たなジュースを求めて席を立ちます。

 

 時間は有限。

 いつまでも酔っ払いの相手をしている暇は無いのです。

 

 

 とてとてと歩く私は、また1人の酔っ払いに声をかけられます。

 

「あら、フィアナ。今日の宴の立役者が、こんなところで何をしてるんだい。ほら、飲んだ飲んだ!」

「あ、エルシャおば――お母さん。だから私は未成年! お酒は飲めませんって!」

「あら、そうだったわね。人間っていうのは不便なもんねえ」

 

 声の主はエルシャおばさん――アル爺と一緒に、私を育ててくれた恩人です。

 細長い耳が特徴的なエルフ種で、人間は不便――真面目な顔でそんなことを言っていますが、残念ながらエルフも未成年は飲酒禁止のはずです。

 

「あ、そうだ! たまには、また魔法で遊んで下さいね!」

「フィアナは相変わらずねえ。炎舞の大賢者と恐れられた私を恐れなかったのは、あんたぐらいだよ」

 

 ケラケラ笑いながら、カクテルをあおるエルシャおばさん。

 こう見えて、お酒にはめっぽう強いのです。

 

(エルシャおばさんは、お世辞も上手い。最高の先生!)

(遊ぶたびに、同年代では右に出る者はいない天才魔法使いだって褒めてくれるから、すっかりその気になっちゃうんだよね)

 

 とはいえ、この村に同年代の子はいないのだけど。

 

 

 ――そう、私は転生してから子どもに会ったことがありません。

 この村には、1人も子どもが居ないのです。

 

(むむむ、これは大変なことです!)

 

 せっかく、こうして異世界転生したんです。

 前世でやれなかった事を、うんと満喫したい!

 中でも私は「友達」というものに強い憧れがありました。

 

 なにせ前世は病弱少女。病院こそ我が家。

 病気のせいで学校にも通えず、同年代の友達なんて夢のまた夢。

 元気に走り回る同年代の子どもを、ただただ羨むことしか出来ませんでした。

 

 

(今世こそ、絶対に友達を作ります!)

(そのために……、まずは村を出て学校に通います!!)

 

 いつか言おうと秘めていた決意。

 私は、決意とともにアル爺の元に駆け出し、

 

「おお、フィアナや。祭り、楽しんどるか?」

「アル爺! 私、村を出ます!」

「……な、な、な、なんじゃってぇぇええええ!?」

 

 ――盛大に爆弾を落とすのでした。

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